その時、私は中央高速道路下り車線の路肩を東京へ向けて歩いていた。

愛車CRM250から既に100mは離れたがまだ先を目指す。

徒歩で逆走の原因は整備不良。



話は「皆で九州に行こう」から始まった。

思い出の地でもあり以前から話題には出ていたが急に現実となり、私には近すぎる日取りで纏まった。

愛車CRM250は草レース後で傷み、遠出するには整備が必須。

幸い2.5台分程所有し作業場所もあるが時間の余裕が無い。


フレームは現車。

電気系、サブフレーム、フロント周りは予備車。

エンジンは腰下現車に腰上部品取り車。

外装とスイングアーム以降は部品どり車。

油脂類交換と細かい部品は見比べて選択。


作業としてはこの程度と思うが作業場所が住居から遠く、仕事終わりに行ったり来たりでは効率も悪く捗らん。

集合場所は大阪南港。

各々が港に集い、同じフェリーで揃って九州の地を踏む計画だ。

私も東京から向かわねばならんのだが、諸事情も重なり作業は遅々として進まぬ。

フェリー出航前夜、フレームにエンジンも乗ってなかった。


出航当日の朝も工具を握りしめる有様。

それでも何とか間に合う時間に組み上がり、急ぎレバー類ペダル類の位置調整を済ませ荷物を縛り付けて出発。


首都高、中央高速、名神高速、大阪環状へと繋ぐ。

時間も迫り給油以外は走りっぱなしであったが、淡々と走るのは得意だ。

すっ飛ばす必要が無いだけで有難い。


諏訪湖を過ぎて暫く走った頃だったろうか、緩やかな左コーナーで左足の甲辺りに何かが当たった。

虫?にしては大きいし石にしては衝撃が無い。 衝突より撫でられた感じ。。。



チェンジペダル!!


何故か咄嗟にそう感じ、ミラーを凝視する。

一瞬見えた遠のく風景に路面上を跳ねる何かがあった気がする。


即座に路肩に寄せ減速しつつ変速を試みるがやはり足にペダルの感触は無く、ニュートラルにも入れれずエンストさせて停車。 確認するると幸い根元が折れた訳では無く、ペダル脱落だけだ。


つまりは整備不良。


思い起こすと組み上げ迄は本締め確認していたが、レバー類調整以降はやってない。

普段からレバー類は転倒折れ対策に力が加わると空転する様に本締めはしないが、最後のチェンジペダルも本締めした記憶が無い。

間に合いそうだと油断が出たな。


後続車が無く事故に遭わさず幸運だった。

ガードレールの外から路面を凝視し来た道を徒歩で戻り、路肩に先ほどの棒状の落下物を発見。 ペダルだ。


状態を確認すると、締め付けボルトは無いが本体は端部の凹みはあれど原型を留め機能に問題はなさそう。

不幸中の幸いか、落下の衝撃でクランプ部が僅かにひしゃげた様で嵌め込んだだけでボルトも無しに結構しっかり固定され、ペダル操作で空転する様子もない。 ただ、このままでは再び落下するだろうから結束バンドでフレームと繋ぎ、外れても落下しない細工を施す。

フェリー内でのいい笑い話が出来たと苦笑いしつつ再出発。


数時間後、無事に大阪南港で友人達と合流を果たす。

フェリー内では私の笑い話だけでなく友人達の話も聞くが、大概の状況を乗り越え辿り着いた様だ。

ああ、類は友を呼ぶか。


余裕が無い状況と油断は大敵。 気をつけねばね。


via 記憶の発掘
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