生物と無生物のあいだ

 

生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。

という見解から始まった。

かかる見解が正しいのかについて検証していくお話でもある。

そのために、野口英世に対する日本と米国の評価、ポリメラーゼ連鎖反応を起こす機器を発明したサーファー、DNAの二重螺旋構造を発見したワトソンとクリック(とX線結晶学者のロザリンド・フランクリン、あとはウィルキンズ)の功績と疑惑、その歴史的な発見の先達者となったエイブリー、物理学者のシュレーディンガーやシェーンハイマーの予言及び考察、そして著者自身のGP2に対する研究を通して感得した前記問いに対する答えを紹介している。

理系の人の頭の中は、極めて複雑かつ難解である。問いに真正面から答えるわけでもなく、外堀を埋めるかのように文章が進んでいく。ある意味、物語のように研究成果を読み進めている気分になる。エピソードも面白く、研究者の苦悩も滲み出ている。

そして、先に書いた物理学者の見解は、シュレーディンガーはエントロピー増大の法則に絡めて、シェーンハイマーは秩序を守るための絶え間ない破壊という考えから起こっている。

生命とは、結局、動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)にある流れのことをいうと。

この著書自体が、10年以上も前に出版されたもので、分子生物学や細胞生物学はかなり進歩をしているから、やや古い部分も否めないのかもしれない。

しかし、なぜ、原子は小さいのかとか、生物はこんなに大きくなる必要があったのかなどといった素朴な疑問にも著名な学者が向き合ってきたということを知るだけでも、意味があると思う。

それにしても、膵臓の消化酵素の外分泌系のメカニズムは非常に見事だと感じた。生物というか人体は、大変に美しいと思う。