よもや24歳になってから初めてのランニングが身震いするほどの寒雨の日になるとは。
凍えるほど寒く、風はとにかく斜めに流れていく。そして、そんな風は、大きめの雨粒を露わになった肌に弾丸のように打ち込んでくる。
寒さと痛さでまっすぐ走るのが辛い。
久しぶりに、諦めようと思う自分が幾度となく登場した。
どこか壁を境にして、壁の向こうにいる頑張る自分を穴のあいた箇所から、引きずり込もうとする諦める自分。
もう、今日は、この辺でいいだろうよ。
たしかに、こんな天気の日には、自分の中の弱さを否応なく感じさせられる。
その先に水たまりがあって避けなきゃいけないから、減速しようよ
(もう、ずぶ濡れなんだから、いまさらだろう)
前に人がいるから、避けるために減速しようよ
(この段階で減速する必要はあるのか?)
たしか、あの信号は、そろそろ点滅するだろうから、きっと渡れないだろう
(いつものように、ここでちょっとばかしスピードを上げれば、渡れるはずだ。)
本当に、アタマのすぐ後ろで囁く輩がいる。
今日は、いつもよりその声が大きく聞こえてしまった。
負けそうになったから、その都度その場所で吠えた。
ばかやろう
靴ひもがほどける。結ぶ。またほどける。
本当は休憩したいから、さっき適当に結んでいたのではないか?
ちがうんだ。なんで、ほどけるんだ、このやろう
厳しい環境に身を置くことで、自分のリアルな座標を叩き込まれる。
空気よりも水の中にいることで、物理的にも自分がいまここに存在する事実を把握する。
これだけ、内面が優位に立つ時間もなかなかないだろう。
自分の中の弱い輩を潰すために、とにかく止まることを禁止した。
とうにマスクは雨に溺れて、正常に機能していない。
窒息しそうだったから、さすがに外した。
傘なんて、要るか?
耳元で雨水が語り掛ける。
私が苦しんでいるのを尻目に、アスファルトの上で、楽しそうに踊り散らす。
貴族よ、社交辞令しか知らんぞ、私は。
濡れたアスファルトに反射して街灯のヒカリは、揺らめいている。
下からネオン街。
川面に降りしきる雨は、とにかく同心円状に自己の権威を示すから、私は、滑りゆく電車にも乗れない。
傍を走る車は、いつもより獰猛に見えた。
いつ私の胸に飛び込んでも、なんとかできるように緊張は解かない。
雨水の弾丸を避けるために、信号機の下に隠れる。
信号機を見上げる機会も、たまにはいいものだ。
ライムミント色の光が、やたら恋しくなる。
ぶっきらぼうにて、何も話してくれない職人。
シマウマの背中を急いで走る。時間が経つと、通してくれなくなるから。
カラダの芯から燃え上がる炎をみた。まったく、久方ぶりの感触よ。
私は、原始的なところで勝負がしてみたい。
風邪をひいたらどうすんの?
と言われるのだけど
そしたら、そこまでのオトコだったと思ってくれればいい。
きっと、またいつか、アタマから水に飛び込んでみたい。