なぜ走るのかと聞かれたら、体を鍛えるためと一般的に回答しておく。
もちろん、そういった動機は多分にあるのだけれど、それならもっとゴリゴリとやっていく方法があるだろうと思う。
外で走る理由。
私は、月に向かって走っている。
夕方と夜の間にしか見ることのできない怪しい空の色がそうさせるのである。
夜になって、多少の風が吹けば、多摩川の水面も細かく均等に波立つ。
そこに滑るようにして電車の影が動いていくのである。
夜が深まれば、そのコントラストは程度を増していくのであるが、水面に移る顔なき人々は、光の檻に閉じ込められているようなのである。
しかし、不思議と不幸に感じない。
あれが、本当は月への近道だと思われる。
さて、私は、呼吸を乱しながらひたすら走り続ける。
しかし、傍からみれば、私は地球の表面をひたすら走っているだけ
地球の掌に転がされつづけているのである。
弄ばれた時間が長いほど、やはり追求する動機は強くなるのではないだろうか。
ヒカリの速度で走れば、重力を振り切って月まで走っていけるのだろうか。
そう考えるから、走って走って、体力とスピードをつけていくのである。
明日はスーパームーンで、お月様が地球にかなり近づく。
そんなに大きな顔で見られると、行くしかないだろうと考える。
しかし、あいにく、私は某オフィースにて、ブルーライトを目に燦々と浴び続けるのである。
狙いの日暮れは、ビル街の人工的なヒカリの中におる。
まったく、お月様が地球の近くに寄ってくれる日くらい、日本全国で消灯するくらいの気概をなぜ見せぬのだ。
まったく無礼であることが、微塵もわかっていないようである。
太陽系の元締めはおそらく、太陽であろうが、お月様が寄る頃には、遠いところにいるから、頼れぬ。
風情とか情緒が有形であればいいのにと思う。
そしたら、機械的ヒカリに対して、何らかの制裁を加えてくれるはず。
いつか、月まで走っていくことが、私の奥底の浪漫だとしたら
これは、中々人には言えぬ、秘め事となる。
秘め事とは、相手方がいるはずだから
君だけに教えておく。