《不可思議話シリーズ》

原題 : となりの怪談1981

⭐私の家庭は父と母子が小学生の時から別居生活をしていた。

　私が中学に入学した頃、父が大病を患ったと連絡をもらい、母はしぶしぶだったが我々子供二人を引き連れて見舞いに行き、三年ぶりに父に面会した。

　そしてその頃からセミ和解をし、約三年に渡る逃げ隠れの生活に終止符をうち、普通に父に会える環境になっていた。

しかしそれも長くは続かず、中３の時に父は他界した。

これはその父が亡くなった夜におば(父の姉)が体験した話だ。

　父は我々が家を出た後は祖母と二人で暮らしていた。息子を失った祖母を気づかったおばはその日は父の家に泊まる事にした。客人も帰り祖母も寝た後、ようやく床に着いたという。

　静寂の闇の中でなかなか寝つけないおばさんがウトウトしていると、突然天井の方から雷の様なすごい音がして寝ているおばの上に何かが覆い被さって来たそうだ。

おばは瞬時にそれが父だとわかり、とっさに

『スミオがっ？スミオだべっ！おめはもう死んだんだぞっ！．．．』

父の名を呼びそう言うと、布団の上の重みがす～っと無くなり辺りはまた静まり帰ったという―。

これは自分以外の人に聞いた最初の不可思議体験談だった。

《初出展》
ともえの館
2011年07月10日 15:01

わからぬ自分