『 自然界 』


山を染めていた白い雪が
いつのまにか
山桜の花の色に変わり
そして山は緑を濃くしてゆく

寒空を呑気そうにひとり
ピーひゃララらーと飛んでいたトンビは
どこかに姿を隠して
ひばりが春がいかにも忙しいと言わんばかりに鳴く
そして、その横を遠い国から訪れたばかりの
つばめたちがこれまた忙しそうに
泥をくわえて飛んでゆく

こうして自然を生きるものたちは
春の歩みを始めていく
季節が早く巡ろうが
多少の寒さがあろうが
日一日を生きてゆく

そんな忙しそうな空を見上げながら
わたしはどこで
自然界の力を落として来たのだろうと
ふと思う
人間はなんて弱いの
わたしはなんて弱いの


Photo:月夜