「ちょっと思い出してみる」vol.1
☆ 小学生のころ、僕は少年野球に所属していた。
あまり強いチームではなかったが、
エースで 4番で キャプテン
ほんのちょっぴり自慢だった。
ある日、そんな野球チームに弟が入ってきた。
あまりにもボーっとしていて、不思議ちゃんの弟だ。
そう。母がそんな弟を見かねて野球に託したのだ。
練習に練習を重ね、ついに試合!
緊張感でいっぱいのグラウンド。マウンドにはもちろん僕。
弟はそのとき、同情によりなんとか試合に出場、外野を守っていた。
弟が気にはなるが、バッターに集中!バッターに集中!バッターに集中!
よし!いくぞ!そりゃー!っと渾身のストレート!
「カキーン!」・・・あっ!しまった・・・。
たのんだ!弟よ!と振り返ると・・・。
そこにはしゃがみこみ、必死にバッタをつかまえている弟がいた。
消えていく白球。小さくなっていく弟の背中。怒る僕。嘆く母。肩を震わせるチームメイト。
その日に弟はユニホームを脱いだ。
よごれた洗濯機。そこには数十匹のバッタが浮かんでいた。
弟はバッタを捕まえる名人だ。
才能っていろいろあるからね。みんなあきらめずにいこう。