日銀による頑なな金利上昇抑制策は悪い円安と悪い物価上昇の批判を高めているが、日銀は過去FRBと日銀の教訓や為替・原油翻弄の戒めという点で緩和堅持の可能性がある。

FRBは2011-12年の原油高騰の際、「賃金の上昇は鈍く、資源高によるインフレは一時的」として緩和策を継続させた。日本では黒田緩和の当初目標「2年で物価2%」が原油急落で頓挫したり、1980年代後半以降は円高制御や円高不況緩和といった「過度な為替重視」の金融緩和が緩和バブルと引き締め急ブレーキ、その後の長期停滞を招いた教訓がある。

「(2011年の米国経済に関しては)原油など資源エネルギー上昇が、インフレに及ぼす影響は一時的になる」、「長期の期待インフレ率が安定的に推移する限り、コモディティ価格や消費者物価の上昇が、賃金と物価決定プロセスに影響を与える可能性は低い。従って、それによって金融政策スタンスの大幅な変更が正当化されることはないだろうというのが私の見解だ」。2011年4月、当時のイエレン米FRB副議長(2014年から議長、2021年から財務長官)は、このような主張を行っている。

2011年に米国では原油などの資源高騰に見舞われ、WTI原油先物は同年4-5月に1バレル=114ドル超え、翌2012年も3月に110ドル超えという高止まりが続いた。連動する形でCPI(消費者物価指数の総合)も2011年9月には前年比+3.9%に上昇し、FRBの物価目標である+2%を大きく上回っている。


しかし、当時は2008年のリーマン・ショック後の後遺症などが続き、労働市場では「弛みと賃金上昇の鈍さ」(イエレン氏)が続いていた。FOMC内では原油高などを理由に利上げを主張するタカ派メンバーも出てきたが、ハト派急先鋒であったシカゴ連銀のエバンス総裁による「賃金上昇なしにインフレが昂進するとは考えにくく、インフレ率の上昇は一時的」といった主張もあって、緩和見直しは2013年以降に遅延となっている。