昨年、2023年7月に図書館のネット予約してた本が、
やっと順番が来て読むことが出来ました。
市川沙央さんの「ハンチバック」を。
第169回芥川賞受賞後すぐ、予約したんだけど、手元に来るまで
8か月掛ったわ。
背骨がS字にたわむ重症身障者の井沢釈華が主人公。
作者である市川さん自身も、同じ筋疾患先天性ミオパチーで
それによる症候性側湾症、人工呼吸器と電動車椅子使用をされている。
ワンルームマンションを一棟丸ごと改造した施設、グループホーム。
十畳ほどの部屋と、キッチン・トイレ・バスルームが自分の足で行き来できるスペースの全て。
そしてそれは、釈華の為に両親が残してくれたものだ。
他にも不動産の収入があり、金銭面では全く心配はない。
そんな彼女はこの施設に来てもう40代の中年になった。
釈華は密かに、官能小説や、怪しげな潜入ルポなど、コタツ記事を書いていて、
収入もある。
でも、お金は目的では無いので、全て寄付している。
その他にもブログとかTwitterで、沙花というハンドルネームで
赤裸々なとんでもない本心を綴っていたりする。
ある日、それを30代の男性ヘルパーが知っていることを、知って…
先天性ミオパチーという、進行性では無いにしろ充分大人の筋肉になれないまま、
生きていれば、当然老化もするし人工呼吸器も、吸引器も手放せない。
生きて行くだけで、その老化の仕方も我々とは違うんだろう。
本の中で、健常者なら当たり前にできる、目が見える事、本が持てる事、
ページが捲れる事、読書姿勢が保てること、書店へ買いに行ける事、
5つの健常性を満たす事を要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。
その「特権性」に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた。
と言う一文がある。
本好きだけど、ミタ子はなんと傲慢で、しかし幸せなんだろう。
わずか100ページにも満たない本ですが、
ミタ子も先天性の病気を持って生まれて来たのですが、
病の重さの違い、大変さに改めて気づかされ、
ヘルパーさんやスタッフさんの仕事の大切さまで、考えさせてもらった一冊でした。