先日読んだ「むらさきのスカートの女」が面白かったので、
続いて今村夏子の「こちらあみ子」を読んでみました。
この単行本は「こちらあみ子」が115ページ、
「ピクニック」が80ページと短く、スイスイ読みやすかったです。
祖母と暮らすあみ子の所へ、近所の、と言っても田舎だから子供の足で15分程離れている所から、竹馬に乗って小学生のさきちゃんが会いに来る。
あみ子は前歯が3本無い。「イー」と口を横に広げるとない歯から暗い穴が見える。
それが、さきちゃんのお気に入り。
なぜ無いのかと言うと、中学生の時熱愛してた男の子にパンチされて出来た穴なんだ。
なぜパンチされたのか、あみ子が祖母の家に来るずっと前、
小学一年生頃から話が始まる。
あみ子は4人家族だった。 お父さん、再婚のお母さん、お兄さん、それにあみ子だ。
お母さんは家の赤いじゅうたんの一室で、書道教室をしてて、
その生徒の中にのり君がいた。
教室の隣の仏間の襖の間から、のぞき見をして、美しい字を書くのり君を
あみ子は好きになる。
本の中でははっきり書いてないけど、あみ子は発達障害児なんだと思う。
決して悪い子じゃ無いし、相手が喜ぶだろうと思ってしたことが、かえって
傷つけてしまう。
結果、お母さんは心を壊して教室も辞めて何もしなくなってしまう。
兄は12歳にして不良になってしまう。
のり君も、あみ子のとばっちりを。
こういう話って、発達障害の人本人の苦悩の話になりそうだけど、
この本では、あみ子は全然わかってない。他人の気持ちを。
苦悩も無い、なんでそうなるのかが分からないんだから。
のり君のことも、一方的に自分が好きだってことばかり。
小1から中3までずっと一途なのはすごいけど、のり君以外目に入ってない。
のり君の気持ちなんて考えた事も無い。
お父さんもお母さんも兄も、優し過ぎる。のり君ものり君のお母さんに
あみ子には優しくしてやれと言われてて。
でも、のり君、限界だったんだよね。
悪気が無いのは重々承知だけど、そういう人と暮らすのは大変だよね。
悪気が無いってことは、分からないってことだから、ある意味たち悪いわ。
「こちらあみ子」は第26回太宰治賞受賞作「あたらしい娘」を改題したものだそうです。
単行本の為に書き下ろされた「ピクニック」、ミタ子はこっちの方が面白かったです。