重く、考えさせられ、結果、答えが出ない本書。

しかし、528ページの長編小説なのに読むことを止められなかった。

少年Aが中学2年生で起こした猟奇的殺人。その少年Aが青年になり鈴木という名で人知れず生きている。自分も中学生の頃、いじめに加担し親友を死においやった罪を持つ主人公益田と出会うことで徐々に生きることの楽しさに目覚めていく。しかし、猟奇的殺人を犯した少年Aを許すことができるのか。益田も鈴木が猟奇的殺人を犯した少年Aであることの真実を知ってしまい、殺人者であるということから許せないとしながらも自分の背負ってきた罪にも対峙していく。

 

猟奇的殺人・・・思い出すのはやはり神戸で起きた連続児童殺傷事件。思いもよらない殺人が当時自分とあまり歳の違わない児童が起こした事件であったため衝撃を受けた。狂っているとしか思えず、許すことはできないと思ってきた。ましてや、出所後、彼は手記を出版して話題になった。手記を出した殺人鬼、またそれをビジネスにする企業に憎悪を抱いた。

 

そして本書を読破したとき、ただ単なる今迄と違った憎悪といろいろな思いが交差し戸惑っている。実際にこれからも生き続けないといけない少年A。でも、自分をさらけ出すことも心から笑うことも許されないのか。もし自分が被害者の家族や親せき・知人であったなら・・・。

 

やっぱり答えが出ないしまとまらない。