何とも心が穏やかになる本なんだろう。ハラハラドキドキが少ないけど、こんなお店が商店街のはずれにあったら良いなあと思う。ちょっとぎすぎすした世の中に疲れたとき、手に取ると良い本著である。

心やさしい店主・桐島透が営む、不思議なお店「あずかりやさん」。1日100円で預かり期間内に取りに来ないとお店のものになってしまう。あずかったものは大切に保管され、時には手入れされて返される。高級自転車、一通の封筒、本など全てに預ける理由がある。その理由と店主とのやりとりが読んでいるわたしの心をあったかくしてくれる。実は店主は目が見えない。目が見えなくなった理由や独りで住んでいる訳も丁寧に描かれる。だから目が見えないことをかわいそうだとか思わず、店主の実直で正直、そして丁寧な暮らしぶりの方に興味をそそられるのだ。

話を進めるのがお店に掛けられているのれんやショーケースなのも本著の良さを引き立てているような気がする。

発行元も絵本を多く手掛けているポプラ社。このような優しい文章を書く作家さんの発掘はさすが!