大阪の経済人、藤田傳三郎やその一族が集めた所蔵品を持つ藤田美術館。常設していないこの美術館が開館するのは春と秋の一定期間のみ。この美術館のすごいところは国宝9件、重要文化財52件を含む古代から近代の東洋古美術品を所蔵していること。この中から特に名品として知られているものを選りすぐり見せてくれる。
今回は6月11日まで。
美術館は2階建てで各1部屋のみ。会館した当時の面影そのままの展示室で見られる。田舎の祖母の家の納戸のような空気感の中で見る名品は、空調や照明を徹底的に管理された近代的な美術館とはまた違った趣がある。名品と一口に言うが、見たことのないような素晴らしいものばかり。特に国宝「曜変天目茶碗」。釉薬と火の融合がよくぞこれほどまでの景色を醸し出したかとため息が出る。まるで宇宙に浮かぶ星のように・・・と言われるが、その通り。見る角度によってその景色は変わる。ある角度はたゆたう宇宙の無数の星。ある角度からはビックバンのような破壊的なエネルギーを感じる。徳川家康から譲り受けた水戸徳川家の売り立ての際に藤田家に伝わったという。今回の展示品の中でも私が一番会いたかった名品。時間を忘れて見入ってしまった。
快慶作の木造地蔵菩薩立像(重文)。彩色と金箔で装飾された美しい仏像に思わずひざまずきそうになる。地獄へと堕ちたものを救う来迎形とのことだが、本当に救ってくれそうな優しいお顔立ち。
その他、紀貫之が書いた和歌。教科書にも載っている人物の直筆を見ると、時代が違うだけで同じ人間が書いたことに改めて共感し、今を生きることに不思議を感じる。
展示数が多くないので、焦ってみることもなくゆったりと向き合うことができた。すばらしい展示会。
美術館の庭の桜が満開
庭には茶室も
藤田美術館
大阪市都島区網島町10-32