谷崎フェアをやっていて手に取った本著。不思議な、そして当時にしてはセンセーショナルな内容だったに違いない本です。
結婚した女性、つまり妻とセックスレスとなり、お互いがそれをよしとすれば問題はないのですが、片方がよしとしない場合、それが原因で不和になるのはよくあること。今はそのことが離婚の原因になるのですが、谷崎の時代はそうではなかったはず。しかし、本書の主人公である夫は求めるときは娼婦に、妻は何と夫が公認している男性の元へと足しげく通う。現代においてもこの事実は、受け入れがたいものなのではないでしょうか。関係は全くもって破綻しているのに、離婚に踏み切れない。体の関係がなければ、うまくいう夫婦なのに・・・と夫はいう。う~ん。本書は離婚したいが子どものことを考えるとなかなかできない・・・などとのらりくらりと進んでいく。最後は、お互いもう離婚しかないと思っているところに、義父のとりなしに合う、しかし、結局離婚するのか思いとどまるのか・・・と結果がないままに終わった。谷崎の私生活を反映しているともいえる本書というが、何とも後味の良いものではない本でした。