細雪をようやく読破しました。900ページを超える久々の大作。旧仮名使いもあり少々読みにくいところもあったのですが、読み応えがありました。書名・著者ともに良く耳にしていたのですが、今まで全てを読んだことがなく今回の挑戦となったのです。
大阪船場で広く商いをし、隆盛を極めていた薪岡家。今は主人がなくなり、娘の養子が古い暖簾を細々と守っています。四人姉妹「鶴子」「幸子」「雪子」「妙子」が兵庫の芦屋を中心に物語は繰り広げられるのですが、全編大阪弁(船場言葉)で綴られ、今では少なくなりつつある船場言葉を読むことができるものとしても貴重です。隣で話ししているようなリズム感もページを進める要素にもなっていました。第二次世界大戦が勃発する直前の物語なのですが、当時の上流階級の暮らしぶりや三女雪子の見合い話など興味が尽きない内容でした。特に雪子の美人なのですが、なぜか縁遠く、三十路に入っても嫁げず姉の幸子夫婦が奔走している様や姉妹間の葛藤、雪子の冷めた恋愛観など女性が読むと結構共感することもあり楽しいです。また、四女妙子の自由奔放な恋愛事件には、本書の上巻が連載されていた昭和18年当時(中巻を経て下巻も含めて刊行されたのは昭和23年)、よくこの内容で出版されたものだと感心しました。今読んでも古くさく感じられない、女性の気持ちを汲んだ作品だと思いました。著者、谷崎潤一郎とはどのような作家だったのか、興味が出てきました。
