最近はまっている作家、百田尚樹さんの本。ボクシングのこともあまり知らないし、ファイティング原田さんの伝記のような本だったらイマイチかも・・・と思いながら購入し、読み進んでみました。しかし、これは所謂伝記ものでも、ボクシングファンに宛てて書かれたものでもありません。さすが百田さん!です。
1960年初め彗星のごとく現れたファイティング原田とライバルたち。当時、ボクシングは単なるスポーツの一つではなかった。戦後敗戦に打ちひしがれた日本人の日本人である誇りを甦らせ、世界にまだまだ挑戦できる、世界を獲れるということを世界に示した。ボクシングの世界チャンピオンは今と違い1つの団体・階級別で8人しかいなかった(今は、4団体で17階級 70人以上のチャンピオンがいる)。そのため、世界チャンピオンの重みが今とは全くと言ってよいほど違う時代だった。そんな中で、2階級制覇という偉業を成し遂げたのがファイティング原田だった。過酷以上、死ぬ思いをして減量して望む試合、死をも予感させるような激闘のボクシング。子供の頃、テレビで見て、なぜあんなにまで自分を追いつめてまでも試合をするのだろうと思っていた。理解できなかった。正直今も理解はできない。しかし、それほどまでに自分を賭けられるものを持っているのも羨ましいとも思う。
本書は先に書いたように単なる伝記ではない。敗戦から蘇る日本の足跡と言っても過言ではないものが、本書はボクシングを通して描いていると思う。また、栄枯盛衰。人は変化する。散り際の美しさも描かれていた。
黄金のバンタムを破った男
百田尚樹 著
PHP文芸文庫