何年前だったか、今は亡き九代目市川團十郎さんと、五代目尾上菊五郎さんが出演されていた「團菊祭」を観劇し、そのおもしろさに惹きつけられ時々観に行くようになった歌舞伎。
本物の歌舞伎はそうしょっちゅうは行けないけれど、年に2回ほど映画館で歌舞伎をしてくれる「シネマ歌舞伎」というのがありました。
今年は、それが3~10月毎月やってくれるのです。
3月は「連獅子」と「らくだ」。どちらもこれも今は亡き18代目中村勘三郎が出演されてました。「らくだ」は大笑いの演目で楽しませてくれました。
そして、今月。5代目坂東玉三郎主演の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」。
早速観てきました。
やはりすごい玉三郎。映画館でありながら、ぐっと惹きつけて離さず、歌舞伎座で観ているような間隔になりました。それも、特等席で・・・。2時間54分の上映時間があっという間。これだけ長いと眠たくなったりするのですが、全くもって、それこそ瞬きするのも惜しい感じでした。
物語は、
幕末、尊王攘夷の機運が盛り上がる開港間もない横浜の遊郭・岩亀楼(がんきろう)。病で床に伏せった遊女の亀遊(中村七之助)を見舞いに吉原の頃から顔なじみだった芸者・お園(坂東玉三郎)が来る。そこで園は、亀遊が通辞の藤吉(中村獅童)と恋仲であることに気づく。ある日、岩亀楼にアメリカ人のイリウス(坂東彌十郎)がやってくる。藤吉が通訳する中、唐人口と呼ばれる異人相手専門の遊女が呼ばれるが、イリウスはそこに居合わせた唐人口ではない亀遊を気に入り、ぜひ相手にと熱望する。岩亀楼の主人はイリウスから大金をせしめることができると見るや亀遊の身請けを承諾するものの、亀遊は藤吉との恋が叶わないことを儚んで自害してしまう。そのうちに、亀遊が自害したのは外国人への身請けを拒んだことが原因だという瓦版がまかれ、亀遊は一躍攘夷女郎のヒロインにまつりあげられる。そして、「露をだにいとふ大和の女郎花(おみなえし) ふるあめりかに袖はぬらさじ」という辞世の句を残したという話まででっちあげられてしまう。一方、岩亀楼には攘夷女郎がいたと評判が立ち連日客が押し寄せる。亀遊の話を聞きたがる客にお園が話をするうちに、どんどん話が大きくなり、脚色されていってしまう。5年後、攘夷党の集まりが岩亀楼で開かれ、例によってお園が呼ばれ、亀遊の話をすることになる。手馴れたお園は流暢に話をし、最後に辞世の句を歌うと、それが脚色であることがばれてしまう。怒った攘夷党の侍に刀を向けられ、今後一切この話をしないように脅かされる。一命を取り留めたお園は、一人、降る雨を眺めながら酒をあおるのだった……。 【キネマ旬報データベースより】
玉三郎のお園の寂しさが痛いほど感じられた。そして、物語からは、嘘も言い続けていると本当のような気になる、しかし、その嘘はずっと完璧につき続けないとどこかでほころびが出る、みたいなことも言いたいのかと思った。
必見です!