西加奈子さんの本は、最近「地下の鳩」を読んだばかりだった。そして今回の「通天閣」。前回の「地下の鳩」同様、生きることに希望を見いだせず、生きるというより日々をこなして生きている人の物語。前回同様、読んでいるのがつらくなるページも多く、あああ・・・なんでこの人のはこんなんばっかりなんやろ・・・と読むのにくじけそうになるのだが、最後に「こう来たか!」と驚かされた。
通天閣が見えるアパートに住む、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうになりながら(捨てられるのだが・・・)スナックで働く若い女の物語。2人は知り合いでもないのだが、どこか交差している。日常からは何の希望も楽しみも感じられない。夢を持って生きる、とか家族や恋人が出来てハッピーエンド、どこかの映画の無理矢理感は全くなく、ほんのちょっと、まわりの人に目が向いたときから少し動き始める。生きていることが何か価値あるものに見えてくる。軽蔑していた場末のボッタくりスナックのホステスやオーナーに対しても、また今まで毛嫌いしていたマンションの隣人や通天閣の下で一日中頼まれもしないのにタクシーの世話をやいている片腕のないおっさんにも何してんや、と思いながら、自分も一緒や、と気づく。そう、私はあんな人たちとは違う、と思っているから、先に進まないし、愉しくないんだと気づく。
以前人生の師匠に連れて行ってもらったセブ島に行く途中のマニラの空港での出来事が思い浮かぶ。スタイルが良く顔もそこそこの40代の女性2人。「ほら、あんたらもそのうちああなるで・・・」そのときは全く意味が分からんかった。しかし、今、あの時師匠が言いたかったことが分かるような気がした。どこかで周りを軽蔑していたんやわ。私はあんたらとは違うって。それが見えたとき、人は誰も側に寄ってこないし、手を差し伸べることもしない。一緒の人間。怒ったりすることはあっても、ああやって私はあなたたちとは違う、そんな姿をしたらあかんで、って・・・。それを本著は教えてくれた気がした。

通天閣が見えるアパートに住む、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうになりながら(捨てられるのだが・・・)スナックで働く若い女の物語。2人は知り合いでもないのだが、どこか交差している。日常からは何の希望も楽しみも感じられない。夢を持って生きる、とか家族や恋人が出来てハッピーエンド、どこかの映画の無理矢理感は全くなく、ほんのちょっと、まわりの人に目が向いたときから少し動き始める。生きていることが何か価値あるものに見えてくる。軽蔑していた場末のボッタくりスナックのホステスやオーナーに対しても、また今まで毛嫌いしていたマンションの隣人や通天閣の下で一日中頼まれもしないのにタクシーの世話をやいている片腕のないおっさんにも何してんや、と思いながら、自分も一緒や、と気づく。そう、私はあんな人たちとは違う、と思っているから、先に進まないし、愉しくないんだと気づく。
以前人生の師匠に連れて行ってもらったセブ島に行く途中のマニラの空港での出来事が思い浮かぶ。スタイルが良く顔もそこそこの40代の女性2人。「ほら、あんたらもそのうちああなるで・・・」そのときは全く意味が分からんかった。しかし、今、あの時師匠が言いたかったことが分かるような気がした。どこかで周りを軽蔑していたんやわ。私はあんたらとは違うって。それが見えたとき、人は誰も側に寄ってこないし、手を差し伸べることもしない。一緒の人間。怒ったりすることはあっても、ああやって私はあなたたちとは違う、そんな姿をしたらあかんで、って・・・。それを本著は教えてくれた気がした。
