大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本・・・という帯のキャッチに惹かれ、初めて髙田郁(かおるさんと読む)さんの本を手に取りました。
単なる時代小説ではなく、何より天神さんや高麗橋、釣鐘町とか好きな大阪の地名がいっぱい出てくるのですごく身近な感じがしました。最後のページを読み終わったとき、どっという涙ではなく、じんわり涙が出てくるのです。それだけ読感が良いのです。
物語は、大坂天満の寒天問屋、井川屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。その銀二貫は、大火で消失した天満宮再建のために、工面した大金だった。引きとられた少年は松吉と改め、商人としての厳しい躾と生活に耐えていく。番頭善次郎、丁稚梅吉、評判の料理人嘉平とその愛娘真帆ら人情厚い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、その矢先またもや大火が大坂の町を焼き払った。何日も何日も探した料理人嘉平は既に亡くなっており、真帆は顔に大きなやけどを負ったうえに名前を変えて細々と生きていた。新たな寒天作り、その寒天を使った羊羹の開発。アイデアは松吉からであっても完成は松吉を支える人たちの助けがあってこそ。本書は人は一人では生きられないことを銀二貫を上手く物語の中に入れながら書き込んでいる。悪人はいつまでも私腹を肥やすことができず、全うに正直に人生を一生懸命生きている人はきっと誰かの助けがありながら幸せになるというハッピーエンドの良い小説です。
著者の髙田さんに俄然興味がわいた本書です。
ほんと、ええ小説でした!
銀二貫
髙田郁著