今回の本は、「しゃべれども、しゃべれども」(佐藤多佳子著)です。

二ツ目の落語家、今昔亭三つ葉。東京女性の祖母とふたり暮らし。頑固で気が短い三つ葉が、ひょんなことから話し方講座を開講することに。生徒は、いとこの元テニス教室コーチと元野球選手、OL、そして小学生の4人。皆それぞれ悩みを抱えながら、講座に通っている。落語を通して、様々な会話が起こり、ケンカが発生する。気にくわないヤツもいつの間にか、「思ったことを話しできるヤツ」 に変貌する。そして、いじめに合っていた小学生と失恋から立ち直れずにいたOLが落語発表会を開催することになったことから三つ葉を含む他の生徒たちにも異変が起こる・・・。

この本を読んでいて、何気ない日常に起こるカルチャーセンター的な落語教室から心を通わす落語の神髄への移り変わりがとてもうらやましく感じた。ただ単に落語ができる、ということでなく、落語を通して話しをすることの大切さがこの本には含まれているのかと思った。思いのまま気持ちをぶつけられる相手。本当にうらやましい。どこか遠慮し、自分の気持ちにフタをしがちな自分。笑顔の下に潜んでいる暗い影。あああ。この本を読んでいて、途中苦しくなった。でも、フタをあけるとラクになるんだということもこの本は教えてくれた。