8月10日
「家、家にあらず。次ぐをもて家とす。人、人にあらず。知るをもて人とす。」
車は広い湾に沿って走った。細かく砕けた海面には、重く複雑に膨らんだ雲の隙間より洩れ出た陽光が円い黄金の溜まりを作り、雲の流れにつれて移動してきて、やがて私を包んでしまった。私は眩しさを感じないのに目を細めた。運転席の母はペットの体調について喋り続けている。その風景は何かのようだった。何ものでもない何か。車はコーナーを折れて内陸を目指した。海と言葉は置き去りで。
「家、家にあらず。次ぐをもて家とす。人、人にあらず。知るをもて人とす。」
車は広い湾に沿って走った。細かく砕けた海面には、重く複雑に膨らんだ雲の隙間より洩れ出た陽光が円い黄金の溜まりを作り、雲の流れにつれて移動してきて、やがて私を包んでしまった。私は眩しさを感じないのに目を細めた。運転席の母はペットの体調について喋り続けている。その風景は何かのようだった。何ものでもない何か。車はコーナーを折れて内陸を目指した。海と言葉は置き去りで。