『温室デイズ』。
瀬尾まいこの「温室デイズ」を読み終えた。
彼女の代表作である「卵の緒」や「幸福の食卓」と比べると
若干テーマは重く、ストーリーにも救いは無いが
一方で主人公たちの心の微細な描き方は実に瀬尾さんらしい旨さがある。
教室という閉塞空間でのいじめと登校拒否を当事者の立場から捉え
そこから学校生活の意味、さらには生きることの意味を考えさせてくれる。
曰く、「学校は温室のようなガラス張りの戦場」であるらしい。
こういう問題に目を向けた時「世界は広い」なんてすぐ言う人がいる。
確かに世界は広い。
だけど、人は人生でどれだけの世界を知れると言うのだろうか。
社会に出て色んな人と会ったら?
転勤、転職で日本の中の何県か移り住んだら?
旅行で何ヵ国か行ったら?
学生にとっては、学校と普段の生活が世界の全てだ。
社会人にとっては、会社(仕事)と家庭が世界の全てだ。
世界は広い、世間は広い。確かにそうだ。
しかし実際に人生で経験出来なければ、テレビや本のむこう側と同じ。
家庭環境や境遇に恵まれてない方ほど、知り得る世界は狭いのだ。
私は決して自殺擁護派ではないけれど、
自殺を考えてしまう心境や境遇の方に、
「世界は広い」「生きていればいい事ある」なんて、
自己満足で無責任な言葉は言いたくない。
そんなものは全て無意味だと彼らは既に痛感している。
本当に手を差し伸べるつもりなら、そんな戯言なんかより
具体的に人生の選択肢を増やしてあげるべきなのだ。
みちるや優子はそれぞれの場所でそれぞれの世界を見出した。
これは決して他人事ではない。どこにでもありうる現実なのだ。