忘年会と納会シーズンですので、酔っ払って路上で倒れている人を見かけることが多々あります。

 

関西では良い意味でおせっかいな人が多いせいか、そうした患者(?)に声をかけたり、近くのコンビニエンスストアや飲食店のスタッフに「人が倒れています」という人がたくさんいます。

 

私が東京で10年ほど働いていた時期は、関西と比べるとそういう人は非常に少なかったです。

関東はご近所づきあいなどの人間関係が希薄にならざるをえないことに加え、人があまりに多いためそこまで関心を払えない。

しかし通勤の大変さを除けば、横浜で住んでいたときが一番楽しかったですし、同じ日本人で関西と関東とで大きな気質的差異はさしてないと私は考えています。

 

さて、日本でまずみかけることがないのが、倒れている患者に対して、救命処置をする光景です。

 

119番通報して救急車が出動し、2017年度の路上到着時間の全国平均は8.5分で、大阪市内は7.3分です。

 

ここでポイントになるのは、上記の数字は路上到着時間であって、現場到着時間ではないことです。

救急車の路上到着までが8.5分ですので、患者のいる現場が高層階やマンションのオートロックの先であれば、到着にはさらに時間はかかります

ここ10年間で到着時間は遅くなる一方で、これは消防署が悪いわけではなく、「呼ばなくてよい状況なのにタクシー代わりに呼ぶ悪質な人がたくさん出てきた」ことや、交通渋滞、高層ビルの増加など、様々な要因があります。

 

人間の脳は、3分から5分程度、酸素が運ばれなければ深刻なダメージを受け、死亡するか後遺症が残ります

従って、救急車が到着するまでに、現場にいる人が救命処置をするかどうかで生存率には約2倍の差が出てきます。

 

しかし救命処置として、心肺蘇生法で胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸、AED(電気ショックのこと)の処置ができる日本人がどれだけいるか。

ほとんどいないと思います。

 

胸骨圧迫は、胸骨を5cm程度沈むくらい、一定の圧で一定のリズムで30回行い、10秒以内に気道確保して人工呼吸を行う。

これを繰り返し行うわけです。

 

心臓マッサージの際、胸骨に正しく当てずに圧迫したら、剣状突起が折れますし、肋骨も折れます。

そして、本来なら回復体位をとらせて吐瀉物が喉に入らないように気道確保するべきところを、仰臥位で心肺蘇生法を行ったために、かえって窒息死したというケースもあります。

 

アメリカやカナダなどでは、聖書の「ルカによる福音書」の善きサマリア人の喩えをもとに、「善きサマリア人の法」が施行されています。

善意で行った救援活動が、たとえ失敗してもそれは罪に問われないという法律です。

上記のケースであれば、救命処置を行った者に過失があったとしても、アメリカやカナダでは罪に問われません。

 

では、日本ではどうか?

民事罰、刑事罰ともに問われます。

ただし、目撃者や医師などから、過失はあっても悪意がなかったという証言があれば、罪に問われません。

 

心臓マッサージの際に肋骨が折れて肺にささり、それが死因になったらどうなるか?

横向けで倒れていた人を、仰向けにして心臓マッサージをし、仰向けにしたせいで吐瀉物で窒息死したらどうなるか?

目撃者が誰もいなかったらどうなるか?

 

ただでさえ救命処置の方法を知らないうえ、気質的に内向的な日本人ならこう考えるでしょう。

君子危うきに近寄らず

 

結果的に、正しい処置をすれば助かるはずの多くの命が失われています。

日本人が、もっと救命処置を知ることに加え、法律的にそうしたことを支援する世の中にならない限り、身近な人の命も、道で倒れている人の命も守れない。

悲しい現実です。

 

関西と関東で気質的に大差ないと冒頭で書きましたが、「日本人」という大きなくくりで見た場合、おそらく善きサマリア人の法が施行されても、日本人は救命処置をする一歩を踏み出す勇気が持てないのではないかと私は思います。

 

なお、訴訟社会アメリカではついに、善きサマリア人の法に反し、やはり罰則を問うという法律の施行検討されており、アメリカにおいても救命処置は消えていくのではと私は危惧しています。

 

目の前にいる命を落とそうとしている人に遭遇して、その命を救えないなら、せめて目の前にいない恵まれない人たちを救うような世相になって欲しいと私は思います。

 

国境なき医師団ウォーターエイド日本ユニセフ日本赤十字かものはしプロジェクトUNHCRに、私は月額サポーターとして寄付しています。

一度しかない人生、どうせ生きるのであれば、世の中のために生きたいですし、少しの努力で誰かが笑顔になるのであれば、それは幸福なことだと私は思います。

 

なお、上記のNPOは特定NPOに認定されているため、確定申告すれば上限はあるものの寄付金控除として戻ってきます

(所得に応じて寄付金控除額がいくらなのか、ちゃんと事前に計算する必要があります)

 

寄付金控除されるということはつまり、寄付金控除の手数料2,000円を差し引かれるものの、それ以外は、お金の納め先が政府への税金なのか、NPOへの寄付金なのかという違いでしかありません

 

確定申告は面倒ですが、勇気を出して寄付してみましょう

NPOは確実に、不幸な人たちを救うためだけにお金を使ってくれます。

自分が寄付したお金で、難民や途上国のどれだけ多くの人が救えるかを考えれば、自分が生きる意味も見いだせるというものです。

 

寄付金控除のやり方がわからなければ、メッセージくださいませ。

 

よろしければ、読者登録お願いいたします。

読者登録してね

 

(写真は、リバプールのペニー・レインにある消防署です。ビートルズの歌「ペニー・レイン」で登場する、まさにその場所です)