「オレjは最近、ここの会社で予想しない人並みの幸せを手に入れた、
だからアンタも幸せになりなよ」
それが最後の会話だった。多分、会社を辞めたら二度と会うことはなかったと
思うけれども私はその人が大好きだったし、総務だったからとてもお世話になった。
会社を辞めてそんなにたたない頃、彼は本社の総務に移ったと風の便りに聞き、
大変そうだ、というのも聞いていた。
若い頃、ずっとバイクで日本を旅して回り、不摂生がたたって脳梗塞になって
片足の麻痺の残る彼は、40間近にして結婚して子供が生まれたばかりだった。
ある日、彼は自殺した。
その時の会社の人がまた死んだ。
脳梗塞で40後半だったが、いつもどおり寝て、いつも通りの朝がきたが
彼には来なかった。
弱いところがある人だった、とも思うがあの苦しい時の仕事を一緒にしてきた
仲間だった。
何気なくメールした久しぶりの友人の、父もなくなり、ほかの友人の父も逝った。
なんとなく不穏な年明けだった。
しばらくして距離のある義理の父が風邪で入院すると連絡があり、数日たたない内に
都会の病院へ転院と言われ、それから1週間で意識不明に、2週間後、逝った。
60歳前だった。
北国の葬式はどんよりと重く寒く、遠い道のりだった。
しばらくして父が入院し、退院はしたがなにやらまた再手術のようだ。
続くものは続く。
ある日鼻をたらしていた愛犬の鼻から鮮血が溢れ出た。
血の生臭さとはこういうものか、とそれほどの出血だった。
白血病とリンパの癌だ。
今、弱りゆく犬の側でなすすべもなくぼんやりとしている。
ちょっと疲れた。
見送ることはなかなか疲れることだ。
目の前ですり抜けていく魂に手をかざしても、指の間から
こぼれていく。
北の空の重苦しい雲が、いまだ私の頭の中にあって
初夏の太陽がキラキラしていても私には遠くの国の出来事に思える。
吐き出したい何かがあるけど、その気持ちももやもやと私の周りを
取り囲んで、なんだか繭の中にいるようだ。
その中にいると、とてもとても眠たくなる。
少し、私は今弱まっている。
