学校の先生の勧めもあり、りょうへいは小学2年生頃から言語訓練に通い始めた。




言語訓練を受けるためには、まずリハビリ科の医師の診察が必要とのことだった。




当時のリハビリ科の医師は、どうも自閉症児に言葉を教えること自体、意味がないと思っていらっしゃるようだった。



もう7年も前のことなので、細かいことは覚えていない。
でも、この言葉だけは忘れない。




「ありがとう、という言葉を覚えて言えるようになったとしても、この子が本当に感謝の気持ちを持ってその言葉を使うことはないですから。」





そんなこと、どうして言い切れる?




感謝の気持ちがこもっているように聞こえないかもしれないけど、その子が心の奥で感謝しているかしていないかなんて、誰にも分からないことでは?




感謝の気持ちがこもっていようがいなかろうが、人に何かしてもらった時に、ありがとう、と言えるに越したことはないと思うのです。





もちろん、言語訓練の先生はそんなことはおっしゃらず、丁寧に見てくださいました。



言葉を獲得する年齢を過ぎていると、なかなか難しい、というお話はありましたが。




今では、人に何かをいただいた時とか、何かしてもらった時は、きちんとありがとうと言えるようになりました。