5.回復期  リハビリのコツ OT編

 

手のリハビリについてです。

手を使ったさまざまな日常の動作を、もういちどできるように訓練してくれます。

たとえば服をきるといった基本動作から、洗濯物を干したり、たたんだり、包丁のような刃物で

安全に物が切れるかなど。

 

また、OTの先生のなかには特殊な反復動作をしてくれる方が一人おられて、のちにその動作を調べたところ

促通反復療法(川平法) とわかりました。

川平法 https://www.youtube.com/watch?v=cbVMglLCg1k

 

すべての病院に、この川平法をマスターされているリハビリ担当のかたがおられるかどうかはわかりません。

この方法は、施術者に負担があるらしく、このリハビリの先生も、どうやら関節の痛みをかかえておられたようです。

あたまが下がります。

 

この方法の特徴は、ひたすらくりかえし、同じ動きをするというもので、たとえば指なら5本あるそれぞれに

かなりの回数で曲げたり伸ばしたりをしてくれるのです。

脳卒中患者の特徴に痙縮(けいしゅく)というものがあります。

手を曲げようとする力が勝手に働いてしまって、腕などが自然に曲がってしまうことで、

わたしもこれに一時なやみました。

この先生は「伸ばす時だけ力を入れて」「でも力はいれすぎないで」「軽くでいいです」「曲げる時は力をいれずに」

といった感じで合図の声とともに、指の曲げ伸ばしをしてくれます。

 

ひとりでは難しいし、素人のかたでも、うまくできるかわからないのですが、動作のコツみたいなものは

感じられて、それを自分の訓練に取り入れることは、無駄ではない気はします。

 

なんとなくわたしが意識したのは

・反復で回数をとにかくくりかえす。

・目的の筋肉だけを動かす

で、ほかにその方がされていたのは、「掛け声を刺激に」「指で叩く動作も刺激に」。

 

(体に強い緊張がある患者さんの場合には、川平法がうまく働かないようです。わたしの

リハビリの先生もくりかえし、余分な力は抜いてとおっしゃっていました。その理由につい

ては「目的の筋肉を動かす脳の中の神経の通り道を再構築したいのだけど、筋肉の緊張度の

高い患者さんでは目的以外の筋肉までもが一緒に動いてしまって、その興奮状態が脳に伝わるために、

回復させたい本来の神経の促通に集中することができない。だからうまくいかない」というような説明がたしか

どこかでありました。専門家の先生ではないのでわたし的な解釈で申し訳ないです。)

 

回数については、50回とか100回で1セット。これをこの方の担当のときに、1回につき2~3回くらいしてくれました。

5本すべての指につきです。見ているだけで、めちゃくちゃ大変。

うっかり眠そうになると、「指をしっかり見てください」と注意されます。

これも大事なことのようで、「この指をこのように動かしている」と、しっかり意識するのもポイントのようです。

 

川平法は上体だけに行われているみたいで、PTの訓練ではされませんでした。

あと後日しらべたところ、川平法を体幹に施すと、こちらにも効果が認められるということのようです。

 

川平法以外の訓練では、「新聞紙のしわを伸ばす」であったり、「ぞうきんがけをする」「水の入った容器を

はこぶ」「洗濯バサミを手の中だけで取り出す」であったりといろいろです。

 

わたしは先ほど書いたとおり、痙縮(けいしゅく)の症状になやんでいました。

腕を伸ばそうとしても、スームズには動いてくれずに、ひっかかりを感じながら、まるでぎこちないロボットの

ように腕が伸びて行きます。

これの克服にも、さきほどのコツを取り入れて、病院の食堂テーブルに座り、腕の曲げ伸ばしを

繰り返すのを自主練でおこなったことも、効果があったのかもしれません。

このときに心がけたのは、常に腕の角度をかえること。

これは自宅に帰ってからですが、ねっ転がって空中で自転車こぎの訓練をしてみたとき。

順回転ならわりとできるようになったけれども、それが逆回転になると、驚くほど難しいのです。

つまり順回転が出来ても、逆回転ではまた別の筋肉を酷使したり、動きのコツがいるのだと

思います。ですから、ある動きができたからといって、それに近い別のバージョンの動きも同じように

できるはずだとは過信しないほうがよい。

だから腕の動きも、さまざまな方向に曲げ伸ばしをするのです。

「今日はこの方向に腕を伸ばそう」「この角度のボールを取ろう」という具合に。

それを、理想は1セット50回で3パターンくらいやる。わたしはあきっぽい性格なので、50回もたずに

つい30回を3パターン以上あれこれやってしまいましたが。

 

散髪屋で待っている待合室の時間、車の助手席に乗っている時間でも出来ます。

ひとに見られると恥ずかしいですが、ひたすらやる。

 

いまは痙縮(けいしゅく)を、あまり感じずに腕を伸ばせます。

 

 

・他の訓練。

 

手の中に洗濯バサミを複数個いれて、それを落とさないように手の感覚だけで一個取り出して

タオルに挟む。掴む位置も手の感覚だけでさぐって直す。

 

コインも同様にして手の中に複数個いれて、手の感覚だけで何円硬貨かを当てる。

お手玉を空中で同じように放りなげて、キャッチする。

 

OTの先生は訓練に役立ちそうな様々なアイデアをもっておられるので、

それをメモ帳に書き留めて、自主訓練で使わせてもらいました。

 

手の感覚を鍛えることは、脳への刺激にも大変にいいです。

 

わたしが入っていたリハビリ病院では1日に50分×3回、つまり合計で150分間のリハビリをしてくれました。

ほかの病院のことはわからないです。

しかしこれはある先生もいっておられたが、自由時間に自主訓練もすることをお勧めしたい。

もちろん体力的な問題もあるし、眠ってからだを回復することも重要であり、事情は人それぞれだと思うので、

わたしがわからないような仕方がない部分はそれぞれにあるでしょうけれども。できればです。

もし回復期が数カ月と決まっているなら、その期間は全部回復してやるぞという気持ちで。

 

 

(※さきほどとは別の先生は、回復期がすぎても回復はつづきますよとはおっしゃってくれました。

そしてわたしも自分の体でそのことを実感しています。ただめざましい回復は、早い時期ほど

より感じるのもたしかです。ちょうど回復力をグラフで表すと、高かったカーブがだんだんとゆるやかに

なっていく感じ。ただし。さいしょは極端な無理は禁物です。けがも初期はとくに発生しやすい。

なぜかというと、筋肉も骨も使わない間にもろくなっているからです。わたしの先生は

むしろこの怪我のほうを心配していたことも付け加えておきます。骨折や筋肉痛になってしてしまうと

その間の回復が遅れてもともこもないのだそうです。わたしは注意して動かしたい派なので、慎重派の

先生とは意見が割れるので、矛盾したことを書いていると思いますが。)

 

 

洗濯バサミはたしかに効果を感じました。

入院中にある朝起きると、まるで手袋が脱げたような感覚におそわれて「おっ」と思いました。

それまではいつも手袋をしているような、もどかしい感覚だったのです。

ピンをつまむようなテストでも、うまくいかずによく取り落していましたが、

だんだんとうまくなっていくのがわかります。

 

わたしはパソコンを使うことが多いのですが、現在はキーボードを一応使えます。

ブラインドタッチはもともとできなくて、発症前から遅いのは遅いですが。

 

つづきます。