減らせる人手、減らせない人手。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

戦車というものがあります。

戦争に使う道具です。

敵の攻撃に耐えるため、ものすごく丈夫です。

だから、すごく重たいです。

今の戦車は、おおよそ50トンあります。

50トンというと、たとえば、大型の観光バスが、全員乗った状態で約15トンだそうですから、大型観光バス3台分。

ぜんぜんイメージ伝わらないね。

 

ま、いいわ。

で、この戦車。なにが弱点って、人。

人が死んじゃったら動かない。

また、戦車を操作できる人を育てるのも大変。

重労働なのは、重たい砲弾を装填する人。大砲がどんどん大きくなってきたから、

とっても大変な仕事になってしまいました。

ということで、解決策は、「人減らし」です。

昔は、だいたい5人乗っていました。

車長、装填手、砲手、操縦手、無線及び機銃手。

真っ先に、無線手がいなくなります。無線の操作が簡単になったから。

次に、装填手がいなくなります。

ということで、最近は、3人乗りがふえています。

しかし、アメリカは4人乗っています。

その理由は、3人では手が足りないから。

 

たとえば、日々の整備作業でも、戦車の部品はものすごく重たいから大変です。

戦場で履帯(キャタピラというのは商標です)が切れたとき、

それを交換する作業は、3人だと重労働どころではないそうです。

おまけに、戦時であれば、まわりを警戒する人も必要です。

だから、簡単には人を減らすことができないのだそうです。

戦争してる国の意見なのだと思います。

 

で、なんの話かというと、

いま、東京で、電車の無人運転の実験がスタートしたとか。

たしかに、現在すでに無人で運行している電車っぽいものはけっこうあります。

電車が無人になったら、ものすごい人件費が削減できます。

でも、心配なこともあります。

僕は先日まで、事故の鉄道史という本を読んでいました。

事故が起きたときの、乗客の誘導の不手際から、大勢が亡くなって事故もありました。

平常の運転では、無人でも全く問題ないと思いますが、

いざ、事故の時、乗客の誘導をする人が足りないのは危険な気がします。

 

いやいや、そもそも無人化で、事故が減るから。

いやいや、すでに現段階で、事故の際の誘導の人手は足りていないから。

という考え方もあるかと思いますが・・・。

 

以前、新幹線の運転席に乗せてもらったことがあります。

そりゃもう、興奮しました。わくわくしました。

しかし、そこにあったのは、電車でGOそのものの操縦装置です。

飛行機のようなメーターもスイッチもありません。

なんでも、速度が速すぎて、人間が反応しても追いつかないとか・・・。

同じ事はリニアの開発の時も言われていました。

たしかに、時速500キロで、目視で前方に障害を発見しても、

所詮は、目視で見える距離なんてたかがしれてますから、

まにあわないわね。

ということで、自動化は進むんだろうなあ・・・。

 

僕は、いろんな事故を調べるのが好きです。

だから、飛行機の素敵なキャビンアテンダントの人達が、

本当は、事故の際の素早い乗客誘導のために乗ってることを知っています。

彼女たちは、命をかけて乗客を守る訓練を受けています。

だから僕は、いつも、「ありがたい」と思いながら乗っています。

 

人手不足の日本では、今後も、無人化技術はとても重要です。

でも、無人化をすることの意味を、しっかり考える必要があると思います。

 

まあ、電車の無人化のためには、駆け込み乗車を無くするとか、
尋常ではないラッシュを緩和するとかの索が必要でしょうね・・・
って、無人化したら、もっと細かいピッチで電車を走らせられるから、
駆け込み乗車も、ラッシュも緩和されるはず?
おお。そうか。わるくないね。
でも、電車の運転手になる、という夢が消えてしまうねえ・・・。
ちょっと寂しいかな。