アメリカンドリームを実現できないある人 | 裸のニューヨーク

裸のニューヨーク

ユー・ドント・ノウ・ニューヨーク・ザ・ウェイ・アイ・ドゥ...これは私のアンビバレントでパーソナルなニューヨーク・ストーリー。

寿司職人の知り合いがいる。


大体年に一度のペースでニューヨークを訪れる寿司好きの私がここ数年間、ニューヨークの寿司事情を話しているうちに、現在の職場であと何十年働こうと店が持てるわけではないと、不安と不満を抱えている彼の

中に海外で働きたいという気持ちが芽生えたようだ。彼をたきつけたようで心苦しい面もある。


オランダで寿司職人を募集しているのを知って、パソコンのない彼のために連絡を取ったりしたが、結局「日本での面接や説明はなし」「ビザは(スポンサーシップはありだが)自力で取る」「現地までの航空運賃は自費」「寮はない」など、条件が(彼に取っては)厳しいので成立しなかった。


その時に気になったのは彼の受身の態度だった。自分から積極的に質問したり、勉強したりという事が全くない。


実は私は昨年の暮れにNYに寿司ブームの取材で訪れている。その時に彼の事が頭にあったのでブルックリンの「ブルーリボン」で寿司職人募集について聞いてみたりもしている。911以来、ビザ発給は確かに厳しくなってはいるものの、日本で20年近く修行した職人なら働き口はいくらでもある、という事だった。


取材で知り合った業界の人たちもいるし、私の長年のNYの知り合いはロング・アイランドのいい寿司屋を紹介してもいい、とまで言ってくれているのだ。


が、私には彼を積極的に紹介できない理由がある。


どっちかと言えばお節介な私は、今まで人に強く頼まれた訳でもないのに世話を焼き、感謝されるどころか

迷惑がられた経験がある。だから、先方から頼まれたのでない限り、仲介の労は取るべきではない、という結論に達しているのだ。


彼が私のボーイフレンドならもっと積極的になる事は確かだが、彼は知り合い以上ではない。彼に関する不安もある。


英語が全く話せない上、努力も何もしていない。貯金もしていない。給料の大半は飲み代に消えている様子である

異文化の中で暮らせずホームシックですぐに帰国してしまうリスクもないとは言えない

NYに行くには現在の職場を辞めなければいけない。後戻りは出来ない。つまり彼の将来がかかっている訳で、そういう重大な責任を私は取りたくない


もし彼が


「英語、教えてください!」

「NYに連れて行ってください、そして知っている寿司屋を一緒に回ってください、お願いします!」


と言えば、私は助力するつもりはある。


彼の決断一つで彼の人生は180度転回するのだ。が、彼は今も朝から晩まで働きづめで有給もボーナスもない。狭い風呂なしの寮に住んであたら人生の一番いい時間を浪費している。


夢が手の届くところにあるというのに。