CL500とは直接関係のないエントリです。
 
20世紀末の狂乱レーサレプリカブームのころ、バイク雑誌業界ではバイクを曲がらせる方法についていくつかの主張がなされていました。
僕のあやしい記憶ですが、その主張にはおもに3つの流派があったように思います。
これっていま考えるとこういうことなんじゃないかな、という邪推妄想がこのエントリの主題です。
 
3つの流派というか乗り方論を展開しておられたのは、根本健さんと福田照男さんと和歌山利宏さんでした。
それぞれの乗り方を個人的印象から雑に書くとこんな感じです。
 
  • 根本健さん
    いわゆる「リヤステア」。リアタイアの接地点を軸にバイクをコーナのイン側に滑り込ませ、ハンドルへの入力は絶対やらない。そのあとはリアタイアだけで加速旋回する感覚。
     
  • 福田照男さん
    ビデオソフト「アメリカンスーパーライディング」で展開された。コーナイン側のハンドルを押してバイクを寝かし込んで旋回を始め、エンジンの力ずくで立ち上がる。
     
  • 和歌山利宏さん
    ステップワークでバイクを蹴り、反動でコーナイン側に飛び込む。旋回中は前輪のトラクションを有効活用する。
 
僕は、物理的にすっきりした考え方の和歌山さんの説が好きでした。当時はいちばん解りにくい乗り方だと言われていましたけど。
あれから30年が過ぎて、いまなら3つの乗り方をそれぞれ別々に実演できそうです。
そのうえでこの10年近く実践している乗り方は、根本さんの「リヤステア」に近いと思います。
 
で、カワサキのNinja250R/300/400と乗り継いでバイクの運転というものをあれこれ実験し、人生でやっと3台めのホンダのバイクに乗り換えて思うのは、お三方の主張が「ふだん乗ってるバイクに最適化した乗り方なだけだったんじゃないの?」ということです。
 
根本さんは70年代にはじめて欧州ロードレース選手権に参戦したときにドゥカティ750SSに乗って目からウロコが落ちる体験をされたそうです。
ドゥカティ、とくにむかしのは前が軽くてスイングアームが短くて、リアタイアのトラクションを徹底重視するとものすごくよく走ります。
 
ホンダのバイクは伝統的に前が重くハンドル操作で曲がる傾向です。リア主体っぽく見えるCL500でさえもそうで、初期旋回は鈍いものの余裕のあるエンジン出力で強引に立ち上がる印象です。
80年代にホンダワークスでロードレースに参戦しておられた福田さんには、だから逆操舵がいちばんしっくり来たんじゃないでしょうか。
 
和歌山さんはもとヤマハのテストライダーです。
すなおなハンドリングで高い走行ラインの自由度のあるヤマハ機で無理なくすばやく旋回状態を作るには、積極的にステップワークと前後左右の荷重バランス制御をおこなうのが有効です。
 
まあいまとなっては、バイクの運転なんてまじめにフツーに一生懸命に時間をかけて乗っていればなんだって似たようなところに着地すると思っています。当時はおおまじめにくよくよしていましたが。
 
でもやっぱり逆操舵依存の初期旋回操作はなっとくいかないなあ。
世界標準だと声高に叫ぶ人がぼちぼちいるけど、初期旋回が鈍くなってしまい全開進入に無駄な手間が増えるんですよね。