中国を敵に回さないアメリカ=佐藤健志
中国を敵に回さないアメリカ=佐藤健志
2016年6月30日 ニュース
記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年6月22日号より
※本記事の本文見出しはMONEY VOICE編集部によるものです
現実の世界でも、アメリカは中国を敵に回さないかもしれない
じつは私、ゲームはほとんどやりません。
十年以上前、『I HAVE NO MOUTH, AND I MUST SCREAM』(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)というSF系のゲームを、ちょっとやってみたことがあるくらいです。
しかるに最近、ブログ(http://kenjisato1966.com)の読者より、あるゲームについて教えられました。
題名は『HOMEFRONT』(ホームフロント)。
日本語に訳せば「国内戦線」です。
2011年に発売された、近未来ものの戦記FPSゲームとか。
FPSは「ファーストパーソン・シューティング」、ないし「ファーストパーソン・シューター」の略。
ゲーム内の主人公の視点が、そのままゲームをプレイする人間の視点になる形で、戦闘や格闘を繰り広げるものを指します。
一人称で展開されるから、「ファーストパーソン」というわけですね。
さほど高い評価は得られなかったという話ですが、今年5月には続編『HOMEFRONT:THE
REVOLUTION』(国内戦線:革命)が発売されましたので、けっこう人気があるのでしょう。
公式サイトはこちらをどうぞ。
http://www.spike-chunsoft.co.jp/hfr/
さて。
『ホームフロント』で注目されるのは、シナリオをジョン・ミリアスが担当していること。
映画監督・脚本家として知られた人物です。
主な監督作品は『風とライオン』『ビッグ・ウェンズデー』『コナン・ザ・グレート』『若き勇者たち』など。
フランシス・コッポラ監督のベトナム戦争映画『地獄の黙示録』の脚本も、コッポラと共同で手がけました。
『地獄の黙示録』は撮影が難航したことでも有名ですが、コッポラはあるとき、ミリアスにたいして「未完成のままオレが死んじまったら、代わりに完成させてくれ」という旨を告げたとのこと。
信頼されていたんですね。
反共主義者との定評もあり、タカ派と言われています。
で、そのミリアスによる『ホームフロント』の物語ですが。
基本の筋立ては以下の通り。
2013年、金正恩が朝鮮半島統一に成功し、「大朝鮮連邦」(GREATER KOREAN
REPUBLIC, 略称GKR)を樹立する。
この功績で金正恩は、なんとノーベル平和賞を受賞。
これを受けてアメリカは、2014年に朝鮮半島から軍を撤収させます。
さらに自国の経済が悪化したせいもあって、2016年には日本を含めたアジア全域から軍を引き揚げました。
邪魔者がいなくなった大朝鮮連邦は、核テロの脅しをかけることで、2018年に日本を属領化。
2020年代初頭になると、アジアの多くの国を支配下に置くにいたります。
他方、アメリカは経済危機やら、新種の疫病の流行などで衰退一途。
そして2025年、大朝鮮連邦はアメリカに電磁パルス攻撃を実施したうえで、自国の「朝鮮人民軍」(KOREAN PEOPLE’S ARMY, 略称KPA)を侵攻させる!
アメリカの西半分は占領されたものの、自由を求める人々はレジスタンスとなって立ち上がった・・・
プレイヤーはレジスタンスの一員となって、KPAこと朝鮮人民軍と戦うわけです。
ここからすぐに連想されるのは、ミリアスが1984年に監督した映画『若き勇者たち』。
この映画、原題は『RED DAWN』(赤い夜明け)と言います。
ソ連(現ロシア)に占領されたアメリカで、若者たちがレジスタンスに立ち上がる話。
400万ドルの製作費にたいし、北米だけで3800万ドルの興行収入を挙げるヒットになりました。
いわば『ホームフロント』、21世紀版『若き勇者たち』とも評すべき作品なのですが・・・
何か気づかれた点はないでしょうか?
そうです。
ミリアスはなぜ、敵勢力を中国にしなかったのでしょう。
大朝鮮連邦が本当に誕生し、アジアに覇権を確立しようとしたら、中国が放置しておくとは信じがたい。
しかも大朝鮮連邦、日本を属領化する前に、特殊部隊を使って中国の原子力施設を破壊したことになっている!
だったら同国との全面衝突は、いよいよ不可避だと思うのですが。
調べてみたら、面白い経緯が分かりました。
『ホームフロント』の敵勢力は、当初、中国に設定されていたのです。
それが諸般の事情で、大朝鮮連邦に変更されたとのこと。
制作会社の重役ダニー・ビルソンは、変更理由を以下のように語ったと報じられます。
Next: なぜアメリカは中国を敵に回したくないのか?
1)中国とアメリカは友好的な間柄である。アメリカ人が買う物は、何から何まで中国でつくられている。だから中国を敵勢力にしても、あまり怖さが感じられない。
2)中国を敵勢力にしたまま発売すると、制作会社の重役たちは全員、ずっと同国に入国できなくなる恐れがあると忠告された。
http://news.livedoor.com/article/detail/5271520/
二つの説明は、どうも矛盾している気がするのですが、それは脇に置きましょう。
『ホームフロント』の筋立ては、「中国は敵に回さない」という判断の産物だったのです。
ところがお立ち会い。
『若き勇者たち』は2012年、映画でもリメイク版がつくられました。
監督はミリアスから、ダン・ブラッドリーに交代。
2013年には『レッド・ドーン』という題名で、日本でも公開されています。
で、今度はどの国がアメリカを占領するかというと・・・
やはり、当初は中国だったんですね。
「アメリカ政府が財政破綻に陥ったせいで、債権を保持していた中国が施政権を獲得する」という設定になっていたそうです。
けれども仕上げの段階になって、またもや北朝鮮に変更されることに。
財政破綻をめぐるくだりも、キレイに消えてしまいました。
http://www.vulture.com/2011/12/red-dawn-china-invades-america-because-of-debt.html#
こちらでも、「中国は敵に回さない」という判断がなされたわけです。
ただし400万ドルの予算で、3800万ドルの北米興収を稼ぎ出したオリジナル版とは対照的に、『レッド・ドーン』は6500万ドルの予算をかけたにもかかわらず、世界全体で4800万ドルの興収しか挙げられない結果となりました。
それはともかく。
ご存知のとおり、本年6月16日には、上海でディズニーランドがオープンしています。
片や6月9日には、尖閣諸島周辺の接続水域に中国海軍のフリゲート艦が進入。
6月15日には、やはり中国海軍の情報収集艦が、鹿児島県沖の領海を侵犯しました。
アメリカの反応は抑制的と伝えられます。
『ホームフロント』や『レッド・ドーン』のたどった経緯を踏まえるとき、なかなか意味深長ではないでしょうか?
現実の世界でも、アメリカは中国を敵に回さないかも知れませんよ。
ではでは♪
【関連】「悔しさ」を感じない戦後日本=施光恒・九州大学准教授
【関連】安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明
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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/6/22号より
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太郎(國際大学・筑波大学名誉教授)、佐藤健志(作家・評論家)、島倉原(評論家)、上島嘉郎(ジャーナリスト/元「正論」編集長)などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り! 日本と世界の「今」と
「裏」を知り、明日をつかむスーパー日刊経済新聞!
http://www.mag2.com/p/money/16448
2016.03.25
高速鉄道建設の受注をめぐり、中国の札束外交に屈し土壇場で日本を蹴って中国案を選択したインドネシア。ところが中国はそんな「お客さま」のはずのインドネシアの巡視船に公船で体当たりするなど、相変わらず理解に苦しむ蛮行に出ています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、このような中国の行動を「札びらで頬を叩きながら相手国の領土を侵略するという中国古来のやり口」とした上で、日本も拿捕した中国漁船の爆破や撃沈くらいはすべきではないかと主張しています。
【中国】爆発するインドネシアの中国不信
● 違法操業の中国漁船を曳航中、中国公船が体当たりで奪取 インドネシア抗議
インドネシアは元来、南シナ海において中国とは島嶼の領有権問題がないため、この問題については中立的立場ですが、一方で、中国は「九段線」という南シナ海のほぼ全域を覆う9つの破線の内側を中国の管轄権が及ぶ範囲としており、その一部がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と重なっており、これまでインドネシアはこのEEZ内での中国漁船による不法操業に悩まされていました。
3月19日、このEEZ内で違法操業をしていた中国漁船をインドネシア水産省の監視船が拿捕し、捜査のために自国領海へと曳航していましたが、これに対し、20日未明に中国の監視船から体当たりを受け、さらにもう1隻の中国公船によって漁船を奪い取られたという事件が起こりました。
インドネシア側は中国に抗議するとともに漁船の引き渡しを求めましたが、在インドネシアの中国大使館は、現場は中国の伝統的な漁場であり、「操業中に武装したインドネシア船に追い回された」と、まるで自分たちが被害者であるかのようなコメントです。
中国の密漁船はインドネシアの漁船に比べて大型で、しかも沖合の底引き網漁によって魚を根こそぎさらっていってしまうために、ここ2年ほどでインドネシア漁民の漁獲量は激減し、収入はかつての6分の1にまで減ってしまったという話もあるほどです。
● インドネシア 高まる中国への警戒感
中国側は自国管轄領域だと主張する根拠となっている「九段線」ですが、これはもともと大陸にいた中華民国が1947年に引いた「十一段線」が下敷きになっています。その後、国共内戦によって中華民国は台湾へと逃れ、新たに大陸で成立した中華人民共和国は、1953年にこの「十一段線」の一部を変更して、「九段線」へと書き直しました。
そして近年、漁場や石油、天然ガスなどの資源や、南シナ海の島嶼の領有権問題をめぐって、中国の同地域への侵略姿勢が強まり、ベトナムやフィリピンといった周辺国との紛争が拡大してきていることは周知の事実です。
次ページ>>海賊行為を行う中国漁船と、裏社会から給料をもらう公船乗組員
中国側はこの九段線より南にあるナトゥナ諸島についてはインドネシア領であることを認めているため、インドネシア政府も南シナ海問題については比較的中立的な態度ではありましたが、しかしここ数年でその周辺海域であるEEZへの中国漁船の不法操業が頻繁に起こっていることで、業を煮やしている状況です。
また中国漁船はじっさいには漁船ではなく、中国の公安船と手を組んで、もっぱらインドネシアの漁船を待ち伏せして、包囲しながら魚を略奪するといった、海賊行為も頻繁に行っているようです。中国漁船の船主にはチャイナ・マフィアが多く、中国の海上公安船のメンバーは、マフィアから給料を貰っている者も多いといいます。「十警九黒」(10人の警官のうち9人がマフィアとつながっている)という言葉もあるくらいです。
昨年の5月には、インドネシア当局は拿捕した中国漁船を見せしめのために海上で爆破していますし、9月にはインドネシア海軍が中国漁船に向かって砲撃、これにより中国人船員1人が死亡しています。
● 中国不法漁船を爆破 インドネシアが拿捕して海上で 「弱腰」から「見せしめ」に
● 中国漁船を砲撃、船員1人死亡 インドネシア海軍
インドネシア側が、このように強硬手段に訴えてきたなかでの、今回の中国公船による体当たりと漁船奪取です。
さらにこうした水産資源の乱獲のみならず、中国は東ナトゥナのガス田までも狙っているとされています。このガス田はナトゥナ諸島の200海里のEEZ内に位置しており、57兆立方フィートのガス埋蔵量があると見られています。
●【社説】インドネシアによる中国への挑戦
インドネシアは、中国の侵略行為が続けば、かつてフィリピンが南シナ海での仲裁手続をオランダのハーグの仲裁裁判所に申請したように、国際司法機関に訴えるとしていますが、もしそうなれば、中国が猛反発することは明らかでしょう。これは南シナ海問題がインドネシアにも拡大することを意味します。
次ページ>>インドネシアの根深い反中感情、かつては華僑商店襲撃も
そもそも南洋の国々のなかで、インドシナ半島の南越と海のインドネシアはもっとも代表的な反華国家です。東南アジアの国々の独立・解放運動は、西洋人に対して行われたというよりも、西欧列強による植民地支配の番頭役だった華人、華僑に対して行われたという性格が強かったのです。だからインドネシアの独立運動は、反オランダよりも反華僑からスタートしています。そのため南シナ海問題では中立的な立場で静観していたものの、自国に被害が及ぶとなると、反華感情に火がつきやすいのです。
インドネシアは独立建国後、激越な反華、排華運動を行い、国民が華僑商店を襲撃するだけでなく、漢字の書籍の国内持ち込みまで禁止していました。私の大学時代の学友はインドネシアで工場を経営していましたが、日本の書籍を持ち込もうとして、よく税関と一悶着を起こしていました。日本語に漢字が入っているので、若い税関員には区別がつかず、トラブルが多かったのです。
台湾漁船もインドネシア海域に近づく際、「中国船ではない」と大げさにアピールするようにしています。そうしないと、中国船だと思われて、インドネシア海上警備船に連行されてしまうからです。
インドネシア海域でのインドネシアと中国との衝突は歴史が古く、民族の対立でもあります。古代の南洋の海はマレー・ポリネシア人の海でした。その後、支那海賊船が出没するようになりましたが、フランキ人(ポルトガルをはじめとする西洋人)がこの海域に乗り出して支那海賊船を退治するようになり、そして明の時代から「マカオ」(澳門)という中継貿易地を得ることとなりました。
こうした海域の歴史を知ることも、現在のインドネシアと中国とのトラブルの根源を知ることに繋がります。
それはさておき、中国の態度に不信感を募らせたのか、日本から中国が奪った高速鉄道事業について、インドネシア政府は地震対策を強化するように要請、改善がなければ認可しない姿勢を見せ、さらには計画が頓挫してもインドネシア政府による救済はないことを求めています。
● 中国の合弁会社側に「改善なければ認可せず」耐震強化を要求 インドネシア政府
さらに全長142キロについて、現在までで建設認可が下りたのはたったの5キロまでで、残りは上記のような地震対策が求められている状況ですし、用地買収のめども立っていないということです。これで本当に2019年に完工できるのでしょうか。
● 中国ようやく5キロ区間だけ建設許可 受注のインドネシア高速鉄道 残る区間なお買収めど立たず
次ページ>>日本も見習いたい、アルゼンチンの中国船砲撃
片や札びらで頬を叩きながら、片や相手国の領土を侵略する、というのが中国のこれまでのやり方で、フィリピンもベトナムもこれに反発して米国や日本との関係強化へとつながりました。こうしたやり方は相手の警戒心と敵愾心を高めるだけなのに、「中国の夢」を掲げる習近平政権は、常に同じ手法を繰り返しています。
もちろん、これらは習近平を外交的に追い詰めるため、政敵が仕掛けているという話もあります。どこまでは真実かわかりませんが、内的矛盾を外的矛盾にすり替えるのは中国の伝統的手法ですから、その可能性もあるでしょう。いずれにしても迷惑なのは周辺国です。
また、中国の不法漁船がやっかいなのは、2014年、日本の小笠原諸島と伊豆諸島周辺のEEZに赤珊瑚を密漁する大量の中国漁船団が現れたときもそうですが、本当に単なる密漁だけなのか、あるいは日本周辺の海域調査なのか、非常に不気味な存在だということです。
中国政府が勝手に領海を設定し、やがてそこで中国漁船が違法操業を行い周辺国との衝突を発生させ、中国政府や中国軍が漁民保護を目的に乗り出してその地域を実効支配する、というのが中国のこれまでのやり方だからです。
中国政府ははるか2,000年も前の漢の時代から南陽海域を管理してきたと主張していますが、それはすべてウソです。宋の時代の華夷図には、台湾の存在さえ書かれていませんでした。マレー人の後に南洋の海で活躍していたのはイスラム船でした。
フビライ・ハーンの南洋遠征も、日本遠征と同様に失敗しています。19世紀に至るまで、清の版図は島嶼ではせいぜい海南島までだったというのが歴史の真実であり、前述したように、そのころは西洋人が支配する海だったのです。
今年の3月15日には、遠くアルゼンチン沖のEEZにも出没し、摘発しようとしたアルゼンチンの沿岸警備隊の巡視船に衝突しようとしてきたため、砲撃されて沈没するという事件まで起きています。
● アルゼンチン沿岸警備隊が中国漁船を撃沈 違法操業で「警告無視」
このように中国に対しては、アルゼンチンやインドネシアすら、毅然とした態度を示しています。中国の強盗の論理は世界では通用しないことの表れです。尖閣周辺の日本領海での中国漁船による違法操業が急増しているようですが、「友好」を気にして断固とした態度に出ないのは愚の骨頂であり、日本も見せしめのために拿捕した漁船の爆破や撃沈くらいはすべきでしょう。事件が相次いでいる現在、国際社会の理解は得られるはずです。
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
http://www.mag2.com/p/news/161412
2016年6月30日 ニュース
記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年6月22日号より
※本記事の本文見出しはMONEY VOICE編集部によるものです
現実の世界でも、アメリカは中国を敵に回さないかもしれない
じつは私、ゲームはほとんどやりません。
十年以上前、『I HAVE NO MOUTH, AND I MUST SCREAM』(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)というSF系のゲームを、ちょっとやってみたことがあるくらいです。
しかるに最近、ブログ(http://kenjisato1966.com)の読者より、あるゲームについて教えられました。
題名は『HOMEFRONT』(ホームフロント)。
日本語に訳せば「国内戦線」です。
2011年に発売された、近未来ものの戦記FPSゲームとか。
FPSは「ファーストパーソン・シューティング」、ないし「ファーストパーソン・シューター」の略。
ゲーム内の主人公の視点が、そのままゲームをプレイする人間の視点になる形で、戦闘や格闘を繰り広げるものを指します。
一人称で展開されるから、「ファーストパーソン」というわけですね。
さほど高い評価は得られなかったという話ですが、今年5月には続編『HOMEFRONT:THE
REVOLUTION』(国内戦線:革命)が発売されましたので、けっこう人気があるのでしょう。
公式サイトはこちらをどうぞ。
http://www.spike-chunsoft.co.jp/hfr/
さて。
『ホームフロント』で注目されるのは、シナリオをジョン・ミリアスが担当していること。
映画監督・脚本家として知られた人物です。
主な監督作品は『風とライオン』『ビッグ・ウェンズデー』『コナン・ザ・グレート』『若き勇者たち』など。
フランシス・コッポラ監督のベトナム戦争映画『地獄の黙示録』の脚本も、コッポラと共同で手がけました。
『地獄の黙示録』は撮影が難航したことでも有名ですが、コッポラはあるとき、ミリアスにたいして「未完成のままオレが死んじまったら、代わりに完成させてくれ」という旨を告げたとのこと。
信頼されていたんですね。
反共主義者との定評もあり、タカ派と言われています。
で、そのミリアスによる『ホームフロント』の物語ですが。
基本の筋立ては以下の通り。
2013年、金正恩が朝鮮半島統一に成功し、「大朝鮮連邦」(GREATER KOREAN
REPUBLIC, 略称GKR)を樹立する。
この功績で金正恩は、なんとノーベル平和賞を受賞。
これを受けてアメリカは、2014年に朝鮮半島から軍を撤収させます。
さらに自国の経済が悪化したせいもあって、2016年には日本を含めたアジア全域から軍を引き揚げました。
邪魔者がいなくなった大朝鮮連邦は、核テロの脅しをかけることで、2018年に日本を属領化。
2020年代初頭になると、アジアの多くの国を支配下に置くにいたります。
他方、アメリカは経済危機やら、新種の疫病の流行などで衰退一途。
そして2025年、大朝鮮連邦はアメリカに電磁パルス攻撃を実施したうえで、自国の「朝鮮人民軍」(KOREAN PEOPLE’S ARMY, 略称KPA)を侵攻させる!
アメリカの西半分は占領されたものの、自由を求める人々はレジスタンスとなって立ち上がった・・・
プレイヤーはレジスタンスの一員となって、KPAこと朝鮮人民軍と戦うわけです。
ここからすぐに連想されるのは、ミリアスが1984年に監督した映画『若き勇者たち』。
この映画、原題は『RED DAWN』(赤い夜明け)と言います。
ソ連(現ロシア)に占領されたアメリカで、若者たちがレジスタンスに立ち上がる話。
400万ドルの製作費にたいし、北米だけで3800万ドルの興行収入を挙げるヒットになりました。
いわば『ホームフロント』、21世紀版『若き勇者たち』とも評すべき作品なのですが・・・
何か気づかれた点はないでしょうか?
そうです。
ミリアスはなぜ、敵勢力を中国にしなかったのでしょう。
大朝鮮連邦が本当に誕生し、アジアに覇権を確立しようとしたら、中国が放置しておくとは信じがたい。
しかも大朝鮮連邦、日本を属領化する前に、特殊部隊を使って中国の原子力施設を破壊したことになっている!
だったら同国との全面衝突は、いよいよ不可避だと思うのですが。
調べてみたら、面白い経緯が分かりました。
『ホームフロント』の敵勢力は、当初、中国に設定されていたのです。
それが諸般の事情で、大朝鮮連邦に変更されたとのこと。
制作会社の重役ダニー・ビルソンは、変更理由を以下のように語ったと報じられます。
Next: なぜアメリカは中国を敵に回したくないのか?
1)中国とアメリカは友好的な間柄である。アメリカ人が買う物は、何から何まで中国でつくられている。だから中国を敵勢力にしても、あまり怖さが感じられない。
2)中国を敵勢力にしたまま発売すると、制作会社の重役たちは全員、ずっと同国に入国できなくなる恐れがあると忠告された。
http://news.livedoor.com/article/detail/5271520/
二つの説明は、どうも矛盾している気がするのですが、それは脇に置きましょう。
『ホームフロント』の筋立ては、「中国は敵に回さない」という判断の産物だったのです。
ところがお立ち会い。
『若き勇者たち』は2012年、映画でもリメイク版がつくられました。
監督はミリアスから、ダン・ブラッドリーに交代。
2013年には『レッド・ドーン』という題名で、日本でも公開されています。
で、今度はどの国がアメリカを占領するかというと・・・
やはり、当初は中国だったんですね。
「アメリカ政府が財政破綻に陥ったせいで、債権を保持していた中国が施政権を獲得する」という設定になっていたそうです。
けれども仕上げの段階になって、またもや北朝鮮に変更されることに。
財政破綻をめぐるくだりも、キレイに消えてしまいました。
http://www.vulture.com/2011/12/red-dawn-china-invades-america-because-of-debt.html#
こちらでも、「中国は敵に回さない」という判断がなされたわけです。
ただし400万ドルの予算で、3800万ドルの北米興収を稼ぎ出したオリジナル版とは対照的に、『レッド・ドーン』は6500万ドルの予算をかけたにもかかわらず、世界全体で4800万ドルの興収しか挙げられない結果となりました。
それはともかく。
ご存知のとおり、本年6月16日には、上海でディズニーランドがオープンしています。
片や6月9日には、尖閣諸島周辺の接続水域に中国海軍のフリゲート艦が進入。
6月15日には、やはり中国海軍の情報収集艦が、鹿児島県沖の領海を侵犯しました。
アメリカの反応は抑制的と伝えられます。
『ホームフロント』や『レッド・ドーン』のたどった経緯を踏まえるとき、なかなか意味深長ではないでしょうか?
現実の世界でも、アメリカは中国を敵に回さないかも知れませんよ。
ではでは♪
【関連】「悔しさ」を感じない戦後日本=施光恒・九州大学准教授
【関連】安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明
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太郎(國際大学・筑波大学名誉教授)、佐藤健志(作家・評論家)、島倉原(評論家)、上島嘉郎(ジャーナリスト/元「正論」編集長)などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り! 日本と世界の「今」と
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http://www.mag2.com/p/money/16448
2016.03.25
高速鉄道建設の受注をめぐり、中国の札束外交に屈し土壇場で日本を蹴って中国案を選択したインドネシア。ところが中国はそんな「お客さま」のはずのインドネシアの巡視船に公船で体当たりするなど、相変わらず理解に苦しむ蛮行に出ています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、このような中国の行動を「札びらで頬を叩きながら相手国の領土を侵略するという中国古来のやり口」とした上で、日本も拿捕した中国漁船の爆破や撃沈くらいはすべきではないかと主張しています。
【中国】爆発するインドネシアの中国不信
● 違法操業の中国漁船を曳航中、中国公船が体当たりで奪取 インドネシア抗議
インドネシアは元来、南シナ海において中国とは島嶼の領有権問題がないため、この問題については中立的立場ですが、一方で、中国は「九段線」という南シナ海のほぼ全域を覆う9つの破線の内側を中国の管轄権が及ぶ範囲としており、その一部がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と重なっており、これまでインドネシアはこのEEZ内での中国漁船による不法操業に悩まされていました。
3月19日、このEEZ内で違法操業をしていた中国漁船をインドネシア水産省の監視船が拿捕し、捜査のために自国領海へと曳航していましたが、これに対し、20日未明に中国の監視船から体当たりを受け、さらにもう1隻の中国公船によって漁船を奪い取られたという事件が起こりました。
インドネシア側は中国に抗議するとともに漁船の引き渡しを求めましたが、在インドネシアの中国大使館は、現場は中国の伝統的な漁場であり、「操業中に武装したインドネシア船に追い回された」と、まるで自分たちが被害者であるかのようなコメントです。
中国の密漁船はインドネシアの漁船に比べて大型で、しかも沖合の底引き網漁によって魚を根こそぎさらっていってしまうために、ここ2年ほどでインドネシア漁民の漁獲量は激減し、収入はかつての6分の1にまで減ってしまったという話もあるほどです。
● インドネシア 高まる中国への警戒感
中国側は自国管轄領域だと主張する根拠となっている「九段線」ですが、これはもともと大陸にいた中華民国が1947年に引いた「十一段線」が下敷きになっています。その後、国共内戦によって中華民国は台湾へと逃れ、新たに大陸で成立した中華人民共和国は、1953年にこの「十一段線」の一部を変更して、「九段線」へと書き直しました。
そして近年、漁場や石油、天然ガスなどの資源や、南シナ海の島嶼の領有権問題をめぐって、中国の同地域への侵略姿勢が強まり、ベトナムやフィリピンといった周辺国との紛争が拡大してきていることは周知の事実です。
次ページ>>海賊行為を行う中国漁船と、裏社会から給料をもらう公船乗組員
中国側はこの九段線より南にあるナトゥナ諸島についてはインドネシア領であることを認めているため、インドネシア政府も南シナ海問題については比較的中立的な態度ではありましたが、しかしここ数年でその周辺海域であるEEZへの中国漁船の不法操業が頻繁に起こっていることで、業を煮やしている状況です。
また中国漁船はじっさいには漁船ではなく、中国の公安船と手を組んで、もっぱらインドネシアの漁船を待ち伏せして、包囲しながら魚を略奪するといった、海賊行為も頻繁に行っているようです。中国漁船の船主にはチャイナ・マフィアが多く、中国の海上公安船のメンバーは、マフィアから給料を貰っている者も多いといいます。「十警九黒」(10人の警官のうち9人がマフィアとつながっている)という言葉もあるくらいです。
昨年の5月には、インドネシア当局は拿捕した中国漁船を見せしめのために海上で爆破していますし、9月にはインドネシア海軍が中国漁船に向かって砲撃、これにより中国人船員1人が死亡しています。
● 中国不法漁船を爆破 インドネシアが拿捕して海上で 「弱腰」から「見せしめ」に
● 中国漁船を砲撃、船員1人死亡 インドネシア海軍
インドネシア側が、このように強硬手段に訴えてきたなかでの、今回の中国公船による体当たりと漁船奪取です。
さらにこうした水産資源の乱獲のみならず、中国は東ナトゥナのガス田までも狙っているとされています。このガス田はナトゥナ諸島の200海里のEEZ内に位置しており、57兆立方フィートのガス埋蔵量があると見られています。
●【社説】インドネシアによる中国への挑戦
インドネシアは、中国の侵略行為が続けば、かつてフィリピンが南シナ海での仲裁手続をオランダのハーグの仲裁裁判所に申請したように、国際司法機関に訴えるとしていますが、もしそうなれば、中国が猛反発することは明らかでしょう。これは南シナ海問題がインドネシアにも拡大することを意味します。
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そもそも南洋の国々のなかで、インドシナ半島の南越と海のインドネシアはもっとも代表的な反華国家です。東南アジアの国々の独立・解放運動は、西洋人に対して行われたというよりも、西欧列強による植民地支配の番頭役だった華人、華僑に対して行われたという性格が強かったのです。だからインドネシアの独立運動は、反オランダよりも反華僑からスタートしています。そのため南シナ海問題では中立的な立場で静観していたものの、自国に被害が及ぶとなると、反華感情に火がつきやすいのです。
インドネシアは独立建国後、激越な反華、排華運動を行い、国民が華僑商店を襲撃するだけでなく、漢字の書籍の国内持ち込みまで禁止していました。私の大学時代の学友はインドネシアで工場を経営していましたが、日本の書籍を持ち込もうとして、よく税関と一悶着を起こしていました。日本語に漢字が入っているので、若い税関員には区別がつかず、トラブルが多かったのです。
台湾漁船もインドネシア海域に近づく際、「中国船ではない」と大げさにアピールするようにしています。そうしないと、中国船だと思われて、インドネシア海上警備船に連行されてしまうからです。
インドネシア海域でのインドネシアと中国との衝突は歴史が古く、民族の対立でもあります。古代の南洋の海はマレー・ポリネシア人の海でした。その後、支那海賊船が出没するようになりましたが、フランキ人(ポルトガルをはじめとする西洋人)がこの海域に乗り出して支那海賊船を退治するようになり、そして明の時代から「マカオ」(澳門)という中継貿易地を得ることとなりました。
こうした海域の歴史を知ることも、現在のインドネシアと中国とのトラブルの根源を知ることに繋がります。
それはさておき、中国の態度に不信感を募らせたのか、日本から中国が奪った高速鉄道事業について、インドネシア政府は地震対策を強化するように要請、改善がなければ認可しない姿勢を見せ、さらには計画が頓挫してもインドネシア政府による救済はないことを求めています。
● 中国の合弁会社側に「改善なければ認可せず」耐震強化を要求 インドネシア政府
さらに全長142キロについて、現在までで建設認可が下りたのはたったの5キロまでで、残りは上記のような地震対策が求められている状況ですし、用地買収のめども立っていないということです。これで本当に2019年に完工できるのでしょうか。
● 中国ようやく5キロ区間だけ建設許可 受注のインドネシア高速鉄道 残る区間なお買収めど立たず
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片や札びらで頬を叩きながら、片や相手国の領土を侵略する、というのが中国のこれまでのやり方で、フィリピンもベトナムもこれに反発して米国や日本との関係強化へとつながりました。こうしたやり方は相手の警戒心と敵愾心を高めるだけなのに、「中国の夢」を掲げる習近平政権は、常に同じ手法を繰り返しています。
もちろん、これらは習近平を外交的に追い詰めるため、政敵が仕掛けているという話もあります。どこまでは真実かわかりませんが、内的矛盾を外的矛盾にすり替えるのは中国の伝統的手法ですから、その可能性もあるでしょう。いずれにしても迷惑なのは周辺国です。
また、中国の不法漁船がやっかいなのは、2014年、日本の小笠原諸島と伊豆諸島周辺のEEZに赤珊瑚を密漁する大量の中国漁船団が現れたときもそうですが、本当に単なる密漁だけなのか、あるいは日本周辺の海域調査なのか、非常に不気味な存在だということです。
中国政府が勝手に領海を設定し、やがてそこで中国漁船が違法操業を行い周辺国との衝突を発生させ、中国政府や中国軍が漁民保護を目的に乗り出してその地域を実効支配する、というのが中国のこれまでのやり方だからです。
中国政府ははるか2,000年も前の漢の時代から南陽海域を管理してきたと主張していますが、それはすべてウソです。宋の時代の華夷図には、台湾の存在さえ書かれていませんでした。マレー人の後に南洋の海で活躍していたのはイスラム船でした。
フビライ・ハーンの南洋遠征も、日本遠征と同様に失敗しています。19世紀に至るまで、清の版図は島嶼ではせいぜい海南島までだったというのが歴史の真実であり、前述したように、そのころは西洋人が支配する海だったのです。
今年の3月15日には、遠くアルゼンチン沖のEEZにも出没し、摘発しようとしたアルゼンチンの沿岸警備隊の巡視船に衝突しようとしてきたため、砲撃されて沈没するという事件まで起きています。
● アルゼンチン沿岸警備隊が中国漁船を撃沈 違法操業で「警告無視」
このように中国に対しては、アルゼンチンやインドネシアすら、毅然とした態度を示しています。中国の強盗の論理は世界では通用しないことの表れです。尖閣周辺の日本領海での中国漁船による違法操業が急増しているようですが、「友好」を気にして断固とした態度に出ないのは愚の骨頂であり、日本も見せしめのために拿捕した漁船の爆破や撃沈くらいはすべきでしょう。事件が相次いでいる現在、国際社会の理解は得られるはずです。
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
http://www.mag2.com/p/news/161412