◆ジョン・ミアシャイマー『大国政治の悲劇:改訂版』を読み解く
◆ジョン・ミアシャイマー『大国政治の悲劇:改訂版』を読み解く
(翻訳・奥山真司さん)
※要旨
・新たに書き換えられた最終章で、
私は自分の理論である「オフェンシヴ・リアリズム」を使って、
皆が注目している「中国の台頭は平和的なものだろうか?」
という質問についての答えを出している。
残念ながら、私の答えは「ノー」である。
・小著は、重要な疑問を解明するための手がかりを与えようとしている。
本書の核心にあるメッセージは、
「国際政治の危険な世界の中で生き残ろうとする国家にはパワーを求めて互いに競い合う以外に、
ほとんど選択肢は残されていない」ということである。
平和に生きることに満足しているような国家でも、
パワーを求める無慈悲な争いに巻き込まれてしまうからだ。
・すべての大国にとっての究極の目標は、世界のある一定の地域を支配し、
他の大国が自分以外の地域で覇権国にならないようにすることだ。
この国際政治の理論を、私は自分で、
「オフェンシヴ・リアリズム」(攻撃的現実主義)と呼んでいる。
・これはアジアにとって重要な関連性を持つ。
なぜならこの理論は、「中国が次の10年間に見事な経済成長を続けていけば、
強力な軍事組織を築き上げ、アメリカが西半球で行ったようなやり方でアジアを支配しようとするはずだ」
と予測しているからだ。
・中国が覇権を目指す理由は、中国の文化が伝統的に攻撃的であるとか、
政治指導者の失策などにあるのではなく、ただ単に、
「覇者になることが自国の生き残りを最も確実に保証してくれる」
という点にある。
・地域覇権。
大国は通常、4つの基本的な目標を達成することに集中する。
まず「地域覇権」である。
・最大の富。
大国が共通して持つ2つ目の目標は、
「世界の富の中で、自国がコントロールできる量の最大化を常に目指す」
ということである。
国家は富の相対量に敏感である。
経済的な強さは、軍事的な強さにつながる。
・傑出した陸軍力。
大国が共通して持つ3つ目の目標は、
「大国は軍事力を最大化するための最高の方法であるという理由から、
ランドパワー(陸上兵力)のバランスにおいて圧倒的な立場を目指す」
ということにある。
・核武装優越状態。
大国が共通して持つ4つ目の目標は、
「大国はライバルをはるかに超える核武装優越状態を獲得しようとする」
ということである。
・まとめると、大国の主な4つの目標は、以下の通りである。
1.地域覇権国になること。
2.世界の富のなるべく多くの割合を自分たちでコントロールすること。
3.自国の陸上での陸上兵力のバランスを圧倒すること。
4.核武装優越状態を手に入れることを目指している。
・オフェンシブ・リアリズムのまとめ。
私の理論を最も簡潔に言えば、
「国際システムの基本的な構造によって国家は安全保障を心配するようになり、
互いにパワーを争うことになる」というものだ。
すべての大国の究極の目標は世界権力の分け前を最大化することであり、
最終的にこのシステムを支配することにある。
・もし中国が台頭しつづけたらどうなるのかという未来像についての私の見通しは、
あまり喜ばしいものではない。
実際のところ、それはむしろ完全に気の滅入るものである。
中国が最終的に地域覇権を目指すことを否定できるような理由も存在しない。
※訳者解説
・ミアシャイマーは1947年生まれ。
ベトナム戦争真っ盛りの時代にウェストポイントの陸軍士官学校を卒業し、
5年間空軍に勤務している。
1980年にコーネル大学で「通常兵器による抑止理論」というテーマで、
ジョージ・クエスターやリチャード・ローズクランスのもとで博士号を取得。
・博士号取得後はハーバード大学の研究員になり、
1982年から保守系の名門校シカゴ大学へ赴任、
現在に至るまでシカゴ大学一筋で教えている。
・専門は主に国際政治理論や軍事戦略論などであり、
国際政治の動きを主に安全保障の観点から客観的かつロジカルに分析する、
正真正銘の「現実主義者(リアリスト)」と呼ばれる学者だ。
・彼の「攻撃的現実主義」という理論の基礎になっているのが、
「国際政治は権力闘争の場である」とする、
いわゆるホッブスのリバイアサン的な「リアリズム」という冷酷な視点を持った学派の考え方である。
・ミアシャイマーの理論を含むリアリズムの源流は、
もちろん紀元前の古代までさかのぼることができる。
「人間の政治は常に権力闘争である」というイメージは聖書にも見てとれることができる。
またギリシャではツキディデスによる『戦史』、インドではカウティリヤによる『実理論』、
そして中国では『孫子の兵法』や『韓非子』などにもあり、その歴史は古い。
・なぜ中国はアメリカに挑戦してくるようになるのだろうか。
まず中国は「大国」になるために国家が必要とする3つの「パワー」の要素を、
すでにある程度備えている。
この3つとは、
1.人口の多さ。
2.軍事力(特に核兵器)。
3.経済力。
である。
・中国は軍事力に転用できる資金が豊富になり、
軍備を整えた中国はさらなる安全保障を求めて北東アジアの覇権を目指すようになる。
※コメント
現実的な視点で物事をみると、なにをやればいいのか自ずと見えてくる。
そのような観察力がないと、ちゃんとした戦略も立てられない。
現実と理想の2つの視点を持って生きていきたい。
★ジョン・ミアシャイマー『大国政治の悲劇:改訂版』の詳細、amazon購入はこちら↓
(翻訳・奥山真司さん)
◎国際インテリジェンス機密ファイル
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(翻訳・奥山真司さん)
※要旨
・新たに書き換えられた最終章で、
私は自分の理論である「オフェンシヴ・リアリズム」を使って、
皆が注目している「中国の台頭は平和的なものだろうか?」
という質問についての答えを出している。
残念ながら、私の答えは「ノー」である。
・小著は、重要な疑問を解明するための手がかりを与えようとしている。
本書の核心にあるメッセージは、
「国際政治の危険な世界の中で生き残ろうとする国家にはパワーを求めて互いに競い合う以外に、
ほとんど選択肢は残されていない」ということである。
平和に生きることに満足しているような国家でも、
パワーを求める無慈悲な争いに巻き込まれてしまうからだ。
・すべての大国にとっての究極の目標は、世界のある一定の地域を支配し、
他の大国が自分以外の地域で覇権国にならないようにすることだ。
この国際政治の理論を、私は自分で、
「オフェンシヴ・リアリズム」(攻撃的現実主義)と呼んでいる。
・これはアジアにとって重要な関連性を持つ。
なぜならこの理論は、「中国が次の10年間に見事な経済成長を続けていけば、
強力な軍事組織を築き上げ、アメリカが西半球で行ったようなやり方でアジアを支配しようとするはずだ」
と予測しているからだ。
・中国が覇権を目指す理由は、中国の文化が伝統的に攻撃的であるとか、
政治指導者の失策などにあるのではなく、ただ単に、
「覇者になることが自国の生き残りを最も確実に保証してくれる」
という点にある。
・地域覇権。
大国は通常、4つの基本的な目標を達成することに集中する。
まず「地域覇権」である。
・最大の富。
大国が共通して持つ2つ目の目標は、
「世界の富の中で、自国がコントロールできる量の最大化を常に目指す」
ということである。
国家は富の相対量に敏感である。
経済的な強さは、軍事的な強さにつながる。
・傑出した陸軍力。
大国が共通して持つ3つ目の目標は、
「大国は軍事力を最大化するための最高の方法であるという理由から、
ランドパワー(陸上兵力)のバランスにおいて圧倒的な立場を目指す」
ということにある。
・核武装優越状態。
大国が共通して持つ4つ目の目標は、
「大国はライバルをはるかに超える核武装優越状態を獲得しようとする」
ということである。
・まとめると、大国の主な4つの目標は、以下の通りである。
1.地域覇権国になること。
2.世界の富のなるべく多くの割合を自分たちでコントロールすること。
3.自国の陸上での陸上兵力のバランスを圧倒すること。
4.核武装優越状態を手に入れることを目指している。
・オフェンシブ・リアリズムのまとめ。
私の理論を最も簡潔に言えば、
「国際システムの基本的な構造によって国家は安全保障を心配するようになり、
互いにパワーを争うことになる」というものだ。
すべての大国の究極の目標は世界権力の分け前を最大化することであり、
最終的にこのシステムを支配することにある。
・もし中国が台頭しつづけたらどうなるのかという未来像についての私の見通しは、
あまり喜ばしいものではない。
実際のところ、それはむしろ完全に気の滅入るものである。
中国が最終的に地域覇権を目指すことを否定できるような理由も存在しない。
※訳者解説
・ミアシャイマーは1947年生まれ。
ベトナム戦争真っ盛りの時代にウェストポイントの陸軍士官学校を卒業し、
5年間空軍に勤務している。
1980年にコーネル大学で「通常兵器による抑止理論」というテーマで、
ジョージ・クエスターやリチャード・ローズクランスのもとで博士号を取得。
・博士号取得後はハーバード大学の研究員になり、
1982年から保守系の名門校シカゴ大学へ赴任、
現在に至るまでシカゴ大学一筋で教えている。
・専門は主に国際政治理論や軍事戦略論などであり、
国際政治の動きを主に安全保障の観点から客観的かつロジカルに分析する、
正真正銘の「現実主義者(リアリスト)」と呼ばれる学者だ。
・彼の「攻撃的現実主義」という理論の基礎になっているのが、
「国際政治は権力闘争の場である」とする、
いわゆるホッブスのリバイアサン的な「リアリズム」という冷酷な視点を持った学派の考え方である。
・ミアシャイマーの理論を含むリアリズムの源流は、
もちろん紀元前の古代までさかのぼることができる。
「人間の政治は常に権力闘争である」というイメージは聖書にも見てとれることができる。
またギリシャではツキディデスによる『戦史』、インドではカウティリヤによる『実理論』、
そして中国では『孫子の兵法』や『韓非子』などにもあり、その歴史は古い。
・なぜ中国はアメリカに挑戦してくるようになるのだろうか。
まず中国は「大国」になるために国家が必要とする3つの「パワー」の要素を、
すでにある程度備えている。
この3つとは、
1.人口の多さ。
2.軍事力(特に核兵器)。
3.経済力。
である。
・中国は軍事力に転用できる資金が豊富になり、
軍備を整えた中国はさらなる安全保障を求めて北東アジアの覇権を目指すようになる。
※コメント
現実的な視点で物事をみると、なにをやればいいのか自ずと見えてくる。
そのような観察力がないと、ちゃんとした戦略も立てられない。
現実と理想の2つの視点を持って生きていきたい。
★ジョン・ミアシャイマー『大国政治の悲劇:改訂版』の詳細、amazon購入はこちら↓
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