どこの世の中に、国民と同等な権利や便宜を外国人に与えることを政府に義 務 づけている国があるか。
◎不當に日本人を差別する「ヘイトスピーチ規制法案」成立阻止へ - 「新しい歴史教科書をつくる会」は、週明けに緊急声明を発表
【拡散希望】4月8日に自公両党が参議院に提出した「ヘイトスピーチ規 制法案」(正式名称=本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向 けた取組の推進に関する法律案)について、「新
しい歴史教科書をつくる 会」は、週明けに緊急声明を出すことになった。もちろん、法案に絶対反 対の立場の表明である。
法案は、不当に日本人を差別し、「法のもとの平等」を侵害する憲法違 反の法律である。また、人種差別撤廃条約の定義にも合致しない。とんで もない悪法である。
ところが、政権党は5月10日にも参議院を通過させると言っているよ うで、事態は風雲急を告げている。
憲法学が専門の小山常実同会理事が、法案を詳しく検討した。その成果 を借りて、改めて何が問題なのかを書いてみたい。長文になるが、おつき あいいただければありがたい。
■民主党案の5つの問題点
まず、今回の自公案は、昨年民主党が提出した法案(正式名称=人種等 を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案)の修正案で ある。そこで、民主党案の検討から始めなければな
らないが、これについ てはすでに、『正論』の昨年10月号に八木秀次氏が「『人権擁護』『男女 共同』以上だ! 『ヘイト』規制法案の危険な正体」で批判している。
ここで、八木氏は5つの問題点を指摘した。
第1の問題は、「人種等を理由とする差別」とは何なのか、定義がなさ れておらず、従って関係者が差別と感じれば差別となるという、恐ろしい ことになっている点だ。以下に第1条を引用して
おく。
<第1条 この法律は、人種等を理由とする差別の撤廃(あらゆる分野 において人種等を理由とする差別をなくし、人種等を異にする者が相互に 人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実
現することをいう。以下 この条において同じ。)が重要な課題であることに鑑み、日本国憲法及び あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の理念に基づき、人種等
を理由とする差別の禁止等の基本原則を定めるとともに、人種等を理由と する差別の防止に関し国及び地方公共団体の責務、基本的施策その他の基 本となる事項を定めることにより、人種等を理由
とする差別の撤廃のため の施策を総合的かつ一体的に推進することを目的とする。>
第2の問題は、法案第19条で差別防止の施策を立てるに際して「関係 者」の意見を反映させるとしたことである。「関係者」が恣意的に差別と 感じれば、それを禁じる施策に発言権が生じると
いうのである。19条は次 のように規定されている。
<第19条 国及び地方公共団体は、人種等を理由とする差別の防止に関 する施策の策定及び実施に当たっては、人種等を理由とする差別において 権利利益を侵害され又はその有する人種等の属性が
不当な差別的言動の理 由とされた者その他の関係者の意見を当該施策に反映させるために必要な 措置を講ずるものとする。
第3の問題は、内閣府に「人種等差別防止政策審議会」を置くとしてい ることだ。この審議会は、男女共同参画会議と同じく「省庁を横串で刺す 極めて強い権限を持つものである」が、この審議会
にヘイトスピーチを受 ける外国人や彼らを支援する学者や弁護士などが入れば外国人が「人種等 を理由とする差別の撤廃」政策を決定していくことになる危険性がある。
第4の問題は、地方公共団体が過激化していく危険性である。地方公共 団体の責務が多数定められている。第6条、10条から13条、15条から17条 といった条文では、「国及び地方公共団体は……」と記
して、地方公共団体 がしなければならないことを規定している。
こうしたことから、朝鮮学校への適正な政策や、ごく当たり前の歴史教 育、公民教育まで「ヘイトスピーチ」として禁止される可能性がある。保 守派の団体による公共施設の利用も制限されること
になるだろう。
第5の問題は、民間団体への支援が規定されていることだ。次の条文を 見よ。
<第17条 国及び地方公共団体は、人種等を理由とする差別の防止に関 する自主的な活動を行う民間の団体等が果たしている役割の重要性に留意 し、これらの民間の団体等の活動を支援するために
必要な措置を講ずるも のとする。>
これはヘイトスピーチを受ける立場の外国人や彼らを支援する団体への 財政支援の根拠規定だ。外国勢力に税金が流れる仕組みである。
5点の問題点をもう一度要約すると、次のようになる。
?定義がなく、「差別と感じれば差別となる」こと。
?「差別と感じた」関係者が施策に発言権を持つこと。
?内閣府の審議会に外国人が入り、施策の決定者になること。
?地方自治体の施策の過激化を促進すること。
?民間団体への支援が規定されていること。
■自公案でも残る3つの問題点
今回の自公案では、民主党案に比べてどのような「改善」が見られるだ ろうか。結論から言えば、自公案で消えたのは、上記の5点のうち、?と? だけである。残りの3点は、自公案でも厳然と
残っているのである。特に 最大の問題である定義不在の問題が全く解消されていない。
?の定義不在の問題点について自公案を見ると、「本邦外出身者に対す る不当な差別的言動」(第2条)とは何なのか、よく分からない。「不当 な差別的言動」が定義されておらす、そもそも「本
邦外出身者」からして よく分からない。在日韓国・朝鮮人を中心にしているらしいことだけは分 かるが、それ以外にどこまで広がるのか。このような定義不在によって、 民
主党案と同じく、恣意的解釈を許す法案だと言えよう。
?差別と感じた「関係者」の意見を反映させるという仕組みもなくなっ ていない。自公案の第5条は不気味な規定である。
<(相談体制の整備)第五条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別 的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又 は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備
するものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実 情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に 応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決
を図ることができるよ う、必要な体制を整備するよう努めるものとする。>
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談」とあるわけだ から、必然的に、在日韓国・朝鮮人等の意見が強く反映され、彼らが差別 と言えば差別だということになっていくだろう。
しかも、 第6条では、次のように教育のことまで規定している。
<(教育の充実等)第六条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的 言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取 組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実 情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育 活動を実施するとともに、そのために必要な取組を
行うよう努めるものと する。
5条、6条を併せ読めば、ごく当たり前の歴史教育、公民教育まで「ヘイ トスピーチ」として禁止される事態が発生するだろう。6条の2項に注目す れば、先ずは在日韓国・朝鮮人の多く住む地域でそ
うなっていくのではな いか。「つくる会」などの教科書改善運動は息の根を止められる。
?の地方自治体の先取り的暴走の危険も、全くなくなっていない。第4条 で(国及び地方公共団体の責務)が規定され、第5条で(相談体制の整 備)が、第6条で(教育の充実等)が、第7条で(啓
発活動等)が定めら れているが、全て1項では「国は……」と規定し、それを受けて2項では「地 方公共団体は……」と規定されている。当然に、民主党案の場合と同じく、
地方公共団体の暴走が始まるであろう。大阪の暴走が、国より先に始まっ ていることに注目すべきである。
■民主党案以上に悪質な日本人差別の自公案
自公案の問題点は、上記3点につきるものではない。
自公案は、基本理念について、次のようにいう。
<(基本理念)第3条 国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的 言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対す る不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう
努めなければならな い。>
この法律案は、日本国籍を持った日本国民だけに義務が課されており、 在日韓国・朝鮮人その他の外国人には、義務が全く課されていないのであ る。だから、彼らは、日本人に対するヘイトスピー
チを好きなだけできる のである。
この、日本人に対する人種差別的な規定に比べれば、民主党案の方が理 念論のレベルでははるかにましである。自公案の第3条に対応する民主党 案の第3条を掲げよう。
<第3条 何人も、次に掲げる行為その他人種等を理由とする不当な差 別的行為により、他人の権利利益を侵害してはならない。
一 特定の者に対し、その者の人種等を理由とする不当な差別的取扱い をすること。
二 特定の者について、その者の人種等を理由とする侮辱、嫌がらせそ の他の不当な差別的言動をすること。
2 何人も、人種等の共通の属性を有する不特定の者について、それら の者に著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的又はそれらの者に対する 当該属性を理由とする不当な差別的取扱いをするこ
とを助長し若しくは誘 発する目的で、公然と、当該属性を理由とする不当な差別的言動をしては ならない。>
自公案は民主党案よりも日本人差別の度合いが強く、民主党案よりも愚 劣な内容である。総体として両案を比較すれば、自公案は甘く見て同レベ ルの有害法案であり、さらに厳しく考えれば、徹底
した日本人差別思想の 理念を述べたものである以上、民主党案より劣悪で最悪の有害法案である と言えよう。
■在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチは人種差別撤廃条約の対象外
政界におけるヘイトスピーチ規制法案論議には、重大な盲点がある。自 公案にせよ、民主党案にせよ、ヘイトスピーチ規制法案が出てきたのは、 人種差別撤廃条約を日本が批准し加入しているか
らだと言われる。しか し、人種差別撤廃条約第1条第2項は次のように規定している。
<2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、 排除、制限又は優先については、適用しない。
(This Convention shall not apply to distinctions, exclusions, restrictions
or preferences made by a State Party to this Convention between citizens and
non-citizens.)>
外務省は「市民と市民でない者」と訳しているが、「citizens」の第一 義は国民であるから、「国民と国民でない者」と訳すべきものである。 従って、日本国籍を持った日本国民と、日本国籍の ない外国人である在日 韓国・朝鮮人の関係に、この条約は適用されない。
それはそうだろう。
どこの世の中に、国民と同等な権利や便宜を外国人に与えることを政府に義 務 づけている国があるか。あるはずがない。
両者の間に、「区別、排除、 制限又は優先」があるのは当然なのだ。
だから、この条約は同一の国民のなかでのマイノリティの差別について 述べているのであって、例えば、同じアメリカ国民のなかで、アフリカ系 アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人が差別をされてはいけない、と 言っているのである。
この条約と在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチは、何の関係もない。
日本で問題となってきた在日韓国・朝鮮人に対す る ヘイトスピーチ問題は、人種差別撤廃条約の対象外の問題なのである。
■教科書改善運動も水泡に帰す危険な法案
今年の5月は、日本歴史上一番の危機が襲っていると言えるかもしれな い。奇妙なことに、これほどの悪法なのに、保守系から批判の声が全く上 がっていない。不気味な沈黙が支配している。保 守系の諸団体や有識者 は、一堂に集められ、政権側と密約でもかわしたのか。そうとでも考えな ければ理解出来ない状況が続いている。
例えば、民主党案について、いち早く批判を加えていた八木氏は、どう して反対の声をあげないのか。これを放っておいたら、教科書改善運動も 何もかも水泡に帰すだろう。
一つのことに取り組んでいるうちに、実に重大なことが次々と起こる。 安倍政権は、在日利権にからめとられたのか、昨年の日韓合意に引き続 く、トンデモ法案を通過させようとしている。危険 水域を越えている。
参議院の次は衆議院。会期はあとわずか。是非とも廃案に追い込みた い。この記事を読まれた方は、身近な、あるいは身近でなくても、国会議 員に法案に反対だと伝えていただきたい。
(藤岡信勝氏 - 新しい歴史教科書をつくる会理事、自由主義史観研究会 代表、拓殖大学客員教授)
Facebook 2016-05-07 〔情報収録 - 坂元 誠〕
【拡散希望】4月8日に自公両党が参議院に提出した「ヘイトスピーチ規 制法案」(正式名称=本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向 けた取組の推進に関する法律案)について、「新
しい歴史教科書をつくる 会」は、週明けに緊急声明を出すことになった。もちろん、法案に絶対反 対の立場の表明である。
法案は、不当に日本人を差別し、「法のもとの平等」を侵害する憲法違 反の法律である。また、人種差別撤廃条約の定義にも合致しない。とんで もない悪法である。
ところが、政権党は5月10日にも参議院を通過させると言っているよ うで、事態は風雲急を告げている。
憲法学が専門の小山常実同会理事が、法案を詳しく検討した。その成果 を借りて、改めて何が問題なのかを書いてみたい。長文になるが、おつき あいいただければありがたい。
■民主党案の5つの問題点
まず、今回の自公案は、昨年民主党が提出した法案(正式名称=人種等 を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案)の修正案で ある。そこで、民主党案の検討から始めなければな
らないが、これについ てはすでに、『正論』の昨年10月号に八木秀次氏が「『人権擁護』『男女 共同』以上だ! 『ヘイト』規制法案の危険な正体」で批判している。
ここで、八木氏は5つの問題点を指摘した。
第1の問題は、「人種等を理由とする差別」とは何なのか、定義がなさ れておらず、従って関係者が差別と感じれば差別となるという、恐ろしい ことになっている点だ。以下に第1条を引用して
おく。
<第1条 この法律は、人種等を理由とする差別の撤廃(あらゆる分野 において人種等を理由とする差別をなくし、人種等を異にする者が相互に 人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実
現することをいう。以下 この条において同じ。)が重要な課題であることに鑑み、日本国憲法及び あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の理念に基づき、人種等
を理由とする差別の禁止等の基本原則を定めるとともに、人種等を理由と する差別の防止に関し国及び地方公共団体の責務、基本的施策その他の基 本となる事項を定めることにより、人種等を理由
とする差別の撤廃のため の施策を総合的かつ一体的に推進することを目的とする。>
第2の問題は、法案第19条で差別防止の施策を立てるに際して「関係 者」の意見を反映させるとしたことである。「関係者」が恣意的に差別と 感じれば、それを禁じる施策に発言権が生じると
いうのである。19条は次 のように規定されている。
<第19条 国及び地方公共団体は、人種等を理由とする差別の防止に関 する施策の策定及び実施に当たっては、人種等を理由とする差別において 権利利益を侵害され又はその有する人種等の属性が
不当な差別的言動の理 由とされた者その他の関係者の意見を当該施策に反映させるために必要な 措置を講ずるものとする。
第3の問題は、内閣府に「人種等差別防止政策審議会」を置くとしてい ることだ。この審議会は、男女共同参画会議と同じく「省庁を横串で刺す 極めて強い権限を持つものである」が、この審議会
にヘイトスピーチを受 ける外国人や彼らを支援する学者や弁護士などが入れば外国人が「人種等 を理由とする差別の撤廃」政策を決定していくことになる危険性がある。
第4の問題は、地方公共団体が過激化していく危険性である。地方公共 団体の責務が多数定められている。第6条、10条から13条、15条から17条 といった条文では、「国及び地方公共団体は……」と記
して、地方公共団体 がしなければならないことを規定している。
こうしたことから、朝鮮学校への適正な政策や、ごく当たり前の歴史教 育、公民教育まで「ヘイトスピーチ」として禁止される可能性がある。保 守派の団体による公共施設の利用も制限されること
になるだろう。
第5の問題は、民間団体への支援が規定されていることだ。次の条文を 見よ。
<第17条 国及び地方公共団体は、人種等を理由とする差別の防止に関 する自主的な活動を行う民間の団体等が果たしている役割の重要性に留意 し、これらの民間の団体等の活動を支援するために
必要な措置を講ずるも のとする。>
これはヘイトスピーチを受ける立場の外国人や彼らを支援する団体への 財政支援の根拠規定だ。外国勢力に税金が流れる仕組みである。
5点の問題点をもう一度要約すると、次のようになる。
?定義がなく、「差別と感じれば差別となる」こと。
?「差別と感じた」関係者が施策に発言権を持つこと。
?内閣府の審議会に外国人が入り、施策の決定者になること。
?地方自治体の施策の過激化を促進すること。
?民間団体への支援が規定されていること。
■自公案でも残る3つの問題点
今回の自公案では、民主党案に比べてどのような「改善」が見られるだ ろうか。結論から言えば、自公案で消えたのは、上記の5点のうち、?と? だけである。残りの3点は、自公案でも厳然と
残っているのである。特に 最大の問題である定義不在の問題が全く解消されていない。
?の定義不在の問題点について自公案を見ると、「本邦外出身者に対す る不当な差別的言動」(第2条)とは何なのか、よく分からない。「不当 な差別的言動」が定義されておらす、そもそも「本
邦外出身者」からして よく分からない。在日韓国・朝鮮人を中心にしているらしいことだけは分 かるが、それ以外にどこまで広がるのか。このような定義不在によって、 民
主党案と同じく、恣意的解釈を許す法案だと言えよう。
?差別と感じた「関係者」の意見を反映させるという仕組みもなくなっ ていない。自公案の第5条は不気味な規定である。
<(相談体制の整備)第五条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別 的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又 は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備
するものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実 情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に 応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決
を図ることができるよ う、必要な体制を整備するよう努めるものとする。>
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談」とあるわけだ から、必然的に、在日韓国・朝鮮人等の意見が強く反映され、彼らが差別 と言えば差別だということになっていくだろう。
しかも、 第6条では、次のように教育のことまで規定している。
<(教育の充実等)第六条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的 言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取 組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実 情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育 活動を実施するとともに、そのために必要な取組を
行うよう努めるものと する。
5条、6条を併せ読めば、ごく当たり前の歴史教育、公民教育まで「ヘイ トスピーチ」として禁止される事態が発生するだろう。6条の2項に注目す れば、先ずは在日韓国・朝鮮人の多く住む地域でそ
うなっていくのではな いか。「つくる会」などの教科書改善運動は息の根を止められる。
?の地方自治体の先取り的暴走の危険も、全くなくなっていない。第4条 で(国及び地方公共団体の責務)が規定され、第5条で(相談体制の整 備)が、第6条で(教育の充実等)が、第7条で(啓
発活動等)が定めら れているが、全て1項では「国は……」と規定し、それを受けて2項では「地 方公共団体は……」と規定されている。当然に、民主党案の場合と同じく、
地方公共団体の暴走が始まるであろう。大阪の暴走が、国より先に始まっ ていることに注目すべきである。
■民主党案以上に悪質な日本人差別の自公案
自公案の問題点は、上記3点につきるものではない。
自公案は、基本理念について、次のようにいう。
<(基本理念)第3条 国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的 言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対す る不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう
努めなければならな い。>
この法律案は、日本国籍を持った日本国民だけに義務が課されており、 在日韓国・朝鮮人その他の外国人には、義務が全く課されていないのであ る。だから、彼らは、日本人に対するヘイトスピー
チを好きなだけできる のである。
この、日本人に対する人種差別的な規定に比べれば、民主党案の方が理 念論のレベルでははるかにましである。自公案の第3条に対応する民主党 案の第3条を掲げよう。
<第3条 何人も、次に掲げる行為その他人種等を理由とする不当な差 別的行為により、他人の権利利益を侵害してはならない。
一 特定の者に対し、その者の人種等を理由とする不当な差別的取扱い をすること。
二 特定の者について、その者の人種等を理由とする侮辱、嫌がらせそ の他の不当な差別的言動をすること。
2 何人も、人種等の共通の属性を有する不特定の者について、それら の者に著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的又はそれらの者に対する 当該属性を理由とする不当な差別的取扱いをするこ
とを助長し若しくは誘 発する目的で、公然と、当該属性を理由とする不当な差別的言動をしては ならない。>
自公案は民主党案よりも日本人差別の度合いが強く、民主党案よりも愚 劣な内容である。総体として両案を比較すれば、自公案は甘く見て同レベ ルの有害法案であり、さらに厳しく考えれば、徹底
した日本人差別思想の 理念を述べたものである以上、民主党案より劣悪で最悪の有害法案である と言えよう。
■在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチは人種差別撤廃条約の対象外
政界におけるヘイトスピーチ規制法案論議には、重大な盲点がある。自 公案にせよ、民主党案にせよ、ヘイトスピーチ規制法案が出てきたのは、 人種差別撤廃条約を日本が批准し加入しているか
らだと言われる。しか し、人種差別撤廃条約第1条第2項は次のように規定している。
<2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、 排除、制限又は優先については、適用しない。
(This Convention shall not apply to distinctions, exclusions, restrictions
or preferences made by a State Party to this Convention between citizens and
non-citizens.)>
外務省は「市民と市民でない者」と訳しているが、「citizens」の第一 義は国民であるから、「国民と国民でない者」と訳すべきものである。 従って、日本国籍を持った日本国民と、日本国籍の ない外国人である在日 韓国・朝鮮人の関係に、この条約は適用されない。
それはそうだろう。
どこの世の中に、国民と同等な権利や便宜を外国人に与えることを政府に義 務 づけている国があるか。あるはずがない。
両者の間に、「区別、排除、 制限又は優先」があるのは当然なのだ。
だから、この条約は同一の国民のなかでのマイノリティの差別について 述べているのであって、例えば、同じアメリカ国民のなかで、アフリカ系 アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人が差別をされてはいけない、と 言っているのである。
この条約と在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチは、何の関係もない。
日本で問題となってきた在日韓国・朝鮮人に対す る ヘイトスピーチ問題は、人種差別撤廃条約の対象外の問題なのである。
■教科書改善運動も水泡に帰す危険な法案
今年の5月は、日本歴史上一番の危機が襲っていると言えるかもしれな い。奇妙なことに、これほどの悪法なのに、保守系から批判の声が全く上 がっていない。不気味な沈黙が支配している。保 守系の諸団体や有識者 は、一堂に集められ、政権側と密約でもかわしたのか。そうとでも考えな ければ理解出来ない状況が続いている。
例えば、民主党案について、いち早く批判を加えていた八木氏は、どう して反対の声をあげないのか。これを放っておいたら、教科書改善運動も 何もかも水泡に帰すだろう。
一つのことに取り組んでいるうちに、実に重大なことが次々と起こる。 安倍政権は、在日利権にからめとられたのか、昨年の日韓合意に引き続 く、トンデモ法案を通過させようとしている。危険 水域を越えている。
参議院の次は衆議院。会期はあとわずか。是非とも廃案に追い込みた い。この記事を読まれた方は、身近な、あるいは身近でなくても、国会議 員に法案に反対だと伝えていただきたい。
(藤岡信勝氏 - 新しい歴史教科書をつくる会理事、自由主義史観研究会 代表、拓殖大学客員教授)
Facebook 2016-05-07 〔情報収録 - 坂元 誠〕