海底に眠る地下資源 沖縄本島沖の地層調査 | 日本のお姉さん

海底に眠る地下資源 沖縄本島沖の地層調査

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海底に眠る地下資源 沖縄本島沖の地層調査
毎日新聞2016年4月7日 東京朝刊
国内最大規模の熱水鉱床が広がっているとされる沖縄本島沖の海底。地下資源の確保に向け、海洋研究開発機構などのグループが地球深部探査船「ちきゅう」を使い、水深約1000メートルの海底下の地層を分析するなど、鉱床の調査に挑んだ。【斎藤広子】
日本のようなプレート(岩板)の境界上に位置する島国の周辺では海底の火山活動が活発だ。これに伴い、岩石中の金属が溶け込んだ熱水が地下から噴出。海水で冷やされて沈殿し、海底熱水鉱床が形成されやすい。だが、詳しいでき方は分かっていないという。
海底の熱水活動は1970年代に潜水艇を使った調査で初めて確認されて以降、今まさに鉱床ができつつある現場として研究者らが注目してきた。特に、沖縄本島沖の「伊平屋北海丘(いへやきたかいきゅう)」には銅や鉛、亜鉛、金、銀などを含む黒色の鉱石「黒鉱(くろこう)」の地層が広がっており、有望な鉱床と見られることが海洋研究開発機構などの調査で確認されている。同機構の野崎達生研究員(鉱床学)によると、かつて海底にあった地層が隆起した秋田県北東部の黒鉱の鉱山と共通点が多く、大規模な黒鉱の鉱床がある可能性が高いという。
同機構などが「ちきゅう」で2010年、那覇市の北北西約190キロのこの海丘で、水深約1000メートルの海底を掘削したところ、約310度の熱水が噴き出し、その後の観察で金属などが海底に煙突状に沈殿する「チムニー」が右下の写真のように高さ7メートル以上に成長した。1トン当たりに換算して金1・35グラム、銀数百グラム、銅45キロを含んでおり、今井亮・秋田大教授(鉱床学)は「金のみで採算を取るのは難しいが、銅やレアメタルも多ければ価値は上がる。日本の排他的経済水域に資源を確保する意義は大きい」と指摘する。
この場所のほか、野崎さんらは今年2~3月、掘削して熱水が噴出したもう1カ所に観測装置を設置した。チムニーを育てながら、熱水の温度や流量、持続期間などを調べ、形成過程の謎に迫る。野崎さんは「将来は金や銀の鉱床を効率的に育て、回収する技術を開発したい」と話す。
さらに、研究グループの石橋純一郎・九州大准教授(地球化学)によると、2~3月の調査では、自然に熱水が噴出する付近を掘削し、地層の硬さなどの特徴を調べた。それ以前に地震波を使って行った調査などと合わせ、水を通しにくい「帽岩(ぼうがん)」と呼ばれる地層の下を熱水が横方向に流れている可能性が高いことが分かったという。
10万平方キロに及ぶ沖縄本島沖の海域全てを調べるのは困難で、効率的な調査が求められている。石橋准教授は「上部へ水を通さない地層の存在が、大きな鉱床を作るカギになっている可能性がある」と見て、帽岩を狙いどころの一つにしたい考えだ。
http://mainichi.jp/articles/20160407/ddm/016/040/025000c