花粉を多く吸収しないことが、PFS症状出現程度を抑える予防策ともなり得る可能性
造血幹細胞移植により食物アレルギー症状が出現する可能性
2016.03.23
投稿者 クミタス
それまでに果物のキウイにアレルギー症状のなかった白血病の46歳男性が、キウイにアレルギー症状のある妹から骨髄破壊的造血幹細胞移植(HCT)を受けた後、キウイにアレルギー反応を示した、と2016年3月13日に報告されました。
骨髄移植後に、それまでに食物アレルギーの症状がなかった方において、食物にアレルギー症状を示す例は報告されていましたが、骨髄移植によりアレルギー反応を示す要因が食物アレルギー症状のある方から移植された造血幹細胞が媒介していることを確認する例とも言えます。
輸血においては?
輸血によるアレルギー発症については、骨髄移植による発症可能性よりも低く、まれなこととの意見がありますが、
カナダの8歳男子において脳腫瘍の手術時に、鮭、ピーナッツに対する重度のアレルギー症状のある方の血液の輸血がなされ、2週間内に鮭、そしてピーナッツへのアレルギー症状を示したとの報告があります。
しかしながら輸血を受けた方自身の免疫系が反応し抗体を作り発症したわけではなく、輸血された血液製剤内の血小板を通じて鮭、ピーナッツに一時的に反応を示した、とみられており、このように受動伝達されたIgE抗体は数カ月内に身体内で破壊され、アレルギー症状は消失していく、とも示唆しています。
8歳男子においては、症状が出てからは鮭、ピーナッツの摂取除去をおこなったところ、4か月後のテストにおいてアレルギー反応は陰性となり、6か月後から摂取を開始した、と報告しています。
ほかに、重度アレルギーの既往がある19歳から新鮮凍結血漿を提供された80歳女性において、2日後にピーナッツにアナフィラキシー反応を示した報告例もあり、(重度)アレルギー症状のある方、既往歴のある方から提供された血液製剤の投与により、それまで問題のなかった食物に対して突然アレルギー反応を示す可能性はないとは言えない可能性があります。
重度アレルギー患者さんの血液製剤を継続的に輸血し続けた場合においてはどうなるのか、重度でないアレルギー患者さんの血液製剤の場合の症状有無、反応しやすい方の傾向についての文献までは散見されませんが、それまでにその食物にアレルギー症状がない方で、輸血を受けて以降の食後に異変を感じる場合は、血液製剤による影響可能性も視野にいれておけると良いかもしれません。
出典・参考:
Newly acquired kiwi fruit allergy after bone marrow transplantation from a kiwi-allergic donor.2016
Lennart E. Logdberg, M.D., medical director, Blood Bank, North Shore University Hospital, Manhasset, N.Y.; Sherry Farzan, M.D., allergist and immunologist, North Shore - LIJ Health System, Great Neck, N.Y; Canadian Medical Association Journal, news release, April 7, 2015
花粉へのIgE反応とOAS症状出現の程度、症状を発現しやすい食物
2016.03.31 投稿者クミタス
花粉への特異的IgE陽性とOASの症状出現程度に関して、各花粉に特異的IgE陽性反応の方においてOAS症状出現経験のある方は以下割合であったとの報告があります(出典:兵庫県東播磨地域小学・中学・高等学校でのアレルギーアンケート結果 2005)。
クラス2以上の場合
・ヨモギ花粉に特異的IgE陽性の方のうち11.8%
・ブタクサ花粉に特異的IgE陽性の方のうち3.8%
・カモガヤ花粉に特異的IgE陽性の方のうち2.6%
クラス3以上の場合
・ヨモギ花粉に特異的IgE陽性(クラス2以上)の方のうち17.6%
・ブタクサ花粉に特異的IgE陽性の方のうち6.9%
・カモガヤ花粉に特異的IgE陽性の方のうち2.9%
とあり、花粉への特異的IgE抗体価が高くなるほどOAS症状出現可能性が高くなる可能性を示唆しているとも言えます。
尚、OASは、「口腔内を主としたアレルギー症状」を指し、原因が花粉出ない場合も含みますが、花粉と関連のあるアレルギー症状については、花粉関連食物アレルギー症候群(PFS)と分けて扱うようになっています。
OAS症状を発現しやすい食物
口腔咽頭症状を呈するOAS(口腔アレルギー症候群)症状を発現しやすい食物としては以下が挙げられています(出典:特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015)。
成人135例、小児43例、不明1例における原因食品の内訳
・りんご(バラ科) 13.2%
・もも(バラ科) 11.2%
・キウイ(マタタビ科) 10.2%
・メロン(ウリ科) 7.0%
・大豆(マメ科) 5.2%
・サクランボ(バラ科) 3.7%
・バナナ(バショウ科) 3.7%
・トマト(ナス科) 3.5%
・いちご(バラ科) 3.2%
・スイカ(ウリ科) 3.2%
・びわ(バラ科) 2.7%
・アボカド(クスノキ科) 2.2%
・梨(バラ科) 2.0%
・柑橘系(ミカン科) 2.0%
・ピーナッツ(マメ科) 1.7%
・パイナップル(イネ目パイナップル科) 1.7%
・きゅうり(ウリ科) 1.7%
・アーモンド(バラ科) 1.2%
・梅(バラ科) 1.0%
・ぶどう(ブドウ科) 1.0%
・にんじん(セリ科) 1.0%
・いちじく(バラ目クワ科) 1.0%
・えび、かに 1.0%
・いか、たこ 1.0%
・くるみ(クルミ科) 1.0%
科別ではやはりバラ科が多く37.9%、ウリ科12%(メロン、スイカ、きゅうり)、マタタビ科10.2%(キウイ)、マメ科7.0%(大豆、ピーナッツ)になります(果物の科、野菜の科については、こちら
同じ科の果実は? http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/916
あの野菜の科は? http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/909
にも掲載しています。)
OASの原因食物としては、果物、野菜以外に、大豆、ピーナッツといった豆類、アーモンド、くるみなどのツリーナッツ、甲殻類であるえび・かに、軟体動物のいか・たこも挙げられます。
OASにおける重症例のある食物
アレルギー症状が口腔に限局されている場合においては、アレルゲンがその食物内のタンパク質のうちプロフィリン、植物生体防御タンパク質PR-10である可能性があり、消化や原因食物を加熱することでアレルギー症状が出ない場合がありますが、アレルゲンがその食物内のタンパク質のうち脂質輸送タンパク質(LTP)、貯蔵タンパク質である場合、加熱や消化で抗原性が低下せず、全身症状、重篤な症状をおこす場合があります。
アレルゲンタンパク質は個人によって異なり、症状程度も個人差があり、体調など状態や条件によっても異なりますが、傾向として、179の口腔咽頭症状を呈した症例のうち、ショックを呈した16症例の原因食物として、リンゴ、モモ、キウイ、大豆、サクランボ、バナナ、トマト、いちご、びわ、アボカド、梨、ピーナッツ、アーモンド、にんじん、くるみ、ナス、ミカン、マカダミアナッツ、フキ、ホウレンソウ、グレープフルーツとの報告があります。
出典:特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015
症状の強くなる時期
花粉関連食物アレルギー症候群(PFS)においては、IgE陽性となっている花粉の飛散時期、飛散終了直後に、交差反応性のある食物へのアレルギー症状が強くなる場合、発症する場合があるとの報告があります。
花粉を多く吸収しないことが、PFS症状出現程度を抑える予防策ともなり得る可能性がありますので、IgE陽性となっている花粉飛散時期、終了直後には花粉対策をされるのが良いでしょう。
出典・参考:
・Temesvari E, Becker K. Contact urticaria from watermelon in a patient with pollen allergy. Contact Dermatitis 1993; 28: 185-6.
・川本 仁、山肩満徳、中島英勝、神辺真之、倉岡敏彦.スギ花粉飛散期に呼吸困難で発症したト マトジュースによる口腔アレルギー症候群の 1 例.日呼吸会誌 2003; 41: 397-401.
・藤原初雄、桝田 緑、久保伸夫、大河内宏幸、下敷領健二、岡本 久、原 克子、小川 昇、高橋 伯夫.スギ花粉症における血液中抗スギ花粉 IgE 抗体、総 IgE、好酸球数、好塩基球数、NO の 年間変動.Jpn J Clin Pathol 1997; 45: 487-92.
・Skamstrup Hansen K, Vieths S, Vestergaad H, Skov PS, Bindslev-Jensen C, Poulsen LK. Seasonal variation in food allergy to apple. J Chromatogr B Biomed Sci Appl 2001; 756: 19-32.
http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1331
2016.03.23
投稿者 クミタス
それまでに果物のキウイにアレルギー症状のなかった白血病の46歳男性が、キウイにアレルギー症状のある妹から骨髄破壊的造血幹細胞移植(HCT)を受けた後、キウイにアレルギー反応を示した、と2016年3月13日に報告されました。
骨髄移植後に、それまでに食物アレルギーの症状がなかった方において、食物にアレルギー症状を示す例は報告されていましたが、骨髄移植によりアレルギー反応を示す要因が食物アレルギー症状のある方から移植された造血幹細胞が媒介していることを確認する例とも言えます。
輸血においては?
輸血によるアレルギー発症については、骨髄移植による発症可能性よりも低く、まれなこととの意見がありますが、
カナダの8歳男子において脳腫瘍の手術時に、鮭、ピーナッツに対する重度のアレルギー症状のある方の血液の輸血がなされ、2週間内に鮭、そしてピーナッツへのアレルギー症状を示したとの報告があります。
しかしながら輸血を受けた方自身の免疫系が反応し抗体を作り発症したわけではなく、輸血された血液製剤内の血小板を通じて鮭、ピーナッツに一時的に反応を示した、とみられており、このように受動伝達されたIgE抗体は数カ月内に身体内で破壊され、アレルギー症状は消失していく、とも示唆しています。
8歳男子においては、症状が出てからは鮭、ピーナッツの摂取除去をおこなったところ、4か月後のテストにおいてアレルギー反応は陰性となり、6か月後から摂取を開始した、と報告しています。
ほかに、重度アレルギーの既往がある19歳から新鮮凍結血漿を提供された80歳女性において、2日後にピーナッツにアナフィラキシー反応を示した報告例もあり、(重度)アレルギー症状のある方、既往歴のある方から提供された血液製剤の投与により、それまで問題のなかった食物に対して突然アレルギー反応を示す可能性はないとは言えない可能性があります。
重度アレルギー患者さんの血液製剤を継続的に輸血し続けた場合においてはどうなるのか、重度でないアレルギー患者さんの血液製剤の場合の症状有無、反応しやすい方の傾向についての文献までは散見されませんが、それまでにその食物にアレルギー症状がない方で、輸血を受けて以降の食後に異変を感じる場合は、血液製剤による影響可能性も視野にいれておけると良いかもしれません。
出典・参考:
Newly acquired kiwi fruit allergy after bone marrow transplantation from a kiwi-allergic donor.2016
Lennart E. Logdberg, M.D., medical director, Blood Bank, North Shore University Hospital, Manhasset, N.Y.; Sherry Farzan, M.D., allergist and immunologist, North Shore - LIJ Health System, Great Neck, N.Y; Canadian Medical Association Journal, news release, April 7, 2015
花粉へのIgE反応とOAS症状出現の程度、症状を発現しやすい食物
2016.03.31 投稿者クミタス
花粉への特異的IgE陽性とOASの症状出現程度に関して、各花粉に特異的IgE陽性反応の方においてOAS症状出現経験のある方は以下割合であったとの報告があります(出典:兵庫県東播磨地域小学・中学・高等学校でのアレルギーアンケート結果 2005)。
クラス2以上の場合
・ヨモギ花粉に特異的IgE陽性の方のうち11.8%
・ブタクサ花粉に特異的IgE陽性の方のうち3.8%
・カモガヤ花粉に特異的IgE陽性の方のうち2.6%
クラス3以上の場合
・ヨモギ花粉に特異的IgE陽性(クラス2以上)の方のうち17.6%
・ブタクサ花粉に特異的IgE陽性の方のうち6.9%
・カモガヤ花粉に特異的IgE陽性の方のうち2.9%
とあり、花粉への特異的IgE抗体価が高くなるほどOAS症状出現可能性が高くなる可能性を示唆しているとも言えます。
尚、OASは、「口腔内を主としたアレルギー症状」を指し、原因が花粉出ない場合も含みますが、花粉と関連のあるアレルギー症状については、花粉関連食物アレルギー症候群(PFS)と分けて扱うようになっています。
OAS症状を発現しやすい食物
口腔咽頭症状を呈するOAS(口腔アレルギー症候群)症状を発現しやすい食物としては以下が挙げられています(出典:特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015)。
成人135例、小児43例、不明1例における原因食品の内訳
・りんご(バラ科) 13.2%
・もも(バラ科) 11.2%
・キウイ(マタタビ科) 10.2%
・メロン(ウリ科) 7.0%
・大豆(マメ科) 5.2%
・サクランボ(バラ科) 3.7%
・バナナ(バショウ科) 3.7%
・トマト(ナス科) 3.5%
・いちご(バラ科) 3.2%
・スイカ(ウリ科) 3.2%
・びわ(バラ科) 2.7%
・アボカド(クスノキ科) 2.2%
・梨(バラ科) 2.0%
・柑橘系(ミカン科) 2.0%
・ピーナッツ(マメ科) 1.7%
・パイナップル(イネ目パイナップル科) 1.7%
・きゅうり(ウリ科) 1.7%
・アーモンド(バラ科) 1.2%
・梅(バラ科) 1.0%
・ぶどう(ブドウ科) 1.0%
・にんじん(セリ科) 1.0%
・いちじく(バラ目クワ科) 1.0%
・えび、かに 1.0%
・いか、たこ 1.0%
・くるみ(クルミ科) 1.0%
科別ではやはりバラ科が多く37.9%、ウリ科12%(メロン、スイカ、きゅうり)、マタタビ科10.2%(キウイ)、マメ科7.0%(大豆、ピーナッツ)になります(果物の科、野菜の科については、こちら
同じ科の果実は? http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/916
あの野菜の科は? http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/909
にも掲載しています。)
OASの原因食物としては、果物、野菜以外に、大豆、ピーナッツといった豆類、アーモンド、くるみなどのツリーナッツ、甲殻類であるえび・かに、軟体動物のいか・たこも挙げられます。
OASにおける重症例のある食物
アレルギー症状が口腔に限局されている場合においては、アレルゲンがその食物内のタンパク質のうちプロフィリン、植物生体防御タンパク質PR-10である可能性があり、消化や原因食物を加熱することでアレルギー症状が出ない場合がありますが、アレルゲンがその食物内のタンパク質のうち脂質輸送タンパク質(LTP)、貯蔵タンパク質である場合、加熱や消化で抗原性が低下せず、全身症状、重篤な症状をおこす場合があります。
アレルゲンタンパク質は個人によって異なり、症状程度も個人差があり、体調など状態や条件によっても異なりますが、傾向として、179の口腔咽頭症状を呈した症例のうち、ショックを呈した16症例の原因食物として、リンゴ、モモ、キウイ、大豆、サクランボ、バナナ、トマト、いちご、びわ、アボカド、梨、ピーナッツ、アーモンド、にんじん、くるみ、ナス、ミカン、マカダミアナッツ、フキ、ホウレンソウ、グレープフルーツとの報告があります。
出典:特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015
症状の強くなる時期
花粉関連食物アレルギー症候群(PFS)においては、IgE陽性となっている花粉の飛散時期、飛散終了直後に、交差反応性のある食物へのアレルギー症状が強くなる場合、発症する場合があるとの報告があります。
花粉を多く吸収しないことが、PFS症状出現程度を抑える予防策ともなり得る可能性がありますので、IgE陽性となっている花粉飛散時期、終了直後には花粉対策をされるのが良いでしょう。
出典・参考:
・Temesvari E, Becker K. Contact urticaria from watermelon in a patient with pollen allergy. Contact Dermatitis 1993; 28: 185-6.
・川本 仁、山肩満徳、中島英勝、神辺真之、倉岡敏彦.スギ花粉飛散期に呼吸困難で発症したト マトジュースによる口腔アレルギー症候群の 1 例.日呼吸会誌 2003; 41: 397-401.
・藤原初雄、桝田 緑、久保伸夫、大河内宏幸、下敷領健二、岡本 久、原 克子、小川 昇、高橋 伯夫.スギ花粉症における血液中抗スギ花粉 IgE 抗体、総 IgE、好酸球数、好塩基球数、NO の 年間変動.Jpn J Clin Pathol 1997; 45: 487-92.
・Skamstrup Hansen K, Vieths S, Vestergaad H, Skov PS, Bindslev-Jensen C, Poulsen LK. Seasonal variation in food allergy to apple. J Chromatogr B Biomed Sci Appl 2001; 756: 19-32.
http://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1331