腸内フローラが解決してくれる病気もあるかもしれない | 日本のお姉さん

腸内フローラが解決してくれる病気もあるかもしれない

健康な人の便がクスリに!?“究極の”菌活「ふん便移植」とは
2015.10.30

腸の難病の患者に健康な人のふん便を移植するという、ちょっとビックリな臨床研究が国内各大学で進んでいる。欧米ではすでに広く移植が行われ、肥満改善にも応用されているという。「菌活」が話題となる昨今、ふん便移植こそその究極の形なのかも?

《菌活(きんかつ》
体にとって良い働きをする菌を、積極的に摂取すること。腸は免疫機能を担っており、腸のスムーズな働きは免疫力の強化につながる。よい菌と共存し、腸内環境を整えることは、生活習慣病予防や肥満抑制などの効果が期待できるとされる。

徐々に明らかになっている腸内細菌と病気との関連性
腸内には3万種・1千兆個、重さ1.5キロの細菌が生息。その集合体は「腸内フローラ」と呼ばれる

大腸にすみつく細菌は約3万種類、1千兆個ともいわれ、重さにすると1.5キロから2キロにもなる。それらの細菌類が腸内で作る集落がきれいでお花畑のように見えることから「腸内フローラ」(腸内細菌叢=ちょうないさいきんそう)と呼ばれる。腸内に生息している細菌の種類は、人によりまったく異なる。

寿命まで左右する!驚異の「腸内フローラ」〔2015年4月30日 東洋経済ONLINE〕

食事などの要因で腸内フローラのバランスが崩れると、さまざまな病気につながるといわれる

健康な人の腸内では、善玉菌が悪玉菌を抑える形で、腸内フローラが一定のバランスで維持されているが、脂肪分の多い食事や運動不足、抗菌薬の多用、ストレスなどの影響で悪玉菌が優勢になると、腸内腐敗が進み、有害な物質が増え、さまざまな病気につながることが指摘されている。

腸の難病にふん便移植 腸内細菌の乱れを是正 国内2大学が臨床研究〔2015年2月10日 47NEWS〕

バランスの乱れとの関連が指摘される主な病気

肥満
メタボリック症候群
糖尿病
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病など)
非アルコール性脂肪性肝炎
アレルギー疾患(ぜんそく、アトピー性皮膚炎など)
精神疾患(うつ病など)
腸の難病にふん便移植 腸内細菌の乱れを是正 国内2大学が臨床研究〔2015年2月10日 47NEWS〕

特に回腸(小腸の終わり)から大腸にかけては、多種多様な腸内細菌が種類ごとにまとまりを作ってびっしりと腸内に壁面を作って生息しているという(画像はThinkstockより)

【関連記事】

腸内フローラは抗生物質で全滅?薬を1年間続けても生存確認〔2015年4月28日 Medエッジ〕
子どものぜんそく、腸内細菌の不足に関連か カナダ研究〔2015年10月1日 AFP〕
肥満の原因 腸内に住む「デブ菌」細胞が影響との研究報告〔2015年2月24日 NEWSポストセブン〕
特定の細菌減少で発症か 多発性硬化症の腸内環境〔2015年9月15日 47NEWS〕
性格は「腸内細菌」によって決まる:研究結果〔2015年5月1日 WIRED〕

ならば便をクスリに…腸の難病に仰天の治療法!

潰瘍性大腸炎などの患者の腸内細菌は種類が少なかったり、偏っていたりする

腸の難病「潰瘍性大腸炎」などの患者は、腸内の細菌の種類が少なかったり、偏りがあったりする。原因は不明だが、最近の研究で腸内細菌との関連が明らかになってきた。

千葉)腸の難病、健康な人の便を移植 千葉大病院〔2015年6月29日 朝日新聞デジタル〕

健康な人のふん便を患者に移植、腸内フローラを健全にする臨床研究が国内各大学で進行中

潰瘍性胃腸炎などの患者に、健康な人のふん便を移植する「ふん便微生物移植」(「ふん便移植療法」)の試みが国内で拡大中。患者の腸内フローラを健全な状態に変えることで症状を改善させることが期待されており、慶応大(2014年3月から)、順天堂大(14年6月から)、千葉大(15年3月から)で臨床研究が行われている。

健康な人の「スーパーふん便」移植 難病に光明 〔2015年7月3日 日本経済新聞〕

気になる移植の手順は…(慶応大臨床研究の場合)

(1)配偶者か2親等以内の家族に便を提供してもらう
(2)生理食塩水と混ぜ合わせ液状にし、食物繊維のかすなどを取り除くためフィルターでろ過
(3)ろ過したものを注射器に入れ、内視鏡を使って患者の大腸に注入する
※移植回数は1回。100~200グラムのふん便を使う
※他人の便に抵抗感が強かったため「2親等以内」と規定

腸の難病にふん便移植 腸内細菌の乱れを是正 国内2大学が臨床研究〔2015年2月10日 47NEWS〕

移植後、「治療に使っていた薬の使用を減らせるようになった」(千葉大・中川倫夫助教授)

臨床研究を担当する千葉大の中川倫夫助教授は、2015年3月に移植した患者の経過について「正式な評価はこれからだが、それまで治療に使っていた免疫調節薬の使用を減らせるようになった」という。

健康な人の「スーパーふん便」移植 難病に光明 〔2015年7月3日 日本経済新聞〕

《安倍首相も悩まされた難病「潰瘍性大腸炎」とは》

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜がただれて下痢や出血、腹痛をきたす病気。原因はわかっていない。潰瘍性大腸炎とクローン病を包括して炎症性腸疾患と呼ぶ。2015年6月現在、潰瘍性大腸炎の患者数は日本国内に16万人以上いるとされる(朝日新聞)。

安倍総理も悩まされた潰瘍性大腸炎とは…症状・治療法〔2014年2月10日 All About〕

【臨床研究に関する関連記事】

潰瘍性大腸炎に対しての抗生剤療法と糞便移植療法の臨床研究について〔順天堂大学医学部 消化器内科〕
糞便移植で、腸の難病が治る!? 慶応義塾大学医学部 金井隆典教授を訪ねて〔テルモ生命科学芸術財団〕
「糞便移植療法」という新しい治療法に取り組んでいます〔2015年5月7日 千葉大学〕
腸内細菌は偉大! 正しく知って健康になる〔2014年7月31日 日経トレンディネット〕

欧米では広く実施され、なんと「スーパードナー」探しも

治療法が脚光を浴びたのは2013年。薬で2~3割しか治らなかった難病患者が移植では9割も

ふん便移植は2013年に米医学誌に掲載されたオランダのグループによる論文で注目を浴びるようになった。下痢などが続く難治性の「クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)」の患者約40人に対する研究で、従来の薬による治療では20~30%しか治らなかったが、移植を行った患者は94%に効果があった。

千葉)腸の難病、健康な人の便を移植 千葉大病院〔2015年6月29日 朝日新聞デジタル〕

米国には“ふん便ドナーバンク”があり、「スーパードナー」探しの取り組みも

米国では「便移植財団」のほか、ボストンではマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者は、NPOのふん便バンク「オープン・バイオーム」を開設。ドナーから有償でふん便の提供を受け、常に移植に使えるよう体制を整えている。理想的な腸内細菌を持つ「スーパードナー」を探し、移植に役立てるための研究も。

ふん便が薬に、新治療「ふん便移植」が脚光 9割で症状改善〔2015年10月12日 CNN〕

移植は腸の病気に限らず、肥満や動脈硬化、神経疾患などにも応用

ふん便移植は欧米では、腸の病気に限らず、腸内細菌との関連があるとみられる肥満や動脈硬化、神経疾患などの患者向けに広く行われている。慶大の金井隆典教授は「肥満に関連した症状が改善するといった結果が報告されている」と話す。

健康な人の「スーパーふん便」移植 難病に光明 〔2015年7月3日 日本経済新聞〕
http://www.iza.ne.jp/topics/events/events-8627-m.html