マハティールは「アジア通貨危機」にいかに対処したか
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)2月4日(木曜日)
通算第4798号 <前日発行>
マハティールは「アジア通貨危機」にいかに対処したか
中国がいま行うべき道筋は、見えてきたのではないのか?
*************************
人民元のSDR入りを当面遅らせるとでも言わない限り、市場は納得しないかも知れない。
すでに2015年一年間で、海外からの投資資金のうち、公式統計でも5170億ドルが中国から去った。実際には1兆ドルの資本が海外へ逃げたとみてよい。
中国の経済破綻はもはや疑う余地もなく、株価暴落に連動して人民元は崩落を続けるだろう。
国際的にすべてが連動するため、中国経済が破綻すると世界が同時不況となる。年初来、中国株の崩落で、日本株がもろに影響を受けて下落したように、ウォール街もEU諸国も15-20%も下落している。
逆に言えば、中国経済はそれほど深刻に地球的規模で悪影響をもたらすほどの実力を備えていたのだ。
1997年から始まったアジア通貨危機で、マレーシアのマハティール首相がとった対応策を鮮明に思い出す。
IMFの非難、西側メディアの批判をもろともせずに、マハティール首相は海外流失の規制、つまり海外へ逃げ出す外貨を防ぐために外貨短期取引を事実上閉鎖した。
他方で、マハティールはジョージソロスを攻撃した。まさに中国が、メディアを使ってジョージソロス非難の合唱を初めてように。なんという既視感!
そして内需拡大のため、国内では金融緩和、公共事業を盛り上げた。99年にマレーシア経済は回復した。
IMF勧告に従って逆の政策を執ったのは韓国、タイ、インドネシアだったが、やはり経済は沈没し、その後、長期の経済停滞に喘ぐ。結果を見ればマハティールがIMFに勝利したのである。
さて、この既視感。中国がいま行うべきことを明瞭に示唆しているのではないか。
次の「失われる二十年」は明らかに中国だが、現時点で言えることは世界同時デフレ懸念が拡がる一方とはいえ、対外債務の比率が少ないだけが取り柄なのである。
中国がやるべきこと資本流失規制強化と金融緩和(まさにデジャビ=マハティールの施策)だろう。
英国のフィナンシャルタイムズ(1月26日、社説)「資本規制いがい選択肢はない」とザ・エコノミスト(1月16日号)は「資本規制強化で危機に備えよ」と吠えた。
グローバリズムの先頭に立つメディアが逆のことを主張したのである。
▼日本はどうするのか
巷間「アホノミクス」と悪口を叩くエコノミストが散見されるが、彼らの言い分とはまったく逆で、アベノミクスの矛盾は「保守政権が社会主義リベラルな政策」を選択しているということなのである。ボタンの掛け違いという程度のレベルではない。背広を逆さに着ているようなものだ。
アベノミクスの第二弾は「一億総活性化」だが、介護も子育ても基本の哲学が不在である。
政策レベルでは、黒田バズーカ第三弾が必要(「マイナス金利」は奇策だったが)だ。
また消費税増税延期は当然であり、終局的にはグローバリズムに対抗する「国の個性」の確立が必要である。
(読者の声1)『正論』今月号で台湾特集があり、門田隆将氏の蔡昆燦さん会見記と宮崎さんの台湾総選挙見聞記の二本、どちらも非常に参考になりました。
とくに宮崎さんが、外国人取材班がほとんど行かなかった激戦区の花蓮県へ行かれて、粛美琴が、国民党の金城湯池の選挙区でいかに辛酸をなめながら闘い、当選できたかのルポは読み応えがありました。
台湾で国民党の大敗は、予想以上の出来事ですが、これからが本番です。
凶悪な中国を前に台湾はいかにして生き延びるのか、このような視点から次回作に期待したと思います。
(HJ生、京都)
(宮崎正弘のコメント)蔡英文の総統就任式は五月二十日です。それまで馬英九政権は続くわけですから、何をしでかすか分からない。そのために米国から監視団的ミッションが台湾入りしています。
台風の目は「ひまわり学生運動」の流れを組む新党の「時代力量」(五議席)が、民進党(68犠牲)と、如何なる連立が組めるか、政策のすりあわせをうまくやれるか、どうかも見所になります。
♪
(読者の声2)本日の(読者声1)當田晋也さんと宮崎さんのやり取りを読ませて頂き改めて、貴メルマガのレベルと格調が高い事に感服しました。
富田さんのコメントが待ち遠しいです。毎号読者の声の方々のご意見を含めて教えられることばかりで本当に有難いと思っております。貴誌が無料であることが信じられないくらいです。
(木内信胤信徒の一人)
♪
(読者の声3)「南モンゴル」の十のための連帯組織宣言」。「クリルタイ」(世界南モンゴル会議)結成大会趣意書です。
http://smldf.org/?p=642
(三浦生)
宮崎正弘の新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘 vs 室谷克実
『悪あがきを繰り返し、突然死の危機に陥る中国と韓国』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
追い詰められた中国と韓国で非常事態が起きているゾ
人民元と中国株の暴落で迫る習近平のXディ
台湾に野党総統の登場で北東アジアの秩序に異変が起こる?
経済から社会、外交まで連鎖崩壊が始まった
(廉価版 1000円+税)
ご注文は下記アマゾンへ(なお2月5日ごろから音声による追加対談の特典がありますので、アマゾンから購入された方は注文受付番号を保管しておいて下さい)。
http://www.amazon.co.jp/dp/4198640963/
宮崎正弘のロングセラー
***********
『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店、1080円)
『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
<宮崎正弘の対談シリーズ>
++++++++++++
宮崎正弘 v 宮脇淳子 『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 石 平 『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック)
宮崎正弘 v 渡邊哲也 『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実 『日本に惨敗しついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎 『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実 『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、1080円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美 『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平 『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
宮崎正弘 v 大竹慎一 『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 西部遭 『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 黄文雄 『世界が知らない中国人の野蛮』(徳間書店)
宮崎正弘 v 佐藤優 『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2016 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
平成28年(2016)2月4日(木曜日)
通算第4798号 <前日発行>
マハティールは「アジア通貨危機」にいかに対処したか
中国がいま行うべき道筋は、見えてきたのではないのか?
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人民元のSDR入りを当面遅らせるとでも言わない限り、市場は納得しないかも知れない。
すでに2015年一年間で、海外からの投資資金のうち、公式統計でも5170億ドルが中国から去った。実際には1兆ドルの資本が海外へ逃げたとみてよい。
中国の経済破綻はもはや疑う余地もなく、株価暴落に連動して人民元は崩落を続けるだろう。
国際的にすべてが連動するため、中国経済が破綻すると世界が同時不況となる。年初来、中国株の崩落で、日本株がもろに影響を受けて下落したように、ウォール街もEU諸国も15-20%も下落している。
逆に言えば、中国経済はそれほど深刻に地球的規模で悪影響をもたらすほどの実力を備えていたのだ。
1997年から始まったアジア通貨危機で、マレーシアのマハティール首相がとった対応策を鮮明に思い出す。
IMFの非難、西側メディアの批判をもろともせずに、マハティール首相は海外流失の規制、つまり海外へ逃げ出す外貨を防ぐために外貨短期取引を事実上閉鎖した。
他方で、マハティールはジョージソロスを攻撃した。まさに中国が、メディアを使ってジョージソロス非難の合唱を初めてように。なんという既視感!
そして内需拡大のため、国内では金融緩和、公共事業を盛り上げた。99年にマレーシア経済は回復した。
IMF勧告に従って逆の政策を執ったのは韓国、タイ、インドネシアだったが、やはり経済は沈没し、その後、長期の経済停滞に喘ぐ。結果を見ればマハティールがIMFに勝利したのである。
さて、この既視感。中国がいま行うべきことを明瞭に示唆しているのではないか。
次の「失われる二十年」は明らかに中国だが、現時点で言えることは世界同時デフレ懸念が拡がる一方とはいえ、対外債務の比率が少ないだけが取り柄なのである。
中国がやるべきこと資本流失規制強化と金融緩和(まさにデジャビ=マハティールの施策)だろう。
英国のフィナンシャルタイムズ(1月26日、社説)「資本規制いがい選択肢はない」とザ・エコノミスト(1月16日号)は「資本規制強化で危機に備えよ」と吠えた。
グローバリズムの先頭に立つメディアが逆のことを主張したのである。
▼日本はどうするのか
巷間「アホノミクス」と悪口を叩くエコノミストが散見されるが、彼らの言い分とはまったく逆で、アベノミクスの矛盾は「保守政権が社会主義リベラルな政策」を選択しているということなのである。ボタンの掛け違いという程度のレベルではない。背広を逆さに着ているようなものだ。
アベノミクスの第二弾は「一億総活性化」だが、介護も子育ても基本の哲学が不在である。
政策レベルでは、黒田バズーカ第三弾が必要(「マイナス金利」は奇策だったが)だ。
また消費税増税延期は当然であり、終局的にはグローバリズムに対抗する「国の個性」の確立が必要である。
(読者の声1)『正論』今月号で台湾特集があり、門田隆将氏の蔡昆燦さん会見記と宮崎さんの台湾総選挙見聞記の二本、どちらも非常に参考になりました。
とくに宮崎さんが、外国人取材班がほとんど行かなかった激戦区の花蓮県へ行かれて、粛美琴が、国民党の金城湯池の選挙区でいかに辛酸をなめながら闘い、当選できたかのルポは読み応えがありました。
台湾で国民党の大敗は、予想以上の出来事ですが、これからが本番です。
凶悪な中国を前に台湾はいかにして生き延びるのか、このような視点から次回作に期待したと思います。
(HJ生、京都)
(宮崎正弘のコメント)蔡英文の総統就任式は五月二十日です。それまで馬英九政権は続くわけですから、何をしでかすか分からない。そのために米国から監視団的ミッションが台湾入りしています。
台風の目は「ひまわり学生運動」の流れを組む新党の「時代力量」(五議席)が、民進党(68犠牲)と、如何なる連立が組めるか、政策のすりあわせをうまくやれるか、どうかも見所になります。
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『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『中国、韓国は自滅し、アジアの時代がやってくる!』(海竜社、1080円)
『中国大破綻 ついに失われる20年に突入する』(PHP研究所、1404円)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々 世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
<宮崎正弘の対談シリーズ>
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宮崎正弘 v 宮脇淳子 『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 石 平 『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック)
宮崎正弘 v 渡邊哲也 『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実 『日本に惨敗しついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎 『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実 『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、1080円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美 『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2016 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示