家計相談支援ー生活困窮者自立支援制度の任意事業 | 日本のお姉さん

家計相談支援ー生活困窮者自立支援制度の任意事業

「生活保護を受けたい」 困窮の裏に障害や浪費…収支に見合わない高額の契約も
西日本新聞 1月25日(月)11時44分配信
支援員が作った優子さんの家計計画表の一部

「仕事がない。生活保護を受けたい」。優子さん(41)=仮名=は昨年6月、町役場で訴えた。役場は県生活自立支援センターを紹介し、センターの依頼で相談支援員のファイナンシャルプランナー江頭こず恵さん(52)が優子さん宅を訪れた。
江頭さんは驚いた。一軒家に車が3台。屋根には、太陽光パネルもあったからだ。

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生活の困窮には、浪費や収支に見合わない高額の契約が隠れていることもある。優子さんのケースが、まさにそうだった。

「家計の問題は世帯の問題」

優子さんは同い年の夫と弟との3人暮らし。以前は3人とも働いていたが、数年前に夫が心臓病を患って失業し、自らも昨年初めに軽作業の仕事を辞めた。土木作業員として働く弟の月収約14万円が頼みという。
「優子さんの仕事が見つかるまで、弟さんにもう少し支援をお願いしましょう」。江頭さんは弟に相談したが、弟にも数百万円の借金があることが分かった。
住宅ローンの残高は約1千万円。月々の支払いに加えて年2回のボーナス払いが1回40万円。優子さん夫婦には、勧誘されるがままに契約した月額7万円の生命保険料代もあった。
食費は3人で月3万円。貯金に余裕はなく住民税も滞納していた。優子さんと夫は軽度の知的障害で中学、高校は特別支援学級に通っていたが、成人後は障害者福祉の支援を受けていないことも分かった。
知的障害者の自立に取り組む長崎県地域生活定着支援センター(長崎市)の伊豆丸剛史所長(40)は「障害者が貧困になるのは、周囲の理解や適切な支えがなく孤立し、生きづらさを抱えた結果」と指摘する。
優子さんは「困っていることを人に話せば、悪いうわさになる。話せないと思った」と、追い詰められるまで誰にも相談しなかったという。
「家計の問題は世帯の問題」と江頭さん。1人の問題を解決しても、他に見落としがあれば改善は難しい。「相談者の話に耳を傾け、世帯全体の問題をひもとくことが大切」と語る。

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経費を一つ一つ書き出して家計計画表に

生命保険は一部を解約。借金は住宅ローンを払いながら他の債務を整理する「個人再生」の手続きが決まった。一般的な就職が難しければ障害者福祉の事業所も紹介するよう、関係機関との調整も始まった。
昨年12月25日、町役場で江頭さんと優子さんは新年の暮らしを話しあった。電気代、水道代、ローンに食費…。経費を一つ一つ書き出して家計計画表にした。
「正月は、レトルトのカレーば食べます」と言う優子さんに、江頭さんは「正月は良いものを食べて、2月までに月4万円稼げる仕事を探しましょう。もう少しの辛抱、きっと良い方向にいきます」と励ました。
優子さんは「履歴書ば、用意したがいいでしょうか」と意欲を見せた。
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■家計相談支援

生活困窮者自立支援制度の任意事業で、借金や料金滞納、収入と支出の管理ができないなど、家計に問題がある人の相談に応じて生活再建を手助けする。家賃や食費、交遊費などの収支を書きだして問題点を把握し、本人に理解させる。自己管理可能な改善計画を立て、継続的に見守り、助言する。債務や就労の問題があれば、関連機関につなぐ。計画的やりくりで浪費や悪循環に陥ることを防ぐ。
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西日本新聞社
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160125-00010007-nishinp-soci&p=1

【ともに自立へ~生活困窮者支援制度】(1) 借金苦の母子 離婚し再出発、復学も
2016年01月22日 22時00分
発達障害

「3人仲良し」。志織さんは長男と次男の小さな手を握った

県生活自立支援センターの相談支援員で社会福祉士の松尾玲奈さん(29)は昨年12月24日、県内の公営住宅にいた。「電話がつながらなかった」と告げると、相談者の志織さん(21)=仮名=は薄暗い部屋で「携帯電話のお金を払ってなくて、止まってました」と話した。

松尾さんは志織さんへの支援開始後、生活状況を確認するための面談に訪れた。電話がつながらなかった理由が事故でないと分かり、ほっとした。「キャッ、キャッ」と笑う子どもたちの声も元気そうだった。

クリスマスイブ。この日も志織さんは長男(3)と次男(1)を高校生の弟に託し、深夜までの飲食店アルバイトに向かった。

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「離婚したい。でも、どうやって生きていけばいいのか分からない」

志織さんが助けを求めたのは昨年7月だった。佐賀市にある県立男女共同参画センター(通称アバンセ)の女性総合相談窓口に駆け込み、紹介されたのが県生活自立支援センターだ。

中学3年のころに両親が離婚し、母が出ていった。志織さんは通信制高校へ進学した。学費を稼ぐアルバイト先で出会った5歳上の男性と交際し、長男を妊娠。高校は休学し、実家を出て結婚、育児に励んだ。ところが次男を妊娠中に夫が失業し、多額の借金も判明。長男に発達障害があることも分かった。

「頼れる人が誰もいなかった」という。「自分で子育てし、自力で生活せないかんと思っていた」

仕事も2児を預ける場所も見つからず、消費者金融通いで家賃や生活費を賄った。自己破産した夫にも金を渡し、借金は200万円を超えた。返せるめどもなく、母子は孤立した。

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支援センターの対応は早かった。数日後には支援員数人が志織さん宅を訪問。話し合いの場を設けて協議離婚が成立した。

生活が安定するまで実家に身を寄せることになった。児童扶養手当や保育所、発達障害児の通所施設の利用方法も教えてもらい、申請には松尾さんが付き添った。借金は法テラス佐賀に相談し、少額ずつの返済が決まった。初めて知る制度や情報ばかりだった。

「支援なしでは子どもたちも、お金もどうなっていたか。うれしかった。人生失敗したって悔やんでいたけど、今は少し前向きです」と志織さんは話す。

ずっと母子で家にこもっていた生活から少し抜け出した。どうしようもなく不安になることもあるが、支援員とのちょっとした会話が心の支え。高校も春に復学し、年内の卒業を目指す。就職後は実家を出て母子3人で暮らしたいと目標もできた。

「自立して、しっかり育てたい。この子たちは心配なく高校に行けるよう、貯金もしたい」

◇ ◇

生活保護を受給しなければならなくなる前に自治体が支援する生活困窮者自立支援法が昨年4月に施行されて約10カ月。取り組みは有効か。県内の現場から報告する。

■生活困窮者自立支援制度

経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる恐れのある人の自立を目的に、国が本年度に始めた。生活保護に至る前の「第2のセーフティーネット」とも呼ばれる。生活困窮者自立支援法に基づき、自治体に必須事業として相談支援や支援計画の作成、住居確保金支援などを定め、民間委託も可能。任意事業として就労準備や家計相談、子どもの学習支援などもできるが、内容は自治体によって異なる。

=2016/01/20付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/220048

内容は自治体によって異なる。どう、異なるのだろう?でも、この制度はイイネ!