「(我々は)隙だらけだ。まったく隙だらけだ」と、レミューは嘆いている。
わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」3798号
2016(平成28)年1 月 14 日(木)
私の「身辺雑記」(302)
━━━━━━━━━━━
平井 修一
■1月10日(日)、朝は室温13度、快晴、ハーフ散歩。
窪田順生氏/ノンフィクションライターの論考『単なる「言いたい放題」 ではない!トランプ氏の老獪なメディア戦術』(ダイヤモンドオンライン 1/9)はいいことをついている。(平井:敬称は略)
<トランプの勢いとまらない。昨年末、CNNとORCが発表した世論調査で は、米大統領選に向けた共和党の指名争いで、トランプが支持率39%と、 他の候補者に圧倒的な差をつけている。
イスラム教徒の入国禁止、メキシコとの国境に高い壁を建てろ、などなど 政治生命を失いかねない放言を繰り返しているにもかかわらず、この強さ の秘密はいったいどこにあるのか。
日本ではトランプのことは「差別主義者で、目立ちたがり屋の放言おじさ ん」ととらえられているが、アメリカでは「取引の天才」というイメージ も強い。ニューヨークの不動産市場という、生き馬の目を抜く世界でめき めきと頭角をあらわし、一代で巨万の富を築いたからだ。
その「取引」でトランプが重要視しているのが、有名な「レバレッジをき かせる」(相手が望むものをもって交渉を有利に進める)ことや「市場を 知る」ことなのだが、そのなかにトランプならではという独自のノウハウ がある。
それが「自分を宣伝する」ということだ。
トランプは若い頃から女性問題などさまざまなスキャンダルで全米を騒が せてきているが、そのようなお騒がせセレブの立場から、ビジネスにおけ る情報戦でマスコミを最大限利用すべきという結論に至っているのだ。
おそらくトランプは確信犯的に(オバマの)「逆張り」をしている可能性 が高い。
ロイターが世界中の大統領の政権末期の支持率と、その大統領の政策を踏 襲する後継者が当選を果たす確率を調査したところ、大統領の支持率が 55%以上なければ後継者は当選しないことがわかった。
オバマの支持率は45%前後。この調査結果に照らし合わせると、後継であ る民主党候補者が当選する可能性はわずか14%にすぎない。
これはつまり「不人気大統領」の思想から離れれば離れるほど、有権者の 支持が高まるということだ。
こういう「市場の動向」を知った「取引の天才」はどうするか。オバマの 「逆張り」を徹底的に行うことで、「オバマと最も遠い候補者」というブ ランディングをするのではないか。
事実、緻密な戦略があったとしか思えない「放言」もある。
昨年9月、トランプは同じく共和党の候補者争いをしている(有力候補 の)ジェブ・ブッシュを「大口献金者の操り人形」とバッサリやった。実 はこの一言で、トランプは不利な状況を一気にひっくり返したのである。
今回の下馬評では「州知事経験者が有利」とされていた。オバマが上院議 員を1期しかつとめていないことで、「経験不足」を指摘する声が多く、 次期大統領はその反動で歴代米大統領に多くみられる「州知事経験者」に 支持が集まるとみられていたのだ。
実際にピュー・リサーチ・センターが2015年3月におこなった世論調査で は、共和党支持者の57%が、候補者に必要な資質として「経験と実績」を 挙げたていた。政治経験ゼロのトランプにとって「逆風」であることは言 うまでもない。
それが9月の同調査では、「経験と実績」を期待する支持者が29%にガク ンと急落。かわりに65%が「新しい考えや異なった手法」を求めた。
もうお分かりだろう、ジェブ・ブッシュという「プロ政治家」の本質的な 弱点をつく「放言」を放ったことで、世論がガラリと変わったのである。 トランプの場合は自身がその「大口献金者」として、歴代大統領に莫大な 献金していたということはアメリカ人なら誰でも知っている。「放言」と はいえ、説得力は抜群である。
選挙というのは、有権者との「取引」といえなくもない。そういう意味で は、「取引の天才」であるトランプが頭ひとつ抜け出るのは当然のことな のかもしれない。ただ、得意の宣伝で「オバマと正反対の男」というブラ ンディングは確立できたが、本当の勝負はこれからだ。それはトランプ自 身もよくわかっていることだろう。
「世間をだますことはできない。少なくともそう長くは無理だ。期待感を あおり、大々的に宣伝してマスコミにとりあげられ、ひと騒ぎすることは できる。しかし実際にそれだけのものを実行しなければ、やがてはそっぽ を向かれてしまう。不動産業界でも同様の例がいくつもある。話は大きい が、それだけものを実行できない連中がわんさかいるのだ」(「トランプ 自伝」ちくま文庫)
トランプが生き馬の目を抜く「実業」の世界で生き抜き、常人では成し得 なかった大きな結果を出してきたことは揺るぎない事実であり、あのプー チンも「聡明で才能に恵まれた人物であることは疑いがない」と高く評価 している。
果たして今回もその実行力をみせつけることができるのか。候補者指名争 いもいよいよ本格化してくるなかで、「取引の天才」の次の一手に注目し たい>(以上)
もしかしたら大統領? 中共にとってはトランプもヒラリーもやっかいだ ろうが、日本にとってはトランプの方がいい。彼は中共に批判的で、日米 安保同盟の片務性是正、貿易不均衡是正を求めているし、ケネディ“イル カ”大使は力不足だと論じている。真っ当な主張だ。
ヘタレの米国さようなら、世界は剛腕辣腕完全武装の“腕白でもいい”強い 米国を必要としている。
ところが共和党自体が本命ブッシュが落馬して揺らいでいる。ウィリア ム・ドブソン/スレート誌政治・外交担当エディターが「共和党内エリー ト層は、草の根の保守層の支持でトランプ、テッド・クルーズが党トップ に君臨する事態を恐れている」と書いている(ニューズウィーク1/8)。
お行儀のよい共和党エリート(平井:軟派)は暴走しそうな汗馬、駿馬は 嫌なのだ。
どうなるものやら。だから世界のトップを決める米国大統領選は面白い?
■1月11日(月)、成人の日、朝は室温12.5度、晴、ハーフ散歩。
昨晩遅くにN母子がスノボから帰ってきた。苗場の近くの神立(かんだ つ)高原スキー場で「広くて雪質も良かった」そうだ。初めて聞いた地名だ。
サイトには「関越道湯沢I.Cから約1km、3分とアクセス抜群! 首都圏か ら一番近い天然雪スキー場」とあった。新潟県南魚沼郡湯沢町神立。知ら なかった。
Nの土産は「信玄餅」。上越で遊んで、甲州の名物が土産というの は・・・どうなんだろう。
今朝の「頂門」に「ベトナムも多様化した。コーヒーひとつをとってみて も選択肢が現れたのは、ここ5年くらいのことで、たまにゲイシャまで飲 めたりするから隔世の感がある」とあった。
“ゲイシャを飲む”? 芸者は舐めたり抱いたりすることはあるだろうが、 飲めるのか。大蛇のようにごっくんするのか。
調べたら世界的に人気のコーヒー豆だった。コーヒー店のサイトにはこう あった。
<今年もついに、この季節がやってきましたね。もはやお祭りといっても 良いかもしれません。去年に引き続き、今年もアイツがやってきましたー!
そう、パナマ/エスメラルダ農園のゲイシャです!
ゲイシャが世界の注目を集めたのは2004年、ベスト・オブ・パナマという パナマの国際品評会です。1位に輝いたエスメラルダ農園のゲイシャ種は 当時の最高価格、21アメリカドルで落札されました。1!)5千円という破格 の落札価格であり、その後も2007年まで連続で1位に輝きました>
ゲイシャ・・・ね・・・「フジヤマ」「ハラキリ」「ゲイシャ」「スシ」 「テンプラ」「スキヤキ」・・・、ま、戦後のドル稼ぎでこれを世界にア ピールしたのはJTBなど日本自身だから、今更「ゲイシャ」をコーヒーの 名称にするな、なんて言えないわな。
「トルコ」はすっかり「ソープ」に代わったから、「ゲイシャ」もせめて 「メイド」にしてくれないか。
とかくこの世は「知らないことだらけ」だが、パリは「隙だらけ」。
ニューズウィーク1/8「パリは隙だらけ 週刊誌襲撃から1年目に再び起 きたテロ」から。
<昨年1月にパリの風刺週刊誌シャルリ・エブドの本社が襲撃されて17人 が殺害されてからちょうど一年目にあたる今週7日、パリ北部の警察署に 刃物を持った男が「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら侵 入し、警察に射殺された。
今回の犯行とISISの関連はまだわかっていないが、昨年の襲撃事件から ちょうど一年目の日に事件が起きたことに、パリの市民は衝撃を受けている。
「この日、特にパリは緊張していた」と、地政学講師のミシェル・レ ミューは話している。「テロリストたちが、市民の身近に存在しているこ とを思い知らせるために何らかの行動を起こすだろうと、多くの市民は予 測していた」
「(我々は)隙だらけだ。まったく隙だらけだ」と、レミューは嘆いている。
レミューの友人で、シャルリ・エブドに寄稿していた精神科医のエルザ・ チャヤットは、昨年襲撃事件が発生した時、編集部にいたために殺害され た。「私は57歳だが、その時は赤ん坊のように泣いた。エルザがどれだけ 柔軟で、偏見の無い女性だったか。移民に対しても固定観念は持っていな かった。とてもオープンな人だった」
パリ在住のイギリス人作家ルーシー・ワダムは、この一年でパリの街が大 きく変わったと話している。「シャルリ・エブド襲撃事件の後も、パリの 人々はそれまでのやり方を変えず、街頭に出てデモに参加していた。フラ ンスの歴史の中で繰り返されてきたのと変わらない反応だった」
「しかし昨年11月の同時テロの衝撃は余りに強烈だった。パリの人々は怒 りの中で、街頭デモで何かを変えられるとは信じられなくなってしまった」
現在パリは静まり返っているが、それは「非常事態宣言が理由なのかどう かはわからない」とワダムは言う。むしろ、フランスが直面する危機に対 して、街頭デモで意思表示をしようという気持ちが人々から失われたので はないか、という。「この一年でパリは、本当に劇的に変わってしまっ た」>(以上)
目には目を、歯には歯を、銃には銃を、襲撃には襲撃を、攻撃は最大の防 御なり。お花畑リベラルの連中も少しは目が覚めたか。イスラム過激派は 狂気を宿している、危険だという認識が必要だ。AFPのニュースから。
<【2015/11/15 AFP】2016年米大統領選挙の共和党の候補者指名を争うド ナルド・トランプ氏は14日、フランス・パリで発生し、少なくとも129人 が犠牲になった連続襲撃事件について、もし民間人が武器を所持していれ ば「事態は違っていただろう」と発言した。
テキサス州を遊説したトランプ氏は、仏パリでの事件の犠牲者に黙祷をさ さげた後、「パリの場合、世界で最も厳しい銃規制が課せられており、悪 人を除いては誰も銃を所持していない」と述べた。
護身のために時折、銃を携帯すると認めているトランプ氏は、「(被害者 ら民間人は)誰も銃を所持していなかった。容疑者たちは被害者たちの一人ずつに向けて発砲していった。その後、警官隊が到着して大規模な銃撃戦となり、最後にはテロリストたちを射殺した」と話した。
【2015/11/19 AFP】パリで起きた同時テロを受け、フランスの警察当局は 12日、非番の警察官に銃の携行を許可した。
AFPが入手した指示書によれば、非番の警察官は、「混乱」を防ぐために 警察官の腕章を着用することを条件に、テロ事件に遭遇した際の発砲も許可された>
フランスでは民間で所持されている銃は1900万丁ほどあり、銃所持率の ワールドランキングでいうとトップ10に入るそうだから、トランプの言葉 には誤解があるものの基本的に正論だ。国境がザルでテロリストが容易に 武器を入手、持ち込みできる欧州では、わが身や家族を守るために銃の携 行が必要ではないか。
デモでテロがなくなるわけではない。諜報の他にも交番や自警団も必要 だ。何よりも国境管理と偽装難民の強制送還が大事だ。オランドはテロ関 係者はフランス国籍であっても国籍を剥奪するそうだ。
産経パリ支局長を永年務めた山口昌子氏の論考「シャルリ襲撃から1年、テロにも政府にも怒るパリ市民」(JBプレス1/8)から。
<テロ対策の中で、今後、最も議論を呼びそうなのが、テロ予備軍、つまり「IS」に参加するためにシリアに出発する若者やISへの勧誘などを行っ た者に対する“国籍剥奪”だ。
今回の同時テロの犯人10人のうち5人がフランス人だった。またISに参加 したフランス人571人のうち141人が“戦死”しているという状況を踏まえて のテロ対策の一環である。
フランスは生地(せいち)主義を取っており、「フランスに生まれた者は フランス人」だ。(シャルリーエブドを襲撃した)クアシ兄弟はパリ市内 で生まれたフランス人である。
しかも、これまでタブーだった「フランスで生まれた者」も例外なく対象 にするという。社会党内にも反対者がいる中、テロ対策の一環として、オ ランド政権がこのタブーを破ることになれば、「フランス共和国の柱が崩 れる」との批判もあるが・・・>
どこまでできるのか。国籍を剥奪されると手厚い生活保護が受けられないそうで、かなりの圧力にはなるだろう。
テロ対策は金もかかるが、ボランティアなどの協力を得ることも必要だろう。日本もしっかり警戒すべきである。
海外の報道によるとドイツのケルンでは1/9に安易な移民受け入れに反対 するPEGIDA (Patriotic Europeans Against the Islamisation of the West、欧州イスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人) のデモに催涙弾が 撃ち込まれた。
“Rapefugees not welcome”(強姦難民は歓迎しない)“Merkel must go” (メルケル行っちまえ)などと叫ぶデモに対して、難民に寄り添う警察は 容赦なく攻撃する。末期的なドイツ、欧州。警戒しないとこういうことに なる。「難民受け入れに反対」の人が急増している。当然だ。
■1月12日(火)、朝は室温12度、微雨、2/3散歩。
中共のナンバー5、劉雲山(上海閥、瀋陽軍区応援団長、北の友達)が昨 年12月に失脚したようだ。産経1/11から。
<北朝鮮の朝鮮中央テレビが昨年10月の朝鮮労働党創建70年の記念行事を 伝える目的で(1月)9日夜に放映した記録映画に、行事に出席し金正恩第 1書記の隣にいた中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員の姿が写って いないことが10日分かった。韓国の聯合ニュースが報じた>
北にとって落馬した劉雲山は賞味期限切れなのか。「水爆実験」は劉雲山 を排除した習近平に瀋陽軍区が報復したのか。個人も国家も一寸先は闇。 諸行無常だな。
衆知1/9「石平/拓殖大学客員教授著『なぜ中国はいつまでも近代国家にな れないのか』より」は大いに勉強になった。氏は悪党中共が日本にもたらした数少ない善、最高レベルの知性だ。以下引用する。
<*日本は近代を「超克」した
ちょうど本書の執筆にかかっている2015年10月初旬、北里大学特別栄誉教 授の大村智氏ら3氏が2015年のノーベル賞「生理学・医学賞」を受賞した とのニュースが飛び込んできた。受賞を受けての記者会見で、大村教授は こう語った。
「私の仕事は微生物の力を借りているだけのもので、私自身がえらいもの を考えたり難しいことをやったりしたわけじゃなくて、すべて微生物が やっている仕事を勉強させていただいたりしながら、今日まで来てるというふうに思います」
「私の仕事は微生物の力を借りているだけだ」という大村教授の名セリフ を聞いたとき、テレビの前に座っている私は大きな感動に包まれたことを 今でも鮮明に覚えている。自分の研究対象となるちっぽけな存在の微生物 にたいしても、上から目線ではなく、むしろ感謝の意を込めて「力を借りた」と言う─―、何という謙虚の精神の表れなのか。
よく考えてみると、大村教授のこのような謙遜な態度は、まさに「近代の超克」という意味合いにおいての日本独特の精神を端的に現しているので はないかと思い至った。
いわば「近代」を形づくる要素の一つは、まさに近代的科学技術の発展で あるということは言うまでもないが、近代的科学技術というものは、「人間の理性」にたいする無上の信頼と「人間中心」という観念の確立から始まるものである。
理性をもつ人間が森羅万象の中心となって、自然万物を自由自在に観察したり操縦したりしてそれを人間のために利用するというのは、自然科学と 技術の成り立つ基本となる精神である。その際、自然万物を観察したり 弄ったりする人間が森羅万象の頂点に立っていることは自明の公理であり、神様の下では人間が一番偉い」というのは、まさに西洋流の近代文明の基本的考え方であった。
その反面、まさにこのような考え方から「人間の傲慢」という「近代の持病」が生まれてきて、結果的には自然環境の破壊などの現代的問題を生み出すに至ったことは周知のとおりだ。
しかし日本人はある意味では、この「近代の持病」を見事に超克してい る。もともと日本には「八百万の神」という独特の宗教観・世界観がある。そしてそれが現代になっても脈々と受け継がれている。
このような世界観から生み出されるのはすなわち、森羅万象すべてにたい する人間の謙遜と感謝の姿勢であろうが、前述の大村教授の発言は、まさにこのような日本的な「人間姿勢」の表れであろう。
*中国の近代化を妨げる中華思想
実は大村教授のノーベル賞は、日米中3人の科学者の受賞で、中国人科学者も一人、受賞を果たしている。屠〓〓(口偏に幼、と・ゆうゆう)氏と いう女性科学者が中華人民共和国民として初めて自然科学分野のノーベル 賞、ノーベル医学・生理学賞を受賞したのである。
中国本土で研究活動する中国人の自然科学分野ノーベル賞の初受賞は、当然、中国国内では大ニュースとして取り上げられ、国中が興奮と喜びの ムードに包まれた。しかしそのとき、この祝賀ムードの中でも一つ、普通の日本人の感覚からすればいかにも異様な光景が広がっていたのである。
それは、中国国内のメディアと各界の「識者」たちは歩調を合わせて、屠氏の受賞を単なる一人の優れた科学者の業績としてではなく、むしろ「わが偉大なる中華民族の誇り」として、「わが偉大なる中華民族」の優秀さの証明として大きく喧噪している点である。
それほどまでに「中華民族の優秀さ」を信じ込みたいという彼らの深層心 理の背後にあるのはやはり、先祖代々から中国人の血に受け継がれてきている「中華思想」である。
5千年以上の悠久なる歴史を持つ中華民族こそが世界の頂点に立つ最優秀民族であり、中華民族の生み出す中華文明こそは世界文明の最高峰である という認識こそがこの「中華思想」の真髄たるものであり、中国人自身が 古来から現代に至るまで心の中に持つ揺るぎない信念なのである。
しかし問題は、このような頑固なる妄想が、実は、中国という国の近代化を阻止する大きな妨げとなっていることである。日本の場合、黒船の来航 と共に西洋文明が大波のように「襲来」したことに対して、当時の日本人 が維新運動を起こして政治体制の刷新を成し遂げた。
その直後から、「文明開化」のスローガンの下で虚心坦懐に西洋の近代文 明を迅速かつ全面的に導入して日本の近代化と富国強兵を計った。その結果、日本はアジアで率先して立派な近代国家となったことは周知のとおりである。
しかし中国の場合、西洋文明の「襲来」への対応は全然違っていた。大英 帝国がアヘン戦争を起こして清王朝時代の中華帝国を完膚なきまで打ち 破ったのは1840年だったが、その20数年後の1860年代になってから、西洋 の軍事力の強さを認識した中国がやっと重い腰をあげて西洋の技術を取り 入れて「強兵」を計るための「洋務運動」を始めた。
しかしそのときでも、中国のエリートたちは依然として中華文明こそが世界最高の文明だと思い込んでいた。彼らは西洋の軍事技術をやむを得ず吸収しなければならないこととなったが、西洋の文明全般を導入する気持ち はさらさらなかった。
政治制度や教育制度を(西洋風に)刷新するための「変法運動」も結局、 「中華こそが世界一」だと信じて疑わない「守旧派」の抵抗に遭って失敗 に終わった。
「変法運動」が失敗してから、古い体制のままの清王朝がなお10年以上の 余命を保ったが、1911年に中国版の近代革命の辛亥革命が起こり、その翌 年の1912年に清王朝は潰れ、中国史上初めての共和国である中華民国が樹立された。
つまりアヘン戦争から71年後にして中国という国はやっと、日本でいう明治政府の成立と同じような起点に立った。日本では1853年の黒船の来航か ら1868年の明治政府成立まで15年であったが、中国ではそのために費やし た時間はなんと71年であった。
そして中国版の「維新運動」である辛亥革命がやっと成功したとき、日本はすでに君主立憲の近代国家となって世界の先進国の仲間入りを果たして いる。
*日本で学んだ先覚者たちの業績と挫折
日本と比べて、中国の近代化が徹底的な遅れをとった最大の理由の一つ は、やはりこの国の中華思想であった。根強い中華思想があったからこそ、当時の中国のエリートたちは最後の最後まで西洋文明の導入を拒み続 けた。そしてそれが結果的には中国自身の近代化を遅らせ、中国という国 を西洋列強の「半植民地」にしてしまった。
もちろん、中国の「半植民地化」へのプロセスにおいて、一部の中国人の 先覚者たちは徐々に中華思想の有害性に気がつき、この根強い伝統思想との格闘を続けていた。ある意味、アヘン戦争からの中国の近代史は、まさに中国人自身による、中華思想との格闘の歴史でもあった。
しかし近代以来の歴史において、ほとんどの先覚者がその戦いに敗れてしまい、中華思想だけが古代から蘇った亡霊のように現在に至るまで生き続 けている。
近代になってから、日本という国と縁を持った多くの中国人のエリートた ちは、まさにこの日本から「近代」というものを中国に「輸入」すること によって、あらゆる方面における祖国の近代国家建設に尽力していた。彼らの努力は当然、中国の近代化を進展させるのに大いに役に立ち、中国は 一時、随分前進した。
しかし最後のところ、彼らの努力はやはり失敗に終わった。中国の近代化 は結局1949年の共産党政権の成立をもって頓挫してしまい、中国という国 は一夜にして、清王朝崩壊以前の前近代的独裁国家に戻った。そして今日に至っても、中国の国家体制と支配的イデオロギーはまさに「前近代」の ままである。
日本と深い関わりを持った彼らの成功と失敗を吟味していけば、明治以来 の日本と中国との関係、あるいは日本という国と中国の近代化との関係性もわかってくるのであろう。そして、「日本が近代化に成功して近代を超 克できたのに、どうして中国は失敗に終わったのか」というわれわれが疑 問に抱く最大の問題もまた、それによって解明されていくのではないか> (以上)
中共独裁である限り支那は「前近代」のままだろう。そして世界を脅かす 「不安要因」であり続けるだろう。年初から経済混乱をもたらしている。 共産党にレッドカードを突きつけなければならない。(2016/1/12)
2016(平成28)年1 月 14 日(木)
私の「身辺雑記」(302)
━━━━━━━━━━━
平井 修一
■1月10日(日)、朝は室温13度、快晴、ハーフ散歩。
窪田順生氏/ノンフィクションライターの論考『単なる「言いたい放題」 ではない!トランプ氏の老獪なメディア戦術』(ダイヤモンドオンライン 1/9)はいいことをついている。(平井:敬称は略)
<トランプの勢いとまらない。昨年末、CNNとORCが発表した世論調査で は、米大統領選に向けた共和党の指名争いで、トランプが支持率39%と、 他の候補者に圧倒的な差をつけている。
イスラム教徒の入国禁止、メキシコとの国境に高い壁を建てろ、などなど 政治生命を失いかねない放言を繰り返しているにもかかわらず、この強さ の秘密はいったいどこにあるのか。
日本ではトランプのことは「差別主義者で、目立ちたがり屋の放言おじさ ん」ととらえられているが、アメリカでは「取引の天才」というイメージ も強い。ニューヨークの不動産市場という、生き馬の目を抜く世界でめき めきと頭角をあらわし、一代で巨万の富を築いたからだ。
その「取引」でトランプが重要視しているのが、有名な「レバレッジをき かせる」(相手が望むものをもって交渉を有利に進める)ことや「市場を 知る」ことなのだが、そのなかにトランプならではという独自のノウハウ がある。
それが「自分を宣伝する」ということだ。
トランプは若い頃から女性問題などさまざまなスキャンダルで全米を騒が せてきているが、そのようなお騒がせセレブの立場から、ビジネスにおけ る情報戦でマスコミを最大限利用すべきという結論に至っているのだ。
おそらくトランプは確信犯的に(オバマの)「逆張り」をしている可能性 が高い。
ロイターが世界中の大統領の政権末期の支持率と、その大統領の政策を踏 襲する後継者が当選を果たす確率を調査したところ、大統領の支持率が 55%以上なければ後継者は当選しないことがわかった。
オバマの支持率は45%前後。この調査結果に照らし合わせると、後継であ る民主党候補者が当選する可能性はわずか14%にすぎない。
これはつまり「不人気大統領」の思想から離れれば離れるほど、有権者の 支持が高まるということだ。
こういう「市場の動向」を知った「取引の天才」はどうするか。オバマの 「逆張り」を徹底的に行うことで、「オバマと最も遠い候補者」というブ ランディングをするのではないか。
事実、緻密な戦略があったとしか思えない「放言」もある。
昨年9月、トランプは同じく共和党の候補者争いをしている(有力候補 の)ジェブ・ブッシュを「大口献金者の操り人形」とバッサリやった。実 はこの一言で、トランプは不利な状況を一気にひっくり返したのである。
今回の下馬評では「州知事経験者が有利」とされていた。オバマが上院議 員を1期しかつとめていないことで、「経験不足」を指摘する声が多く、 次期大統領はその反動で歴代米大統領に多くみられる「州知事経験者」に 支持が集まるとみられていたのだ。
実際にピュー・リサーチ・センターが2015年3月におこなった世論調査で は、共和党支持者の57%が、候補者に必要な資質として「経験と実績」を 挙げたていた。政治経験ゼロのトランプにとって「逆風」であることは言 うまでもない。
それが9月の同調査では、「経験と実績」を期待する支持者が29%にガク ンと急落。かわりに65%が「新しい考えや異なった手法」を求めた。
もうお分かりだろう、ジェブ・ブッシュという「プロ政治家」の本質的な 弱点をつく「放言」を放ったことで、世論がガラリと変わったのである。 トランプの場合は自身がその「大口献金者」として、歴代大統領に莫大な 献金していたということはアメリカ人なら誰でも知っている。「放言」と はいえ、説得力は抜群である。
選挙というのは、有権者との「取引」といえなくもない。そういう意味で は、「取引の天才」であるトランプが頭ひとつ抜け出るのは当然のことな のかもしれない。ただ、得意の宣伝で「オバマと正反対の男」というブラ ンディングは確立できたが、本当の勝負はこれからだ。それはトランプ自 身もよくわかっていることだろう。
「世間をだますことはできない。少なくともそう長くは無理だ。期待感を あおり、大々的に宣伝してマスコミにとりあげられ、ひと騒ぎすることは できる。しかし実際にそれだけのものを実行しなければ、やがてはそっぽ を向かれてしまう。不動産業界でも同様の例がいくつもある。話は大きい が、それだけものを実行できない連中がわんさかいるのだ」(「トランプ 自伝」ちくま文庫)
トランプが生き馬の目を抜く「実業」の世界で生き抜き、常人では成し得 なかった大きな結果を出してきたことは揺るぎない事実であり、あのプー チンも「聡明で才能に恵まれた人物であることは疑いがない」と高く評価 している。
果たして今回もその実行力をみせつけることができるのか。候補者指名争 いもいよいよ本格化してくるなかで、「取引の天才」の次の一手に注目し たい>(以上)
もしかしたら大統領? 中共にとってはトランプもヒラリーもやっかいだ ろうが、日本にとってはトランプの方がいい。彼は中共に批判的で、日米 安保同盟の片務性是正、貿易不均衡是正を求めているし、ケネディ“イル カ”大使は力不足だと論じている。真っ当な主張だ。
ヘタレの米国さようなら、世界は剛腕辣腕完全武装の“腕白でもいい”強い 米国を必要としている。
ところが共和党自体が本命ブッシュが落馬して揺らいでいる。ウィリア ム・ドブソン/スレート誌政治・外交担当エディターが「共和党内エリー ト層は、草の根の保守層の支持でトランプ、テッド・クルーズが党トップ に君臨する事態を恐れている」と書いている(ニューズウィーク1/8)。
お行儀のよい共和党エリート(平井:軟派)は暴走しそうな汗馬、駿馬は 嫌なのだ。
どうなるものやら。だから世界のトップを決める米国大統領選は面白い?
■1月11日(月)、成人の日、朝は室温12.5度、晴、ハーフ散歩。
昨晩遅くにN母子がスノボから帰ってきた。苗場の近くの神立(かんだ つ)高原スキー場で「広くて雪質も良かった」そうだ。初めて聞いた地名だ。
サイトには「関越道湯沢I.Cから約1km、3分とアクセス抜群! 首都圏か ら一番近い天然雪スキー場」とあった。新潟県南魚沼郡湯沢町神立。知ら なかった。
Nの土産は「信玄餅」。上越で遊んで、甲州の名物が土産というの は・・・どうなんだろう。
今朝の「頂門」に「ベトナムも多様化した。コーヒーひとつをとってみて も選択肢が現れたのは、ここ5年くらいのことで、たまにゲイシャまで飲 めたりするから隔世の感がある」とあった。
“ゲイシャを飲む”? 芸者は舐めたり抱いたりすることはあるだろうが、 飲めるのか。大蛇のようにごっくんするのか。
調べたら世界的に人気のコーヒー豆だった。コーヒー店のサイトにはこう あった。
<今年もついに、この季節がやってきましたね。もはやお祭りといっても 良いかもしれません。去年に引き続き、今年もアイツがやってきましたー!
そう、パナマ/エスメラルダ農園のゲイシャです!
ゲイシャが世界の注目を集めたのは2004年、ベスト・オブ・パナマという パナマの国際品評会です。1位に輝いたエスメラルダ農園のゲイシャ種は 当時の最高価格、21アメリカドルで落札されました。1!)5千円という破格 の落札価格であり、その後も2007年まで連続で1位に輝きました>
ゲイシャ・・・ね・・・「フジヤマ」「ハラキリ」「ゲイシャ」「スシ」 「テンプラ」「スキヤキ」・・・、ま、戦後のドル稼ぎでこれを世界にア ピールしたのはJTBなど日本自身だから、今更「ゲイシャ」をコーヒーの 名称にするな、なんて言えないわな。
「トルコ」はすっかり「ソープ」に代わったから、「ゲイシャ」もせめて 「メイド」にしてくれないか。
とかくこの世は「知らないことだらけ」だが、パリは「隙だらけ」。
ニューズウィーク1/8「パリは隙だらけ 週刊誌襲撃から1年目に再び起 きたテロ」から。
<昨年1月にパリの風刺週刊誌シャルリ・エブドの本社が襲撃されて17人 が殺害されてからちょうど一年目にあたる今週7日、パリ北部の警察署に 刃物を持った男が「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら侵 入し、警察に射殺された。
今回の犯行とISISの関連はまだわかっていないが、昨年の襲撃事件から ちょうど一年目の日に事件が起きたことに、パリの市民は衝撃を受けている。
「この日、特にパリは緊張していた」と、地政学講師のミシェル・レ ミューは話している。「テロリストたちが、市民の身近に存在しているこ とを思い知らせるために何らかの行動を起こすだろうと、多くの市民は予 測していた」
「(我々は)隙だらけだ。まったく隙だらけだ」と、レミューは嘆いている。
レミューの友人で、シャルリ・エブドに寄稿していた精神科医のエルザ・ チャヤットは、昨年襲撃事件が発生した時、編集部にいたために殺害され た。「私は57歳だが、その時は赤ん坊のように泣いた。エルザがどれだけ 柔軟で、偏見の無い女性だったか。移民に対しても固定観念は持っていな かった。とてもオープンな人だった」
パリ在住のイギリス人作家ルーシー・ワダムは、この一年でパリの街が大 きく変わったと話している。「シャルリ・エブド襲撃事件の後も、パリの 人々はそれまでのやり方を変えず、街頭に出てデモに参加していた。フラ ンスの歴史の中で繰り返されてきたのと変わらない反応だった」
「しかし昨年11月の同時テロの衝撃は余りに強烈だった。パリの人々は怒 りの中で、街頭デモで何かを変えられるとは信じられなくなってしまった」
現在パリは静まり返っているが、それは「非常事態宣言が理由なのかどう かはわからない」とワダムは言う。むしろ、フランスが直面する危機に対 して、街頭デモで意思表示をしようという気持ちが人々から失われたので はないか、という。「この一年でパリは、本当に劇的に変わってしまっ た」>(以上)
目には目を、歯には歯を、銃には銃を、襲撃には襲撃を、攻撃は最大の防 御なり。お花畑リベラルの連中も少しは目が覚めたか。イスラム過激派は 狂気を宿している、危険だという認識が必要だ。AFPのニュースから。
<【2015/11/15 AFP】2016年米大統領選挙の共和党の候補者指名を争うド ナルド・トランプ氏は14日、フランス・パリで発生し、少なくとも129人 が犠牲になった連続襲撃事件について、もし民間人が武器を所持していれ ば「事態は違っていただろう」と発言した。
テキサス州を遊説したトランプ氏は、仏パリでの事件の犠牲者に黙祷をさ さげた後、「パリの場合、世界で最も厳しい銃規制が課せられており、悪 人を除いては誰も銃を所持していない」と述べた。
護身のために時折、銃を携帯すると認めているトランプ氏は、「(被害者 ら民間人は)誰も銃を所持していなかった。容疑者たちは被害者たちの一人ずつに向けて発砲していった。その後、警官隊が到着して大規模な銃撃戦となり、最後にはテロリストたちを射殺した」と話した。
【2015/11/19 AFP】パリで起きた同時テロを受け、フランスの警察当局は 12日、非番の警察官に銃の携行を許可した。
AFPが入手した指示書によれば、非番の警察官は、「混乱」を防ぐために 警察官の腕章を着用することを条件に、テロ事件に遭遇した際の発砲も許可された>
フランスでは民間で所持されている銃は1900万丁ほどあり、銃所持率の ワールドランキングでいうとトップ10に入るそうだから、トランプの言葉 には誤解があるものの基本的に正論だ。国境がザルでテロリストが容易に 武器を入手、持ち込みできる欧州では、わが身や家族を守るために銃の携 行が必要ではないか。
デモでテロがなくなるわけではない。諜報の他にも交番や自警団も必要 だ。何よりも国境管理と偽装難民の強制送還が大事だ。オランドはテロ関 係者はフランス国籍であっても国籍を剥奪するそうだ。
産経パリ支局長を永年務めた山口昌子氏の論考「シャルリ襲撃から1年、テロにも政府にも怒るパリ市民」(JBプレス1/8)から。
<テロ対策の中で、今後、最も議論を呼びそうなのが、テロ予備軍、つまり「IS」に参加するためにシリアに出発する若者やISへの勧誘などを行っ た者に対する“国籍剥奪”だ。
今回の同時テロの犯人10人のうち5人がフランス人だった。またISに参加 したフランス人571人のうち141人が“戦死”しているという状況を踏まえて のテロ対策の一環である。
フランスは生地(せいち)主義を取っており、「フランスに生まれた者は フランス人」だ。(シャルリーエブドを襲撃した)クアシ兄弟はパリ市内 で生まれたフランス人である。
しかも、これまでタブーだった「フランスで生まれた者」も例外なく対象 にするという。社会党内にも反対者がいる中、テロ対策の一環として、オ ランド政権がこのタブーを破ることになれば、「フランス共和国の柱が崩 れる」との批判もあるが・・・>
どこまでできるのか。国籍を剥奪されると手厚い生活保護が受けられないそうで、かなりの圧力にはなるだろう。
テロ対策は金もかかるが、ボランティアなどの協力を得ることも必要だろう。日本もしっかり警戒すべきである。
海外の報道によるとドイツのケルンでは1/9に安易な移民受け入れに反対 するPEGIDA (Patriotic Europeans Against the Islamisation of the West、欧州イスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人) のデモに催涙弾が 撃ち込まれた。
“Rapefugees not welcome”(強姦難民は歓迎しない)“Merkel must go” (メルケル行っちまえ)などと叫ぶデモに対して、難民に寄り添う警察は 容赦なく攻撃する。末期的なドイツ、欧州。警戒しないとこういうことに なる。「難民受け入れに反対」の人が急増している。当然だ。
■1月12日(火)、朝は室温12度、微雨、2/3散歩。
中共のナンバー5、劉雲山(上海閥、瀋陽軍区応援団長、北の友達)が昨 年12月に失脚したようだ。産経1/11から。
<北朝鮮の朝鮮中央テレビが昨年10月の朝鮮労働党創建70年の記念行事を 伝える目的で(1月)9日夜に放映した記録映画に、行事に出席し金正恩第 1書記の隣にいた中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員の姿が写って いないことが10日分かった。韓国の聯合ニュースが報じた>
北にとって落馬した劉雲山は賞味期限切れなのか。「水爆実験」は劉雲山 を排除した習近平に瀋陽軍区が報復したのか。個人も国家も一寸先は闇。 諸行無常だな。
衆知1/9「石平/拓殖大学客員教授著『なぜ中国はいつまでも近代国家にな れないのか』より」は大いに勉強になった。氏は悪党中共が日本にもたらした数少ない善、最高レベルの知性だ。以下引用する。
<*日本は近代を「超克」した
ちょうど本書の執筆にかかっている2015年10月初旬、北里大学特別栄誉教 授の大村智氏ら3氏が2015年のノーベル賞「生理学・医学賞」を受賞した とのニュースが飛び込んできた。受賞を受けての記者会見で、大村教授は こう語った。
「私の仕事は微生物の力を借りているだけのもので、私自身がえらいもの を考えたり難しいことをやったりしたわけじゃなくて、すべて微生物が やっている仕事を勉強させていただいたりしながら、今日まで来てるというふうに思います」
「私の仕事は微生物の力を借りているだけだ」という大村教授の名セリフ を聞いたとき、テレビの前に座っている私は大きな感動に包まれたことを 今でも鮮明に覚えている。自分の研究対象となるちっぽけな存在の微生物 にたいしても、上から目線ではなく、むしろ感謝の意を込めて「力を借りた」と言う─―、何という謙虚の精神の表れなのか。
よく考えてみると、大村教授のこのような謙遜な態度は、まさに「近代の超克」という意味合いにおいての日本独特の精神を端的に現しているので はないかと思い至った。
いわば「近代」を形づくる要素の一つは、まさに近代的科学技術の発展で あるということは言うまでもないが、近代的科学技術というものは、「人間の理性」にたいする無上の信頼と「人間中心」という観念の確立から始まるものである。
理性をもつ人間が森羅万象の中心となって、自然万物を自由自在に観察したり操縦したりしてそれを人間のために利用するというのは、自然科学と 技術の成り立つ基本となる精神である。その際、自然万物を観察したり 弄ったりする人間が森羅万象の頂点に立っていることは自明の公理であり、神様の下では人間が一番偉い」というのは、まさに西洋流の近代文明の基本的考え方であった。
その反面、まさにこのような考え方から「人間の傲慢」という「近代の持病」が生まれてきて、結果的には自然環境の破壊などの現代的問題を生み出すに至ったことは周知のとおりだ。
しかし日本人はある意味では、この「近代の持病」を見事に超克してい る。もともと日本には「八百万の神」という独特の宗教観・世界観がある。そしてそれが現代になっても脈々と受け継がれている。
このような世界観から生み出されるのはすなわち、森羅万象すべてにたい する人間の謙遜と感謝の姿勢であろうが、前述の大村教授の発言は、まさにこのような日本的な「人間姿勢」の表れであろう。
*中国の近代化を妨げる中華思想
実は大村教授のノーベル賞は、日米中3人の科学者の受賞で、中国人科学者も一人、受賞を果たしている。屠〓〓(口偏に幼、と・ゆうゆう)氏と いう女性科学者が中華人民共和国民として初めて自然科学分野のノーベル 賞、ノーベル医学・生理学賞を受賞したのである。
中国本土で研究活動する中国人の自然科学分野ノーベル賞の初受賞は、当然、中国国内では大ニュースとして取り上げられ、国中が興奮と喜びの ムードに包まれた。しかしそのとき、この祝賀ムードの中でも一つ、普通の日本人の感覚からすればいかにも異様な光景が広がっていたのである。
それは、中国国内のメディアと各界の「識者」たちは歩調を合わせて、屠氏の受賞を単なる一人の優れた科学者の業績としてではなく、むしろ「わが偉大なる中華民族の誇り」として、「わが偉大なる中華民族」の優秀さの証明として大きく喧噪している点である。
それほどまでに「中華民族の優秀さ」を信じ込みたいという彼らの深層心 理の背後にあるのはやはり、先祖代々から中国人の血に受け継がれてきている「中華思想」である。
5千年以上の悠久なる歴史を持つ中華民族こそが世界の頂点に立つ最優秀民族であり、中華民族の生み出す中華文明こそは世界文明の最高峰である という認識こそがこの「中華思想」の真髄たるものであり、中国人自身が 古来から現代に至るまで心の中に持つ揺るぎない信念なのである。
しかし問題は、このような頑固なる妄想が、実は、中国という国の近代化を阻止する大きな妨げとなっていることである。日本の場合、黒船の来航 と共に西洋文明が大波のように「襲来」したことに対して、当時の日本人 が維新運動を起こして政治体制の刷新を成し遂げた。
その直後から、「文明開化」のスローガンの下で虚心坦懐に西洋の近代文 明を迅速かつ全面的に導入して日本の近代化と富国強兵を計った。その結果、日本はアジアで率先して立派な近代国家となったことは周知のとおりである。
しかし中国の場合、西洋文明の「襲来」への対応は全然違っていた。大英 帝国がアヘン戦争を起こして清王朝時代の中華帝国を完膚なきまで打ち 破ったのは1840年だったが、その20数年後の1860年代になってから、西洋 の軍事力の強さを認識した中国がやっと重い腰をあげて西洋の技術を取り 入れて「強兵」を計るための「洋務運動」を始めた。
しかしそのときでも、中国のエリートたちは依然として中華文明こそが世界最高の文明だと思い込んでいた。彼らは西洋の軍事技術をやむを得ず吸収しなければならないこととなったが、西洋の文明全般を導入する気持ち はさらさらなかった。
政治制度や教育制度を(西洋風に)刷新するための「変法運動」も結局、 「中華こそが世界一」だと信じて疑わない「守旧派」の抵抗に遭って失敗 に終わった。
「変法運動」が失敗してから、古い体制のままの清王朝がなお10年以上の 余命を保ったが、1911年に中国版の近代革命の辛亥革命が起こり、その翌 年の1912年に清王朝は潰れ、中国史上初めての共和国である中華民国が樹立された。
つまりアヘン戦争から71年後にして中国という国はやっと、日本でいう明治政府の成立と同じような起点に立った。日本では1853年の黒船の来航か ら1868年の明治政府成立まで15年であったが、中国ではそのために費やし た時間はなんと71年であった。
そして中国版の「維新運動」である辛亥革命がやっと成功したとき、日本はすでに君主立憲の近代国家となって世界の先進国の仲間入りを果たして いる。
*日本で学んだ先覚者たちの業績と挫折
日本と比べて、中国の近代化が徹底的な遅れをとった最大の理由の一つ は、やはりこの国の中華思想であった。根強い中華思想があったからこそ、当時の中国のエリートたちは最後の最後まで西洋文明の導入を拒み続 けた。そしてそれが結果的には中国自身の近代化を遅らせ、中国という国 を西洋列強の「半植民地」にしてしまった。
もちろん、中国の「半植民地化」へのプロセスにおいて、一部の中国人の 先覚者たちは徐々に中華思想の有害性に気がつき、この根強い伝統思想との格闘を続けていた。ある意味、アヘン戦争からの中国の近代史は、まさに中国人自身による、中華思想との格闘の歴史でもあった。
しかし近代以来の歴史において、ほとんどの先覚者がその戦いに敗れてしまい、中華思想だけが古代から蘇った亡霊のように現在に至るまで生き続 けている。
近代になってから、日本という国と縁を持った多くの中国人のエリートた ちは、まさにこの日本から「近代」というものを中国に「輸入」すること によって、あらゆる方面における祖国の近代国家建設に尽力していた。彼らの努力は当然、中国の近代化を進展させるのに大いに役に立ち、中国は 一時、随分前進した。
しかし最後のところ、彼らの努力はやはり失敗に終わった。中国の近代化 は結局1949年の共産党政権の成立をもって頓挫してしまい、中国という国 は一夜にして、清王朝崩壊以前の前近代的独裁国家に戻った。そして今日に至っても、中国の国家体制と支配的イデオロギーはまさに「前近代」の ままである。
日本と深い関わりを持った彼らの成功と失敗を吟味していけば、明治以来 の日本と中国との関係、あるいは日本という国と中国の近代化との関係性もわかってくるのであろう。そして、「日本が近代化に成功して近代を超 克できたのに、どうして中国は失敗に終わったのか」というわれわれが疑 問に抱く最大の問題もまた、それによって解明されていくのではないか> (以上)
中共独裁である限り支那は「前近代」のままだろう。そして世界を脅かす 「不安要因」であり続けるだろう。年初から経済混乱をもたらしている。 共産党にレッドカードを突きつけなければならない。(2016/1/12)