なんというか、陸の領土の延長のような感覚なんですね。
南シナ海「航行の自由」作戦、米国側はどう報じてるのか?
2015年11月3日2015年11月2日
米軍が展開を開始した「航行の自由作戦」についてさまざまな報道がなされていますが、アメリカではどのように報じられているのでしょうか。戦略学者の奥村真司さんがご自身のメルマガで、米国サイトの記事を紹介・解説しています。
南シナ海の米中激突について更に解説
● Freedom of Navigation Operations in the South China Sea: What to Watch For By Adam Klein, Mira Rapp-Hooper 15-10/23 Lawfare
おくやまです。
番組でも触れましたが、米海軍は南シナ海の中国の人工島の近辺に軍艦を航行させる、いわゆる「航行の自由作戦」(FONOPS)を絶賛実施中であります。
ところが実際の米海軍の狙いが何なのかは、新聞やニュースを見てもよくわかりません。そこで私がその法的な面と、アメリカ側の狙いについて簡潔にまとめた冒頭に紹介した記事をベースにして、ここでわかりやすく説明してみたいと思います。
まず今回の南シナ海の領土争いで焦点になっているのは「国連海洋法条約」(UNCLOS:1982年)で定められた、いわば世界の海における領土・領海に関する国際法です。しかしここで問題になるのは、
<アメリカ>条約を批准していないが、その慣習は守っている
のに対して、
<中国>批准しているが、その慣習を守っていない
という点です。お互い守っているようで守っていない宙ぶらりんの状態で、法律面では互いにツッコミがかませるという微妙な状態です。
さらに問題なのが、アメリカと中国は、その領海などの分野に関して、大きく異る見解を持っていることです。たとえば島から伸びる領海(12カイリ以内)と経済的排他水域(EEZ:200カイリ以内)の領有権に関して、
<アメリカ>
・領海とEEZ、どちらも無許可で無害通航(平和的な通過)が可能
・EEZでは軍事的なオペレーション(海底探査や軍事演習など)までOK
として、かなりオープンなのに対して、
<中国>
・領海に入るには無害通航で、当該国には許可が必要
・EEZの中では無害通航でオペレーションは不可能
というかなり条件の厳しいものになっております。なんというか、陸の領土の延長のような感覚なんですね。
ちなみに番組ではアクシデント的に妙な絵になってしまったのはこの説明の部分なんですが、まあ見逃してください。
航行の自由作戦の次なるシナリオとは?
また、国連海洋法条約では領海やEEZの基点になるものとして3つの海の地形を挙げておりまして、それらを説明すると、
(1)低潮高地(Low-tide elevations)
・暗礁のこと。満潮になると海に隠れる。領海もEEZも主張できない。
・例外として、実効支配者は安全航行のために500メートルの安全水域を設定可能。
(2)岩(Rocks)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めない。
・領海はOKだが、EEZは主張できない。
(3)島(Islands)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めるし経済活動も可能。
・陸と同じで領海もEEZも主張できる。
というものです。
さて、今回の南シナ海に軍艦を送り込む中で、これらを踏まえてアメリカにとっての選択肢にはどのようなものがあるかというと、冒頭の記事の著者たちは3つの選択肢があると申しております。それらを、メッセージ性が弱い方から強いほうに並べてみると、以下のようになります。
A:岩や人工島周辺の12カイリ内を、無許可で無害通航。
B:低潮高地周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施。
C:岩や人工島周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施。
繰り返しますが、これによって発せられるメッセージ性の強さは、A<B<C。そして今回米海軍がやったのは、現在報道でわかっている部分ではAということになりますね。
もちろん米海軍は、今後もAだけでなく、BやCを行っていく可能性がありますし、またそれを追尾してくる中国海軍などと衝突したりする可能性も否定できません。
世界の30%の船が通過し、日本人の生活もかかっている南シナ海では、アメリカと中国という世界の2大大国の間で、このような劇的な安全保障ドラマが展開されております。われわれは今後も注視していかなければならないでしょう。
『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』
国際情勢の中で、日本のとるべき方向性を考えます。情報・戦略の観点から、また、リアリズムの視点から、日本の真の独立のためのヒントとなる情報を発信してゆきます。
http://www.mag2.com/p/news/121852
南シナ海問題、解決か?日本ではほとんど報道されていない「事実」
2015年11月1日 719
中国を牽制すべく開始された米による「航行の自由作戦」。猛反発を見せる中国ですが、『未来を見る! 「ヤスの備忘録」連動メルマガ』では「中国は問題海域の領有権の主張を11月以降に取り下げる」としています。なぜ「11月」なのでしょうか。
南シナ海の米軍艦船派遣で報道されていないこと
最初に、どうしても触れなければならないテーマがある。南シナ海における米軍艦船派遣で、日本ではほとんど報道されていない事実である。まずこれを簡単に紹介する。
米艦船の派遣
すでに散々報道されているが、まず事実確認から始めよう。
10月27日、米海軍横須賀基地を母港とするイージス駆逐艦「ラッセン」は「航行の自由作戦」のもと、中国が造成した人工島の「スービ礁」の12カイリ以内を航行した。
「スービ礁」は中国による埋め立て工事前は満潮時に水没する暗礁で、国際法上、領海は認められない。アメリカ政府は「スービ礁」の周辺は国際水域・空域だと強調しており、中国の主張を認めないとの立場を米艦船の派遣で示した。「ラッセン」は「P8A」や「P3」などの哨戒機を伴っている可能性もある。
さらにアメリカ政府は、国際法で認められるあらゆる場所で飛行、航行し、活動するという従来の方針を強調し、「今後、数週間から数か月の間に、さらなる海軍の作戦があるだろう」と述べて、こうした活動を継続する考えを示した。
中国の反発
一方中国は、国防省の報道官が、27日夜談話を出し、アメリカ海軍のイージス艦に対して、中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」などが警告を与えたと発表するなど反発を強めており、今後強い非難が予想される。
さらに、中国の政府系メディア、「グローバルタイムス(環球時報)」は英文の社説で次のように激しくアメリカを非難した。
北京は嫌がらせに対抗する作戦を開始しなければならない。まず我々は米艦船を追尾すべきである。もし艦船が海域の通過にとどまらず、活動をエスカレートするようであれば、我が方としては電子的な手段で介入し、さらに我が軍の艦船を派遣し、米艦船に攻撃用レーダーを照射し、戦闘機を飛行すべきである
このように主張し、侵入する米艦船に対しては、中国軍も相応に対応する姿勢を明確にした。
各国の反応とその意図とは?
静観する各国
こうした状況で、いち早く日本とフィリッピンの2国だけが、今回のアメリカの艦船派遣への支持を明確にした。アセアンやEUをはじめ、他の国々は態度を明確にせず静観している状況だ。
どの国の経済も中国依存が深まり、中国との関係を悪化させることは回避しなければならないが、アメリカとの関係も悪化させることはできない。このような板挟み的な状況のため、どの国も態度を明確にせず静観している。
拡散するジョージ・ソロスの警告
一方、海外のサイトでは著名な投資家のジョージ・ソロスが今年の5月23日にした発言が注目されている。それは、第3次世界大戦の警告であった。
ソロスは、中国が輸出でなく内需に経済の主軸を移したとき、第3次世界大戦のシナリオは現実のものになるとしている。そのとき中国政府は、政権を維持するために外部に紛争を必要とするはずだという。もしこのとき、中国がロシアと政治的、軍事的同盟を結ぶと世界大戦は現実のものとなるだろうと警告していた。
いま中国とロシアは、中ロ同盟と呼ばれるくらい近い関係にある。今回の米艦船派遣で、第3次世界大戦へと向かうシナリオが、現実になりそうだというわけだ。
アジアにおけるロシアの拠点、ベトナム
他方、日本の安倍政権は、日米とアセアン諸国、ならびにオーストラリアやニュージーランドなどの周辺諸国が協調して、中国を封じ込めることを基本政策にしている。そのような安倍政権から見ると、米艦船が中国が領有権を主張する人工島の海域を通過することは、周辺諸国が中国封じ込めで一致団結する絶好の機会になると見ているはずだ。これが安倍政権が、アメリカに対する支持を真っ先に明確にした理由であるに違いない。
だが、南沙諸島の領有権問題の当事国であるマレーシアやベトナムにしても、中国への依存を経済的に深めており、中国との関係には最大限気を遣わざるを得ない状況だ。
ましてやベトナムは、アジアにおけるロシアの最大の拠点である。日本ではまったく報道されていないが、今年の6月30日、ロシアはベトナムに最新鋭の潜水艦を引き渡したばかりだ。これは、2009年に締結した5艘の最新鋭潜水艦の売買契約に基づいた引き渡しだ。
いまシリア空爆で、ロシア軍とロシア製兵器の優秀さが大変に注目されているが、ベトナムの兵器体系は基本的にロシア製である。ベトナムはロシアから最新鋭の「クラブ巡航ミサイル」を50基購入しており、すでに28基がベトナムに引き渡された。これらのミサイルの照準は、いざというときの抑止力として中国の各大都市に向けられている。
中東、欧州、中央アジアなどでは中ロ同盟が強化されつつあるが、こと東南アジアに関しては中国とロシアは一枚岩ではない。ベトナムが中国と敵対的な関係にはなればなるほど、ベトナムに兵器を提供しているロシアの軍事的な影響力が増すという関係にある。するとロシアの影響力は、カンボジア、ミャンマー、ラオスなど他の東南アジア諸国へと拡大する可能性が出てくる。
他方アメリカは、ロシアを最大の仮想敵国として見ている。ロシアの影響力の拡大には非常に神経質になっている。そのような状況では、ベトナムと中国との敵対関係を助長するようなことはできない。結果的に、ロシアの東南アジアにおける軍事的な影響力を強化することになってしまうからだ。
ということでは、アメリカは安倍政権が望むような日米とアセアンが協力した中国封じ込め政策を実施することは実質的にできないし、その意図もないと見たほうがよいだろう。
次ページ>> では、今回の米艦船派遣の本当の意図は?
ベトナムとフィリッピンの領有権にも警告
その証拠に、米イージス艦の「ラッセン」は中国の人工島付近を航行する前日、ベトナムとフィリッピンが領有権を主張する南沙諸島の島々の12カイリを通過した。これはオバマ政権が中国に過度な領有権の主張をしないように警告を送るとともに、ベトナム、ならびにアメリカの同盟国のフィリッピンに対しても同じ警告を発していることを示している。
ベトナムとフィリッピンも中国ほど大きくはないが、領有権を主張している島々に施設を建設している。今回の米艦船の航行は、南沙諸島の領有権問題の他の当事国にも自制をするようにメッセージを発したと見たほうがよいだろう。
妥協できない中国
したがって、今回のアメリカの意図は、安倍政権が望むように中国を封じ込めることではない。人工島の建設による領海の主張を許してしまうと、中国は公海の好きな場所に人工島を作り領海を主張する可能性が出てくる。いくらなんでもこれは国際法上許されないとして、アメリカは抗議したというのが今回の米艦船派遣の意図である。
一方アメリカのこのような行動に対して、中国は簡単に妥協できない立場にある。もし習近平政権が妥協すれば、ナショナリズムで盛り上がった国内の世論は一斉に習近平政権批判を開始し、共産党一党独裁がかなり不安定になってしまう。これは大変に大きなリスクだ。これを回避するためには、おいそれとアメリカの要求にしたがい、妥協することはできない。また、中国が妥協する場合、中国の面子が最大限に立ち、中国が勝ったと主張できる状況でなければならない。
「航行の自由作戦」前日に中国へ提示された妥協案とは?
人民元の国際決済通貨化で早期に手打ちか?
しかしアメリカは、中国が妥協しやすくなる方法をメッセージとして出していた可能性が高い。国際情勢を読む場合、事件が起こった日の前後にどのような出来事があったのか見ると、裏の流れを読むことができる。意外な出来事が相互に結びついており、そのつながりを読むと、見えなかった状況が可視化できるようになる。
南シナ海における米艦船の派遣があった前日、IMFは「特別引き出し権(SDR)」を構成する通貨に、中国の人民元を採用する方向で最終調整に入ったというニュースが流れた。主要国に異論がなければ、IMFは11月に開く理事会でこれを最終決定する。これは、人民元の国際通貨であるSDRへの採用を求めてきた中国の要望の実現である。中国はこれを、人民元の国際通貨化の第一歩と考えている。
ちなみにSDRとは、加盟国がIMFから金を借りたり返したりする時に利用される単位。米ドル、日本円、ユーロ、英ポンドの4通貨を基に算出されているが、これに人民元が加わるということだ。
これは習近平政権にとっては中国の国際的な地位が高まり、「偉大な中国」の実現に一歩近づいた勝利の証しとして、国内のキャンペーンに使うことができる。これで中国国民のナショナリズムの欲求は、満足されることになるはずだ。
おそらくオバマ政権は、人民元のSDR構成通貨採用を妥協のための取り引き材料として提示し、南シナ海の人工島の領有権の妥協を迫ってくることだろう。
筆者は、中国はこの妥協案を受け入れる可能性はかなり高いのではないかと思う。もし筆者の読みが正しければ、11月に入るとすぐに人民元国際通貨化が大きなニュースとして報じられ、中国国内でもこれを喧伝する大きなキャンペーンが実施され、南シナ海における米艦船の航行は忘れ去られるだろう。
他方中国は、妥協の証しとして、米艦船の人工島周辺海域の航行を黙認し、この海域に対する中国の領有権の主張を実質的に取り下げると思われる。
ということは、今回の米艦船の航行はジョージ・ソロスが指摘したような第3次世界大戦のきっかけではないし、深刻な事態の引き金にはなるような事態ではないと見たほうがよい。
しかし、中国の指向する新しい国際秩序とアメリカの覇権を基礎にした既存の秩序がなんらかの形で衝突する可能性は否定できない。だがこれは、今回の出来事が引き金になったわけではない。本当の引き金はまったく違う地域で別な形で引かれる可能性が高い。
そして、すでにそのスケジュールは決まっており、日本の「集団的自衛権」の可決の日程は、これに基づいて決定された可能性が高い。
これについては、別の機会に書くことにする。
『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』より一部抜粋
著者/ヤス
早稲田大学卒。企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等を担当。世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立てる。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をメルマガで配信。
http://www.mag2.com/p/news/121699
中国が人民元切り上げ=基準通貨入り意識か
時事通信 2015/11/2 13:39
【上海時事】中国人民銀行(中央銀行)は2日、人民元取引の目安となる対ドル基準値を大幅に引き上げ、前週末比0.54%高の1ドル=6.3154元に設定した。ロイター通信によると、1日の切り上げ幅としては、中国が人民元の改革に着手した2005年以来最大。
前週末10月30日の終値は同6.3175元だった。同日、元は大幅に上昇しており、人民銀が介入したとみられている。
人民銀は8月に切り下げを断行したが、11月にも判断される、国際通貨基金(IMF)の「特別引き出し権(SDR)」算定基準通貨入りを意識し、市場実勢を反映した人民元政策をアピールする意図があるもようだ。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151102-00000036-jijnb_st-nb
2015年11月3日2015年11月2日
米軍が展開を開始した「航行の自由作戦」についてさまざまな報道がなされていますが、アメリカではどのように報じられているのでしょうか。戦略学者の奥村真司さんがご自身のメルマガで、米国サイトの記事を紹介・解説しています。
南シナ海の米中激突について更に解説
● Freedom of Navigation Operations in the South China Sea: What to Watch For By Adam Klein, Mira Rapp-Hooper 15-10/23 Lawfare
おくやまです。
番組でも触れましたが、米海軍は南シナ海の中国の人工島の近辺に軍艦を航行させる、いわゆる「航行の自由作戦」(FONOPS)を絶賛実施中であります。
ところが実際の米海軍の狙いが何なのかは、新聞やニュースを見てもよくわかりません。そこで私がその法的な面と、アメリカ側の狙いについて簡潔にまとめた冒頭に紹介した記事をベースにして、ここでわかりやすく説明してみたいと思います。
まず今回の南シナ海の領土争いで焦点になっているのは「国連海洋法条約」(UNCLOS:1982年)で定められた、いわば世界の海における領土・領海に関する国際法です。しかしここで問題になるのは、
<アメリカ>条約を批准していないが、その慣習は守っている
のに対して、
<中国>批准しているが、その慣習を守っていない
という点です。お互い守っているようで守っていない宙ぶらりんの状態で、法律面では互いにツッコミがかませるという微妙な状態です。
さらに問題なのが、アメリカと中国は、その領海などの分野に関して、大きく異る見解を持っていることです。たとえば島から伸びる領海(12カイリ以内)と経済的排他水域(EEZ:200カイリ以内)の領有権に関して、
<アメリカ>
・領海とEEZ、どちらも無許可で無害通航(平和的な通過)が可能
・EEZでは軍事的なオペレーション(海底探査や軍事演習など)までOK
として、かなりオープンなのに対して、
<中国>
・領海に入るには無害通航で、当該国には許可が必要
・EEZの中では無害通航でオペレーションは不可能
というかなり条件の厳しいものになっております。なんというか、陸の領土の延長のような感覚なんですね。
ちなみに番組ではアクシデント的に妙な絵になってしまったのはこの説明の部分なんですが、まあ見逃してください。
航行の自由作戦の次なるシナリオとは?
また、国連海洋法条約では領海やEEZの基点になるものとして3つの海の地形を挙げておりまして、それらを説明すると、
(1)低潮高地(Low-tide elevations)
・暗礁のこと。満潮になると海に隠れる。領海もEEZも主張できない。
・例外として、実効支配者は安全航行のために500メートルの安全水域を設定可能。
(2)岩(Rocks)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めない。
・領海はOKだが、EEZは主張できない。
(3)島(Islands)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めるし経済活動も可能。
・陸と同じで領海もEEZも主張できる。
というものです。
さて、今回の南シナ海に軍艦を送り込む中で、これらを踏まえてアメリカにとっての選択肢にはどのようなものがあるかというと、冒頭の記事の著者たちは3つの選択肢があると申しております。それらを、メッセージ性が弱い方から強いほうに並べてみると、以下のようになります。
A:岩や人工島周辺の12カイリ内を、無許可で無害通航。
B:低潮高地周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施。
C:岩や人工島周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施。
繰り返しますが、これによって発せられるメッセージ性の強さは、A<B<C。そして今回米海軍がやったのは、現在報道でわかっている部分ではAということになりますね。
もちろん米海軍は、今後もAだけでなく、BやCを行っていく可能性がありますし、またそれを追尾してくる中国海軍などと衝突したりする可能性も否定できません。
世界の30%の船が通過し、日本人の生活もかかっている南シナ海では、アメリカと中国という世界の2大大国の間で、このような劇的な安全保障ドラマが展開されております。われわれは今後も注視していかなければならないでしょう。
『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』
国際情勢の中で、日本のとるべき方向性を考えます。情報・戦略の観点から、また、リアリズムの視点から、日本の真の独立のためのヒントとなる情報を発信してゆきます。
http://www.mag2.com/p/news/121852
南シナ海問題、解決か?日本ではほとんど報道されていない「事実」
2015年11月1日 719
中国を牽制すべく開始された米による「航行の自由作戦」。猛反発を見せる中国ですが、『未来を見る! 「ヤスの備忘録」連動メルマガ』では「中国は問題海域の領有権の主張を11月以降に取り下げる」としています。なぜ「11月」なのでしょうか。
南シナ海の米軍艦船派遣で報道されていないこと
最初に、どうしても触れなければならないテーマがある。南シナ海における米軍艦船派遣で、日本ではほとんど報道されていない事実である。まずこれを簡単に紹介する。
米艦船の派遣
すでに散々報道されているが、まず事実確認から始めよう。
10月27日、米海軍横須賀基地を母港とするイージス駆逐艦「ラッセン」は「航行の自由作戦」のもと、中国が造成した人工島の「スービ礁」の12カイリ以内を航行した。
「スービ礁」は中国による埋め立て工事前は満潮時に水没する暗礁で、国際法上、領海は認められない。アメリカ政府は「スービ礁」の周辺は国際水域・空域だと強調しており、中国の主張を認めないとの立場を米艦船の派遣で示した。「ラッセン」は「P8A」や「P3」などの哨戒機を伴っている可能性もある。
さらにアメリカ政府は、国際法で認められるあらゆる場所で飛行、航行し、活動するという従来の方針を強調し、「今後、数週間から数か月の間に、さらなる海軍の作戦があるだろう」と述べて、こうした活動を継続する考えを示した。
中国の反発
一方中国は、国防省の報道官が、27日夜談話を出し、アメリカ海軍のイージス艦に対して、中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」などが警告を与えたと発表するなど反発を強めており、今後強い非難が予想される。
さらに、中国の政府系メディア、「グローバルタイムス(環球時報)」は英文の社説で次のように激しくアメリカを非難した。
北京は嫌がらせに対抗する作戦を開始しなければならない。まず我々は米艦船を追尾すべきである。もし艦船が海域の通過にとどまらず、活動をエスカレートするようであれば、我が方としては電子的な手段で介入し、さらに我が軍の艦船を派遣し、米艦船に攻撃用レーダーを照射し、戦闘機を飛行すべきである
このように主張し、侵入する米艦船に対しては、中国軍も相応に対応する姿勢を明確にした。
各国の反応とその意図とは?
静観する各国
こうした状況で、いち早く日本とフィリッピンの2国だけが、今回のアメリカの艦船派遣への支持を明確にした。アセアンやEUをはじめ、他の国々は態度を明確にせず静観している状況だ。
どの国の経済も中国依存が深まり、中国との関係を悪化させることは回避しなければならないが、アメリカとの関係も悪化させることはできない。このような板挟み的な状況のため、どの国も態度を明確にせず静観している。
拡散するジョージ・ソロスの警告
一方、海外のサイトでは著名な投資家のジョージ・ソロスが今年の5月23日にした発言が注目されている。それは、第3次世界大戦の警告であった。
ソロスは、中国が輸出でなく内需に経済の主軸を移したとき、第3次世界大戦のシナリオは現実のものになるとしている。そのとき中国政府は、政権を維持するために外部に紛争を必要とするはずだという。もしこのとき、中国がロシアと政治的、軍事的同盟を結ぶと世界大戦は現実のものとなるだろうと警告していた。
いま中国とロシアは、中ロ同盟と呼ばれるくらい近い関係にある。今回の米艦船派遣で、第3次世界大戦へと向かうシナリオが、現実になりそうだというわけだ。
アジアにおけるロシアの拠点、ベトナム
他方、日本の安倍政権は、日米とアセアン諸国、ならびにオーストラリアやニュージーランドなどの周辺諸国が協調して、中国を封じ込めることを基本政策にしている。そのような安倍政権から見ると、米艦船が中国が領有権を主張する人工島の海域を通過することは、周辺諸国が中国封じ込めで一致団結する絶好の機会になると見ているはずだ。これが安倍政権が、アメリカに対する支持を真っ先に明確にした理由であるに違いない。
だが、南沙諸島の領有権問題の当事国であるマレーシアやベトナムにしても、中国への依存を経済的に深めており、中国との関係には最大限気を遣わざるを得ない状況だ。
ましてやベトナムは、アジアにおけるロシアの最大の拠点である。日本ではまったく報道されていないが、今年の6月30日、ロシアはベトナムに最新鋭の潜水艦を引き渡したばかりだ。これは、2009年に締結した5艘の最新鋭潜水艦の売買契約に基づいた引き渡しだ。
いまシリア空爆で、ロシア軍とロシア製兵器の優秀さが大変に注目されているが、ベトナムの兵器体系は基本的にロシア製である。ベトナムはロシアから最新鋭の「クラブ巡航ミサイル」を50基購入しており、すでに28基がベトナムに引き渡された。これらのミサイルの照準は、いざというときの抑止力として中国の各大都市に向けられている。
中東、欧州、中央アジアなどでは中ロ同盟が強化されつつあるが、こと東南アジアに関しては中国とロシアは一枚岩ではない。ベトナムが中国と敵対的な関係にはなればなるほど、ベトナムに兵器を提供しているロシアの軍事的な影響力が増すという関係にある。するとロシアの影響力は、カンボジア、ミャンマー、ラオスなど他の東南アジア諸国へと拡大する可能性が出てくる。
他方アメリカは、ロシアを最大の仮想敵国として見ている。ロシアの影響力の拡大には非常に神経質になっている。そのような状況では、ベトナムと中国との敵対関係を助長するようなことはできない。結果的に、ロシアの東南アジアにおける軍事的な影響力を強化することになってしまうからだ。
ということでは、アメリカは安倍政権が望むような日米とアセアンが協力した中国封じ込め政策を実施することは実質的にできないし、その意図もないと見たほうがよいだろう。
次ページ>> では、今回の米艦船派遣の本当の意図は?
ベトナムとフィリッピンの領有権にも警告
その証拠に、米イージス艦の「ラッセン」は中国の人工島付近を航行する前日、ベトナムとフィリッピンが領有権を主張する南沙諸島の島々の12カイリを通過した。これはオバマ政権が中国に過度な領有権の主張をしないように警告を送るとともに、ベトナム、ならびにアメリカの同盟国のフィリッピンに対しても同じ警告を発していることを示している。
ベトナムとフィリッピンも中国ほど大きくはないが、領有権を主張している島々に施設を建設している。今回の米艦船の航行は、南沙諸島の領有権問題の他の当事国にも自制をするようにメッセージを発したと見たほうがよいだろう。
妥協できない中国
したがって、今回のアメリカの意図は、安倍政権が望むように中国を封じ込めることではない。人工島の建設による領海の主張を許してしまうと、中国は公海の好きな場所に人工島を作り領海を主張する可能性が出てくる。いくらなんでもこれは国際法上許されないとして、アメリカは抗議したというのが今回の米艦船派遣の意図である。
一方アメリカのこのような行動に対して、中国は簡単に妥協できない立場にある。もし習近平政権が妥協すれば、ナショナリズムで盛り上がった国内の世論は一斉に習近平政権批判を開始し、共産党一党独裁がかなり不安定になってしまう。これは大変に大きなリスクだ。これを回避するためには、おいそれとアメリカの要求にしたがい、妥協することはできない。また、中国が妥協する場合、中国の面子が最大限に立ち、中国が勝ったと主張できる状況でなければならない。
「航行の自由作戦」前日に中国へ提示された妥協案とは?
人民元の国際決済通貨化で早期に手打ちか?
しかしアメリカは、中国が妥協しやすくなる方法をメッセージとして出していた可能性が高い。国際情勢を読む場合、事件が起こった日の前後にどのような出来事があったのか見ると、裏の流れを読むことができる。意外な出来事が相互に結びついており、そのつながりを読むと、見えなかった状況が可視化できるようになる。
南シナ海における米艦船の派遣があった前日、IMFは「特別引き出し権(SDR)」を構成する通貨に、中国の人民元を採用する方向で最終調整に入ったというニュースが流れた。主要国に異論がなければ、IMFは11月に開く理事会でこれを最終決定する。これは、人民元の国際通貨であるSDRへの採用を求めてきた中国の要望の実現である。中国はこれを、人民元の国際通貨化の第一歩と考えている。
ちなみにSDRとは、加盟国がIMFから金を借りたり返したりする時に利用される単位。米ドル、日本円、ユーロ、英ポンドの4通貨を基に算出されているが、これに人民元が加わるということだ。
これは習近平政権にとっては中国の国際的な地位が高まり、「偉大な中国」の実現に一歩近づいた勝利の証しとして、国内のキャンペーンに使うことができる。これで中国国民のナショナリズムの欲求は、満足されることになるはずだ。
おそらくオバマ政権は、人民元のSDR構成通貨採用を妥協のための取り引き材料として提示し、南シナ海の人工島の領有権の妥協を迫ってくることだろう。
筆者は、中国はこの妥協案を受け入れる可能性はかなり高いのではないかと思う。もし筆者の読みが正しければ、11月に入るとすぐに人民元国際通貨化が大きなニュースとして報じられ、中国国内でもこれを喧伝する大きなキャンペーンが実施され、南シナ海における米艦船の航行は忘れ去られるだろう。
他方中国は、妥協の証しとして、米艦船の人工島周辺海域の航行を黙認し、この海域に対する中国の領有権の主張を実質的に取り下げると思われる。
ということは、今回の米艦船の航行はジョージ・ソロスが指摘したような第3次世界大戦のきっかけではないし、深刻な事態の引き金にはなるような事態ではないと見たほうがよい。
しかし、中国の指向する新しい国際秩序とアメリカの覇権を基礎にした既存の秩序がなんらかの形で衝突する可能性は否定できない。だがこれは、今回の出来事が引き金になったわけではない。本当の引き金はまったく違う地域で別な形で引かれる可能性が高い。
そして、すでにそのスケジュールは決まっており、日本の「集団的自衛権」の可決の日程は、これに基づいて決定された可能性が高い。
これについては、別の機会に書くことにする。
『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』より一部抜粋
著者/ヤス
早稲田大学卒。企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等を担当。世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立てる。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をメルマガで配信。
http://www.mag2.com/p/news/121699
中国が人民元切り上げ=基準通貨入り意識か
時事通信 2015/11/2 13:39
【上海時事】中国人民銀行(中央銀行)は2日、人民元取引の目安となる対ドル基準値を大幅に引き上げ、前週末比0.54%高の1ドル=6.3154元に設定した。ロイター通信によると、1日の切り上げ幅としては、中国が人民元の改革に着手した2005年以来最大。
前週末10月30日の終値は同6.3175元だった。同日、元は大幅に上昇しており、人民銀が介入したとみられている。
人民銀は8月に切り下げを断行したが、11月にも判断される、国際通貨基金(IMF)の「特別引き出し権(SDR)」算定基準通貨入りを意識し、市場実勢を反映した人民元政策をアピールする意図があるもようだ。
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