中国が拘束した4邦人、独自の人脈 当局スパイ警戒強化 | 日本のお姉さん

中国が拘束した4邦人、独自の人脈 当局スパイ警戒強化

中国が拘束した4邦人、独自の人脈 当局スパイ警戒強化
朝日新聞デジタル 10月26日(月)10時21分配信

4人の男女が拘束された地点

中国で「スパイ行為」に関わったとみなされて日本人が相次いで拘束された事件は、発覚から1カ月近くがたった。拘束状態にある男女4人は、中国をたびたび訪れ、独自の人脈を広げてきた。一部は日本の情報機関と以前に接触があったとの指摘もある。異例の長期拘束の背景には、外国人の活動に神経をとがらせる中国当局の姿勢が浮かぶ。


日中関係筋によると、浙江省南●(なんき、●は「鹿」の下に「几」、ただし广のタレが几にかかる)列島で5月に拘束された愛知県の男性(51)は、軍施設周辺で写真を撮っていたことが、スパイ行為とみなされた模様だ。

男性を知る関係者らによると、男性は大学卒業後、地元の不動産仲介会社の営業職に就いた。30代で起業し、保険業や警備業など10を超える肩書を名乗った。

2000年代には商売の軸足を中国に広げた。「北京の一流大学と組んで、日本企業に中国の技術者を派遣する事業を手がけた。今度は会社を起こしたい」と知人に出資を求めたこともあった。しかし、08年のリーマン・ショックなどで事業は頓挫。その後の男性の近況を知る人は少ない。

中朝国境地帯にある遼寧省丹東で同じ5月に拘束されたのは、神奈川県の男性(55)とみられている。男性を知る関係者によると、在日朝鮮人の父と日本人の母と一緒に、1960年代の帰還事業で北朝鮮に渡った。食糧不足が深刻だった90年代後半に脱北。中国に3年間潜伏後、2001年に日本に戻り、日本国籍を取った。「(北朝鮮では)トウモロコシの粉をお湯に溶いたスープを1日1回食べたらいいほうだった」と語っていたという。

来日当初はパチンコ景品交換所で働いた。「中国で商売したい」と語り、広州で朝鮮料理店を開いたこともあった。中朝国境を行き来する人と接触して情報を集めたり、脱北者関連でテレビ局の取材に協力したりすることもあったという。

6月には、東京都内の日本語学校幹部の50代の女性が上海で消息を絶った。中国出身で日本国籍を取った女性は、留学生を世話してきた。月1回ほど中国の仲介業者を訪ね、留学希望者を募った。日中友好団体の幹部らとも交流があったという。学校関係者は「学生の夢をかなえるために貢献してきた彼女が、なぜ拘束されたのか」と嘆いた。

北京でも6月、北海道の60代の男性が拘束された。大手航空会社に勤めていた男性は、組合活動や選挙支援を通じて国会議員らと知り合った。中国に人脈を築き、退職後は企業の顧問役として、漢方薬の輸入や中国人観光客の誘致などで月1、2度は訪中。「中国に進出したい多くの企業が(男性の)人脈を頼っていた」と関係者は語る。今回の渡航直前、知人に「商談で1週間ほど行ってきます」と告げて出国。帰国予定日前後に、関係先に「2、3日帰りが遅れる」と電話してきたが、その後音信が途絶えた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151026-00000016-asahi-pol

2回目↓
無限に拡大解釈できる中国の「反スパイ法」と「総体的国家安全観」…異質な国とどう付き合うか?

今月11日、日本人女性が「スパイ」の疑いで
中国上海で拘束されていることが新たに分かった。
今年、中国で同じ容疑で拘束されたり、
逮捕されたりした日本人の数はこれで4人となった。
かけられた「スパイ容疑」はそれぞれだが、問題はむしろ、
今年に入って日本人への「スパイ狩り」が急速に増えた
背後に何かあったのか、である。

理由の一つは、昨年11月に中国で
「反スパイ法」が成立したことがあろう。

同法のスパイ行為の定義を定めた38条に
「(5)その他のスパイ活動を行うこと」があるが、問題はまさにこれだ。
この場合の「その他」はまったく無制限なもので、
いかなる拡大解釈も許してしまう危険な条文だからである。
つまり、中国政府当局が「それがスパイ行為だ」と判定さえすれば、
どんなことでも「スパイ行為」だと見なされる可能性がある。

このようないいかげんな「反スパイ法」が出来上がった背景には、
習近平国家主席が昨年4月あたりから唱え始めた
「総体的国家安全観」というものがある。

昨年4月15日に新設された中国中央国家安全委員会の初会議で、
委員会のトップにおさまった習主席は「重要講話」を行い、
「総体的国家安全観」という耳新しい概念を持ち出した。

一般的に「国家安全」とは「外部からの軍事的脅威に対する国家の安全」
という意味合いで理解されることが多いが、
習主席のいう「総体的国家安全」はそれとは異なる。

講話は「政治安全、国土安全、軍事安全、経済安全、文化安全、
社会安全、科学安全、生態安全、資源安全」などの11項目を羅列し、
それらの「安全」をすべて守っていくことが「総体的安全観」の趣旨だと説明した。

つまり習主席からすれば、今の中国は政治と軍事だけでなく、
経済・文化・社会・科学などのあらゆる面において
「国家の安全」が脅かされているのである。
したがって中国は今後、この「あらゆる方面」において
国家の安全を守っていかなければならない、というのである。

こうした考え方は、もはや「草木皆兵」のような疑心暗鬼というしかないが、
昨年11月に誕生した「反スパイ法」は、
まさにこのような疑心暗鬼に基づいて制定された法律だ。
それは「スパイ行為」たるものを政治・経済・文化・科学のあらゆる面において
拡大解釈した結果、現場の国家安全部は結局、
本来なら「スパイ」でも何でもない行為を
とにかく「スパイ行為」として取り扱うようになった。

今年に入ってから集中的に拘束されたりした邦人たちは、
まさにこのような拡大解釈の「スパイ狩り」の犠牲者だといえなくもないが、
問題はこれからだ。


「反スパイ法」下では極端な場合、
たとえば日本企業が販促のために中国で市場調査を行うような行為も、
中国の「経済安全」を脅かす「その他のスパイ行為」だ
と見なされてしまうかもしれないし、
中国に書籍やDVDなどの類を持ち込んだだけで、
中国の「文化安全」を脅かす「その他のスパイ行為」として
疑われてしまう可能性もあろう。

とにかくこの「反スパイ法」の実施は、
中国国内で活動する日本企業の
正常な経済活動に支障を来すことは必至であり、
日中間の人的交流・文化的交流の妨げになることは明らかだ。

このような状況下では今後、日本企業と普通の日本人はまず、
中国とのあらゆる交流は「危険」を伴うものである
ことをきちんと認識しなければならないし、
必要性の低い中国入りは控えた方がよいのかもしれない。

そしてこの「反スパイ法」の実施をきっかけに、われわれはもう一度、
かの異質な国とどう付き合っていくべきかを考えなければならないのである。

( 石 平 )

◎石平(せきへい)のチャイナウォッチ
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