イラク北部を制圧したイスラム原理主義テロリストISISとオバマの矛盾;次はニューヨーク!?
イスラム国はローマも征服すると言っている。イランとイラクも合体させてイスラム国に使用として国境の土嚢を潰した。イスラム国がシリアにいるかぎり、EUに逃げ出す難民と、偽難民は増え続けるだろうね。アメリカは、イスラム国を利用しようとしているのだと思うけど、イスラム教徒をそのままにしておくと、また別の9・11事件が起きるのではないか。
9・11は、アメリカのイスラム教徒過激派を陰で操って、上手いこと、もともと解体したかったビルにぶつけて、ペンタゴンもわざわざ部屋を修理中にして待っていて、爆弾まで仕掛けてまていたのに、ペンタゴンに突っ込む予定の飛行機は、勇敢なアメリカ人らによって、森に落ちた。なぜか、ペンタゴンではその修理中の部屋が爆発したのだが、それは計算違いだったようだ。9・11は、陰謀だったとしても、イスラム過激派は、旅客機の飛行訓練をしていたから、日本が真珠湾を攻撃することを最初から知っていたのに、黙って待っていたアメリカだから、「敵を利用する」ぐらいは、どうってことないって感じなのでは?
イスラエルは、イスラム国家がお互いに殺し合って弱くなればラッキーという気分で見ているかもしれないけど、アメリカにいろいろ支持しているとも思えないな。アメリカはイスラエルにパレスチナのことで、いろいろ注文を付けている。アメリカは、とにかく、イラクから出ていきたいだけなのだと、わたしは思うけど、わかんないな。
なぜ、ここまでイスラム国をのさばらせるのか。難民が全員出たらシリアじゃなくて本当にイスラム国になっちゃうよ。
2回目の掲載↓
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わざとイスラム国に負ける米軍、そして中東はイスラエルの思惑通りとなる
2015年6月4日
数的優位な有志連合軍が「イスラム国」(ISIS)にイラクの戦略的要衝ラマディを奪われるなど、不可解とも取れる戦況が続く中東情勢。しかし国際情勢解説者の田中宇さんの無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』はこの状況について、決して不可解ではなく、米軍がわざとISISに負けているだけだと断言します。
わざとイスラム国に負ける米軍
5月17日、米軍が指導するイラク政府軍の約1万人の部隊が、イラク中部のスンニ派の都市ラマディで、自分らの10分の1しかいない1000人程度の過激派テロ組織「イスラム国」(ISIS)と戦って敗北、敗走し、ラマディはISISの手に落ちた。米国とイラクにとって、昨年6月のモスル陥落以来の大敗北だ。イラク軍は装甲車大砲など大量の兵器を置いて敗走し、それらの兵器はすべてISISのものになった。ラマディは、首都バグダッドから130kmしか離れていない。東進を続けるISISは、イラクを危機に陥れている。
敗北時、イラク軍には世界最強の米軍がついていた。米軍は制空権を握り、戦闘機でいくらでもISISを空爆できた。しかし、地上で激戦のさなかの空爆は4回しか行われず、それも市街の周辺部を小規模に空爆しただけだった。
イラク政府軍と一緒に地元のスンニ派部族の武装勢力が戦っており、米政府が彼らに軍事支援を約束していたが、実際には何も支援せず、武装勢力は銃弾をブラックマーケットで自腹で買わざるを得ず、十分に戦えなかった。米軍が諜報を担当していたが情報収集に大きな漏れがあり、イラク軍は後方の集落に隠れていたISISの部隊に不意撃ちされ、総崩れになった。「砂嵐なので米軍機が援護空爆できない」という間違った情報が流され、イラク軍が敗走を余儀なくされた。
ラマディの敗北後、カーター国防長官はテレビ番組で「イラク軍は戦意が欠けていた。自分たちよりずっと少数の敵の前から逃亡した」と発言した。米軍自身の諜報的なやる気のなさを棚上げしたこの発言に、イラクのアバディ首相は「(カーターは)間違った情報を与えられている」と逆非難した。イラク政府高官は「すぐ近くの空軍基地(Al-Asad)に米軍機がたくさんいたのに出撃せず、米軍はイラク軍を助けなかった」と言っている。
米軍はISISとの戦いにおいて、どこを空爆したら良いかという情報が欠如している。必死に収集しているが情報がないのではなく、集める気がない感じだ。イラクとシリアで、米軍機は出撃しても4分の3が空爆せず帰還している。今年1-4月で爆撃機が7319回出撃したが、空爆を実行したのは1859回だけだった。どこを空爆したら良いかわからないのだという。
ISISはシリア北部の町ラッカに本拠地があり、米軍はラッカのどこにISISの施設があるか知っていたが、それを空爆せず温存してやっている。ラッカからイラクへの幹線国道を空爆すれば、ISISがシリアからイラクに軍勢や武器を移動できなくなるのに、米軍はそれもやっていない。米軍は、いくらでもISIS空爆できるのにそれをせず、自由に活動させている。昨年6月、米軍とイラク軍は第2の都市モスルをISISに奪われたが、この際、米国がイラクに与えた2300台の装甲車が残置され、ISISの手に渡っている。米国がISISに装甲車をあげて支援した構図になっている。
以前からの私の読者は、米軍がわざとISISを空爆せず、意図的に兵器をISISに与えることを知っても、特に驚かないだろう。イラク軍がISISと戦っている目の前で、米軍のヘリコプターが袋に詰めた武器や食料をISISの陣地に投下して支援していたことについて、以前の記事に書いた。米軍は、ISISを支援するだけでなく、イラク軍のISIS攻略作戦の中身を事前に公開し、攻略を妨害したりもしている。
>>次ページ アメリカがここまでISISを「支援」する理由は?
5月18日、米国の政府監視団体(Judicial Watch)が、2012年に国防総省の諜報部DIAが作成した秘密報告書を、裁判を通じて入手したとして発表した。そこには、米当局が12年の段階でISISの台頭を予測し、ISISは米国の敵でなく、アサド政権やイランなど米国の敵と戦ってくれる支援すべき資産だと分析していたことが書かれていた。14年にISISがモスルを陥落して突然台頭したとき、米政府は驚愕してみせたが、それは演技だったことが判明した。
米政府は、ラマディの大敗北に、超然としている。まるで、意図的に大事な軍事情報の収集を行わず、わざと負けたかのようだ。米政府は、自分たちのせいでISISに負けてイラクが危険になっているのに「米国はイラクの安全に責任を持たない」と表明している。イラク政府は、自国の安全を守るためのISISとの戦いで、米国に頼れなくなっている。米国に頼れないとなると、隣国イランに頼るしかない。
ラマディ陥落後、ISISがバグダッドに侵攻するのを防ぐため、ラマディとバグダッドの間にあるアンバール州のハッバーニヤの町に、3000人のシーア派民兵団が急いで展開した。シーア派民兵団は、イランから軍司令官が派遣され、イランの傘下で訓練されており、イラク政府軍より強い。シーア派民兵団を、スンニ派の地域であるアンバール州に入れると、シーアとスンニの抗争を扇動しかねないので、イラクとイランの政府は、シーア派民兵をラマディなどアンバール州の戦闘に参加させていなかった。イラク軍を指揮する米軍と、シーア民兵を指揮するイラン軍(革命防衛隊)が敵どうしということもある。しかし米軍は今回、シーア民兵のアンバール州への展開を認めた。
米軍がISISと戦うふりをして支援し、イラク軍を助けるふりをして妨害する以前からの状況が続くほど、イラク政府は米国に不信感を抱き、本気でISISと戦うイランを頼る傾向を強める。それがオバマ政権の意図であると、私は以前から分析してきた。
イラク政府が米国に頼るのをあきらめてイランに頼る傾向を強めたとみるや、米国はイラク政府に対して新たな意地悪をしてきた。米国には、武器支援するのは各国の政府だけで、政府を持たない武装勢力を支援してはならないとの法律がある。この法律のため、米国はこれまで、シーア派、スンニ派、クルド人の3派にわかれているイラクのうち、シーア派主導のイラク政府だけしか軍事支援できず、米国からスンニ派やクルド人への軍事支援は、いったんイラク政府に支援を渡し、それを分配してもらう方式にしていた。
しかし3派はそれぞれ仲が悪いので、イラク政府は米国からもらった武器や資金をスンニ派やクルド人に分配したがらない。そこで米議会は4月末から、イラクをシーア、スンニ、クルドの3つの国に見立て、それぞれに直接軍事支援できるようにすることを検討し始めた。これは、イスラエルが以前から熱望していた「3分割によるイラク弱体化・内戦化」の策だ。
これにはイラク政府やシーア派民兵団が猛反発し、米国が3分割を撤回しないなら、シーア派民兵団がイランとの結びつきを強め、政府軍に取って代わることも辞さないと言い出した。オバマ政権は、イスラエルの言いなりになることで、イスラエルの仇敵であるイランの傘下にイラクを押しやっている。米国の上層部は、イランを敵視する軍産イスラエル複合体と、イランを敵視するふりをして強化してやることで軍産イスラエルを無力化したいオバマとの暗闘が続いている。
>>次ページ イラクよりも深刻なシリアの「四面楚歌」
SISによって国家が危機に陥っている状況は、イラクよりシリアの方が深刻だ。5月20日、ISISがシリア中部の古代遺跡の町パルミラを占領した。これにより、ISISはシリアの国土の半分以上を乗っ取った。次はシリア第3の都市ホムスに侵攻するのでないかと懸念されている。ホムスが取られると、残るはアサド大統領がいる首都ダマスカスの攻略になる。
シリアに関して米国は表向き「反アサド・反ISIS」で「穏健派のシリア反政府勢力」を支援してアサドとISISの両方に立ち向かわせる戦略だ。米政府は昨年から「穏健派」に対する資金援助や軍事訓練を行っている。しかし実際には、シリアで実際に戦闘する反政府勢力の諸派の中に「穏健派」などいない。ISISかアルカイダに属する過激派ばかりだ。米政府は存在しない組織を支援している。米政府の支援は、穏健派でなく、穏健派のふりをしたISISやアルカイダに対して行われている。
ISISは、シリアの対トルコ国境沿いの地域でも伸張している。この地域では、トルコの諜報機関がISISを支援している。トルコは、表向きイランと仲良くする一方で、イランが支援するアサド政権と戦うISISを助け、米軍によるISISへの隠然支援に協力し、自国の周辺でイランが台頭することを防ごうとしている。シリア・トルコ国境をISISが支配すると、トルコによる支援が増加してISISが強化され、アサド政権が窮地に陥る。
米国の軍産複合体を牛耳るイスラエルにとって、ISISは便利な道具だ。イスラエルは、米国の覇権が崩壊しつつあり、米国がいずれ中東支配をやめて出ていくことを知っている。その時、中東でISISが「活躍」し、アサド政権が倒されてシリアが無政府状態の混乱に陥り、そのころには核兵器開発の濡れ衣を解かれているであろうイランや、その傘下のレバノンのヒズボラがISISとの恒久的な戦いで消耗して台頭を抑止されている状態が、イスラエルにとって好ましい。スンニ過激派のISISが「活躍」する限り、中東でスンニとシーアの殺し合いが続き、イスラム世界は混乱し続け、イスラエルに対抗できる力を持てない。
6月末の交渉期限後、イランが核問題での制裁を国連やEUから解除されると、イランは急速に財力を復活させ、軍資金が決定的に足りないアサド政権を力強くテコ入れし、ISISを倒しかねない。だから軍産イスラエルとしては、7月にイランが制裁解除される前に、ISISにアサド政権を潰すメドをつけてもらいたい。5月にISISがイラクとシリアの両方で急に強くなった背景に、米国の中東撤退を見据えたイスラエルの策略が存在している。
最近、6月末を前にして、ISISやアルカイダが、アサドのシリア政府軍や、政府軍を支援するヒズボラ(レバノンのシーア派武装勢力、イラン傘下)に、シリア各地で猛攻撃をかけている。政府軍やヒズボラは、これまでになく疲弊していると報じられている(イスラエルの情報だが)。
シリア沿岸部の町ラタキアは、アサド家の出身地に近いので政府軍の力が比較的強いが、それでも最近、ラタキアに駐留するロシア政府の顧問団のうち約100人が撤退した。ロシア海軍は、ラタキアの近くのタルトス港を東地中海の重要拠点(補給所)として借りている。ロシアは、イランに次ぐシリアの重要な味方だ。撤退の理由は発表されていないが、ISISがシリア中部のパルミラから西部のホムス、沿岸部のラタキアへと侵攻してくる可能性があり、ラタキアですら危険になっていると考えられる。6月中にアサド政権が崩壊する可能性がある。
>>次ページ 現時点でISISを倒せる国とは?
中東ではイラクとシリアだけでなく、リビアやアフガニスタン、イエメンなどでもISISに忠誠を誓うイスラム過激派テロ組織が活動している。シリアでアサド政権が消滅してISISが勝つと、ISISの影響力が中東全域で強くなり、イスラエルが好む中東イスラム世界の長期的な内戦化・弱体化が起こる。そうなれば、たとえ米国が中東から撤退しても、イスラエルは何とかやっていける。
イスラエルは、ゴラン高原越しに、シリアのアルカイダ(ヌスラ戦線)を支援している。ヌスラ戦線の指導者(Abu Mohammad al-Golani)は最近、米欧のテレビのインタビューに出演する
など、米欧に自分たちをテロリストでなく正当なシリア反政府勢力として認めさせようとすることに力を入れている。ヌスラ戦線は、アサド政権が倒れた後のシリアの政権をとって国際承認されることをめざしているのだろう(その場合ISISとヌスラ戦線が裏で談合する)。これはおそらくイスラエルの差し金だ。
イスラエルは最近、米国の中東撤退後を見据えた戦略の1つとしてサウジアラビアに接近している。サウジが米国でなくイスラエルから兵器を買うよう仕向け、イスラエルの国庫を潤すとともに、スンニ派の盟主サウジとシーア派の盟主イランが恒久対立してイスラム世界が自滅する構図を作るのが狙いだ。イスラエルは、サウジのイエメン侵攻時に戦闘機を派遣したと言われているし、フーシ派に占拠されたイエメンのサウジ大使館にイスラエルの武器が貯蔵されていたことも暴露された。イスラエルは、自国の迎撃ミサイル(Iron Dome)をサウジに売り込んだり
もしている。
軍産イスラエルは、ISISと戦うふりをして支援したりわざと負けたりすることで、ISISがアサドを倒してシリアを恒久内戦に陥れ、イスラエルの仇敵であるレバノンのヒズボラを弱体化し、イラクで東進するISISがイランに戦いを挑む構図を作りたい。イラクにおいて、ISISが首都バグダッドやナジャフなど聖地を攻撃したり、対イラン国境に迫った場合、イランは正規軍を越境出動させてISISと戦うと表明している。シリアでは、イランが制裁解除後の自国の資金増を見越し、資金難のシリアを助けようと与信枠を増やしているが、間に合うかどうかわからない。ISISとイランとの戦いは勝敗の分岐点にいる。
現時点で、ISISを倒せるのはイランしかいない。米国やトルコはISISの隠れた味方で、EUもその陣営だ。ロシアや中国はイランやシリアに加勢するが、イランが弱体化すると終わりだ。イランが負けてISISが台頭すると、中東がこの先ずっと混乱する。米単独覇権崩壊後の今後の世界は多極型で自分たちのものだと考えているロシアや中国は、ISISの台頭を好まず、イランを勝たせようとする策を強めている。ロシアはイランの軍事力を強化してやっている。
イランは、中露と中央アジア諸国が作るゆるやかな安保体制「上海協力機構」に加盟したがっている。上海機構に入れば、イランが中露に守られつつ米イスラエルに対抗できる傾向が増す。7月9日にロシアのウラル南部の町ウファで開催予定の今年の上海機構のサミットに、イランが高官を派遣することが決まった。早ければ、その時にイランの上海機構への加盟が話し合われる。ISISがアサドを倒して中東をイスラエル好みにさらに混乱させるのか、中露がイランを支援強化してアサドを守るのか、世界の覇権構造の転換と相まって、中東は分岐点にいる。
イラン国内では「制裁解除後に入ってくる巨額資金を、シリアやヒズボラの支援に回さず、国民生活の向上にあててくれ」という主張が出ている。対照的に、イランの軍部は、シリアやヒズボラを支援するため軍事費の3割増を求めている。イラン国内の論争も激化している。
『田中宇の国際ニュース解説』
国際情勢解説者の田中宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の解説記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。
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イラク北部を制圧したイスラム原理主義テロリストISISとオバマの矛盾;次はニューヨーク!?
2014-06-28 05:08:01
テーマ:現代史
イラク軍がこれほど弱いとは思ってもみなかった。去る10日、たった1日でイラク第2の都市モスル(人口約200万人)を攻略したアルカイダ系イスラム原理主義テロリスト集団「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は、その後も怒涛の進撃を続け、今や首都バグダッドも脅かす(写真=ISIS兵士)。
かつての南ベトナム軍のように弱いイラク軍
ISISは大軍と戦車・爆撃機を擁しているわけではない。たった数千人の非正規兵ゲリラだ。
そんなテロリストを食い止められないのが、イラク軍の士気の低さである。ISISに攻撃されたイラク北部のイラク軍は、高度な武器や装備を打ち捨てて、戦わずして逃げ散ったという。その近代的装備を手にしたISISは、進撃とともに強化されている。
かつてベトナム戦争でも、アメリカ軍軍事顧問から訓練され、アメリカ製最新兵器を装備した南ベトナム政府軍は、旧式装備の北ベトナム軍に攻撃されると、最新式武器を捨てて戦わずして逃亡した。北ベトナム軍は、戦場で鹵獲した最新式アメリカ製武器で、どんどん「近代化」していった。その故事を思い起こす。
これでは、来年中にアメリカ軍が撤退するアフガニスタンでも同じことが繰り返されるのではないか、と懸念される。
シリアで実戦経験積み、勢力を蓄える
ISISの進撃は、当のマリキ政権はもちろんアメリカも想定外の事態だった。ISISはなぜこれほど強くなったのか。
それは、訓練場になった隣国シリアでの実戦体験が大きい。
シリアのアサド独裁政権と戦う反体制派には、最初のうちはシリア軍から離反した自由シリア軍とイスラム原理主義テロリストの「ヌスラ戦線」が主役だった。ところがこのシリアに、「イラクの聖戦アルカイダ」などのイラクのアルカイダ系、アラブ各国をはじめ一部西欧出身の過激派ムスリムが合流し、自由シリア軍やヌスラ戦線をしのぐほどの勢力を蓄えるにいたった。
サイクス=ピコ協定の無実化
イラク出身者中心で「イラク・イスラム国」だった彼らは、サウジアラビアなどからの支援金と武器でどんどん強大になり、「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS)と改称し、北東部シリアに事実上の「解放区」を創った。
こうして強大化したISISが、シリア北東部を出撃基地に、モスルを一気に攻め落とした構図なのだ。
その彼らは、今では「サイクス=ピコ協定粉砕、イラク・シリア・イスラム国家の建設」を呼号する。
サイクス=ピコ協定とは、オスマン帝国領だったレバント地方を分割し、北西部シリアをフランスの、南部のイラクをイギリスの勢力圏に組み入れるという100年近く前のイギリス、フランス、帝政ロシアの秘密協定だ。
ISISは、サイクス=ピコ協定によるシリアとイラクの分割を否定し、統一イスラム原理主義国家を打ち立てるのが目的なのである。
この戦略に沿うように、モスルと翌日にティクリートを陥落させたISISは、シリアとの国境地帯も制圧し、そこからイラクの警備隊を追い出し、国境線の土塁をブルドーザーで壊すなどして、有名無実化した。
マリキ政権に退陣圧力
制圧した諸都市では、厳格なイスラム法を導入し、有力者とシーア派の残酷な処刑を行っている。
この事態にいたって、おバカなオバマ政権もことの深刻さを認識したようである。マリキ政権から懇願されたISISへの空爆こそ断ったが、軍事顧問団最大300人をイラクに急派した。
同時にこの事態を招いたシーア派独裁政権となったマリキ首相に、露骨に退陣圧力をかけている。このあたり、ケネディ、ジョンソン民主党政権下で、南ベトナム軍への援助を強化する一方、南ベトナム軍事政権の首を次々とすげ替えてきたベトナム戦争のアナロジーとも言える。
すべてを放り出して逃げた「無責任な撤退」の責任
今日の深刻な事態を招いた責任は、1にアメリカのオバマに、2に現マリキ政権にある。
オバマは、共和党のマケイン候補に対し、大統領選に勝利するための戦術としてイラクからの撤退を公約し、4000人ものアメリカ軍犠牲者を出したアメリカ国民の厭戦気分を利用して勝利し、大統領就任後は「責任ある撤退」を放棄し、2011年、すべてを放り出してイラクから出て行ってしまった。
怖い後見人であるアメリカがいなくなったシーア派マリキ政権は、やりたい放題に振舞い、どんどん強権体質を固め、政権からスンニ派とクルド系を追放し、事実上のシーア派独裁政権を築いてしまった。
体制外に放り出されたスンニ派が、同じスンニ派のISISに対して融和的になるのは当然で、ISISはスンニ派住民が多数を占めるモスルやティクリートと一部住民から歓迎されたほどである。
アサドと和解し、宿敵イランと握手する戦略の大転換しか途はないジレンマ
今となっては遅いが、仮に2011年時に数千人から1万人規模のアメリカ軍を残してマリキ政権に睨みをきかせておけば、マリキ政権のシーア派独裁政権化を防げただろう。イラクの分裂と混乱も、防げた可能性が高い。
オバマの失政は、シリアに続いて、イラクでも再現されたわけだが、今となっては戦略の大転換しか事態打開の途はないかもしれない。
血にまみれたシリアの独裁者のアサドと和解し、長年の敵のイランとも手を結び、ISISを東西南北から挟撃するか――。しかしそれでは、アサドと戦った自由シリア軍兵士と市民に顔向けできないだろう。アメリカは道徳的に大きな汚点を残す。
もはや「自由の守護者」とは、振る舞えない。
ただシリアのアサドは、そこを見透かすようにイラクのISISに対して空爆を実施している。マリキは大歓迎し、オバマは傍観するしかない。
この戯画は、何と呼ぶべきか。
「次はニューヨークだ」と叫ぶISISテロリスト
意気上がるISISテロリストたちは、「次はニューヨークだ」とイラク北部支配地で叫んでいるという。シリア北東部とイラク北部を固めてしまえば、9.11のようにISISがニューヨークにテロ攻撃を仕掛けるのは避けられない。
2008年大統領選でオバマに敗れた共和党のマケイン氏は、イラクから撤退すれば敵はニューヨークまで追いかけてくる、と警告した。その警告は、あながちブラフだったとは言い切れなくなっているのだ。
(6月13日付日記:「風雲急を告げるイラク、オバマの失敗がまた新たな悲劇に。アルカイダ系がイラク北部の主要都市を相次ぎ制圧」も参照)
http://ameblo.jp/kawai-n1/entry-11885342400.html
9・11は、アメリカのイスラム教徒過激派を陰で操って、上手いこと、もともと解体したかったビルにぶつけて、ペンタゴンもわざわざ部屋を修理中にして待っていて、爆弾まで仕掛けてまていたのに、ペンタゴンに突っ込む予定の飛行機は、勇敢なアメリカ人らによって、森に落ちた。なぜか、ペンタゴンではその修理中の部屋が爆発したのだが、それは計算違いだったようだ。9・11は、陰謀だったとしても、イスラム過激派は、旅客機の飛行訓練をしていたから、日本が真珠湾を攻撃することを最初から知っていたのに、黙って待っていたアメリカだから、「敵を利用する」ぐらいは、どうってことないって感じなのでは?
イスラエルは、イスラム国家がお互いに殺し合って弱くなればラッキーという気分で見ているかもしれないけど、アメリカにいろいろ支持しているとも思えないな。アメリカはイスラエルにパレスチナのことで、いろいろ注文を付けている。アメリカは、とにかく、イラクから出ていきたいだけなのだと、わたしは思うけど、わかんないな。
なぜ、ここまでイスラム国をのさばらせるのか。難民が全員出たらシリアじゃなくて本当にイスラム国になっちゃうよ。
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わざとイスラム国に負ける米軍、そして中東はイスラエルの思惑通りとなる
2015年6月4日
数的優位な有志連合軍が「イスラム国」(ISIS)にイラクの戦略的要衝ラマディを奪われるなど、不可解とも取れる戦況が続く中東情勢。しかし国際情勢解説者の田中宇さんの無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』はこの状況について、決して不可解ではなく、米軍がわざとISISに負けているだけだと断言します。
わざとイスラム国に負ける米軍
5月17日、米軍が指導するイラク政府軍の約1万人の部隊が、イラク中部のスンニ派の都市ラマディで、自分らの10分の1しかいない1000人程度の過激派テロ組織「イスラム国」(ISIS)と戦って敗北、敗走し、ラマディはISISの手に落ちた。米国とイラクにとって、昨年6月のモスル陥落以来の大敗北だ。イラク軍は装甲車大砲など大量の兵器を置いて敗走し、それらの兵器はすべてISISのものになった。ラマディは、首都バグダッドから130kmしか離れていない。東進を続けるISISは、イラクを危機に陥れている。
敗北時、イラク軍には世界最強の米軍がついていた。米軍は制空権を握り、戦闘機でいくらでもISISを空爆できた。しかし、地上で激戦のさなかの空爆は4回しか行われず、それも市街の周辺部を小規模に空爆しただけだった。
イラク政府軍と一緒に地元のスンニ派部族の武装勢力が戦っており、米政府が彼らに軍事支援を約束していたが、実際には何も支援せず、武装勢力は銃弾をブラックマーケットで自腹で買わざるを得ず、十分に戦えなかった。米軍が諜報を担当していたが情報収集に大きな漏れがあり、イラク軍は後方の集落に隠れていたISISの部隊に不意撃ちされ、総崩れになった。「砂嵐なので米軍機が援護空爆できない」という間違った情報が流され、イラク軍が敗走を余儀なくされた。
ラマディの敗北後、カーター国防長官はテレビ番組で「イラク軍は戦意が欠けていた。自分たちよりずっと少数の敵の前から逃亡した」と発言した。米軍自身の諜報的なやる気のなさを棚上げしたこの発言に、イラクのアバディ首相は「(カーターは)間違った情報を与えられている」と逆非難した。イラク政府高官は「すぐ近くの空軍基地(Al-Asad)に米軍機がたくさんいたのに出撃せず、米軍はイラク軍を助けなかった」と言っている。
米軍はISISとの戦いにおいて、どこを空爆したら良いかという情報が欠如している。必死に収集しているが情報がないのではなく、集める気がない感じだ。イラクとシリアで、米軍機は出撃しても4分の3が空爆せず帰還している。今年1-4月で爆撃機が7319回出撃したが、空爆を実行したのは1859回だけだった。どこを空爆したら良いかわからないのだという。
ISISはシリア北部の町ラッカに本拠地があり、米軍はラッカのどこにISISの施設があるか知っていたが、それを空爆せず温存してやっている。ラッカからイラクへの幹線国道を空爆すれば、ISISがシリアからイラクに軍勢や武器を移動できなくなるのに、米軍はそれもやっていない。米軍は、いくらでもISIS空爆できるのにそれをせず、自由に活動させている。昨年6月、米軍とイラク軍は第2の都市モスルをISISに奪われたが、この際、米国がイラクに与えた2300台の装甲車が残置され、ISISの手に渡っている。米国がISISに装甲車をあげて支援した構図になっている。
以前からの私の読者は、米軍がわざとISISを空爆せず、意図的に兵器をISISに与えることを知っても、特に驚かないだろう。イラク軍がISISと戦っている目の前で、米軍のヘリコプターが袋に詰めた武器や食料をISISの陣地に投下して支援していたことについて、以前の記事に書いた。米軍は、ISISを支援するだけでなく、イラク軍のISIS攻略作戦の中身を事前に公開し、攻略を妨害したりもしている。
>>次ページ アメリカがここまでISISを「支援」する理由は?
5月18日、米国の政府監視団体(Judicial Watch)が、2012年に国防総省の諜報部DIAが作成した秘密報告書を、裁判を通じて入手したとして発表した。そこには、米当局が12年の段階でISISの台頭を予測し、ISISは米国の敵でなく、アサド政権やイランなど米国の敵と戦ってくれる支援すべき資産だと分析していたことが書かれていた。14年にISISがモスルを陥落して突然台頭したとき、米政府は驚愕してみせたが、それは演技だったことが判明した。
米政府は、ラマディの大敗北に、超然としている。まるで、意図的に大事な軍事情報の収集を行わず、わざと負けたかのようだ。米政府は、自分たちのせいでISISに負けてイラクが危険になっているのに「米国はイラクの安全に責任を持たない」と表明している。イラク政府は、自国の安全を守るためのISISとの戦いで、米国に頼れなくなっている。米国に頼れないとなると、隣国イランに頼るしかない。
ラマディ陥落後、ISISがバグダッドに侵攻するのを防ぐため、ラマディとバグダッドの間にあるアンバール州のハッバーニヤの町に、3000人のシーア派民兵団が急いで展開した。シーア派民兵団は、イランから軍司令官が派遣され、イランの傘下で訓練されており、イラク政府軍より強い。シーア派民兵団を、スンニ派の地域であるアンバール州に入れると、シーアとスンニの抗争を扇動しかねないので、イラクとイランの政府は、シーア派民兵をラマディなどアンバール州の戦闘に参加させていなかった。イラク軍を指揮する米軍と、シーア民兵を指揮するイラン軍(革命防衛隊)が敵どうしということもある。しかし米軍は今回、シーア民兵のアンバール州への展開を認めた。
米軍がISISと戦うふりをして支援し、イラク軍を助けるふりをして妨害する以前からの状況が続くほど、イラク政府は米国に不信感を抱き、本気でISISと戦うイランを頼る傾向を強める。それがオバマ政権の意図であると、私は以前から分析してきた。
イラク政府が米国に頼るのをあきらめてイランに頼る傾向を強めたとみるや、米国はイラク政府に対して新たな意地悪をしてきた。米国には、武器支援するのは各国の政府だけで、政府を持たない武装勢力を支援してはならないとの法律がある。この法律のため、米国はこれまで、シーア派、スンニ派、クルド人の3派にわかれているイラクのうち、シーア派主導のイラク政府だけしか軍事支援できず、米国からスンニ派やクルド人への軍事支援は、いったんイラク政府に支援を渡し、それを分配してもらう方式にしていた。
しかし3派はそれぞれ仲が悪いので、イラク政府は米国からもらった武器や資金をスンニ派やクルド人に分配したがらない。そこで米議会は4月末から、イラクをシーア、スンニ、クルドの3つの国に見立て、それぞれに直接軍事支援できるようにすることを検討し始めた。これは、イスラエルが以前から熱望していた「3分割によるイラク弱体化・内戦化」の策だ。
これにはイラク政府やシーア派民兵団が猛反発し、米国が3分割を撤回しないなら、シーア派民兵団がイランとの結びつきを強め、政府軍に取って代わることも辞さないと言い出した。オバマ政権は、イスラエルの言いなりになることで、イスラエルの仇敵であるイランの傘下にイラクを押しやっている。米国の上層部は、イランを敵視する軍産イスラエル複合体と、イランを敵視するふりをして強化してやることで軍産イスラエルを無力化したいオバマとの暗闘が続いている。
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SISによって国家が危機に陥っている状況は、イラクよりシリアの方が深刻だ。5月20日、ISISがシリア中部の古代遺跡の町パルミラを占領した。これにより、ISISはシリアの国土の半分以上を乗っ取った。次はシリア第3の都市ホムスに侵攻するのでないかと懸念されている。ホムスが取られると、残るはアサド大統領がいる首都ダマスカスの攻略になる。
シリアに関して米国は表向き「反アサド・反ISIS」で「穏健派のシリア反政府勢力」を支援してアサドとISISの両方に立ち向かわせる戦略だ。米政府は昨年から「穏健派」に対する資金援助や軍事訓練を行っている。しかし実際には、シリアで実際に戦闘する反政府勢力の諸派の中に「穏健派」などいない。ISISかアルカイダに属する過激派ばかりだ。米政府は存在しない組織を支援している。米政府の支援は、穏健派でなく、穏健派のふりをしたISISやアルカイダに対して行われている。
ISISは、シリアの対トルコ国境沿いの地域でも伸張している。この地域では、トルコの諜報機関がISISを支援している。トルコは、表向きイランと仲良くする一方で、イランが支援するアサド政権と戦うISISを助け、米軍によるISISへの隠然支援に協力し、自国の周辺でイランが台頭することを防ごうとしている。シリア・トルコ国境をISISが支配すると、トルコによる支援が増加してISISが強化され、アサド政権が窮地に陥る。
米国の軍産複合体を牛耳るイスラエルにとって、ISISは便利な道具だ。イスラエルは、米国の覇権が崩壊しつつあり、米国がいずれ中東支配をやめて出ていくことを知っている。その時、中東でISISが「活躍」し、アサド政権が倒されてシリアが無政府状態の混乱に陥り、そのころには核兵器開発の濡れ衣を解かれているであろうイランや、その傘下のレバノンのヒズボラがISISとの恒久的な戦いで消耗して台頭を抑止されている状態が、イスラエルにとって好ましい。スンニ過激派のISISが「活躍」する限り、中東でスンニとシーアの殺し合いが続き、イスラム世界は混乱し続け、イスラエルに対抗できる力を持てない。
6月末の交渉期限後、イランが核問題での制裁を国連やEUから解除されると、イランは急速に財力を復活させ、軍資金が決定的に足りないアサド政権を力強くテコ入れし、ISISを倒しかねない。だから軍産イスラエルとしては、7月にイランが制裁解除される前に、ISISにアサド政権を潰すメドをつけてもらいたい。5月にISISがイラクとシリアの両方で急に強くなった背景に、米国の中東撤退を見据えたイスラエルの策略が存在している。
最近、6月末を前にして、ISISやアルカイダが、アサドのシリア政府軍や、政府軍を支援するヒズボラ(レバノンのシーア派武装勢力、イラン傘下)に、シリア各地で猛攻撃をかけている。政府軍やヒズボラは、これまでになく疲弊していると報じられている(イスラエルの情報だが)。
シリア沿岸部の町ラタキアは、アサド家の出身地に近いので政府軍の力が比較的強いが、それでも最近、ラタキアに駐留するロシア政府の顧問団のうち約100人が撤退した。ロシア海軍は、ラタキアの近くのタルトス港を東地中海の重要拠点(補給所)として借りている。ロシアは、イランに次ぐシリアの重要な味方だ。撤退の理由は発表されていないが、ISISがシリア中部のパルミラから西部のホムス、沿岸部のラタキアへと侵攻してくる可能性があり、ラタキアですら危険になっていると考えられる。6月中にアサド政権が崩壊する可能性がある。
>>次ページ 現時点でISISを倒せる国とは?
中東ではイラクとシリアだけでなく、リビアやアフガニスタン、イエメンなどでもISISに忠誠を誓うイスラム過激派テロ組織が活動している。シリアでアサド政権が消滅してISISが勝つと、ISISの影響力が中東全域で強くなり、イスラエルが好む中東イスラム世界の長期的な内戦化・弱体化が起こる。そうなれば、たとえ米国が中東から撤退しても、イスラエルは何とかやっていける。
イスラエルは、ゴラン高原越しに、シリアのアルカイダ(ヌスラ戦線)を支援している。ヌスラ戦線の指導者(Abu Mohammad al-Golani)は最近、米欧のテレビのインタビューに出演する
など、米欧に自分たちをテロリストでなく正当なシリア反政府勢力として認めさせようとすることに力を入れている。ヌスラ戦線は、アサド政権が倒れた後のシリアの政権をとって国際承認されることをめざしているのだろう(その場合ISISとヌスラ戦線が裏で談合する)。これはおそらくイスラエルの差し金だ。
イスラエルは最近、米国の中東撤退後を見据えた戦略の1つとしてサウジアラビアに接近している。サウジが米国でなくイスラエルから兵器を買うよう仕向け、イスラエルの国庫を潤すとともに、スンニ派の盟主サウジとシーア派の盟主イランが恒久対立してイスラム世界が自滅する構図を作るのが狙いだ。イスラエルは、サウジのイエメン侵攻時に戦闘機を派遣したと言われているし、フーシ派に占拠されたイエメンのサウジ大使館にイスラエルの武器が貯蔵されていたことも暴露された。イスラエルは、自国の迎撃ミサイル(Iron Dome)をサウジに売り込んだり
もしている。
軍産イスラエルは、ISISと戦うふりをして支援したりわざと負けたりすることで、ISISがアサドを倒してシリアを恒久内戦に陥れ、イスラエルの仇敵であるレバノンのヒズボラを弱体化し、イラクで東進するISISがイランに戦いを挑む構図を作りたい。イラクにおいて、ISISが首都バグダッドやナジャフなど聖地を攻撃したり、対イラン国境に迫った場合、イランは正規軍を越境出動させてISISと戦うと表明している。シリアでは、イランが制裁解除後の自国の資金増を見越し、資金難のシリアを助けようと与信枠を増やしているが、間に合うかどうかわからない。ISISとイランとの戦いは勝敗の分岐点にいる。
現時点で、ISISを倒せるのはイランしかいない。米国やトルコはISISの隠れた味方で、EUもその陣営だ。ロシアや中国はイランやシリアに加勢するが、イランが弱体化すると終わりだ。イランが負けてISISが台頭すると、中東がこの先ずっと混乱する。米単独覇権崩壊後の今後の世界は多極型で自分たちのものだと考えているロシアや中国は、ISISの台頭を好まず、イランを勝たせようとする策を強めている。ロシアはイランの軍事力を強化してやっている。
イランは、中露と中央アジア諸国が作るゆるやかな安保体制「上海協力機構」に加盟したがっている。上海機構に入れば、イランが中露に守られつつ米イスラエルに対抗できる傾向が増す。7月9日にロシアのウラル南部の町ウファで開催予定の今年の上海機構のサミットに、イランが高官を派遣することが決まった。早ければ、その時にイランの上海機構への加盟が話し合われる。ISISがアサドを倒して中東をイスラエル好みにさらに混乱させるのか、中露がイランを支援強化してアサドを守るのか、世界の覇権構造の転換と相まって、中東は分岐点にいる。
イラン国内では「制裁解除後に入ってくる巨額資金を、シリアやヒズボラの支援に回さず、国民生活の向上にあててくれ」という主張が出ている。対照的に、イランの軍部は、シリアやヒズボラを支援するため軍事費の3割増を求めている。イラン国内の論争も激化している。
『田中宇の国際ニュース解説』
国際情勢解説者の田中宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の解説記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。
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イラク北部を制圧したイスラム原理主義テロリストISISとオバマの矛盾;次はニューヨーク!?
2014-06-28 05:08:01
テーマ:現代史
イラク軍がこれほど弱いとは思ってもみなかった。去る10日、たった1日でイラク第2の都市モスル(人口約200万人)を攻略したアルカイダ系イスラム原理主義テロリスト集団「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は、その後も怒涛の進撃を続け、今や首都バグダッドも脅かす(写真=ISIS兵士)。
かつての南ベトナム軍のように弱いイラク軍
ISISは大軍と戦車・爆撃機を擁しているわけではない。たった数千人の非正規兵ゲリラだ。
そんなテロリストを食い止められないのが、イラク軍の士気の低さである。ISISに攻撃されたイラク北部のイラク軍は、高度な武器や装備を打ち捨てて、戦わずして逃げ散ったという。その近代的装備を手にしたISISは、進撃とともに強化されている。
かつてベトナム戦争でも、アメリカ軍軍事顧問から訓練され、アメリカ製最新兵器を装備した南ベトナム政府軍は、旧式装備の北ベトナム軍に攻撃されると、最新式武器を捨てて戦わずして逃亡した。北ベトナム軍は、戦場で鹵獲した最新式アメリカ製武器で、どんどん「近代化」していった。その故事を思い起こす。
これでは、来年中にアメリカ軍が撤退するアフガニスタンでも同じことが繰り返されるのではないか、と懸念される。
シリアで実戦経験積み、勢力を蓄える
ISISの進撃は、当のマリキ政権はもちろんアメリカも想定外の事態だった。ISISはなぜこれほど強くなったのか。
それは、訓練場になった隣国シリアでの実戦体験が大きい。
シリアのアサド独裁政権と戦う反体制派には、最初のうちはシリア軍から離反した自由シリア軍とイスラム原理主義テロリストの「ヌスラ戦線」が主役だった。ところがこのシリアに、「イラクの聖戦アルカイダ」などのイラクのアルカイダ系、アラブ各国をはじめ一部西欧出身の過激派ムスリムが合流し、自由シリア軍やヌスラ戦線をしのぐほどの勢力を蓄えるにいたった。
サイクス=ピコ協定の無実化
イラク出身者中心で「イラク・イスラム国」だった彼らは、サウジアラビアなどからの支援金と武器でどんどん強大になり、「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS)と改称し、北東部シリアに事実上の「解放区」を創った。
こうして強大化したISISが、シリア北東部を出撃基地に、モスルを一気に攻め落とした構図なのだ。
その彼らは、今では「サイクス=ピコ協定粉砕、イラク・シリア・イスラム国家の建設」を呼号する。
サイクス=ピコ協定とは、オスマン帝国領だったレバント地方を分割し、北西部シリアをフランスの、南部のイラクをイギリスの勢力圏に組み入れるという100年近く前のイギリス、フランス、帝政ロシアの秘密協定だ。
ISISは、サイクス=ピコ協定によるシリアとイラクの分割を否定し、統一イスラム原理主義国家を打ち立てるのが目的なのである。
この戦略に沿うように、モスルと翌日にティクリートを陥落させたISISは、シリアとの国境地帯も制圧し、そこからイラクの警備隊を追い出し、国境線の土塁をブルドーザーで壊すなどして、有名無実化した。
マリキ政権に退陣圧力
制圧した諸都市では、厳格なイスラム法を導入し、有力者とシーア派の残酷な処刑を行っている。
この事態にいたって、おバカなオバマ政権もことの深刻さを認識したようである。マリキ政権から懇願されたISISへの空爆こそ断ったが、軍事顧問団最大300人をイラクに急派した。
同時にこの事態を招いたシーア派独裁政権となったマリキ首相に、露骨に退陣圧力をかけている。このあたり、ケネディ、ジョンソン民主党政権下で、南ベトナム軍への援助を強化する一方、南ベトナム軍事政権の首を次々とすげ替えてきたベトナム戦争のアナロジーとも言える。
すべてを放り出して逃げた「無責任な撤退」の責任
今日の深刻な事態を招いた責任は、1にアメリカのオバマに、2に現マリキ政権にある。
オバマは、共和党のマケイン候補に対し、大統領選に勝利するための戦術としてイラクからの撤退を公約し、4000人ものアメリカ軍犠牲者を出したアメリカ国民の厭戦気分を利用して勝利し、大統領就任後は「責任ある撤退」を放棄し、2011年、すべてを放り出してイラクから出て行ってしまった。
怖い後見人であるアメリカがいなくなったシーア派マリキ政権は、やりたい放題に振舞い、どんどん強権体質を固め、政権からスンニ派とクルド系を追放し、事実上のシーア派独裁政権を築いてしまった。
体制外に放り出されたスンニ派が、同じスンニ派のISISに対して融和的になるのは当然で、ISISはスンニ派住民が多数を占めるモスルやティクリートと一部住民から歓迎されたほどである。
アサドと和解し、宿敵イランと握手する戦略の大転換しか途はないジレンマ
今となっては遅いが、仮に2011年時に数千人から1万人規模のアメリカ軍を残してマリキ政権に睨みをきかせておけば、マリキ政権のシーア派独裁政権化を防げただろう。イラクの分裂と混乱も、防げた可能性が高い。
オバマの失政は、シリアに続いて、イラクでも再現されたわけだが、今となっては戦略の大転換しか事態打開の途はないかもしれない。
血にまみれたシリアの独裁者のアサドと和解し、長年の敵のイランとも手を結び、ISISを東西南北から挟撃するか――。しかしそれでは、アサドと戦った自由シリア軍兵士と市民に顔向けできないだろう。アメリカは道徳的に大きな汚点を残す。
もはや「自由の守護者」とは、振る舞えない。
ただシリアのアサドは、そこを見透かすようにイラクのISISに対して空爆を実施している。マリキは大歓迎し、オバマは傍観するしかない。
この戯画は、何と呼ぶべきか。
「次はニューヨークだ」と叫ぶISISテロリスト
意気上がるISISテロリストたちは、「次はニューヨークだ」とイラク北部支配地で叫んでいるという。シリア北東部とイラク北部を固めてしまえば、9.11のようにISISがニューヨークにテロ攻撃を仕掛けるのは避けられない。
2008年大統領選でオバマに敗れた共和党のマケイン氏は、イラクから撤退すれば敵はニューヨークまで追いかけてくる、と警告した。その警告は、あながちブラフだったとは言い切れなくなっているのだ。
(6月13日付日記:「風雲急を告げるイラク、オバマの失敗がまた新たな悲劇に。アルカイダ系がイラク北部の主要都市を相次ぎ制圧」も参照)
http://ameblo.jp/kawai-n1/entry-11885342400.html