政治がシステムを売り込み その構成技術をEU傘下企業で固めることで、途上国の市場を確保 | 日本のお姉さん

政治がシステムを売り込み その構成技術をEU傘下企業で固めることで、途上国の市場を確保

太田さんが紹介していた記事。↓

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早い話、ここでは何度も触れてる、EU連合の途上国に対する環境政策の大々的な「営業活動」の一環だね。

「EU連合には、アメリカや日本にはない、CO2削減を達成できる技術がこんなにあるんですよ」
「あなたのような途上国も、私達の技術を取り入れてCO2削減に取り組めば、世界的に広がるCO2削減の機運の中排出権取引っていう切り札を持って、積極的に先進国たちと渡り合えるんですよ」

って。 で、そこでEUの技術を買ってもらえれば、連合軍傘下の企業は大もうけできるって構図。

EU全体で環境技術を柱に一枚岩となり、研究機関・メディアが世論をあおり、政治がシステムを売り込み
その構成技術をEU傘下企業で固めることで、途上国の市場を確保して、世界的な発言権を確保する。

ま、やってることは実行支配がない植民地政策みたいなものよね。

単純に生産のCO2のみならず、輸送に掛かったCO2とかまで考えないとダメだよね?って。
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2012年01月08日
ロンドン5輪と、協賛メーカーBMWと、エコの話
Autoblog読んでたら、ふーんって記事があって、そこから色々派生して考えてみた。

いやね、今度のロンドンオリンピック、「新世紀の環境にやさしいエコなオリンピック」って大々的に打ち出されてるんだけど、それに絡んだ対応で、BMWが叩かれてたのを見て、なんか色々とお互いに、けっこう面白い矛盾をかかえてるんだなぁって思ったから。

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まず、きっかけの記事はこれ。イギリスの大衆紙、Daily Mailの記事。

Olympic VIPs will be whisked around London in 4,000 BMWs – so much for the 'green Games'
BMW plan to provide 4,000 cars to Olympic dignitaries in London triggers controversy

おおまかな記事の内容は、ロンドンオリンピックに協力企業として車両を独占供給するBMWに対して。
BMWは今回4000台の車両を供給する予定なんだけど、そのやり方が全くもってエコじゃない!って批判してる。
曰くその車両はすべてドイツから輸送であるとか、電気自動車がほとんど入ってない(200台のみ)であるとか。

で、これだけだとちょっと解りづらいので、まずは話の簡単な背景ね。ちょっといろいろ入り組んでるから。

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実は今回のロンドンオリンピックは、環境にやさしい次世代のオリンピック、っていうのがテーマ。
ともかく物力に物を言わせた、旧世紀の集大成みたいな北京オリンピックに対して、スマートにやりましょ?って。
早い話、ここでは何度も触れてる、EU連合の途上国に対する環境政策の大々的な「営業活動」の一環だね。

「EU連合には、アメリカや日本にはない、CO2削減を達成できる技術がこんなにあるんですよ」
「あなたのような途上国も、私達の技術を取り入れてCO2削減に取り組めば、世界的に広がるCO2削減の機運の中排出権取引っていう切り札を持って、積極的に先進国たちと渡り合えるんですよ」

って。 で、そこでEUの技術を買ってもらえれば、連合軍傘下の企業は大もうけできるって構図。

ちなみにこれ、言葉尻だけで捉えれば車なんか関係ない話かもしれないけれど、けっこうおっきな話だからね?
だって先進国のCO2排出量のうちの運輸部門の排出量は、電車がこれだけ発達してる日本でさえ2割。
もっと車に頼る割合が多い「環境先進国(笑)」なヨーロッパ諸国なんて、軒並み3割を超えるわけだから。
だから、車含めた運輸部門からのCO2排出量削減は大きな柱の一つ。

たとえば自動車に関しては、この流れの大きな柱が、排ガスの計測手法とそれをベースにした税制システム。
一連のEURO *って言われてる計測手法を、いかに途上国に導入してもらうか。

具体的な例を挙げると中国。彼らはこれに乗った国の一つ。かの国の排ガス規制はガソリンもディーゼルもEURO 4。
これはつまりEUの自動車メーカーは中国に車を出すにあたって、EUで5年前に技術的に完成させていて
量産効果も出ていて、売れば売るほどお金になる仕様が、まーんまそのまま中国で販売できるってこと。
さらに言えば、EURO 5、EURO 6と、そのボロ儲けの構図が今後10年スパンでずーっと確約されてるってこと。

まぁこれはさすがに具体的すぎる例だけど、これがEUの環境技術に対する世界戦略の典型的な例。
EU全体で環境技術を柱に一枚岩となり、研究機関・メディアが世論をあおり、政治がシステムを売り込み
その構成技術をEU傘下企業で固めることで、途上国の市場を確保して、世界的な発言権を確保する。

ま、やってることは実行支配がない植民地政策みたいなものよね。

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だから今回のロンドンオリンピックも、営業活動の一環として運輸産業にも協力要請が出た。
まず人の運搬は自家用車の乗り入れをかなりのレベルで規制して、可能な限り公共交通機関を使わせる。
さらに、かの国定番のBus Laneに加えて、オリンピック車両専用の車線まで設定して、一般車両を徹底的に冷遇。
その公共交通も、バスは旧型の連接バス(Bendy Bus)を完全廃止し、伝統の2階建てのRoutemasterを新型に刷新。

さらにそれだけじゃなくて、その他の連絡車やVIP用車両を独占供給する企業の選定条件の一つに
「フリート全体の平均CO2量を120g以下にできる企業」って条件を付け加えたのだ。

で、これにミートしたのがBMW。
彼らは小型車こそラインナップに少ないけど、DセグやEセグセダンクラスでのCO2排出量はダントツでEUトップ。
確かに連絡車に使われる小型車なら、Ford、FiatやPSAみたいなメーカーの方がCO2排出量で貢献できるけど
オリンピックで使われる車両はVIPも運ぶ大型セダンまで必要になるから、そういう意味では一番強い。妥当な線。

でも、そこにDaily Mailは噛み付いたのだ。
主張の基本は虐げられた一般市民と対比して、Olympic Laneを快走するBMWに乗ったVIPって構図なんだけど
そこに加えて車両のCO2が低いのは(暗に)認めるが、それがドイツ本国から輸送したらエコと言えるのかっ!って。
さらにそこに入ってる電気自動車が、たかが4000台中200台ぽっちって、それでエコと言えるのかっ!って。

面白いなぁって思ったのが、これがこれが最近のCO2排出量を語る上で外せない
Life Cycle AssessmentでのCO2排出量の考え方と、Well-to-Wheelの考え方の典型的な例だったから。

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Life Cycle Assessmentは、早い話がその製品が一生涯で排出したCO2の量。
ま、これはけっこう一般的な話だよね。
このロジックを持ってハイブリッドはだからディーゼルよりエコじゃない!って一時期流行ってたぐらいだし。

ちなみに、この概念を考えようとすると、CO2を排出する概念はたとえば
・部品の原材料(たとえばバッテリーのリチウムとか、DPFやNOx吸蔵触媒の貴金属とか)の調達に際するCO2
・車両を作ってる工場からのCO2排出や、完成した車を海外や、国内のディーラーに運ぶ際のCO2排出
他にも車を廃車処分する際に出るCO2や、そのリサイクルにかかったCO2、なんて考え方もある

これをベースに、ドイツ本国から車両を持ってくるなんてLCAはどうなってるんだ、っていちゃもんを付けてるのだ。
#いや、単語はそのままLCAって使ってないけどね。考え方として。
実はこれは最近EUで流行ってるエコムーブメントの一つ。よーは地産地消の考え方。
単純に生産のCO2のみならず、輸送に掛かったCO2とかまで考えないとダメだよね?って。

とはいえ、そう考えると確かにCO2は出てるけれど、かといって英国国内にこのクラスの車を大量供給できる工場があるメーカーってどこなのよ?って言われたら、無いのも事実だったりするんだけどね。

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で、次の電気自動車の話がWell-to-Wheelに繋がる。

Well-to-Wheel、つまり油井(Oil Well)から駆動輪(Wheel)まで。
走ってる瞬間のCO2排出量だけじゃなく、その燃料や電気を作るために排出されたCO2まで考えましょう、と。

たとえばリーフは走ってる最中はCO2排出量はゼロだけど、その電気作るときにどれだけCO2が出てたの?って
その電気が火力発電なら、その時にCO2は排出してるよね?って。これがWell-to-Wheelの基本的な考え方。

これが面白いのは、これを真面目に考え出すと、国によっては電気自動車がエコじゃなくなったりするところ。
たとえばまた中国を例に挙げると、この国の発電量は大半が石炭発電。
そんな中国でリーフを走らせると、実はWell-to-WheelでのCO2排出量はV6ガソリン車並になっちゃったりする。

だから、ここでDaily Mailが電気自動車じゃなきゃエコじゃない!なんて噛み付いたところで、実はその電気が火力発電で作ってたりしたら、本当にMiniのディーゼルよりエコになんだっけ?って話になっちゃうのだ。 まぁイギリスはフランスと並んで原子力発電所が多いお国柄だから、そこまでWtWのCO2排出量は増えないだろうけど。

だからね、たとえ日本でも最近のエコブームで電気自動車ならCO2排出量がゼロになるから!なんて話のときは
このWtWをちゃんと考えなきゃいけない。だって、タダでさえ日本は原子力を捨てる、なんて話になってるわけだから。

そこで次世代のエコ発電!なんていって太陽電池を挙げたって、太陽電池だって製造過程でCO2を排出するのは一緒。 だからその太陽電池のLCAまで考えたとき、コストまで考えたら本当にエコになるの?って。

だってたとえば今世界中で話題になってるメガ・ソーラー。
エコの象徴みたいに語られることが多いけど、効率の悪い太陽電池で火力並の電力を賄うには、相当な枚数が必要。でもその発電効率まで考えたときに、最終的にコストで採算が取れる太陽電池パネルを供給できるメーカーって、日本メーカーでも欧州メーカーでもなくて、中国のサンテックみたいなソコソコの性能を数を売って安く出せるメーカーしかなかったりするのが現実。
で、その太陽電池パネルを輸入して輸送して、なんていったら、LCAはどうなっちゃうんだっけ?って。

そんな話があるから日産リーフは、CMでもテレビで取り扱って貰うときも、紹介内容は必ず
「"走行中の"CO2排出量ゼロ」
これが、残念ながら今の時点での電気自動車の現実だよね。

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そういうね
・政治の話
・ユーザーだけじゃない製造の話
・使う燃料や電気の話
まであるから、エコの話って単純じゃない。

そんな複雑なところが透けて見える感じがして、なんか読んでて面白い記事だったかな。
http://minkara.carview.co.jp/userid/571580/blog/25097335/