自衛隊の不条理な現状を直視せよ
自衛隊の不条理な現状を直視せよ
━━━━━━━━━━━━━━━
櫻井よしこ
責任ある政治家は安全保障法制に関する机上の空論をやめて、日本を取り巻く情勢の厳しさに目を開くべきだ。
9月3日、戦勝70周年記念の軍事パレードで中国が誇った数々の攻撃用弾道核ミサイルを見たか。
人民服に身を包んだ習近平国家主席の演説も式典も「日本軍 国主義」打倒の抗日要素で色濃く染まり反日戦略の継続を予想させた。
アジア諸国は軍事力拡大路線の中国を恐れる一方、平和安全法制成立を目指す日本に70~80%台の支持を寄せている。
だが、わが国の国会議論にそうしたア ジアの声はほとんど反映されていない。
それどころか、「戦争法案」(社民党、福島瑞穂氏)、「法案を通すために中国脅威論をあおっている」(共産党、井上哲士氏)などと根拠のないレッテル 貼りが目につく。
国民の理解が進んでいないと論難するが、的外れな彼らの主張が国 民の理解を妨げる大きな要因ではないのか。
現在の法制度がどれほど異常で、通常の国ではあり得ない不条理な負担を自衛隊員に強いているかを私たちは知っておくべきだ。
その異常を普通の民主主義 の国のルールに近づけるのが、今回の平和安全法制である。
南スーダンに派遣されている350人の自衛隊員は宿営地に隣接する国連 事務所との緊密な関係の中でPKO(国連平和維持活動)に励んでいる。
攻撃されても 彼らは自らを防護できる。
しかし、隣接する国連事務所が襲撃された場合、国連から 正式に救援要請があっても国連職員やNGO(非政府組織)職員を守ることはできな い。
その中に日本国民がいても救えない。
難民救援は国際社会の重大な責務だが、自衛隊はそれもできない。
難民だけでなく、日本の大使館員や邦人が襲われても助けられない。
私たちは自衛隊が難民を見殺しにし、危機にある同胞に背を向けることなど是としない。
しかし、現行法では自衛隊は助けたいと思っても、そうすることを 許されない。
そのジレンマに自衛隊はどう対処しているのか。
元防衛相の小野寺五典氏が平成14年の事案を語った。
東ティモールで、現地の邦人から救援要請があったとき、自衛隊員は自己責任と視察名目で現地に赴い た。
武装集団の攻撃という最悪の場合、自分たちが攻撃されること、反撃はその後で しかできないことを覚悟して救出に向かった。
このように現行法は自らの犠牲を前提にした行動に、自衛隊員を押しやる可能性がある。
平和安全法制で自衛隊員のリスクが高まるとの批判があるが、それ は真逆なのである。
難民、邦人の救助にしても、まず自衛隊員の身を危険にさらすこ とを前提にするような現行法制はあってはならず、一日も早く安保法制を整えて、駆 け付け警護を可能にしなければならない。
◇
集団的自衛権の限定的行使は徴兵制につながる、あるいは憲法違反だと非難する政治家は、往々にして憲法学者や元最高裁長官らも違憲だと言っていると主 張する。
彼らは慶応義塾大学名誉教授、小林節氏の6月22日、衆院特別委員会における陳述を聴いただろうか。氏はこう語った。
「われわれは大学で伸び伸びと育ててもらっている人間で利害は知らない。条文の客観的意味について神学論争を言い伝える立場にいる。字面に拘泥するの がわれわれの仕事で、それが現実の政治家の必要とぶつかったら、そちらが調整して ほしい。われわれに決定権があるとはさらさら
思わない」
学者とは別に、政治は国際社会の現実に基づいて国益を考えよというわけだ。この点で氏の主張は正しい。
安保法制反対の野党政治家は学者の違憲論から離れて、現行法制で本当に日本国民と日本国を守り通せるかを論ずべきであろう。
集団的自衛権の行使なしに は日米同盟が機能停止する危険性もある。事は深刻だ。
安保法制には後方支援をより 機能的にする改正が盛りこまれているが、後方支援ができなかった21年前、米国が日 本に激しく詰めよった。
元統合幕僚会議議長の西元徹也氏の述懐だ。
1994年3月、防衛庁で朝鮮半島有事に関する日米政軍セミナーが開かれた。
金正日の挑発的な姿勢とIAEA(国際原子力機関)からの脱退などで緊迫する朝鮮 半島情勢への対処が主題だった。
米軍が自衛隊に後方支援を要請し、詳細な時系列展開計画を提出した。
だが日本には後方支援を想定した法律もなく断らざるを得なかった。
氏は「これは日 本の防衛そのものだ。なぜできないのか」という米側の激しい怒りと、何もできない 日本側の口惜しさを鮮明に覚えている。
この苦い経験は99年の「周辺事態安全確保法」につながった。
しかし、同法は「武力行使との一体化」という日本独特の憲法解釈を適用され、非戦闘地域の 「後方地域支援」「後方地域捜索救助活動」に分けられ、厳しい制限を課されたまま 今日に至る。
現在、米軍への物品、役務の提供は日本領域のみで許されており、その都度、日本領域に引き返さなければならない。
それをその場で可能にするのが、今回 の法制である。
米軍への効率的な補給とスムーズな日米連携は有事発生を予防し、有事の早期収拾にもつながる。
まさに戦争をおこすのではなく、抑止し、おさめるための 改正である。
国際社会の全ての国が行使する集団的自衛権を全く認めない場合、日本は個別的自衛権で、つまり単独で全ての防衛を担えるのか。
安保法制に反対する人々 は、この問いに答えられるだろうか。
産経ニュース【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】 2015.9.7
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日弁連の“左巻き”政治活動に異論噴出
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太田 明広
弁護士に強制加入が義務づけられている日本弁護士連合会(日弁連)や全
国の弁護士会の“政治的活動”に対し、内部から異論が上がっている。若手
弁護士を中心に活動を疑問視する声が出ているといい、権力に干渉され
ず、独自の自治権が認められた弁護士会の活動のあり方が問われている。
■「政治的発言とは考えていない」
「戦争する国絶対反対!」
「9条守れ!」
日弁連が8月26日に主催した安全保障関連法案廃案を訴えた抗議行動。日
弁連の村越進会長も東京・日比谷公園から国会議事堂までデモ行進に参加
した。
この日の会見で、村越会長は「立憲主義の破壊だけは認められない」と訴
えた。日弁連はこれまでも会長声明や理事会決議で、法案反対の立場を打
ち出している。
強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を掲げることへの懸念。本紙記
者が会見で質問したところ、全国の弁護士や大学教授ら約300人が集まっ
た会場から「何を言っている」「帰れ!」などの怒号が飛ぶという場面も
あった。
村越会長はデモ終了後の取材に「『戦争法案』というレッテル貼りはして
いない。『9条を守れ』ということまではぎりぎりの範囲だと思う。政治
的な発言とは考えていない」と話す。
ただ、デモ行進前に約4千人(主催者発表)が集まった集会では、女性グ
ループが「戦争法案なんていらない」などの横断幕を掲げ、反対の気勢を
上げた。
民主党の辻元清美議員や社民党の福島瑞穂議員が駆けつけたほか、政党か
らの参加者で最多だった約10人の共産党議員も駆けつけた。
ある弁護士会幹部は「活動の趣旨が違う団体や政党との協力は誤解される
恐れがあり、慎重にすべきだ」と語る。
■「任意団体にすべき」との声も
「弁護士が全員『左』だと思われるのは腹が立つ」
「政治的意見ばかりの弁護士会は任意団体にすべきだ」
都市部の弁護士会幹部は、特に若手からの批判を耳にする。「弁護士会ま
で正式な批判は上がってこないが、若手の不満は大きい」と指摘。その上
で、「任意団体として国から監督された立場で、国賠訴訟などで国と闘う
のは難しい。
弁護士自治は守らなければならないので、サイレントマジョリティー(静
かな多数派)への配慮も必要だ。強制加入団体の枠から離れた政治的な主
張などをし続けるといつか不満が爆発しかねない」と話す。
日弁連関係者は、弁護士会で要職に就くのは会の活動を熱心にしてきた人
だと明かす。「弁護士会は権力に対するチェック機能を持たないといけな
いと考える人が多く、自然と反権力志向になる」と説明する。
さらに、「都市より地方の方が弁護士会活動に熱心な人が多く、その代表
が日弁連で理事などを務めるため、数の上でも反権力の声が大きい」と指
摘。一方、「都市部のビジネス中心の弁護士は会の活動に冷淡な人も多
い」と話す。ただ、弁護士会が持つ懲戒権限を意識し、公然と批判する弁
護士は少ないという。
弁護士資格を持つ自民党の稲田朋美政調会長は「賛否が分かれる政治問題
への意見表明や反対活動は強制加入団体として好ましくない。『日本弁護
士政治連盟』という加入を強制されない政治団体があり、そちらでされれ
ばよいと思う」とコメントして
いる。
■訴訟にまで発展
日弁連や全国の弁護士会が打ち出す“政治活動”に対する懸念は、訴訟とい
う形でも表面化している。どのような考え方を持つ弁護士も、日弁連と弁
護士会に加入しなければならない。そうした強制加入団体が必ずしも総意
とは言い切れない、特定の立場を取ることの是非についての判断が注目さ
れる。
「日弁連や弁護士会の目的から逸脱しており、違法無効だ」日弁連などの
特定の政治的主張について、京都弁護士会所属の南出喜久治弁護士は日弁
連会長らを相手取り、意見書や会長声明の削除などを求めて、今年月に東
京地裁に提訴した。
南出弁護士は「安全保障法制改定法案に反対する意見書」や「集団的自衛
権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」などの
ホームページ(HP)上からの削除を求めており、9月7日に第1回口頭弁論
が開かれる。
過去にも政治的な問題で特定の立場を取った日弁連に対して、弁護士グ
ループが裁判という手段に訴えたことはある。
昭和62年に行われた日弁連の定期総会で、国家秘密法案への反対決議が採
択されたことに、決議無効を求めて提訴した。日弁連によると、1審東京
地裁で「組織としての日弁連の意見が、会員の弁護士個人の意見と同じだ
とは一般に考えられない」などとして請求は棄却され、平成10年に最高裁
で確定。日弁連が声明を出す際には、この判決も参考にしているという。
南出弁護士は「個々の弁護士に求められる使命と、強制加入の団体の目的
を区別できていなかった」などと、過去の訴訟と今回の訴訟の違いを指
摘。「弁護士会は強制加入させた弁護士から会費を徴収し、脱退の自由も
保障されていない。だからこそ政治的中立を守る必要がある」と訴える。
産経ニュース【日本の議論】2015.9.7
(採録: 松本市 久保田 康文)
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櫻井よしこ
責任ある政治家は安全保障法制に関する机上の空論をやめて、日本を取り巻く情勢の厳しさに目を開くべきだ。
9月3日、戦勝70周年記念の軍事パレードで中国が誇った数々の攻撃用弾道核ミサイルを見たか。
人民服に身を包んだ習近平国家主席の演説も式典も「日本軍 国主義」打倒の抗日要素で色濃く染まり反日戦略の継続を予想させた。
アジア諸国は軍事力拡大路線の中国を恐れる一方、平和安全法制成立を目指す日本に70~80%台の支持を寄せている。
だが、わが国の国会議論にそうしたア ジアの声はほとんど反映されていない。
それどころか、「戦争法案」(社民党、福島瑞穂氏)、「法案を通すために中国脅威論をあおっている」(共産党、井上哲士氏)などと根拠のないレッテル 貼りが目につく。
国民の理解が進んでいないと論難するが、的外れな彼らの主張が国 民の理解を妨げる大きな要因ではないのか。
現在の法制度がどれほど異常で、通常の国ではあり得ない不条理な負担を自衛隊員に強いているかを私たちは知っておくべきだ。
その異常を普通の民主主義 の国のルールに近づけるのが、今回の平和安全法制である。
南スーダンに派遣されている350人の自衛隊員は宿営地に隣接する国連 事務所との緊密な関係の中でPKO(国連平和維持活動)に励んでいる。
攻撃されても 彼らは自らを防護できる。
しかし、隣接する国連事務所が襲撃された場合、国連から 正式に救援要請があっても国連職員やNGO(非政府組織)職員を守ることはできな い。
その中に日本国民がいても救えない。
難民救援は国際社会の重大な責務だが、自衛隊はそれもできない。
難民だけでなく、日本の大使館員や邦人が襲われても助けられない。
私たちは自衛隊が難民を見殺しにし、危機にある同胞に背を向けることなど是としない。
しかし、現行法では自衛隊は助けたいと思っても、そうすることを 許されない。
そのジレンマに自衛隊はどう対処しているのか。
元防衛相の小野寺五典氏が平成14年の事案を語った。
東ティモールで、現地の邦人から救援要請があったとき、自衛隊員は自己責任と視察名目で現地に赴い た。
武装集団の攻撃という最悪の場合、自分たちが攻撃されること、反撃はその後で しかできないことを覚悟して救出に向かった。
このように現行法は自らの犠牲を前提にした行動に、自衛隊員を押しやる可能性がある。
平和安全法制で自衛隊員のリスクが高まるとの批判があるが、それ は真逆なのである。
難民、邦人の救助にしても、まず自衛隊員の身を危険にさらすこ とを前提にするような現行法制はあってはならず、一日も早く安保法制を整えて、駆 け付け警護を可能にしなければならない。
◇
集団的自衛権の限定的行使は徴兵制につながる、あるいは憲法違反だと非難する政治家は、往々にして憲法学者や元最高裁長官らも違憲だと言っていると主 張する。
彼らは慶応義塾大学名誉教授、小林節氏の6月22日、衆院特別委員会における陳述を聴いただろうか。氏はこう語った。
「われわれは大学で伸び伸びと育ててもらっている人間で利害は知らない。条文の客観的意味について神学論争を言い伝える立場にいる。字面に拘泥するの がわれわれの仕事で、それが現実の政治家の必要とぶつかったら、そちらが調整して ほしい。われわれに決定権があるとはさらさら
思わない」
学者とは別に、政治は国際社会の現実に基づいて国益を考えよというわけだ。この点で氏の主張は正しい。
安保法制反対の野党政治家は学者の違憲論から離れて、現行法制で本当に日本国民と日本国を守り通せるかを論ずべきであろう。
集団的自衛権の行使なしに は日米同盟が機能停止する危険性もある。事は深刻だ。
安保法制には後方支援をより 機能的にする改正が盛りこまれているが、後方支援ができなかった21年前、米国が日 本に激しく詰めよった。
元統合幕僚会議議長の西元徹也氏の述懐だ。
1994年3月、防衛庁で朝鮮半島有事に関する日米政軍セミナーが開かれた。
金正日の挑発的な姿勢とIAEA(国際原子力機関)からの脱退などで緊迫する朝鮮 半島情勢への対処が主題だった。
米軍が自衛隊に後方支援を要請し、詳細な時系列展開計画を提出した。
だが日本には後方支援を想定した法律もなく断らざるを得なかった。
氏は「これは日 本の防衛そのものだ。なぜできないのか」という米側の激しい怒りと、何もできない 日本側の口惜しさを鮮明に覚えている。
この苦い経験は99年の「周辺事態安全確保法」につながった。
しかし、同法は「武力行使との一体化」という日本独特の憲法解釈を適用され、非戦闘地域の 「後方地域支援」「後方地域捜索救助活動」に分けられ、厳しい制限を課されたまま 今日に至る。
現在、米軍への物品、役務の提供は日本領域のみで許されており、その都度、日本領域に引き返さなければならない。
それをその場で可能にするのが、今回 の法制である。
米軍への効率的な補給とスムーズな日米連携は有事発生を予防し、有事の早期収拾にもつながる。
まさに戦争をおこすのではなく、抑止し、おさめるための 改正である。
国際社会の全ての国が行使する集団的自衛権を全く認めない場合、日本は個別的自衛権で、つまり単独で全ての防衛を担えるのか。
安保法制に反対する人々 は、この問いに答えられるだろうか。
産経ニュース【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】 2015.9.7
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日弁連の“左巻き”政治活動に異論噴出
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太田 明広
弁護士に強制加入が義務づけられている日本弁護士連合会(日弁連)や全
国の弁護士会の“政治的活動”に対し、内部から異論が上がっている。若手
弁護士を中心に活動を疑問視する声が出ているといい、権力に干渉され
ず、独自の自治権が認められた弁護士会の活動のあり方が問われている。
■「政治的発言とは考えていない」
「戦争する国絶対反対!」
「9条守れ!」
日弁連が8月26日に主催した安全保障関連法案廃案を訴えた抗議行動。日
弁連の村越進会長も東京・日比谷公園から国会議事堂までデモ行進に参加
した。
この日の会見で、村越会長は「立憲主義の破壊だけは認められない」と訴
えた。日弁連はこれまでも会長声明や理事会決議で、法案反対の立場を打
ち出している。
強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を掲げることへの懸念。本紙記
者が会見で質問したところ、全国の弁護士や大学教授ら約300人が集まっ
た会場から「何を言っている」「帰れ!」などの怒号が飛ぶという場面も
あった。
村越会長はデモ終了後の取材に「『戦争法案』というレッテル貼りはして
いない。『9条を守れ』ということまではぎりぎりの範囲だと思う。政治
的な発言とは考えていない」と話す。
ただ、デモ行進前に約4千人(主催者発表)が集まった集会では、女性グ
ループが「戦争法案なんていらない」などの横断幕を掲げ、反対の気勢を
上げた。
民主党の辻元清美議員や社民党の福島瑞穂議員が駆けつけたほか、政党か
らの参加者で最多だった約10人の共産党議員も駆けつけた。
ある弁護士会幹部は「活動の趣旨が違う団体や政党との協力は誤解される
恐れがあり、慎重にすべきだ」と語る。
■「任意団体にすべき」との声も
「弁護士が全員『左』だと思われるのは腹が立つ」
「政治的意見ばかりの弁護士会は任意団体にすべきだ」
都市部の弁護士会幹部は、特に若手からの批判を耳にする。「弁護士会ま
で正式な批判は上がってこないが、若手の不満は大きい」と指摘。その上
で、「任意団体として国から監督された立場で、国賠訴訟などで国と闘う
のは難しい。
弁護士自治は守らなければならないので、サイレントマジョリティー(静
かな多数派)への配慮も必要だ。強制加入団体の枠から離れた政治的な主
張などをし続けるといつか不満が爆発しかねない」と話す。
日弁連関係者は、弁護士会で要職に就くのは会の活動を熱心にしてきた人
だと明かす。「弁護士会は権力に対するチェック機能を持たないといけな
いと考える人が多く、自然と反権力志向になる」と説明する。
さらに、「都市より地方の方が弁護士会活動に熱心な人が多く、その代表
が日弁連で理事などを務めるため、数の上でも反権力の声が大きい」と指
摘。一方、「都市部のビジネス中心の弁護士は会の活動に冷淡な人も多
い」と話す。ただ、弁護士会が持つ懲戒権限を意識し、公然と批判する弁
護士は少ないという。
弁護士資格を持つ自民党の稲田朋美政調会長は「賛否が分かれる政治問題
への意見表明や反対活動は強制加入団体として好ましくない。『日本弁護
士政治連盟』という加入を強制されない政治団体があり、そちらでされれ
ばよいと思う」とコメントして
いる。
■訴訟にまで発展
日弁連や全国の弁護士会が打ち出す“政治活動”に対する懸念は、訴訟とい
う形でも表面化している。どのような考え方を持つ弁護士も、日弁連と弁
護士会に加入しなければならない。そうした強制加入団体が必ずしも総意
とは言い切れない、特定の立場を取ることの是非についての判断が注目さ
れる。
「日弁連や弁護士会の目的から逸脱しており、違法無効だ」日弁連などの
特定の政治的主張について、京都弁護士会所属の南出喜久治弁護士は日弁
連会長らを相手取り、意見書や会長声明の削除などを求めて、今年月に東
京地裁に提訴した。
南出弁護士は「安全保障法制改定法案に反対する意見書」や「集団的自衛
権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」などの
ホームページ(HP)上からの削除を求めており、9月7日に第1回口頭弁論
が開かれる。
過去にも政治的な問題で特定の立場を取った日弁連に対して、弁護士グ
ループが裁判という手段に訴えたことはある。
昭和62年に行われた日弁連の定期総会で、国家秘密法案への反対決議が採
択されたことに、決議無効を求めて提訴した。日弁連によると、1審東京
地裁で「組織としての日弁連の意見が、会員の弁護士個人の意見と同じだ
とは一般に考えられない」などとして請求は棄却され、平成10年に最高裁
で確定。日弁連が声明を出す際には、この判決も参考にしているという。
南出弁護士は「個々の弁護士に求められる使命と、強制加入の団体の目的
を区別できていなかった」などと、過去の訴訟と今回の訴訟の違いを指
摘。「弁護士会は強制加入させた弁護士から会費を徴収し、脱退の自由も
保障されていない。だからこそ政治的中立を守る必要がある」と訴える。
産経ニュース【日本の議論】2015.9.7
(採録: 松本市 久保田 康文)