持参金問題で嫁が焼き殺されるインド
◎持参金問題で嫁が焼き殺されるインド
【ジャワン(インド)】灯油まみれのズボンと長い緑色のブラウスが燃え上がり、パリネータさん(26)は悲鳴をあげた。
隣人のザヒド・カーンさんは「庭で転げ回る彼女を見た」、「炎の勢いは増すばかりだった」と語った。パリネータさんは両足と胸部、そして顔の左側など全身の40%にやけどを負った。
インドは急速に近代化が進んでいるが、いまだに尋常ならざる数の女性たちが親族間のもめごとで火をつけられて死亡したり、やけどや傷を負ったりしている。この問題の文化的背景は根深い。
インドでは家族の名誉を傷つけたとか、花嫁の持参金が少ないといっては、女性に火をつける家族や義理の親族が今も後を絶たない。政府の統計によると、花嫁の持参金に関するもめごとで約1時間に1人の割合で女性が死亡している。また、虐待から逃れるために、考えあぐねた末に自ら火をつける女性もいる。
こうした事態は、インドの家父長制の伝統と世界の女性の地位に関する考え方の変化がインド社会に緊張を引き起こしていることを示している。
これは何世代にもわたって続いている。パリネータさんは嫁ぎ先のこの家で火をつけられた初めての女性ではない。20年前にパリネータさんの義理の姉妹になるはずだった若い女性が同じように火をつけられて死亡している。
パリネータさんは2014年1月に義理の姉妹から灯油を浴びせられ、火をつけられた。夫の家族はパリネータさんに伝統的かつ閉鎖的な生活を送ってほしいと望んだが、パリネータさんはこれを拒んでいたからだ。夫の家族と暮らした苦悩の年月がそこで終わった。
夫の家族は、パリネータさんが友人の美容院で働くことを禁止した。この仕事は彼女にとってまさに「ライフライン」であったにもかかわらずだ。
また、パリネータさんが2人の娘を産んだことも気に入らなかった。
パリネータさんは「女性が息子ではなく娘を産むとこうなる」と話す。
彼女の義理の姉妹と義父は殺人未遂で起訴された。2人とも無罪を主張している。パリネータさんの夫も同調し、「彼女は自分で火をつけた」と話している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは数カ月をかけてパリネータさんの事件を調べた。6人の目撃者全員を含む数十人から話を聞いた。彼らの話は基本的な部分で食い違っているものの、ある動かしがたい現実で一致する。インドの農村部では厳しい社会規範が、解決可能に思えるありふれた家族の問題を生きるか死ぬかの大ごとにしてしまうという現実だ。どこに住むかとか、母親は家にいて子供の世話をすべきかどうかといった問題だ。
パリネータさんは21歳で結婚した。夫になる男性を選んだのは家族だった。パリネータさんは結婚式当日に初めてその男性と会った。習慣に倣い、新婚夫婦は夫の家族と一緒に暮らし始めた。
インドでは伝統的に、数世代の家族が同じ屋根の下で暮らす。嫁は夫に尽くすだけでなく、夫の家族にも尽くし、婚家のしきたりにしたがわなければならない。そして家名を継ぐ男児を出産することが期待されているのだ。
パリネータさんは息子がいなかったことで婚家との対立が深まったと話す。義理の姉妹には息子がいたため、家族に気に入られていたという。義父はパリネータさんの上の娘をよく殴ったと話す。「(義父はパリネータさんの娘を)子供とは見ていなかった」
義父はまた、そのことで、パリネータさんに賠償金と贈り物を要求したという。娘たちは将来、嫁ぐ際に持参金が必要になる。義理の家族からは「誰がその費用を負担するのか?」と言われた。
パリネータさんは家の隣の小さな美容院で働いていた。そこで彼女は自由になれた。2人の子供を持つ女性が一人で切り盛りしていた店だった。2年余り前に、その女性が村を出ることになり、店をパリネータさんに譲ってくれた。だが、パリネータさんがその店を続けることはできなかった。
夫と、その家族が反対したのだ。店を譲った女性は、パリネータさんが「独立し、自分で生活費を稼ぐようになること」を夫の家族が恐れたのだと話す。
義父と義理の姉妹は殺人未遂に加え、金品の要求と虐待などの罪に問われ、収監された。2人は容疑を否認した。パリネータさんや他の人が話したパリネータさんとの不仲についても否定した。
義父は昨年8月に保釈金を払って釈放された。その後まもなく心臓疾患で入院し、数日後に死亡した。
パリネータさんの夫は、父親が自分の無実を誰も信じていないことを深く気に病んでいたと話す。だが、夫は「誰が信じるだろうか」と言う。なにせ同じことが「20年前にもあった」のだから。
1994年4月1日、同じ家の寝室で嫁が火をつけられて死亡した。まだ幼かった嫁の息子も傷を負ったが生き残った。この事件では義父と他の男2人が「ダウリー死(嫁の持参金をめぐる争いから嫁が殺されること)」の罪で裁判を受けたが、全員無罪となった。
そのときの息子は22歳のやせぎすな男性に成長した。彼は自分の母親が自殺したと信じており、祖父が関与したとは考えていない。母親とパリネータさんが同じ家で火にあぶられることになったのは「偶然だ」と話した。
パリネータさんがやけどの治療を受けている病院の医師によると、この病院では1日に1~2人、家族のもめごとでやけどを負った若い女性が治療に訪れる。そのうちの「少なくとも1人は義理の家族との争い」が原因だという。
医師や警察によると、こうした患者はたいてい「台所の火災」として処理される。インドの女性が料理中にやけどを負うことはよくあるからだ。火がむき出しなこととインドの女性たちが着る布の垂れ下がった伝統衣装が危険な組み合わせになっているという。
やけど診療科を率いる医師は、「多くの女性は台所の火でやけどしたと言うが、本当のところは違う」と話す。
担当医師によると、パリネータさんは2回の皮膚移植を含む5回の手術を受けた。病状は回復に向かっているという。だが、感染症で片方の目を失った。
パリネータさんの上の娘は事件後、学校に通っていない。夫は娘たちの世話をするため、仕事を辞めざるを得なかったからだ。家賃が払えず、何度も引っ越した。何かを犠牲にしなければならなかった。そしてそれは、娘の教育だった。
夫は選択を迫られていると感じている。「片方は自分の家族、もう一方は妻と子供たち」と話す。「どちらを選ぶべきか。いすれにしても誰かを失うことになる」
ただ、最終的には妻に帰ってきてもらいたいと夫は思っている。「もう一度、家族になりたい。もう一度、良い思い出を作りたい」
パリネータさんは夫を「単純すぎる男」と呼ぶ。それでも、「一緒にいなければならない」と言う。「私には選択肢がない。2人の娘がいる」
ウォール・ストリート・ジャーナル 7月25日(土)11時22分配信
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もう、ずっと前から、インドで嫁が持参金が少ないなどの理由で家で焼き殺されてきた。わたしが高校生の時も、家にあったリーダスダイジェストという月刊誌には、そんな問題があるという記事が出ていた。インドは、まったく変わっていないようだ。リーダスダイジェストは、途中で廃刊になった。高校生の時に、アメリカ目線で日本や世界を観ることができて勉強になった。
ネイティブアメリカンの子供が親から取り上げられて隔離され、「正しく」教育された結果、子供が親を軽蔑し、嫌うようになった話や、フランスやスペインでロマ(ジプシー)の子供を親から取り上げて施設で「正しく」教育したら、子供たちがジプシーの伝統を引き継がなくなって、親が政府を訴えたニュースなどを読んだ。ソ連(現ロシア)が、アメリカ大使館に向けて電磁波を照射していたので、大使館員が帰国後直ぐ死んだというニュースや、ソ連のアメリカ大使館を解体したら隠しマイクだらけだったというニュースを読んだ。
他の記事は記憶に無い。世の中には、いろいろな問題がある。一般人は何も考えずに暮らしていてもよいが、政府はいろいろ考えて、対策を練らないと、悪賢い国に手玉に取られて国民の資産が無くなってしまうのだと知った。
しかし、民主主義の国では、国民がアホだと本当に日本を守れる政治家を選挙で選べないから、民主主義の国の国民は、アホではいけなくて、一生懸命、国の将来を考えて情報収集していないといけないのだ。