たまにはいい話を、、、。
自殺志願500人救った71歳男性 世界のメディアから取材続々
福井新聞ONLINE 7月14日(火)8時11分配信
デルロサリオさん(左から2番目)から取材を受ける茂さん(右)=4日、福井県坂井市三国町の東尋坊
福井県坂井市三国町の東尋坊で長年、自殺志願者の保護やパトロールに取り組む茂(しげ)幸雄さん(71)=福井市=のもとに、世界各国から映画撮影の依頼が舞い込んでいる。多くの命を救ってきた茂さんの活動は国境を越え、注目を集めている。
元警察官の茂さんは2004年、警察OBや元教諭らとNPO法人「心に響く文集・編集局」を立ち上げ、自殺志願者の相談所を東尋坊内の空き家に開設。これまでに500人を超える自殺志願者を保護してきた。
7、8年前から海外メディアにも取り上げられるようになり、これまでに約15カ国から取材を受けた。また13年には、初めて映画撮影を目的にアイスランドから一行が訪れた。茂さんの活動を含め日本の自殺にスポットを当てたドキュメンタリー作品が作られ、動画サイトでも配信された。
今年に入り、ドイツ、韓国、フランス、アメリカ、カナダから映画撮影の依頼があった。4月には、フランスのラジオやネットを通して活動に興味を持ったフランス人写真家、ブレイス・ペーランさん(32)ら5人が訪れた。ペーランさんは3年前に1度茂さんを訪ねたが「写真だけでは伝わらない」と映像化を決意。初の監督業だったが、2週間の日程で数人を救う姿を撮影した。「500人を越える人の命を救ってきた地道な活動は世界を照らす光。心に残る作品に仕上げたい」と30分~1時間の作品にまとめるという。
7月4日には、アメリカの映像プロダクションの一行が訪れた。映像化に向け、資料用の写真撮影や茂さんへの取材を5日まで行った。写真家としても活動するポール・デルロサリオ(47)さんは「侍の腹切りや特攻隊など、日本の自殺のイメージは海外ではまだまだ強い。自殺志願者と心のやりとりを続ける茂さんの活動を通して、自殺の名所とされる東尋坊のイメージを変えたい」と話した。
茂さんは「世界中の人が命に対して同じ気持ちを持っていることが分かった。映画を通して、国境を越えて命について考えてくれるきっかけになってほしい」と話した。
福井新聞社
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150714-00010000-fukui-l18
のちの響き勝たなくてもいい。死んだらあかん! 茂 幸雄さん(元警察官、NPO法人「心に響く文集・編集局」理事長)不安葛藤苦悩変化夫婦上司部下お金仕事死人権
茂 幸雄(しげ ゆきお)
1944年、福井県生まれ。福井県三国警察署(現・坂井西署)勤務時代に東尋坊で自殺防止のパトロールを始め、定年退職後、NPO法人「心に響く文集・編集局」を設立。自殺しようと同地を訪れた人を思いとどまらせるために、日々パトロールにあたる。著書は『東尋坊の茂さん宣言』『自殺したらあかん!』(共に三省堂)など。
──自殺防止のパトロール活動を始めたきっかけは。
私たちの活動の拠点、福井県・東尋坊(とうじんぼう)は、絶壁に日本海の荒波が打ち寄せる景色で知られる観光地です。しかし、ここは、全国から自殺志願者が訪れることでも知られています。
私はもともと警察官で、最後の赴任地がこの東尋坊を管轄(かんかつ)する三国署でした。私は実際に、その現場に出動し、ご遺体の検死をすることも多々ありました。そのたびに、なんともいたたまれない気持ちになりました。そして、〈なんとかして、大切な命を守ろう〉と、勤務時間外に東尋坊でのパトロール活動を始めるようになったのです。
──自殺を踏みとどまった人の、その後のケアも大事にされているのですね。
はい、パトロール活動も大事ですが、それ以上に大切なのが保護した後のケアなんです。
あれは現職時代のことでした。松林の近辺で年配の男女がたたずんでいました。そのうつろな表情から自ら命を絶とうとしていることが分かり、声をかけました。二人は涙ぐみながら、事業に失敗し多額の借金を抱え、もうどうにもならないと思い、ここへ来たことを語ってくれました。話をしたことで少し安心したのでしょう。表情も和らぎ、再起を約束してくれたのです。その後、二人を地元役場の福祉課に保護を依頼し、ことなきを得たかに思えました。ところが、数日後のこと。一通の手紙が私のもとに届きました。それは二人からの遺書でした。行政機関の窓口を何か所も転々とした挙げ句、必要なサービスが受けられずに、二人は失意の中、この世を去ったのでした。
悔やんでも悔やみきれませんでした。このときほど、自分を責めたことはありません。自らの無力さを痛感したと同時に、「もう絶対にこんな悲劇を繰り返したくない」という祈りにも似た気持ちがわいてきたのです。
そこで私は、自費で新聞広告を出して、広く世間に訴えることにしました。自殺を思いとどまったり、自殺願望を克服した人から作文を募集し、それを『心に響く文集・編集局』と名付けて自費出版したのです。
これがのちのNPO法人の団体名となりました。保護した人をどうやって自立させていくかにも力を注いでいます。やり直すためには、仕事や収入が必要ですし、住む場所も確保しなければなりません。そこで、アパートを六部屋借り上げて、そこに仮住まいをしてもらっています。
──現在の活動状況について教えてください。
私たちの活動は、当初地元の観光協会からは「イメージを損ねる」と猛烈に反対されて、1年ももたないとささやかれていました。しかし、おかげさまで今年10年めを迎えます。少しずつ賛同者も増え、未遂者の再就職のあっ旋をしてくれたり、住居の提供を申し出てくれる人まで現われてきました。また、登録ボランティアは100人近くまで増えています。このうち20名が3人一組となり海岸線でのパトロール活動にあたり、午前中から日没まで、岸壁沿いをくまなく歩き回っています。今日までに保護した人は416人(平成25年2月現在)にのぼり、東尋坊での自殺者の数もここ数年減少しています。
──自殺しようと考えている人とふれあうとき、どのようなことを心がけていますか。
古い友人が来てくれた、という思いで接することでしょうか。ただ一つ言えることは、お説教や叱咤激励は無用だということです。いくら言葉を尽くして説得しても、相手の心には少しも響かないからです。反対に、相手を追い込んでしまいかねません。
自殺した人の大半は、雨天ではなく、空がカラッと晴れ上がった日を選んでいます。これは何を意味しているのでしょう。自らの命を断とうとする彼らは「死にたい」のではなく、「死にたいほど、苦しい」のです。その気持ちを他の誰かに分かってもらいたいんです。心に響く優しい言葉をかけてもらいたいのです。その声なき声に耳を澄ませていくのが私の役目です。
あるとき、岩場に立った20代の男性は一流企業に勤める会社員でした。ところが、現在の部署に異動してからというもの、上司のパワハラに遭って精神的にまいっていたのです。私は彼の背景にある苦しみや悲しみにじっくりと耳を傾けました。何が原因で死にたいという気持ちになっているのか、生きていて一番よかったと思う時期といまとでは何が違うのか。どこで変わってしまったのか。それを一緒になって考えていったのです。その後、彼は見事に立ち直っていきました。見違えるほど表情も豊かになり、本来の明るさを取り戻していったのです。
──人を「死にたい」という気持ちに追い込む原因はなんだと思いますか。
ひと言でいうと、“思いやり”が欠如した現代社会にあると思います。悩みを抱えていても、親身になって聴いてくれる相手がいない。どんなにつらくても、手を差し伸べてくれる人がいない。自ら命を絶とうと思い立つ皆さんに共通しているのは深い心の闇に閉ざされた孤独感です。その孤独感が自分を追い込み、やがては死へと向かわせるのです。
生きていく上で、人には無償の愛で包んでくれる存在がどうしても必要なのです。あなたの身の回りで苦しんでいる人がいたらぜひ手を差し伸べてください。耳を傾けてください。その温かい言葉がその人を救い、ひいては周囲を明るく照らす灯となるのです。
『やくしん』2013年4月号(佼成出版社)
http://www.cocolotus.com/item/1880/
2010-12-17
NNNドキュメント08 自死救出 東尋坊 命の番人Add Star
もう二年半ほど前、NNNドキュメント08で「自死救出 東尋坊 命の番人」という番組があっていた。
http://www.ntv.co.jp/document/back/200809.html
ポルフィの日記↓
(以下はその番組を見た時の感想)
東尋坊は、とても景色の美しい場所のようだが、この十年で四百名以上が自殺している場所でもあるらしい。
茂幸雄さんという、東尋坊で自殺防止のボランティアをされている人の様子を番組では追っていた。
茂さんは、元警察官だったそうだが、まだ定年の前に、追い詰められて自殺しようとしている夫婦とある時に出会い、止めて、いったんはその夫婦は思いとどまって帰ったが、そのあとどんな役所を訪れても生活保護を受けれず、「死ぬならどうぞ」とまで言われて、どうにもできずに最終的に自殺したらしく、最後に茂さんに感謝の旨と自分たちのような人間が二度と出ないような社会を望んでいる旨を綴った手紙を送られたそうである。
それから、再就職の誘いを断って、茂さんはずっと東尋坊で、ひとりでたたずんでいる人の様子を見守っては、話しかけて、相談に乗ったり、自殺を思いとどまらせてきたそうだ。
その様子を番組でも映していたけれど、一見元気そうな若者が、実はさらに話しかけていくと、涙ながらに苦境を話し、あと一、二時間、そのまま誰とも話さなければ身を投げていただろうとも話しているのを見ると、茂さんの人の様子を察する能力というか智慧は本当にすごいなと感嘆した。
ぱっと見ただけではなかなかわからなそうな、その人の苦しみを、後姿を見ただけで理解して、進んで話しかけて、しばらく話して心を開かせて解かせていくというのは、これはもう菩薩の業なのだと思う。
茂さんの活動は、どうしても年間に赤字になるらしく、自治体からはぜんぜん支援はないようで、民間の有志や企業からの支援でなんとかやっているそうだ。
茂さん自身も、東尋坊のすぐ近く御餅屋さんを開きながら、活動をされているようである。
つまらない天下り官僚に巨額の退職金を支払うよりは、よほどこうしたボランティア活動にこそ支援の資金を投入するべきと思うのだが、いったいどうなっているのだろう。
この国は本当にどうしようもなく腐っているのだろう。
一部に、草莽の菩薩がいるおかげで、なんとかなっているのだと思う。
茂さんが、
「自殺は自己責任ということになってしまっているが、本当はそうではない、社会的な責任だ。
自己問題ではなくて、社会的な問題だ」
という内容のことを、お話されていて、本当にそのとおりだと思った。
派遣労働などで、どうにもならずに、追い詰められている若者が今は多いのだと思う。
ギャンブルなどで身を持ち崩して、自殺しようとする人も多いのかもしれないが、その人たちも死んで良い命であるはずがない。
やはり最後の一線を踏みとどまらせて、再起再生のチャンスを与えるように、社会全体で本来ならばいろんな手段を講じていなければならないのだと思う。
にしても、私がよく知らないだけで、本当に生き死にの厳しい現場というか、自殺のぎりぎりのところに立っている人や、踏みとどまらせようとする人たちがいるのだなあと、番組を見ていて思った。
私も、何かできることがあればしたいものだが。
(追記)
にしても、この番組の感想、ネットを検索してみたら、うっとうしいとか偽善だとかいう感想の人もいるらしい。
人の受け取り方はいろいろだろうし、自殺を決意している人を止めるというのは本当に微妙な難しい問題なのだろうけれど、こういう感想を持つ人がいるとは、なんだかますます悲しい世の中だと思った。
茂さんという方も、ずいぶん苦労が多いのだろうなあと思う。
http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20101217/1292581436
福井新聞ONLINE 7月14日(火)8時11分配信
デルロサリオさん(左から2番目)から取材を受ける茂さん(右)=4日、福井県坂井市三国町の東尋坊
福井県坂井市三国町の東尋坊で長年、自殺志願者の保護やパトロールに取り組む茂(しげ)幸雄さん(71)=福井市=のもとに、世界各国から映画撮影の依頼が舞い込んでいる。多くの命を救ってきた茂さんの活動は国境を越え、注目を集めている。
元警察官の茂さんは2004年、警察OBや元教諭らとNPO法人「心に響く文集・編集局」を立ち上げ、自殺志願者の相談所を東尋坊内の空き家に開設。これまでに500人を超える自殺志願者を保護してきた。
7、8年前から海外メディアにも取り上げられるようになり、これまでに約15カ国から取材を受けた。また13年には、初めて映画撮影を目的にアイスランドから一行が訪れた。茂さんの活動を含め日本の自殺にスポットを当てたドキュメンタリー作品が作られ、動画サイトでも配信された。
今年に入り、ドイツ、韓国、フランス、アメリカ、カナダから映画撮影の依頼があった。4月には、フランスのラジオやネットを通して活動に興味を持ったフランス人写真家、ブレイス・ペーランさん(32)ら5人が訪れた。ペーランさんは3年前に1度茂さんを訪ねたが「写真だけでは伝わらない」と映像化を決意。初の監督業だったが、2週間の日程で数人を救う姿を撮影した。「500人を越える人の命を救ってきた地道な活動は世界を照らす光。心に残る作品に仕上げたい」と30分~1時間の作品にまとめるという。
7月4日には、アメリカの映像プロダクションの一行が訪れた。映像化に向け、資料用の写真撮影や茂さんへの取材を5日まで行った。写真家としても活動するポール・デルロサリオ(47)さんは「侍の腹切りや特攻隊など、日本の自殺のイメージは海外ではまだまだ強い。自殺志願者と心のやりとりを続ける茂さんの活動を通して、自殺の名所とされる東尋坊のイメージを変えたい」と話した。
茂さんは「世界中の人が命に対して同じ気持ちを持っていることが分かった。映画を通して、国境を越えて命について考えてくれるきっかけになってほしい」と話した。
福井新聞社
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150714-00010000-fukui-l18
のちの響き勝たなくてもいい。死んだらあかん! 茂 幸雄さん(元警察官、NPO法人「心に響く文集・編集局」理事長)不安葛藤苦悩変化夫婦上司部下お金仕事死人権
茂 幸雄(しげ ゆきお)
1944年、福井県生まれ。福井県三国警察署(現・坂井西署)勤務時代に東尋坊で自殺防止のパトロールを始め、定年退職後、NPO法人「心に響く文集・編集局」を設立。自殺しようと同地を訪れた人を思いとどまらせるために、日々パトロールにあたる。著書は『東尋坊の茂さん宣言』『自殺したらあかん!』(共に三省堂)など。
──自殺防止のパトロール活動を始めたきっかけは。
私たちの活動の拠点、福井県・東尋坊(とうじんぼう)は、絶壁に日本海の荒波が打ち寄せる景色で知られる観光地です。しかし、ここは、全国から自殺志願者が訪れることでも知られています。
私はもともと警察官で、最後の赴任地がこの東尋坊を管轄(かんかつ)する三国署でした。私は実際に、その現場に出動し、ご遺体の検死をすることも多々ありました。そのたびに、なんともいたたまれない気持ちになりました。そして、〈なんとかして、大切な命を守ろう〉と、勤務時間外に東尋坊でのパトロール活動を始めるようになったのです。
──自殺を踏みとどまった人の、その後のケアも大事にされているのですね。
はい、パトロール活動も大事ですが、それ以上に大切なのが保護した後のケアなんです。
あれは現職時代のことでした。松林の近辺で年配の男女がたたずんでいました。そのうつろな表情から自ら命を絶とうとしていることが分かり、声をかけました。二人は涙ぐみながら、事業に失敗し多額の借金を抱え、もうどうにもならないと思い、ここへ来たことを語ってくれました。話をしたことで少し安心したのでしょう。表情も和らぎ、再起を約束してくれたのです。その後、二人を地元役場の福祉課に保護を依頼し、ことなきを得たかに思えました。ところが、数日後のこと。一通の手紙が私のもとに届きました。それは二人からの遺書でした。行政機関の窓口を何か所も転々とした挙げ句、必要なサービスが受けられずに、二人は失意の中、この世を去ったのでした。
悔やんでも悔やみきれませんでした。このときほど、自分を責めたことはありません。自らの無力さを痛感したと同時に、「もう絶対にこんな悲劇を繰り返したくない」という祈りにも似た気持ちがわいてきたのです。
そこで私は、自費で新聞広告を出して、広く世間に訴えることにしました。自殺を思いとどまったり、自殺願望を克服した人から作文を募集し、それを『心に響く文集・編集局』と名付けて自費出版したのです。
これがのちのNPO法人の団体名となりました。保護した人をどうやって自立させていくかにも力を注いでいます。やり直すためには、仕事や収入が必要ですし、住む場所も確保しなければなりません。そこで、アパートを六部屋借り上げて、そこに仮住まいをしてもらっています。
──現在の活動状況について教えてください。
私たちの活動は、当初地元の観光協会からは「イメージを損ねる」と猛烈に反対されて、1年ももたないとささやかれていました。しかし、おかげさまで今年10年めを迎えます。少しずつ賛同者も増え、未遂者の再就職のあっ旋をしてくれたり、住居の提供を申し出てくれる人まで現われてきました。また、登録ボランティアは100人近くまで増えています。このうち20名が3人一組となり海岸線でのパトロール活動にあたり、午前中から日没まで、岸壁沿いをくまなく歩き回っています。今日までに保護した人は416人(平成25年2月現在)にのぼり、東尋坊での自殺者の数もここ数年減少しています。
──自殺しようと考えている人とふれあうとき、どのようなことを心がけていますか。
古い友人が来てくれた、という思いで接することでしょうか。ただ一つ言えることは、お説教や叱咤激励は無用だということです。いくら言葉を尽くして説得しても、相手の心には少しも響かないからです。反対に、相手を追い込んでしまいかねません。
自殺した人の大半は、雨天ではなく、空がカラッと晴れ上がった日を選んでいます。これは何を意味しているのでしょう。自らの命を断とうとする彼らは「死にたい」のではなく、「死にたいほど、苦しい」のです。その気持ちを他の誰かに分かってもらいたいんです。心に響く優しい言葉をかけてもらいたいのです。その声なき声に耳を澄ませていくのが私の役目です。
あるとき、岩場に立った20代の男性は一流企業に勤める会社員でした。ところが、現在の部署に異動してからというもの、上司のパワハラに遭って精神的にまいっていたのです。私は彼の背景にある苦しみや悲しみにじっくりと耳を傾けました。何が原因で死にたいという気持ちになっているのか、生きていて一番よかったと思う時期といまとでは何が違うのか。どこで変わってしまったのか。それを一緒になって考えていったのです。その後、彼は見事に立ち直っていきました。見違えるほど表情も豊かになり、本来の明るさを取り戻していったのです。
──人を「死にたい」という気持ちに追い込む原因はなんだと思いますか。
ひと言でいうと、“思いやり”が欠如した現代社会にあると思います。悩みを抱えていても、親身になって聴いてくれる相手がいない。どんなにつらくても、手を差し伸べてくれる人がいない。自ら命を絶とうと思い立つ皆さんに共通しているのは深い心の闇に閉ざされた孤独感です。その孤独感が自分を追い込み、やがては死へと向かわせるのです。
生きていく上で、人には無償の愛で包んでくれる存在がどうしても必要なのです。あなたの身の回りで苦しんでいる人がいたらぜひ手を差し伸べてください。耳を傾けてください。その温かい言葉がその人を救い、ひいては周囲を明るく照らす灯となるのです。
『やくしん』2013年4月号(佼成出版社)
http://www.cocolotus.com/item/1880/
2010-12-17
NNNドキュメント08 自死救出 東尋坊 命の番人Add Star
もう二年半ほど前、NNNドキュメント08で「自死救出 東尋坊 命の番人」という番組があっていた。
http://www.ntv.co.jp/document/back/200809.html
ポルフィの日記↓
(以下はその番組を見た時の感想)
東尋坊は、とても景色の美しい場所のようだが、この十年で四百名以上が自殺している場所でもあるらしい。
茂幸雄さんという、東尋坊で自殺防止のボランティアをされている人の様子を番組では追っていた。
茂さんは、元警察官だったそうだが、まだ定年の前に、追い詰められて自殺しようとしている夫婦とある時に出会い、止めて、いったんはその夫婦は思いとどまって帰ったが、そのあとどんな役所を訪れても生活保護を受けれず、「死ぬならどうぞ」とまで言われて、どうにもできずに最終的に自殺したらしく、最後に茂さんに感謝の旨と自分たちのような人間が二度と出ないような社会を望んでいる旨を綴った手紙を送られたそうである。
それから、再就職の誘いを断って、茂さんはずっと東尋坊で、ひとりでたたずんでいる人の様子を見守っては、話しかけて、相談に乗ったり、自殺を思いとどまらせてきたそうだ。
その様子を番組でも映していたけれど、一見元気そうな若者が、実はさらに話しかけていくと、涙ながらに苦境を話し、あと一、二時間、そのまま誰とも話さなければ身を投げていただろうとも話しているのを見ると、茂さんの人の様子を察する能力というか智慧は本当にすごいなと感嘆した。
ぱっと見ただけではなかなかわからなそうな、その人の苦しみを、後姿を見ただけで理解して、進んで話しかけて、しばらく話して心を開かせて解かせていくというのは、これはもう菩薩の業なのだと思う。
茂さんの活動は、どうしても年間に赤字になるらしく、自治体からはぜんぜん支援はないようで、民間の有志や企業からの支援でなんとかやっているそうだ。
茂さん自身も、東尋坊のすぐ近く御餅屋さんを開きながら、活動をされているようである。
つまらない天下り官僚に巨額の退職金を支払うよりは、よほどこうしたボランティア活動にこそ支援の資金を投入するべきと思うのだが、いったいどうなっているのだろう。
この国は本当にどうしようもなく腐っているのだろう。
一部に、草莽の菩薩がいるおかげで、なんとかなっているのだと思う。
茂さんが、
「自殺は自己責任ということになってしまっているが、本当はそうではない、社会的な責任だ。
自己問題ではなくて、社会的な問題だ」
という内容のことを、お話されていて、本当にそのとおりだと思った。
派遣労働などで、どうにもならずに、追い詰められている若者が今は多いのだと思う。
ギャンブルなどで身を持ち崩して、自殺しようとする人も多いのかもしれないが、その人たちも死んで良い命であるはずがない。
やはり最後の一線を踏みとどまらせて、再起再生のチャンスを与えるように、社会全体で本来ならばいろんな手段を講じていなければならないのだと思う。
にしても、私がよく知らないだけで、本当に生き死にの厳しい現場というか、自殺のぎりぎりのところに立っている人や、踏みとどまらせようとする人たちがいるのだなあと、番組を見ていて思った。
私も、何かできることがあればしたいものだが。
(追記)
にしても、この番組の感想、ネットを検索してみたら、うっとうしいとか偽善だとかいう感想の人もいるらしい。
人の受け取り方はいろいろだろうし、自殺を決意している人を止めるというのは本当に微妙な難しい問題なのだろうけれど、こういう感想を持つ人がいるとは、なんだかますます悲しい世の中だと思った。
茂さんという方も、ずいぶん苦労が多いのだろうなあと思う。
http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20101217/1292581436