夢の「ベーシックインカム」制度、オランダで実験導入
夢の「ベーシックインカム」制度、オランダで実験導入 ホリエモンも「最高の仮説」と期待
2015年07月07日 19時06分 提供:キャリコネ
最低限の生活に必要なカネを国や自治体が無条件で支給する「ベーシックインカム」制度。嫌な仕事で無理やり働かなくて済むようになると、たびたび話題にあがるものの、いまだ導入には至っていない。
米ニュースサイトQUARTZによると、この「夢の制度」の有用性について、来年1月からオランダ第4の都市ユトレヒトで実験が行われるという。ネットには「日本でも早よ」と期待が高まっている。
独身者には12万円、カップルには18万円を支給
実験は、ユトレヒト市とユトレヒト大学が共同で実施。ベーシックインカム支給の対象となるのは働いていない約300人の市民。独身の成人には月に約1000ドル(約12万円)、カップルや家族には約1450ドル(約18万円)が支給される。
対象者の少なくとも50人は無条件で支給が行われ、仕事など他の収入源を見つけても支給が続く。また実験の効果を測定するため、現行の福祉法に則ったグループとの比較も行われるという。
ベーシックインカム制度に対する批判としては、これまで「働きたくない人が増える」「労働人口の減少が国の経済に損失を与える」といったものがあった。しかし、プロジェクトマネージャーのNienke Horst氏は、楽観的に捉えているようだ。
「私たちは今よりも多くの人々が少しでも幸せになり、何かの仕事を見つけるのではないかと考えています」
確かに収入が保証されれば生活に余裕ができ、幸福感は高まるかもしれない。仕事を選ぶうえでも好きな仕事をムリなくやればいいので、嫌々働いてストレスを高める人も減る。どうしても働きたくない人でも、生きていくことはできる。
英THE INDEPENDENTによると、同市はこの取り組みを国内のナイメヘーンやヴァーヘニンゲン、ティルブルフ、フローニンゲンなど他の自治体にも呼びかける予定だという。
世界中から「実験結果が楽しみ」という声があがる このニュースに対し、ツイッターにはオランダ国民から期待する声が見られる。
「もうすぐこんな実験がオランダの市で行われるなんて幸せ」
「私の故郷がベーシックインカムの最前線になるって聞けて嬉しいわ」
イギリスやアメリカからも、「ベーシックインカムによって誰も次の食事やベッドのことを心配しないで済むんだ!」「実験のデータを見るのが楽しみだよ」といった声があがっており、世界的にも注目が集まっているようだ。
当然、日本のネットでも「羨ましすぎでしょ」「これは興味深いな~」「日本でも早よ」との投稿が。以前からベーシックインカム制の有用性を主張してきた堀江貴文氏も、
「最高の仮説。労働をやりたくない奴にさせるコストよりも、ただ金を与えたほうが安上がりって仮説の検証やね」
と歓迎。他にも、貧困が消滅することで犯罪の大部分も消滅するのでは、という意見があった。一方で「真面目にコツコツ働く意欲は間違いなく減る」「ギリシャ化しないだろうか?」という不安視する人もいた。
市会議員「実験結果がプラスなら規模の拡大も検討」 今回のユトレヒトの今回の取り組みは、1974年から78年にカナダのマニトバ州ドーファンで行われた実験の影響を受けているという。カナダのCBC Radioには、この点についてユトレヒト市会議員のVictor Everhardt氏がインタビューに答えている。
このときはすべての住民の最低限の収入を保証したが、政権交代により半ばで終わってしまった。Everhardt氏は今回の実験結果がプラスのものであれば、次の段階に進み、可能であればもっと大規模に行うかどうかを決断する時が来るのではないかと話している。実験結果の公表が楽しみだ。
あわせてよみたい:NHKが「ひとり親家庭の貧困」放送 課題は山積み
http://yukan-news.ameba.jp/20150707-108/
40過ぎても働かない「中高年ニート」なぜ増える? 豊かな時代の「合理的選択」なのか
2015.5.7
キャリコネ編集部
40代以上になっても職がない「中高年ニート」が増えているという。総務省などの調査では、若者よりも中高年のニートの増加が著しく、報道で取り上げられることも増えてきた。
「ニートの高齢化」は以前から指摘されていた。東京大学教授の玄田有史氏が2011年の社会基本調査(総務省)を分析すると、孤立し仕事もない状態(SNEP)の人は20~59歳で162万人。そのうち35歳以上は79万人と過半数を占めていたという。
もうムリと退職する人も。「父さん、母さんの育て方が悪かった」
玄田氏は総合研究開発機構・伊藤元重理事長との対談の中で、ニートが高齢化することによる影響をこう指摘している。
「若いうちに働けない人は、中高年になっても働けない。結局今はまだ親が生きているからそれなりに生活ができますが、将来的には生活保護に依存するようになると、ものすごく大きな社会的なコストが生まれる」
4月30日放送の情報番組「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)は、中高年ニートの特集を組んだ。40代の中高年ニートは2014年時点で約45万人。これは2004年の約30万人から15万人も増加している。
この原因について番組は、バブル崩壊後の90年代に若年ニートが急増し、そのまま定職につかずに「中高年ニート」になったのではと指摘する。確かに90年代後半には、学校卒業時点で就職も進学もしていない人や、アルバイト・パートで就業する非在学の若者が急増している。
さらに増えているのは、数年前まで企業に勤めていたのに、40代になって「もうムリ」と心が折れるように退職してしまうケースだ。親がなぜと聞いても理由が分からず、このような言い分で中高年ニートを続けているのだという。
「頑張ったんだけどうまくいかない」
「父さん、母さんの育て方が悪かった」
「俺なりにちゃんと考えている」
「お前等のせいで若者の負担が増えてる」と批判も
同番組に出演した脳科学者の中野信子氏は、こうした言い分で中高年ニートが「働かないこと」について、こう理由を推察する。
「異論があるかもしれませんが、ニートというのは合理的選択なんです。これだけ豊かな国で、シニアに資産が偏在していて、働かないことが一番合理的な選択だと思っているかもしれない」
さらに「もう一つの理由」として、中野氏は「働かないことが親孝行になっている」と指摘。いつまでも面倒を見させることが、親に存在価値を与えているとする。
「私がいなければこの子はダメなのよ、と思わせてあげることが孝行になっている」
番組の内容はツイッターなどネットでも話題になっており、さまざまな言い訳をしながら働かない中高年ニートに、「お前等が働かないせいで若者の負担が増えてる」「全部『他人』や『環境』のせいにしてる」といった厳しい意見も少なくない。
その一方で、「35歳以上の募集が皆無なハロワの募集見てから特集組めよ」と彼らが仕事を得にくい現状を踏まえるべきという指摘や、「生真面目な人ほどなってしまうのにね…」と精神的なケアの必要性を訴える意見もあった。
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https://news.careerconnection.jp/?p=11178