『本土決戦準備の真実─日本陸軍はなぜ水際撃滅に帰結したのか─』家村和幸(いえむら・かずゆき) | 日本のお姉さん

『本土決戦準備の真実─日本陸軍はなぜ水際撃滅に帰結したのか─』家村和幸(いえむら・かずゆき)

こんにちは。
エンリケです。
敗戦直前、本土決戦を覚悟した帝国陸軍は、それまでの「後退配備」から「水際配備」に大きく舵を切りました。
このことを戦後社会は、「自暴自棄の玉砕戦法」と批判しています。
ところが、事実はまったく異なります。
敵上陸時の最大の弱点を突く「水際撃滅」こそ、劣勢な側が勝利を得る唯一の戦い方です。
硫黄島や沖縄で多大の出血を強いられた米国は、本土決戦に引きずり込まれることを恐れ、「ポツダム宣言」の発表を急ぎました。
帝国陸軍は、八五年の歴史を閉じる最後の戦いにおいて、全軍が水際で討ち死にする覚悟を固めて国土と国民を守り抜こうとしたのです。
著者はいいます。
<大東亜戦争末期の日本は、「少しでも早く戦争を終わらせたい」アメリカと、「少しでも戦争を長引かせたい」ソ連とに前後から挟み撃ちにされ、国内の「少しでも戦争を長引かせたい勢力」に振り回されながら、満身創痍で戦っていた。
精鋭無比であったはずの日本陸軍も、内部から病魔に侵されてボロボロになっていた。それにもかかわらず「決号作戦」という元寇に次ぐ日本史上二度目の本土防衛戦において、日本陸軍を「透徹した水際撃滅思想」に帰結させたものは何であったのか
それは「道義」であった。>
と。
敗戦から70年を迎える今年、この本が出る意味は想像以上に大きい、
とエンリケは思っています。
ではこの本を通じて、あなたは何を得ることができるのでしょう?
そのことがよくわかる一文を今日はご案内します。
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あとがき
本書は、平成二十四年四月六日から同年九月二十一日までの約半年間にわたり、メールマガジン「軍事情報」に『本土決戦準備の真実─日本陸軍はなぜ水際撃滅に帰結したのか─』というタイトルで連載した記事をベースに加筆修正したものである。
メルマガでは、古い歴史と優れた伝統を持つ日本の国、ユーラシア大陸に沿って西太平洋上に連なる列島からなる日本の国土を敵の武力侵攻からいかにして守るか、という古今に通じる難解なテーマについて、先人達の苦心の跡を訪ねながら読者の皆様にわかりやすく解説しようと試みた。
このため、まずは上陸作戦や対上陸作戦といった戦術・戦法の基礎的なことや元寇、江戸・幕末の海防思想など歴史的な事象を踏まえ、次いで大東亜戦争における日本陸軍の対上陸作戦思想の変遷について史実や当時の公文書などを戦略・戦術的な観点から紐解いて記述した。
地名とその位置関係や作戦行動のように文字だけでは十分に表現できない部分については、今回の単行本化にともない付図を併用することでこれを補う
ことができた。なお、旧文献からの引用箇所は、文語体、旧仮名づかいであったものを筆者がすべて現代口語訳した。
また、各章の冒頭や文中では古今東西の軍人や武将たちが語った言葉をできるだけ多く引用することにより、戦略・戦術や統帥、戦場の実相などに関して印象的に理解できるようにと考えた。それらは戦場を知らない人間が頭の中だけで考えた言葉ではなく、指揮官や参謀としての実戦体験を通じて語った簡潔にして血のにじむような言葉であり、私たちが軍事・国防を学ぶ上で多くの示唆に富み、重要な教訓に満ちているからである。
さらに、文中では敵である米軍側からの視点も努めて多く交えることにより、戦争と国民性というものの本質にも迫ることができればと考えた次第である。
本書のメインテーマである「日本陸軍を徹底した水際撃滅に帰結せしめたもの」については大小さまざまな要因が複雑に絡んで簡単には説明できず、最も苦労したところである。
これまで多くの文献などでは「自暴自棄的な玉砕戦法」などとして簡単に
片付けてきたが、これに対して本書では、できる限り多くの史実を検証しながら、水際撃滅が戦理・道義の両面から最も望ましい戦い方であることを明らかにしようと努めた。
メルマガで掲載した記事を本書の原稿に手直しする過程で、日本陸軍が大東亜戦争末期に蔓延した自己健存思想を毅然として捨て去り、水際撃滅に徹したことの本質が「西欧的合理主義」から脱却し、日本人の伝統的な「武士道」の精神に回帰したことにあるとの思いをあらためて強くした次第である。
また、日本陸軍の最終的な戦略を述べるに当たっては、大東亜共同宣言からカイロ宣言、そしてポツダム宣言が発せられた経緯とそれぞれの宣言文を新たに書き加えて一つの章とした。
この際、こうした重要な宣言について、あえて省略することなく全文を現代口語訳して載せたのは、これらこそが歴史を客観的に物語る「史実」が濃縮されたものだからである。
そして、あの戦争にはそれまでの日清戦争や日露戦争にはなかった「内なる敵」が存在していた(日米共に)ことを明らかにしなければ、解けない疑問があまりにも多いので、あえてこれを「おわりに」として付け加えた。
大東亜戦争終戦から七十年の節目となるこの年に、少しでも多くの日本人が東京裁判史観、祖国を嫌悪する自虐史観や、戦争・軍隊を絶対悪としか見ることができない反戦平和思想といった短絡的な歴史観や思想を離れ、祖国の防衛に努めた良識ある軍人たちの労苦を思い、戦いに散った英霊たちに感謝の誠を捧げながら日本人として誇り高く生きていくことを願うものである。
同時に、今も変わらない謀略の渦巻く国際社会の冷厳さを深く認識して、常に警戒を緩めず、護りを固めることが、敗戦と占領がもたらした古い体制を打破する道であるものと確信する。
この書が日本人としての誇りと喜びを取り戻し、「道義に篤く、強靭な国防国家・日本」を再建することに少しでも貢献できることを切に願うものである。
平成二十七年六月
家村和幸
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メルマガ連載では触れられていなかった
「おわりに」
に記されていることこそ、本著を手にする最大の意味ではなかろうか?
とエンリケは個人的に考えております。
著者は、この方です。
家村和幸(いえむら・かずゆき)
兵法研究家、元陸上自衛官(二等陸佐)。昭和36年神奈川県生まれ。聖光学院高等学校卒業後、昭和55年、二等陸士で入隊、第10普通科連隊にて陸士長まで小銃手として奉職。
昭和57年、防衛大学校に入学、国際関係論を専攻。卒業後は第72戦車連隊にて戦車小隊長、情報幹部、運用訓練幹部を拝命。
その後、指揮幕僚課程、中部方面総監部兵站幕僚、戦車中隊長、陸上幕僚監部留学担当幕僚、第6偵察隊長、幹部学校選抜試験班長、同校戦術教官、研究本部教育訓練担当研究員を歴任し、平成22年10月退官、予備自衛官(予備二等陸佐)となる。現在、日本兵法研究会会長として、兵法及び武士道精神を研究しつつ、軍事や国防について広く国民に理解・普及させる活動を展開している。
著書に『"戦略・戦術で解き明かす"真実の「日本戦史」』(宝島SUGOI文庫)、
『図解雑学"名将に学ぶ世界の戦術』(ナツメ社)、『"戦略と戦術で解き明かす"真実の「日本戦史」戦国武将編』(宝島SUGOI文庫)、『闘戦経"武士道精神の原点を読み解く』『兵法の天才 楠木正成を読む─河陽兵庫之記 現代語訳』(並木書房)、『なぜ戦争は起きるのか─この一冊で本当の「戦争」が解かる』(宝島社新書)、論文に「支那事変拡大の経緯を戦略・戦術的思考で分析する!」(別冊宝島「南京大虐殺」という陰謀)、「戦略・戦術的思考とは何か」
(「ほうとく」平成20年新年号)、「尖閣防衛は国境警備隊で」(雑誌「正論」平成23年6月号)、「自衛隊は何を守り、何と戦うのか"革命政権に文民統制される『暴力装置』の危うさ」(撃論2011.4Vol.1)、「歴史教科書と国防意識」(雑誌「正論」平成23年8月号)など多数ある。
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おき軍事
エンリケ

追伸
あとがきを紹介したので、まえがきも紹介しておきますね。
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はじめに 昭和二十年七月初頭
大東亜戦争が終戦を迎える一カ月前の昭和二十年七月初頭、関東方面における本土決戦を任務としていた第十二方面軍司令官は、上陸侵攻する敵を迎え撃つための陣地線(防御ライン)を天然の要害ともいうべき下総台地などの堅固な地形から、拠るべき地形地物に乏しい九十九里浜などの水際の平地部に推進することを決心した。
これにより、指揮下部隊の将兵たちは、前年十月頃から営々と築いてきた数多くの拠点陣地を捨て、海岸沿いの平坦地に新たな陣地を掘り直すことになった。
自らの死地と覚悟し、地下壕を張りめぐらした陣地を精根傾けて構築していた第一線部隊の指揮官らは、方面軍司令官からの突然の変更命令に接し、あらためて海岸付近を現地偵察して、その地形強度の格差に愕然とした。そして、悲愴な決意をもって部隊を水際部の近くまで前進させ、新たな陣地を構築することを命令した。
この第十二方面軍司令官の決心は、大本営陸軍部が昭和二十年六月二十日に参謀次長名をもって通達した「本土決戦根本義ノ徹底ニ関スル件」に従って水際決戦の趣旨を徹底し、具現化するためのものであった。この「本土決戦根本義ノ徹底ニ関スル件」では、沿岸配備兵団に対して概ね以下のようなことを要求していた。
● 決戦方面における沿岸配備兵団等にあっては、いかなることがあっても「戦況の苦難を理由にして当面の決戦を避け、後退して持久を策する」ことがあってはならない。
このような観念は、本土決戦の真義に反するものである。
● 自己健存の思想のごときは断固排撃し、その任務が明示するところに決勝を期し、各人各部隊、皆が「我が身を捨てて敵を撃つ」という戦法に拠らなければならない。
● 沿岸配備兵団および部隊は、その任務に基づき戦闘の要領を律するべきではあるが、いやしくも要域の領有ないしは時間的持久のような「守勢的観念」は、これを根本的に払拭しなければならない。
● 陸上作戦に任ずるものは、成し得る限り「水際における敵の必然的弱点」を追求すること。これを作戦指導の主眼とし、飽くまで敵を沿岸に圧倒撃滅するように図らなければならない。
このように、終戦直前の本土決戦準備において、大本営陸軍部が第一線部隊に対し「一切の経緯より毅然として脱却」して水際部に新たな陣地を掘り直すことを強要した真の目的については、今日でもさまざまな見解がある。たとえば、「火力戦から白兵銃剣主義への急転回」とするものや、「敗戦必至の情勢下における自暴自棄的玉砕戦法の採用」、「軍事的合理性を捨てて華々しくその最期を飾るための戦死決心の戦い」などが一般的である。しかし、このような悲観的な見方からは、こうした重大な作戦方針の変更について納得しがたい点があまりにも多いのである。
はたして、本土決戦を準備していた日本陸軍が終戦直前に「後退配備」から「水際撃滅」へと作戦思想を急転換させた真意はどこにあったのか? いずれにせよ、大東亜戦争末期に我々の先人が軍・官・民一体となって心血を注ぎ準備した本土決戦とは、我が国における数少ない「国土防衛に関する歴史的事実」である。
大東亜戦争の終戦から七十年目を数え、我が国周辺諸国の脅威が増大する一方で、農業改革や集団的自衛権の容認など、「戦後以来の大改革」が着々と進みつつある今日こそ、この本土決戦準備という「歴史的事実」に先人の苦悩の跡を訪ね、往時を偲び、隠されてきた史実を究明して国防上の教訓を学びとる必要があるだろう。
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