中国企業が大量倒産しています。2013年から14年にかけて東莞市では約3000社の工場が倒産した
ロシア政治経済ジャーナル No.1221
2015/6/24
中国企業が大量倒産しています。
なぜ?
詳細は、【本文】で!↓
★中国企業大量倒産、その理由は?
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
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もはやあまり大騒ぎする人もいませんが。
今年3月の「AIIB事件」は、まったく「歴史的」でした。
「特別な関係」イギリスが裏切ったのを皮切りに、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などなどが、
アメリカの制止を無視し、中国が主導する「AIIB」への参加を決めた。
要するに彼らは、「アメリカのいうことを聞かず、中国のいうことを聞いた」。
誰もいうことを聞かない国のことを「覇権国家」と呼べるでしょうか?
それで、唯一裏切らなかった大国の長・安倍総理は、アメリカで大歓迎された。
そして、アメリカは、2013年から行われている中国による「南シナ海埋め立て」を突如大騒ぎしはじめたのです。
「AIIB事件」は、
「中国の影響力の大きさを、世界に知らしめた事件」
ということができるでしょう。
しかし・・・。
昔からの読者さんはご存知です。
私は、「これで中国が覇権国家になる!」「日本も乗り遅れるな!」とはいいません。
そうではなく、「今中国で起こっていることは、『成長期後期』の現象ですよ」といいます。
▼中国のライフサイクル
国家ライフサイクルでいうと中国は、トウ小平が資本主義的経済改革を宣言した1978年末、「成長期」に入りました。
ざっくりいうと、「1980年頃」と考えていい。
日本は戦後、「朝鮮戦争」がはじまった1950年頃成長期に入った。
それで中国は、ライフサイクルで「約30年」日本から遅れているのです。
1960年代、日本は「安かろう悪かろう」で急成長しました。
それから30年後の1990年代、中国も「安かろう悪かろう」で急成長。
1970年代、日本はさらに成長をつづけ「世界の工場」になりました。
30年後の2000年代、今度は中国が「世界の工場」になりました。
1980年代、日本は成長期後期に突入。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとほめられたものです。
それから30年後の2010年代。
中国も同じように、「成長期後期」に突入しました。
今、「中国が覇権国家になる!!!」とたくさんの人が騒いでいます。
さて、日本の栄華は1990年、「アッ!」という間に終わりました。
「バブル崩壊」です。
そして、「暗黒の20年」に突入していきます。
これまで中国は、ぴったり「30年遅れ」で日本を追っている。
ということは、「2020年頃」には「バブル崩壊」に匹敵するできごとが起こり、
その後「長い停滞の時代に入るのではないか?」と予想される。
これは経済の話ですが、政治はどうでしょうか?
バブル崩壊で日本の政治はとても不安定になりました。
自民党の(事実上の)一党支配が終わり、日本新党の細川さんとか、社会党の村山さんが首相になったりした。
しかし、中国は「一党独裁」なので、「選挙による政権交代」はないのですね。
民主主義国家のように、革命せずとも「選挙で政権交代」というわけにはいかない。
となると、政治的にも大混乱が予想される。
「一党独裁体制が崩壊する」ことだって、あり得るわけです。
ちなみにこの話、私はちょうど10年前に出した「ボロボロになった覇権国家」からずっとしています。
そして、「北京オリンピックがある08年、上海万博がある10年前後に危機が起こる。
しかし、中国は成長期前期から半ばなので、たちなおりは早い」
と書いていました。
(当時は、「中国崩壊論」が大流行していた。)
「国家ライフサイクル論」だと中国はこうなっているわけですが、実際何が起こっているのでしょうか?
一つの記事を紹介しましょう。
▼中国企業大量倒産、その理由は?
サーチナ6月12日は、中国企業が「大量倒産」している実状を伝えています。
↓
<「世界の工場」中国に圧力・・・東南アと「勝負にならぬ人件費」=広東省
サーチナ 6月12日(金)6時37分配信
*
*
中国メディアの中国経営報は6日、世界の工場と称される中国において、ひときわ多くの工場が存在する都市の1つである中国広東省東莞市において、多くのメーカーが倒産していると伝え、東南アジアとの人件費の差は10倍に達している業種もあると伝えた。>
もう少し具体的に見てみましょう。
↓
< 記事は、東莞市で電線を製造する企業の経営者の話として、「経営環境は極めて厳しい」と伝え、一部の統計として、2013年から14年にかけて東莞市では約3000社の工場が倒産したと紹介。さらに、倒産した工場のうち約40%が電子計器のメーカーであり、約20%がプラスチック製品メーカー、さらに約10%が金属製品メーカーだったと紹介した。>(同上)
東莞市は、人口約820万人。
かなりの大都市であることを考慮しても、1年で3000社の倒産は多いですね。
(ちなみに日本全国の倒産件数は2014年、9543社。)
< 続けて、中国の中山大学嶺南学院の林江主任の話として、「ここ10年ほど、東莞市政府は製造業の高度化に向けた取り組みを行っているが、大きな成果は出ていない」と指摘。また、東莞市の工場経営者の話として、「経営を圧迫している主な理由は人件費が絶えず上昇していること」と伝え、国が給与の最低基準と残業手当の基準を定めたことが企業側にとって大きな圧力になったと報じた。>(同上)
「経営を圧迫している理由は人件費が絶えず上昇していること」
だそうです。
<さらに、人件費上昇を嫌い、東莞市の中小規模の工場の顧客だった日本企業や韓国企業は東南アジアへ工場を移転させていると伝え、ベトナムなどは1カ月の人件費が1000元(約2万416円)前後だと紹介。
一方の東莞市では工場労働者の1カ月あたりの人件費は4000元(約8万1600円)前後に達すると伝えた。>(同上)
日本企業、韓国企業が東南アジアに逃げ出した。
なぜなら、東莞市の人件費、ベトナムの4倍だから。
どんな会社でも逃げますね。
< 記事は、東莞市の服飾製造業の経営者の話として「人件費は一般の労働者で5000元(約10万2080円)、技術力のある労働者の1カ月あたりの人件費は8000元(約16万3000円)に達することもある」と伝える一方、バングラデシュでは400-500元(約8166円-1万200円)ほどで雇用することができると紹介し、人件費の差は約10倍に達していると指摘した。>
(同上)
東莞市とバングラディッシュの差は10倍。
逃げるのは当然です。
▼人件費と国家ライフサイクル
実をいうと、この「人件費」。
ライフサイクルを見る際、とても重要です。
1960年代、日本製品は欧米で「安かろう悪かろう」といわれました。
「品質は悪いけど、安いから買う」と。
では、なぜ「安かった」かというと、要するに日本人の「人件費」が安かったから。
経済が成長しつづければ、必然的に人件費はあがっていきます。
すると、企業は、「国内で生産するより、外国で安く雇ったほうが儲かるぞ」と考える。
それで、日本企業は、どんどん外国、特に中国に出ていった。
中国に進出した日本企業は、中国人を雇い、中国で税金を払う。
だから、中国は「大儲け」。
逆に、日本人の雇用と税収は失われて、日本国は「大損」。
ところが今度は、中国の人件費があがってきた。
それで、外国企業も中国企業も、どんどん逃げ出して、他国に拠点を移している。
これは、かつてアメリカで起こり、日本で起こり、いま中国で起こっている現象。
そして、「人件費の高騰」→ 「空洞化」という流れを止めることは「不可能」といえるでしょう。
だから、中国経済が今後悪化していくのは、「不可避」な流れなのです。
先日、「歴史の終わり」のフランシス・フクヤマさんが、
「中国がルールを決める時代が来るのは、避けられないと主張している」
というお話をしました。
あたかも「これから日本の時代がくる!」と主張していた80年代の評論家のように。
しかし、「ダークサイド」にも目をむけるべきですね。
「成長期後期」は、季節にたとえれば「秋」といえます。
それは「収穫の秋」であると当時に、「日ごとに寒くなってくる季節」でもある。
「収穫」の後に、どかんと寒い季節に突入するので、みんなびっくりするのです。
しかし、秋の後に冬がくるのは、「自然の理」ともいえるでしょう。
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●面白かったら、拡散お願いいたします。>
★Oさまからのおたより
北野様。
お返事ありがとうございます。
日々、変化が激しいですね。
アメリカ議会のTPPもどうなるのか、一喜一憂しています(笑)
RPE「アメリカの「大戦略」が、日ロ接近を妨げる」もとても参考になりました。
志摩サミットでプーチン招請できるか、とても気になります。
拙ブログでも紹介しました。
●じぇじぇ、「志摩サミットにプーチン大統領招請を政府が検討!」
を喜んでいいのか?
http://kopiruakkun.blog.fc2.com/blog-entry-4945.html
いつもありがとうございます。
★編集後記
アメリカ人が、「日本語」で歌う。
ホント、感動しました。
↓
http://www.youtube.com/watch?v=eK-y3pAzadk
RPEジャーナル
北野幸伯
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