アメリカにとっての日本は、ロシアや中国と並んで、「仮想敵」(!)なのです。
【RPE】★アメリカの「大戦略」が、日ロ接近を妨げる
ロシア政治経済ジャーナル No.1218
2015/6/18
「AIIB事件」後、米中関係がかなり悪化しています。
一方、アメリカは、ロシアとの和解に動きはじめました。
しかし、日本とロシアの接近には反対しています。
なぜ?
★アメリカの「大戦略」が、日ロ接近を妨げる
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
(●まぐまぐニュースに北野の記事が掲載されました。
【ドイツ】安倍首相は「中国」連呼。G7エルマウサミットは成功だったのか?
(詳細は→ http://e.mag2.com/1IDfQq5 )
メルマガ版を読んでいない方は、ぜひご一読ください。
ホントに面白かったら、「いいね!」押していただけると
うれしいです。)
読者のMさまから、メールと質問をいただきました。
「北野さんの予想どおり、「AIIB事件」後、米中関係が急に悪化して
きたので驚いています。
そして、これも予想どおり、欧米が急にロシアに優しくなってきまし
た。
しかし、一点わからないのは、
「では、なぜアメリカは、日本がロシアに接近するのを止めるのか」
ということです。
なぜでしょうか?(以下略)」
確かに、アメリカは、日本がロシアに接近するのを戒めています。
たとえば。
↓
<日露関係「追求する時期ではない」…米がけん制
読売新聞 5月22日(金)18時39分配信
*
*
【ワシントン=今井隆】ラッセル米国務次官補(東アジア・太平
洋担当)は21日、ワシントン市内で記者会見し、日本の対露外交
について、ウクライナ情勢などの現状を踏まえ、通常の関係を追求
する時期ではないとの見解を示した。
経済協力などの関係強化は慎重に検討するよう日本政府に求めた
ものとみられる。>
そうはいっても、アメリカのケリー国務長官は5月12日、訪ロして
プーチンと4時間も話していますが・・・・。
その件については?
< ラッセル氏は、今月12日のケリー国務長官とロシアのプーチ
ン大統領との会談は、ウクライナ情勢など「緊急かつ特定の問題」
の直接協議が目的だったと説明。
米露関係は「通常のビジネスに基づいていない」とし、日本にも歩
調を合わせるよう促した。>(同上)
では、プーチンを日本によんで、「ウクライナ問題を協議する」のは
よいのでしょうか?
そんなことはないでしょう。
RPEの読者さんならわかると思いますが、アメリカは、
・アメリカが、中国と対抗するためにロシアと和解するのはOK
・日本が、ロシアに接近するのはダメ!
という立場なのです。
なぜ?
これ、一見単純な問題ですが、実をいうとアメリカの【大戦略】に
かかわる重要な話です。
▼アメリカ、冷戦後の大戦略とは?
これについて、拙著「クレムリン・メソッド」
(詳細は→ http://hec.su/hHN )
から転載します。
【転載ここから▼】
<アメリカの「一極支配」戦略
「戦略国家」アメリカは、こうして日本、そしてナチス・ドイツに完勝しました。
第二時大戦後の世界は、みなさんもご存知のように、「米ソ冷戦時代」(二極時代)になっていきます。
アメリカは、当然新たな戦略を構築しました。
どのような?
日本を代表するリアリスト、伊藤貫(いとうかん)先生の著書から引用します。
〈冷戦時代(一九四七~八九年)、世界が二極構造であった時期のアメリカのグランド・ストラテジーは、「ユーラシア大陸の三重要地域(西欧、中東、東アジア)を米軍が支配することによって、ソ連陣営を封じ込めておき、アメリカが世界を支配する」というものであった。〉
(「自滅するアメリカ帝国─日本よ、独立せよ」伊藤貫 文春新
書 7~8p)
これは、わりと知られていますね。
この戦略がうまく機能し、ソ連と共産陣営は崩壊した。
見事です。
そして、「冷戦」(米ソ二極時代)は終わり、あらたな時代が到来しました。
新しい時代には、「新しい戦略」が求められます。
「冷戦後のアメリカの戦略」とはなんなのか?
〈一九九一年秋にソ連が崩壊すると、アメリカ政府は即座に次のグランド・ストラテジーを構想した。
それは「国際構造の一極化を進める。
今後はアメリカだけが、世界諸国を支配する経済覇権と軍事覇権を握る。〉(同前8p)
「国際構造の一極化を進める」と。
そのためには、どうすればいいのか?
そう、第二章を読まれた方は、もうわかりますね。
「金力」(経済力)と「腕力」(軍事力)の覇権を握る。
さらに、驚くべき話がつづきます。
〈アメリカに対抗できる能力を持つライバル国の出現を許さない。
冷戦終了後も、第二次世界大戦の敗者である日本が自主防衛能力を持つことを阻止する」というものであった。〉(同前8p)
なんと!
一九四五年から冷戦が終わった一九九一年まで、忠実にアメリカに仕えてきた日本。
そんな日本に対しても、「自主防衛能力を持つことは許さない!」と。
ところで、この驚くべき「大戦略」は、本当に存在するのか??
そんな疑問をもったあなたのために、つづきがあります。
〈(この戦略案──ペンタゴンの機密文書Defense Planning Guidance──は一九九二年三月、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストにリークされて、国際的なスキャンダルとなった。)
米政府(民主・共和両党)は、この「世界一極化戦略」を着々と実行していった。〉(同前8p)
どうやら、本当に存在するようです。
ところで、アメリカは、冷戦終結後も日本が「自主防衛能力を持つこと」を阻止する。
まだまだ、驚くべき話があります。
〈この機密文書の中でアメリカの潜在的な競争国(もしくは敵性国)として描かれていたのは、ロシア、中国、日本、ドイツの四国であった。〉(同前62p)
なんということ!
アメリカにとっての日本は、ロシアや中国と並んで、「仮想敵」(!)なのです。
ドイツ人も驚いたことでしょう。
〈前年に軍事帝国が崩壊したばかりのロシアと二年半前に天安門虐殺事件を起こした中国が、アメリカの「潜在的な競争国・敵性国」と定義されていたことは納得できるが、
すでにほぼ半世紀間も「アメリカの忠実な同盟国」としての役割を果たしていた日本とドイツが、米政府の機密文書において冷戦後のアメリカの潜在的な敵性国と描写されていたことは、「外交的なショック」(ワシントン・ポスト紙の表現)であった。〉(同前62p)
どうですか?
冷戦後のアメリカの戦略は「アメリカだけが世界を支配する状態をつくるため」にある。
「世界の『出来事』は、国の『戦略』によって『仕組まれる』」のです。
そうなると、新世紀に入って起こったさまざまなできごと、「イラク戦争」「ロシア─グルジア戦争」「リビア戦争」「シリア内戦」「イラン問題」「ウクライナ内戦」などなども、
「アメリカの戦略によって起こっているのではないか?」と疑ってかかる必要がある。
もちろん、アメリカだけでなく、中国には中国の、ロシアにはロシアの戦略があるので、注意深く見る必要がありますが……。>
【転載ここまで▲】
どうですか、これ?
驚くべきことですが、アメリカには、4つの「仮想敵国」がいる。
4国とは、
・中国
・ロシア
・ドイツ
・日本!!!!!!!
▼「分断して統治せよ」が、基本中の基本
では、アメリカは、この4つの仮想敵国とどうかかわっていくのか?
基本的には、日本、ドイツ、中国、ロシアを
【分断させておくこと】。
逆に、アメリカにとってもっとも都合の悪い状況とは、
日本、ドイツ、中国、ロシアが
【一体化してしまうこと】。
もう何回も書いていますが、2014年2月のウクライナ革命。
オバマさん自身、「アメリカがやった」と、認めています。
「ロシアの声」2015年2月3日から転載。
(全文はこちら。
http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2015_02_03/282671141/ )
↓
<昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。
恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。
CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。
これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。
これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。
米国務省のヌーランド報道官は、すでに1年前「米国は、ウクライナにおける民主主義発展のため50億ドル出した」と述べている。>
オバマさんが話している映像はこちら。
↓
https://www.youtube.com/watch?v=ES4jslRzQwI
アメリカ「大戦略」の視点から見ると、この「ウクライナ革命」。
「見事に、ロシアとドイツ(EU)を分断させたよね」
とみることもできます。
そう、アメリカの恐怖は、ロシアとドイツ(EU)が一体化すること。
だから、ウクライナ問題でロシアとドイツが分断された状態は、心地よいのです。
「なぜアメリカは、日ロの接近を嫌がるのか?」
もうおわかりですね。
アメリカは、仮想敵の大国ロシアと、仮想敵の日本が一体化するのを警戒しているのです。
「ひどい話だな~~」と思いますが、それが現実ですから、仕方ありません。
私たちは、「アメリカはそういう国なのだ」と知って、つきあい方を考える必要があるのです。
▼では、日本はロシアに接近すべきか?
これまで何度も書いていますが、日本は現在非常にいいポジションにつけています。
今の世界情勢は、アメリカと中国の覇権争奪戦を軸にまわっている。
そして、「AIIB事件」後、アメリカは、「中国包囲網」形成を主導しはじめています。(バランシング)
「アメリカが、日本と中国を戦わせて漁夫の利を得る」という「バック・パッシング」の心配は、いまのところない。
しかし、日本が、アメリカの要求を無視して、プーチンと接近したらどうでしょう?
激怒して、「じゃあ、日中を戦わせよう」となるかもしれない。
この辺、日本はあまく見るべきではありません。
一つ、歴史から例をあげておきます。
1972年2月、ニクソンは、中国を訪問。
米中関係は、劇的に改善されました。
要するにアメリカは、「中国と和解してソ連と対峙する」リアリスト外交を行った。
さて、この年の7月、田中角栄さんが総理大臣に就任。
彼は、電光石火の速さで、同年9月には、「日中国交正常化」をなしとげてしまいます。
この時、キッシンジャーの反応はどうだったのか?
06年5月26日、共同。
↓
<「ジャップは最悪の裏切り者」 (解禁された米公文書より)72年にキッシンジャー氏
【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。
キッシンジャー氏の懐疑的な対日観は解禁済みの公文書から既に明らかになっているが、戦略性の高い外交案件をめぐり、同氏が日本に露骨な敵がい心を抱いていたことを明確に伝えている。>
↑
どうですか、これ?
「ジャップは、最悪の裏切者」だそうです。
つまり、「自分(アメリカ)が中国と仲良くするのは、「善」だが、日本が中国と仲良くするのは、【最悪の裏切り】」なのです。
私たちは、アメリカがこういう「独善的なロジック」で動いていることを知っておく必要があります。
では、安倍総理は、アメリカの意向を無視してロシアと仲良くするべきなのでしょうか?
田中角栄さんの悲惨な末路は、みなさんご存知ですね?
アメリカが安倍さんに同じことをしないと、誰が保証できるでしょうか?
実際、「アメリカとケンカしてもロシアと仲良くする」というのは意味のないことです。
昨年12月に初来日を果たしたリアリストの大御所ミアシャイマー・シカゴ大学教授は、安倍総理の役割についても語りました。
いわく、
「オバマに電話して、『なぜロシアと協力したほうがいいか」レクチャーすることだ」
と。
そう、安倍総理に期待される役割は、アメリカとロシアの和解なのです。
それは、もちろん中国の台頭を阻止するため。
ところが、AIIB事件で、勝手にアメリカがロシアとの和解に動き出した。
それなら、安倍さんのやることはないのです。
繰り返します。
日本の役割は、アメリカとの仲を険悪にしてもロシアと仲良くすることではありません。
日本の役割は、中国に対抗するために、アメリカとロシアの仲をよくすることです。
ですから、「アメリカを怒らせても日本だけロシアと仲良くする」という選択をすれば、「田中角栄と同じ道」になるでしょう。
PS
今回は、北方領土問題について触れていません。
領土問題解決は、もちろん超重要。
しかし、私は「日本は今、中国問題に集中すべき」と考えています。
もし安倍総理が、「私の任期中に領土問題を解決して歴史に名を残す!」
「そのためには、ロシアに接近してアメリカを少しぐらい怒らせても」
と考えておられるのなら、「大きな過ち」です。
それよりも、「尖閣、沖縄を守り」「中国の野望を阻止して」歴史に名を残してください。
●PS2
ところで、私が、世界情勢を分析し、未来を予測する方法、全部暴露しています。
これを読めば、あなた自身も世界の未来をあらかじめ知ることができるようにな ります。
時流をよむ必要がある、経営者、起業家、ビジネスマンの方は迷うことなく、こちらをご一読ください。
全部わかります。
↓
●アマゾン、「国際政治情勢部門」「外交・国際関係部門」
「社会一般部門」
「トリプル1位!」
↓
●日本人の知らない「クレムリン・メソッド」
~世界を動かす11の原理 (集英社インターナショナル)
北野 幸伯
(詳細は→ http://hec.su/hHN )
●面白かったら、拡散お願いいたします。>
ロシア政治経済ジャーナル No.1218
2015/6/18
「AIIB事件」後、米中関係がかなり悪化しています。
一方、アメリカは、ロシアとの和解に動きはじめました。
しかし、日本とロシアの接近には反対しています。
なぜ?
★アメリカの「大戦略」が、日ロ接近を妨げる
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
(●まぐまぐニュースに北野の記事が掲載されました。
【ドイツ】安倍首相は「中国」連呼。G7エルマウサミットは成功だったのか?
(詳細は→ http://e.mag2.com/1IDfQq5 )
メルマガ版を読んでいない方は、ぜひご一読ください。
ホントに面白かったら、「いいね!」押していただけると
うれしいです。)
読者のMさまから、メールと質問をいただきました。
「北野さんの予想どおり、「AIIB事件」後、米中関係が急に悪化して
きたので驚いています。
そして、これも予想どおり、欧米が急にロシアに優しくなってきまし
た。
しかし、一点わからないのは、
「では、なぜアメリカは、日本がロシアに接近するのを止めるのか」
ということです。
なぜでしょうか?(以下略)」
確かに、アメリカは、日本がロシアに接近するのを戒めています。
たとえば。
↓
<日露関係「追求する時期ではない」…米がけん制
読売新聞 5月22日(金)18時39分配信
*
*
【ワシントン=今井隆】ラッセル米国務次官補(東アジア・太平
洋担当)は21日、ワシントン市内で記者会見し、日本の対露外交
について、ウクライナ情勢などの現状を踏まえ、通常の関係を追求
する時期ではないとの見解を示した。
経済協力などの関係強化は慎重に検討するよう日本政府に求めた
ものとみられる。>
そうはいっても、アメリカのケリー国務長官は5月12日、訪ロして
プーチンと4時間も話していますが・・・・。
その件については?
< ラッセル氏は、今月12日のケリー国務長官とロシアのプーチ
ン大統領との会談は、ウクライナ情勢など「緊急かつ特定の問題」
の直接協議が目的だったと説明。
米露関係は「通常のビジネスに基づいていない」とし、日本にも歩
調を合わせるよう促した。>(同上)
では、プーチンを日本によんで、「ウクライナ問題を協議する」のは
よいのでしょうか?
そんなことはないでしょう。
RPEの読者さんならわかると思いますが、アメリカは、
・アメリカが、中国と対抗するためにロシアと和解するのはOK
・日本が、ロシアに接近するのはダメ!
という立場なのです。
なぜ?
これ、一見単純な問題ですが、実をいうとアメリカの【大戦略】に
かかわる重要な話です。
▼アメリカ、冷戦後の大戦略とは?
これについて、拙著「クレムリン・メソッド」
(詳細は→ http://hec.su/hHN )
から転載します。
【転載ここから▼】
<アメリカの「一極支配」戦略
「戦略国家」アメリカは、こうして日本、そしてナチス・ドイツに完勝しました。
第二時大戦後の世界は、みなさんもご存知のように、「米ソ冷戦時代」(二極時代)になっていきます。
アメリカは、当然新たな戦略を構築しました。
どのような?
日本を代表するリアリスト、伊藤貫(いとうかん)先生の著書から引用します。
〈冷戦時代(一九四七~八九年)、世界が二極構造であった時期のアメリカのグランド・ストラテジーは、「ユーラシア大陸の三重要地域(西欧、中東、東アジア)を米軍が支配することによって、ソ連陣営を封じ込めておき、アメリカが世界を支配する」というものであった。〉
(「自滅するアメリカ帝国─日本よ、独立せよ」伊藤貫 文春新
書 7~8p)
これは、わりと知られていますね。
この戦略がうまく機能し、ソ連と共産陣営は崩壊した。
見事です。
そして、「冷戦」(米ソ二極時代)は終わり、あらたな時代が到来しました。
新しい時代には、「新しい戦略」が求められます。
「冷戦後のアメリカの戦略」とはなんなのか?
〈一九九一年秋にソ連が崩壊すると、アメリカ政府は即座に次のグランド・ストラテジーを構想した。
それは「国際構造の一極化を進める。
今後はアメリカだけが、世界諸国を支配する経済覇権と軍事覇権を握る。〉(同前8p)
「国際構造の一極化を進める」と。
そのためには、どうすればいいのか?
そう、第二章を読まれた方は、もうわかりますね。
「金力」(経済力)と「腕力」(軍事力)の覇権を握る。
さらに、驚くべき話がつづきます。
〈アメリカに対抗できる能力を持つライバル国の出現を許さない。
冷戦終了後も、第二次世界大戦の敗者である日本が自主防衛能力を持つことを阻止する」というものであった。〉(同前8p)
なんと!
一九四五年から冷戦が終わった一九九一年まで、忠実にアメリカに仕えてきた日本。
そんな日本に対しても、「自主防衛能力を持つことは許さない!」と。
ところで、この驚くべき「大戦略」は、本当に存在するのか??
そんな疑問をもったあなたのために、つづきがあります。
〈(この戦略案──ペンタゴンの機密文書Defense Planning Guidance──は一九九二年三月、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストにリークされて、国際的なスキャンダルとなった。)
米政府(民主・共和両党)は、この「世界一極化戦略」を着々と実行していった。〉(同前8p)
どうやら、本当に存在するようです。
ところで、アメリカは、冷戦終結後も日本が「自主防衛能力を持つこと」を阻止する。
まだまだ、驚くべき話があります。
〈この機密文書の中でアメリカの潜在的な競争国(もしくは敵性国)として描かれていたのは、ロシア、中国、日本、ドイツの四国であった。〉(同前62p)
なんということ!
アメリカにとっての日本は、ロシアや中国と並んで、「仮想敵」(!)なのです。
ドイツ人も驚いたことでしょう。
〈前年に軍事帝国が崩壊したばかりのロシアと二年半前に天安門虐殺事件を起こした中国が、アメリカの「潜在的な競争国・敵性国」と定義されていたことは納得できるが、
すでにほぼ半世紀間も「アメリカの忠実な同盟国」としての役割を果たしていた日本とドイツが、米政府の機密文書において冷戦後のアメリカの潜在的な敵性国と描写されていたことは、「外交的なショック」(ワシントン・ポスト紙の表現)であった。〉(同前62p)
どうですか?
冷戦後のアメリカの戦略は「アメリカだけが世界を支配する状態をつくるため」にある。
「世界の『出来事』は、国の『戦略』によって『仕組まれる』」のです。
そうなると、新世紀に入って起こったさまざまなできごと、「イラク戦争」「ロシア─グルジア戦争」「リビア戦争」「シリア内戦」「イラン問題」「ウクライナ内戦」などなども、
「アメリカの戦略によって起こっているのではないか?」と疑ってかかる必要がある。
もちろん、アメリカだけでなく、中国には中国の、ロシアにはロシアの戦略があるので、注意深く見る必要がありますが……。>
【転載ここまで▲】
どうですか、これ?
驚くべきことですが、アメリカには、4つの「仮想敵国」がいる。
4国とは、
・中国
・ロシア
・ドイツ
・日本!!!!!!!
▼「分断して統治せよ」が、基本中の基本
では、アメリカは、この4つの仮想敵国とどうかかわっていくのか?
基本的には、日本、ドイツ、中国、ロシアを
【分断させておくこと】。
逆に、アメリカにとってもっとも都合の悪い状況とは、
日本、ドイツ、中国、ロシアが
【一体化してしまうこと】。
もう何回も書いていますが、2014年2月のウクライナ革命。
オバマさん自身、「アメリカがやった」と、認めています。
「ロシアの声」2015年2月3日から転載。
(全文はこちら。
http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2015_02_03/282671141/ )
↓
<昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。
恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。
CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。
これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。
これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。
米国務省のヌーランド報道官は、すでに1年前「米国は、ウクライナにおける民主主義発展のため50億ドル出した」と述べている。>
オバマさんが話している映像はこちら。
↓
https://www.youtube.com/watch?v=ES4jslRzQwI
アメリカ「大戦略」の視点から見ると、この「ウクライナ革命」。
「見事に、ロシアとドイツ(EU)を分断させたよね」
とみることもできます。
そう、アメリカの恐怖は、ロシアとドイツ(EU)が一体化すること。
だから、ウクライナ問題でロシアとドイツが分断された状態は、心地よいのです。
「なぜアメリカは、日ロの接近を嫌がるのか?」
もうおわかりですね。
アメリカは、仮想敵の大国ロシアと、仮想敵の日本が一体化するのを警戒しているのです。
「ひどい話だな~~」と思いますが、それが現実ですから、仕方ありません。
私たちは、「アメリカはそういう国なのだ」と知って、つきあい方を考える必要があるのです。
▼では、日本はロシアに接近すべきか?
これまで何度も書いていますが、日本は現在非常にいいポジションにつけています。
今の世界情勢は、アメリカと中国の覇権争奪戦を軸にまわっている。
そして、「AIIB事件」後、アメリカは、「中国包囲網」形成を主導しはじめています。(バランシング)
「アメリカが、日本と中国を戦わせて漁夫の利を得る」という「バック・パッシング」の心配は、いまのところない。
しかし、日本が、アメリカの要求を無視して、プーチンと接近したらどうでしょう?
激怒して、「じゃあ、日中を戦わせよう」となるかもしれない。
この辺、日本はあまく見るべきではありません。
一つ、歴史から例をあげておきます。
1972年2月、ニクソンは、中国を訪問。
米中関係は、劇的に改善されました。
要するにアメリカは、「中国と和解してソ連と対峙する」リアリスト外交を行った。
さて、この年の7月、田中角栄さんが総理大臣に就任。
彼は、電光石火の速さで、同年9月には、「日中国交正常化」をなしとげてしまいます。
この時、キッシンジャーの反応はどうだったのか?
06年5月26日、共同。
↓
<「ジャップは最悪の裏切り者」 (解禁された米公文書より)72年にキッシンジャー氏
【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。
キッシンジャー氏の懐疑的な対日観は解禁済みの公文書から既に明らかになっているが、戦略性の高い外交案件をめぐり、同氏が日本に露骨な敵がい心を抱いていたことを明確に伝えている。>
↑
どうですか、これ?
「ジャップは、最悪の裏切者」だそうです。
つまり、「自分(アメリカ)が中国と仲良くするのは、「善」だが、日本が中国と仲良くするのは、【最悪の裏切り】」なのです。
私たちは、アメリカがこういう「独善的なロジック」で動いていることを知っておく必要があります。
では、安倍総理は、アメリカの意向を無視してロシアと仲良くするべきなのでしょうか?
田中角栄さんの悲惨な末路は、みなさんご存知ですね?
アメリカが安倍さんに同じことをしないと、誰が保証できるでしょうか?
実際、「アメリカとケンカしてもロシアと仲良くする」というのは意味のないことです。
昨年12月に初来日を果たしたリアリストの大御所ミアシャイマー・シカゴ大学教授は、安倍総理の役割についても語りました。
いわく、
「オバマに電話して、『なぜロシアと協力したほうがいいか」レクチャーすることだ」
と。
そう、安倍総理に期待される役割は、アメリカとロシアの和解なのです。
それは、もちろん中国の台頭を阻止するため。
ところが、AIIB事件で、勝手にアメリカがロシアとの和解に動き出した。
それなら、安倍さんのやることはないのです。
繰り返します。
日本の役割は、アメリカとの仲を険悪にしてもロシアと仲良くすることではありません。
日本の役割は、中国に対抗するために、アメリカとロシアの仲をよくすることです。
ですから、「アメリカを怒らせても日本だけロシアと仲良くする」という選択をすれば、「田中角栄と同じ道」になるでしょう。
PS
今回は、北方領土問題について触れていません。
領土問題解決は、もちろん超重要。
しかし、私は「日本は今、中国問題に集中すべき」と考えています。
もし安倍総理が、「私の任期中に領土問題を解決して歴史に名を残す!」
「そのためには、ロシアに接近してアメリカを少しぐらい怒らせても」
と考えておられるのなら、「大きな過ち」です。
それよりも、「尖閣、沖縄を守り」「中国の野望を阻止して」歴史に名を残してください。
●PS2
ところで、私が、世界情勢を分析し、未来を予測する方法、全部暴露しています。
これを読めば、あなた自身も世界の未来をあらかじめ知ることができるようにな ります。
時流をよむ必要がある、経営者、起業家、ビジネスマンの方は迷うことなく、こちらをご一読ください。
全部わかります。
↓
●アマゾン、「国際政治情勢部門」「外交・国際関係部門」
「社会一般部門」
「トリプル1位!」
↓
●日本人の知らない「クレムリン・メソッド」
~世界を動かす11の原理 (集英社インターナショナル)
北野 幸伯
(詳細は→ http://hec.su/hHN )
●面白かったら、拡散お願いいたします。>