区議選に出る日本国籍を取得した元チュウゴク国籍の李小牧(り・こまき) | 日本のお姉さん

区議選に出る日本国籍を取得した元チュウゴク国籍の李小牧(り・こまき)

中国人の私が帰化して新宿区議選に出る理由
東洋経済オンライン 4月16日(木)7時0分配信
「中国にはない、民主主義をしてみたい」と語る李小牧(り・こまき)氏。今年2月に日本国籍を取得、新宿区議会選挙に出馬へ。「日本に住む外国人と日本人との架け橋になりたい」と意気込む
前半戦が終了した今年の統一地方選挙。後半戦も多くの自治体で選挙が行われるが、東京都新宿区の区議会選挙では、異色の“日本人”が立候補する予定だ。それが、李小牧(り・こまき、リ・シャム)氏である。
日本在住27年、留学生として来日した後、同区内にある日本一の歓楽街・歌舞伎町の「案内人」として著書も多数あり、日本でも知名度が高い人物だ。李氏は今年2月に日本国籍を取得したばかり。なぜ李氏は今回の地方選挙に出馬するのか。李氏の胸の内を聞いてみた。
【写真】私が新宿区議選に立候補したワケ
――日本国籍を取得してわずか2カ月。日本国籍者として早速の権利行使です。
すべては私の好奇心からです。私はもともと好奇心が強い人間。そして、日本に住みながら日本と中国のことを考えてきたのですが、その考えと好奇心が立候補へと押し上げました。
■ 「中国ではできないこと」が、日本ではできる
――帰化申請前から「民主主義をしてみたい」と発言されていました。
そうです。自分も投票できて、選挙にも立候補できる。これ以上の民主主義はありません。中国にいる限り、こんなことはできない。日本に来て、私はやりたいことをすべてやってきました。それは、本を出す、新聞を出す、ラジオやテレビなど放送にも出るということ。これらはみんな言論の自由です。民主主義の一つですが、これが中国にいてはできないものです。
言論の自由を楽しみにながら、もちろんおカネもたくさんかかりましたが(笑)、さらに感じたことがあるのです。私がプロデュースした中華料理店にはこれまで、(1989年の)天安門事件に参加した民主化活動家が多くやってきました。
中国を離れて、米国やカナダ、欧州、台湾などからいろんな活動家がやってきて、私のお店で侃々諤々の議論をやっている。彼らの話を聞きながら、「民主主義はこういうことなんだ」と、ますます民主主義に関心を持つようになりました。
そこで自分の周りを振り返ってみたのです。私がベースにしている歌舞伎町には多くの外国人がいます。新宿区の人口は約32万人、その1割超が外国人です(2015年3月現在)。
歌舞伎町だけでなく、新宿区には多くの外国人が住み、日本国籍を取得した人も少なくはない。そう気づいた時、日本国籍取得者をはじめ外国人を代表するような人がいないのではないか、と思ったのです。
現実的に、外国人が住んでいる。でも、日本人との接点は少ない。日本には国会でも外国系日本人の議員はほんのわずか。そこで、私のような日本経験が長い人間が彼ら外国人の代表になれないか、日本人との架け橋になれないかと思いました。
――これまで中国人が日本国籍を取得して立候補するケースはないですね。立候補だけでも異例、さらに選挙に当選したらビッグニュースです。
そうなると思います。それは、日本よりは中国で大きなビッグニュースになるでしょう。なぜなら、中国人は私が立候補したことさえ簡単に理解できないと思います。中国にいれば経験することはおろか、見聞きしたことさえないのですから。日本に住んで日本国籍を取得すれば、投票ができて、しかも立候補できるということ自体、なかなかわからないでしょう。
■ 「もし私が当選すれば中国に大衝撃になるだろう」
だからこそ、私はそんな自分を中国人に見せたかった。民主主義が中国にはないから。私はこれまで、言論の自由を行使しながら(笑)、中国でも有名人になりました。「李小牧が立候補できた、しかも当選した」となったら、中国人はどう思うでしょうか。彼らの日本に対するイメージも変わるし、そして自国の政治や民主主義を考えるきっかけに必ずなると思います。
私の日本人の友人で、中国が大好きな人がいました。好きなあまり、中国人女性と結婚した。そして留学もしたのに、帰国したら中国がすっかり嫌いになってしまった。
政治体制、共産党、環境汚染などなど、中国を徹底的に非難する人に変わってしまいました。この友人は極端な例であってほしいと思いますが、彼の非難は中国人がこれまでやってきたことの結果に対するものです。だから、中国にもよくなってほしいし、私の立候補でどうすればよくなるのかを考える契機になればいいと考えます。
――中国や韓国など、日本は今、隣国との関係がよくありません。そのような中、街頭での政治活動は問題ありませんか。
まったくありません。もちろん、街頭で話をしていると「中国に帰れ!」と言ってくる人が毎日10人ぐらいはいます。また、「本当に外国人なのか」と思ったのか、じーっと私を見つめ近寄ってくる人もいます。確かに気分はよくない。
それでも、毎日新宿を歩いてみると、私をきっかけに政治に関心を持ち始めた人がいることを実感します。たとえば、オフィスなどに入ってあいさつをすることがあります。中には、外国人が多いオフィスもある。すると、「あの李小牧さんですね。公約、読んでいますよ」と言ってくれるオフィスが少なくはない。そこで働く人のなかには、帰化して投票権がある人も、投票権がない外国人もいますが、私の政治活動を記したチラシなどを読んで話しかけてくれるんですよ。
――投票権がある外国人の、日本の政治に対する関心はどの程度でしょうか。
正直言えば、これまで「われわれにはまったく関係ない」というのが本音でしょう。日本に中短期に滞在し、カネを稼ぐためだけにいる。それさえできればいいという外国人が多いし、私もそれは理解できます。
でも、投票権のある外国人でさえ政治への関心がない。一票を投じることができるのに、日本の選挙がどんなものか、あるいは実際に投票とはどうするものかさえわからずにいる人が多いのです。それが、私が立候補したことで、「投票どころか立候補もできるのだ」とわかった人もいるのです。
■ 「投票は1人でできるの?」と真顔で聞く知人
こんなことがありました。ある中国人でもう何十年も前に帰化した人ですが、投票の意味がわからない。「団地である政党の人と握手してしまったけど、実際の投票には違う人を書いてもいいのかしら」と言ってきた人がいます。また、「投票は1人で行ってもいいのか、誰か付き添わなければいけないのか」と言ってきた人もいます。実は私もかつて、「投票は1人でできるのか、誰に投票したのか本当にわからないのか」と心配していました(笑)。
私が日本国籍を取得した時、瞬く間に30人ぐらいが「どうしたら帰化できるか」と相談にやってきました。彼らが帰化したいと思うのは、日本が好きだからこそなのです。好きな国だからこそ長くいたい。であればこそ、合法的に、そして日本の人とともに長く住めるようになりたいと願っているのです。それならば、日本で長く住めるルールを教え、日本人とどう共生できるかも伝えたい。これも、私が立候補してアピールしたい一つなのです。
――それでも、外国人に拒否感を覚える日本人は少なくありません。李さんが考える共生とは、どんなイメージでしょうか。
一つ日本人に助言したいのは、「外国人にとってやさしい所は、日本人にとってもやさしい所になる」ということです。2011年の東日本大震災は、私にとってもショックでした。最もショックだったのは、余震や原発事故による放射能を心配して、中国人をはじめ外国人があっという間に帰国してしまい、しかもあまり戻ってこなかった。これは、彼らのように帰国してしまった人は、普段から日本人との関係が希薄であったことが大きな原因だと考えています。
なぜか。私は、少なくとも彼らよりは日本人を知っています。日本人と付き合って、日本人がどのような人たちかを理解しています。余震や放射能は確かに怖いかもしれないが、同じ場所に住んでいる日本人はとどまっている。彼らと普段から地域的な関係を持っていれば、また日本人との良好な関係があれば、帰国という拙速な行動をとることはなかったはずです。
■ 外国人が住みやすい所は、日本人も住みやすい
だからこそ、私が彼らと日本人の間に立って、議員になれたらその地位を生かして橋渡しをしたい。互いに良好な関係を構築できれば、これは日本人にとってもよいことだと確信しています。そのためのルールづくりや交渉に、議員という仕事は有効なのだと考えています。
それは、外国人も日本で役に立ちたい。災害が発生したとき、逃げるのではなく、ボランティアなどで復旧活動をしたいと思う人がいます。地域での関係が密接であればあるほど、そんな気持ちが湧いてくる。そんな関係が東日本大震災でなかったことは非常に残念でなりません。
具体的な取り組みも、私はすでに考えています。日本の地域には神社などがあって、夏や秋にはお祭りがある。それに外国人も気軽に参加できるようにして、日本人と仲良くなってもらう。
防災訓練があれば、できるだけ参加してくれるように働きかける。そんな活動がどうなるか。これが、2020年の東京オリンピックのボランティアにつながるなど、高齢化・人口減を迎える日本にとって最大の武器になると思うのです。幸い、東京都にある日本語学校の3分の1が新宿区にあります。日本語を勉強する外国人は、少しでも上達の機会をつかもうと喜んで参加するでしょう。参加へのきっかけや後押しを、私はしてみたい。
私は中国系日本人として、日本人に言いたいことも、外国人に言いたいこともどちらとも話したいことを話せます。日本人がいるからこそ、外国人にとってもやさしい。外国人がいるからこそ、日本人にとってもやさしい。そんな関係を新宿区から構築できればと考えています。
李小牧=1960年中国湖南省生まれ。1975~81年、バレエダンサーや文芸誌記者として働く。88年に留学生として来日、1993年から「歌舞伎町案内人」、作家、レストランプロデューサーとして活動。2015年、日本国籍取得。著書に『歌舞伎町案内人』『歌舞伎町より愛を込めて』など多数。
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福田 恵介
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150416-00066339-toyo-bus_all&p=1